ありふれてはない元守護者の異世界戦闘録   作:ギルオード

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お待たせしました。
今回は題名通り、ある人物との交渉です。


交渉

朝食が終わった後、皆が出発した後に、玉井を呼び出す。

 

「天之河先生。それで訓練の内容は?」

 

その前に、玉井の戦闘スタイルを確認する。

 

「玉井くんは曲刀の二刀流を使っていたよね?」

「おう。一応自慢だけど、器用で両利きだからな」

「すまないけど、二日程、俺はある人物に、俺がいなくなった後に、玉井くんの面倒を見て貰えないかを頼み込みに行く。二日程自習をしていて欲しい。まあ、ここでどんな訓練をするか見物だね」

 

頼る相手は当然エミヤだ。

彼なら、教えるのも上手だろう。

エミヤは時計塔に居た頃、俺に借りを作っているからな。

そこをつけ込むつもりだ。

それに、守りに関して言えば、俺より上手い。

 

「おう!と言いたいが、俺もついて行った方が良いんじゃないのか?俺の師匠になるかもしれないんだろう?」

「俺は全速力で世界中を歩き渡るつもりだけど、着いてくる?」

 

ちょっとした冗談を言う。

千里眼で相手の場所は分かっている。

ただ、その場所までは全速力で向かうのは確かだ。

 

「これは、俺の問題だ!俺も行かないとダメだと思う。絶対に追いつくから、連れて行って欲しい!」

「分かった。着いてこれなかったら、おぶって行くよ」

「絶対に追いつくわ。同い年におぶられるのは、俺のなけなしのプライドが」

「じゃあ、行くぞ!」

 

玉井の全力疾走に先ずは合わせて走る。

スタミナを付けるために、徐々にスピードを上げていき、玉井を少し上回る速度でしか走らないようにする。

まあ、それでも、そこいらの馬車を抜いていく。

瞬間的な速度は負けるだろうが、平均速度は俺たち自身が走った方が絶対に速い。

移動距離も、馬よりあるのが、転移者たちだ。

そして、中立商業都市フューレンの行く途中にある村に、昼時につく。

エミヤは今、この村に居る。

 

「玉井くん。これから会う人は、俺よりも二刀流に詳しい人だ。正直、俺では玉井くんに教えられることは基本的なことが精々だと思う。時間もそうだけど、単純に俺自身が二刀流をそこまで使いこなせないからなんだ。だから、どうしても二刀流の戦闘を本格的に教えるには、今から会う人に頼るしかないんだ。戦闘のイロハを教えたりは出来るんだけどね。それに、独学っていうのは難しいだろうし。師匠づらしているけど、出来ないことの方が多くてゴメンね」

「そうなのか。いや、正直驚いたんだ。俺にとって、天之河は器用で何でも出来るエリートみたいなイメージを持っていたから、天之河にも出来ないことがあるって知れただけでも、良かったと思う」

「そう言ってくれると嬉しいよ。じゃあ、先に知り合いの俺から話しかけるから、呼び込むまでは外で待っていてくれないかい?」

「つもり話もあるんだろう?もともと一人で行くつもりだったって事はさ。勿論待つさ」

 

玉井は物分かりが良い。

一人で行かせて欲しいというのを感じ取ってくれたのだろう。

 

「じゃあ、先に行かせてもらうよ」

 

そう言って俺は酒場に入っていった。

 

そこには、長房で料理をしている、エミヤがいた。

 

「やあ、アーチャー。今日のオススメを一つ頼む。そして、取引をしないか。良い情報を仕入れているんだけど、俺の願いを聞いてくれるのなら、情報をあげても良い」

「話は聞こえていた。貴様の同級生を鍛えて欲しいという事だろう?悪いが、情報を聞かない限りは、返答できない。分かってはいるだろうが、情報を私は集めなければいけない。敵の居場所に戦力をな。そもそも、サーヴァントとはいえ、英霊を何騎も呼び寄せる事例なぞ、異常だ」

「まあ、貴方の言い分も理解できるよ」

「それに、貴様もだ」

「うん?」

「誰一人としても犠牲を出したくないというのなら、あの盾の宝具で閉じ込めれば良いものを。それに、貴様が戦闘においてお節介をかけるとはな」

 

エミヤの正論に苦笑いを浮かべる。

 

「正直、閉じ込めようとは思った。ただ、あの人数を一気に閉じ込められる程の魔力が足りなかった。何よりも、キャスターのクラスではなかったのが、理由の中でも大きい。それに、貴方が死んでから、考えも変わったのさ。愛のために戦う人間は止められないものだ。貴方も分かるんじゃないか?」

 

 

その言葉に、エミヤは考えるそぶりを見せて、目蓋を閉じる。

そして、目を開くと同時に本題に切り掛かっていく。

 

「まあ良い。この手の話は終わらん。本題に移るぞ」

「そうだな。うん。まず初めに、神エヒトは生きている」

「根拠は?」

「まあ、二つ目の情報と被るんだけど、地上じゃない何処かで、別側面の俺が召喚されたのを感じ取った。エミヤも気付いていると思うけど、アレス由来の神性が今の俺から消滅しているのは分かるだろう?」

「ああ。存在が薄くなっているのは感じている。そのマスターが神エヒトという訳か。恐らく一瞬魔力が流れ込んだりして、分かったってところか」

「理解が早くて助かる。それで受けてもらえるかな」

「頼み込みに来たのが貴様でなければ絶対に引き受けただろう。それぐらいの情報だった。敵が分かったという事、地上にいない事。これだけで相当な成果だ。世界を歩かなくて済むからな。そう頼み込みに来たのが貴様でなければな」

 

エミヤが半ば呆れながら話す。

 

「どうしてだ?時計塔時代の借りを返そうとは思わないのか?」

「私の中ではアレは黒歴史で無かったことだ。故にノーカンだ」

「大人気ない」

「うるさい。あんな出来事なぞ思い出したくもない」

 

大人気ない。

余りに大人気ない。

 

「じゃあ、なぜ?」

「貴様が敵と分かり切っているからだ」

 

周りの温度が下がる。

互いの微小な殺気がぶつかり合う。

 

「貴様は守護者として呼ばれる時と同じように晩年の完成された戦士として召喚されている。アレス由来の神性も当然含まれていた。別側面が呼ばれようと、揺らぐはずがないのだ。そこから分かる事は、何らかの方法で呼ばれた神エヒト側の貴様が不完全であり、そこに貴様の霊器からアレスの神性を取り出して複合させたりしたのだろう。貴様には外付けとはいえ、オーディン由来の神性を持ち、先祖返りの血によって現代に生きた人間とは思えないほどの神性を持っている。神代の英雄たちに勝てはしないだろうが、今の状態でも一方的に負けることもあるまい。まあ、そんなところか。曖昧な時間軸にある座も含めれば、私と貴様は近しくそれでいて、長い付き合いだ。分からないはずがないだろう。貴様をこの場で仕留めたいぐらいだ」

「まあ、流石にバレているか。俺としてはこの前の決着をここでつけても構わないが」

「ぬかせ。一度もこの世界に来て死んでいないのなら、貴様にはワルキューレの心臓による転生があるだろう。私の負けは決まっているも同然。仮に違ったとしてもこの場所では貴様の方が有利な間合いで、殺し合う気もない。今の貴様には何をしても、評価が上がるだけだろうしな。まあ、貴様から人間性を消失させることも考えはしていたのだがな。まあ、なにより買ったばかりの私の城を壊されるなど溜まったものではない」

 

エミヤは真面目な顔で重大なことを暴露する。

 

「これ買ったの!?この世界に俺たちは永住なんてできないのに、買ったの!?エミヤ。お前、赤い悪魔のこと馬鹿にできないぞ」

「私は中立とはいえ、世界のルールは基本的に従う。それに、アイツらにとっての隠れ家というやつだよ」

「うわぁ。良い大人共が少年ゴッコしてる」

 

エミヤは俺の一言に少し傷ついたのか、ソッポを向いてため息を溢して、話し出す。

 

「まあ良い。件の少年に会わせたまえ。それから決める」

「分かった。貴方もきっと気にいるだろうよ。折れても自分で這い上がるって決められる男の子だから」

「ふっ。その評価だけで私が動くと思うなよ。同族嫌悪をしだすかもしれんぞ。それと面接のようなものだ。貴様は来るな」

 

扉から出る。

 

「どうだった?話は聞こえなかったけど」

「うん。昨日みたいに声が漏れないようにしていたからね。とりあえず、会って見るそうだよ」

「分かった」

 

玉井くんは深呼吸をしている。

緊張しているのだろう。

 

「緊張しているとおもうけど、大丈夫だよ。皮肉屋な男だけど、良い人だから。ただ、年上だから敬語は心掛けてね」

「分かった」

 

そう言って、玉井は扉を開いて行った。

待とうと思った矢先「ああ!ゆうしゃさまだー」

幼い少年少女の声がした。

 

 

 

少し時間が経った頃、扉が開いた。

出てきた玉井はギョッとした顔をしている。

俺の目の前には長蛇の列が出来ている。

男女比は女性の方が多いが、男性もそれなりにはいる。

俺は笑顔を振りまきながら、握手をして感謝の言葉を告げる機械になり、インクと紙を持っている人にはサインを書く。

 

「皆さんすいません。連れの者が来ましたので、また今度に」

 

そう言って、長蛇の列を無理矢理鎮めようとするも、その歓声に意味をなさなかった。

 

「玉井くん。ちょっとゴメン」

「おまっ

 

何かを言い切る前に抱えて一っ飛びする。

周りの住人に被害は出ていないだろう。

エミヤの店の景観が台無しになっているだろうが、気にしない方向にする。

弁償代は今度払うとしよう。

 

「それで、どうだった?」

「入れ違いになるように、一週間後にエミヤさんからテストがある...ってどうしたんだよ、天之河」

「いや、エミヤって名乗ったんだなと思っただけだよ」

「自分の名前だろ。普通のことじゃないのか?」

「うん。そうだね」

 

思えば、聖杯戦争で無い以上、真名を隠す必要は然程無いのだろう。

 

「じゃあ、さっそく城に帰りしだい、訓練だな」

「それは良いけど、頼む。降ろしてくれ〜!」

 

こうして、玉井の訓練の日々が始まった。




光輝には、十二の試練程便利ではありませんし、本人も使わないに越す事はないと思っている、蘇生系の宝具を所有しています。
詳細はいずれ、マテリアルで書こうかと思っています。

数話程オリジナルの展開をしたら、オルクスにいるクラスメイト達と合流すると思います。
作中の時間軸は現在は三巻に入った辺りです。
ですが、戦争の影響で、オルクス大迷宮の攻略の進歩自体は二巻辺りの七十階層で止まっています。

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