ありふれてはない元守護者の異世界戦闘録   作:ギルオード

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お待たせしました。
中々難産でした。
試合の細かい描写をするかどうかで、凄く悩みました。
光輝本人が、戦うのなら悩む必要ないんですけどねぇ。


模擬戦

玉井の訓練は駆け足になっていた。

長い時間をかけて作っていく、体という資本を短期間で仕上げる方法は存在しない。

それこそ、打ち出の小槌の様な宝具でもなければ、不可能だろう。

しかし、戦闘技術は別だ。

身体を効率よく動かす方法。攻撃の防ぎ方。攻撃をするタイミング。

こう言った物は直ぐに教えることができて、反復練習が可能だ。

戦闘の駆け引きは戦いながら覚えるしかないし、今はその段階に玉井は踏み込めていない。

玉井だけではないが、元々対人技能が必要な競技をやってこなかった生徒は、恵まれたステータスの暴力で無理矢理戦っていた。

戦うことが出来てしまった。

迷宮の敵もある程度の相手には、それで通用していたからだ。

ステータスに支配されている世界だからこそできる事だろう。

極論を言えば、クラスメイトのステータスが千を越えれば、ベヒモスを数の暴力で倒せるだろう。

理性のない獣ならば、それこそ素直に強くなって殴るだけで倒せてしまう世界なのだ。

だからこそ、どれだけ強くなっても、騎士たちに多くの生徒は勝てないのだ。

自分自身の型を造れていない。

そんな新兵同然な人間に負ける騎士など、そうはいないだろう。

合図と共に始まる試合ならば尚更だ。

でも、それでいいのだ。

最初から勝つことなんて誰だってできない。

そこから学んで強くなっていくのだから。

だから、今ボコボコにされて倒れている玉井もしょうがない事だ。

 

「話は分かっているし、納得もしているぞ。天之河先生。でも、ここまでボコボコにされるのは理不尽じゃありませんか?」

「ゴメン玉井くん。でも、体力をつけるためには持久走と素振りが今の所は効率が良いし、戦い方の基礎も俺との模擬戦で反省会を交えながらの方が分かりやすいだろ?」

「確かにどこがダメなのかは分かりやすいぜ?でもよ、自分で満点と思った攻撃すら、普通に対処されると結構へこむんだけど」

「ああ、失敗したら次の一手を考える癖を身につけて欲しいんだけど、流石にまだ早すぎたみたいだね。俺はそうやって覚えていったから。それに、痛みには慣れておく必要がある。三日前はしょっちゅう気絶するは吐くわで散々だったと思うけど、もう気絶はしなくなったでしょ?」

「耐性は異常に伸びたさ。でも、ステータスって怖いって実感できたよ。俺強くなっている気はしないから。数値だけが上がっているみたいでさ。天之河先生の軽い一撃なら気絶しなくなっているから、数字は正しいということも本当に理解した。だからこそ、怖い」

「どうして?」

「筋肉とかついてないのに、正しいって決められている感じでさ。今、この加護が消えてしまったらって思うとゾッとするよ。トータスに呼び出された当日よりは筋肉は付いているのは分かっているさ。ほれ見ろ。ちょんと山ができてるだろ」

 

そう言って、玉井は腕を曲げて筋肉を強調して見せてくる。

たしかに、地球にいたころの玉井よりは付いているだろう。

 

「でもよ、ステータス抜きで剣を振れるかって言われると、絶対無理だ。あと、やっぱりこのネックレスって本物だな。ステータスが今までより伸びが良い。でも、ずるくないか?これ」

「その気持ちを忘れずに、鍛えていけばいいと思うよ。言ってはなんだけど、武道初めて一週間足らずの人間に、戦場のプロとも言える軍人が、我々では歯が立たない敵が現れたから共に戦ってくれって皆にお願いしているんだ。このぐらいのアドバンテージは必要だよ。思い出してみてよ。初日の俺はメルドさんの三分の一の強さだったんだよ。皆はもっと弱かったでしょ?だから、今はまだそれでいいんだよ。自分自身で肩を並べていると思ったときに、そのネックレスを外せば良い」

 

悪い方向に考え出す玉井にストップをかける。

今の優先順位的には、その考えをするのは後回しだ。

だから、先に話を切りだす。

 

「それで、そろそろ他の人とも模擬戦をするべきと思うんだ。訓練の成果がどのぐらい実っているかを知りたいだろう?騎士を相手に戦ってみるといい。でも、くれぐれも」

「ああ、わかっている。守りを徹底だろ。しかし、本当に驚いた。二刀流って守りの方が強いんだな」

「今の状態だと、アニメとか漫画みたいな動きは出来ない事はないけど、普通は厳しいぞ。それに、今ならあの動きは無駄が多かったのもわかるだろ?」

「ごもっともです」

「でも、悪いわけじゃない。これから心がける、守りながらカウンターを入れて崩す戦い方と、効率よく剣を振る力加減を覚えていけば、攻めに転ずる戦い方を組み込むのは、相手の意標を突けるだろう。手数が多いのは厄介だからね。ただ使うのなら、攻めに移ったときも、直ぐに守りには入れるように心がけることだ。玉井くんは、守るために強くなるんだろ?」

「ああ」

「まあ、その辺は、テストに合格してから、エミヤに教えてもらうといいよ」

「わかった」

「じゃあ、最初の相手だけど...頑張れ」

「どういうことだよ!」

 

玉井がそう言っていると、一人の騎士が現れる。

 

「初めまして、玉井淳史君。私はガリア。ニアの父だ。ニアから話は聞いているよ。随分とニアが世話になったね」

 

玉井が気にしている女性ニアの父、ガリア・カムラン子爵だ。

騎士団に所属する人物の中でも、五本指に入る実力者と、俺は見ている。

騎士団長の留守を預かれる実力に地位も持っている。

 

「いっいえ、こっ此方こそ迷惑を」

「いや、ニアにも良い薬になっただろう。良くも悪くも王国から外に出たことが無くてな。そう言う意味では、君の本音はニアの成長に繋がるだろう。だが、それとは別に...」

「なあ、天之河先生。俺は死ぬのか?」

「諦めるのは勝手だけど、夢を叶えられないよ?」

「くそっ!やってやるよ!ガリアさん。よろしくお願いします!」

 

そんな人物に、今の玉井では勝つのは難しいだろう。

贔屓目で見て、十回戦って一回の勝利をもぎ取れるかと言ったところだろう。

だが、数日のうちに、安定して三割ぐらいの勝率に持っていけるだろう。

ここ数日の生活を見てハッキリと分かっている。

ステータスが数倍の差があるのだから、この世界の人間の数倍の時間を訓練に費やす。

玉井は本当に実行している。

余りにも無茶をしたら止めるつもりだったが、しっかりと食事を取り、湯を浴びた後は部屋で使えそうな知識を溜め込みだし、消灯と同時に眠る。

そして、早朝から一走りする。

ルーティンを組み込んでおり、自身のアドバンテージをしっかりと活用できている。

案外、オルクス大迷宮から帰ってきた時には、勝ち越しているかもしれないな。

 

「これより、ガリア子爵と玉井淳史戦士の模擬戦を行う。一本勝負、始め!」

 

俺の合図と共に試合が始まる。

玉井の方が、ガリア子爵よりステータスは幾分かは上だろうが、近接戦に限れば不要なステータスも考慮すれば互角と見られる。

しかし、それで負けるのは、経験の差がありすぎることが原因だ。

だからここから、学んで欲しい。

勝つことの難しさと、負けから来る焦りを。

 

「私の勝ちだな」

「このままでは、終われません!もう一本お願いします!」

 

そして、勝つためには変化しなければいけないことも。

崩しのための小技を覚えるにしても、自身の力が相手を凌駕するまで高めるにしても。

なにより、心の内に潜めている、転移者としての力の大きさに対する罪の認識を破り捨てて欲しい。

現地の住民と深く関わった事による呪いでもあるだろう。

申し訳なさが彼の選択を無意識に閉ざしている。

自身の身を守らなければならいのに、その認識は今だけは足枷になる。

 

 

 

 

時間が経ち、日が暮れだした所で止めに入る。

 

「そこまで!ガリア子爵。本日はありがとうございました」

「いや。私も良い稽古になったよ。だが、彼は納得してないようだが」

「天之河。俺はまだ...戦える。止めないでくれ」

「玉井くん。今日は無理だ。これ以上はガリア子爵にも迷惑だし、百回も戦って、一回も勝てていない。それに、途中から同じような負けをしないために、攻めに転じていたけど、余りにもがむしゃら過ぎていた。今のままじゃ時間の無駄だ。反省会をするよ。それに、明日以降も玉井くんは騎士を相手に模擬戦をしていくんだからね。今日と全く同じ戦い方だと、周りで見学していた騎士には勝てないよ。それに、ガリア子爵。三日後にまた、試合を行って頂けるのですよね?」

「ああ。玉井くん。私は勝ち逃げしない。まあ、業務があるからいつでもとは言えないが、幾らでも胸を貸すつもりだ」

「ガリアさん。ありがとうございます」

 

反省会といえども、玉井の悪い点しか指摘はしない。

ガリア子爵の攻略の仕方を一緒に考える所まで手を出すわけには行かない。

そこまでするのは、玉井のためにもならない。

俺の訓練は相当な駆け足で進めている自覚はある。

着いてこれなくても無理は無い。

だが、この訓練を乗り越えられなければ、エミヤの試練も突破することは出来ないだろう。

ネックレスも馴染んできた頃だろうし、そろそろ夢を見るだろう。

誘惑に惑わされずに、進むことを願う。




今回の話では、戦闘描写は入れませんでした。
別の考え事をしながら、解説を挟むと言うことが、出来ませんでした。
リベンジ戦には、光輝から見た試合風景をかけるはずです。

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