ありふれてはない元守護者の異世界戦闘録   作:ギルオード

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バレンタインによる特別番外編です。
ネタバレが多少有ります。
時間軸は原作五巻付近にあたりますかね、多分。

多少重い話があると思います。
個人的には思い部類に入りますね。
もっと、甘い話を出すつもりだったのに!


番外編
番外 バレンタイン


これは、未来のお話。

まだまだ、先のお話。

でも、やがて訪れる話だ。

君たちに特別に見せてあげよう。

 

 

 

 

「主様、主様」

 

瞑想をしているときに、ノイントに呼ばれて意識を戻す。

私の名前はエヒトルジュエ。

このトータスを神として統治している。

ノイントは、私の大切な部下の一人だ。

 

「どうした、ノイント。私を起こすということは、何か問題でも起きたか?」

 

ノイントは今いる部下の中で、一番の古株だ。

トータスに来る前、この神域で私が作ったオリジナルの一体だ。

意味のない事はしない奴だ。

 

「いえ、問題は起こってはいません。ですが、お伝えしたいことがあります」

「なんだ。申してみよ」

「本日はバレンタインデーなる物のようです」

「バレンタイン?それはどういったものだ?」

「下界にて流行っているようですが、元々は相手にチョコレートを手土産に好意を伝える日のようです。今では少し風習が変わり、好意だけで無く、日頃の感謝や友情の育みにも活用されているそうです」

「それが?」

「実は、異世界の勇者達の監視をしている者が伝えてきましたが、何でも異世界の地球にもなんとバレンタインデーは存在するそうです」

「はあ」

「ですので、お師匠様にもチョコレートを送るべきでは無いでしょうか?」

「どうしてかしら」

「主様も私もお師匠様には世話になりっぱなしです」

「私と光輝は主従関係よ。私の世話をするのは当然よ」

「私は戦闘型ですので料理は分かりません。それに、料理担当には、お師匠様直々に世話になっている私は嫉妬されて手伝って貰えません。そこで、提案があります」

「だから、作らないし!手伝わないわよ!」

「...所で主様。一度でもお師匠様に褒美を与えましたか?」

「えっと」

「ありませんよね。サーヴァントとマスターという関係に甘えて、本来の主従関係未満のやり取りをしているのは見え見えであります。信頼した相棒だから等のような言い訳もおやめ下さい」

「ノイント。しばらく見ない間に随分人間らしくなったのね」

「私が、人間?とにかく、一度ぐらいは感謝を伝えるべきです。それとも、創世神にしてこのトータス最高の神がまさか、料理が出来ないなどと言うのでしょうか?思えば、お嬢様(・・・)はいつも周りには───」

「本当に人間らしくなったわね、ノイント。良いでしょう。この私に不可能なことはないと証明して見せます!下界の人間に出来ることが、出来ないわけ有るわけ無いわ!」

 

私のプライドをかけた戦いが、ノイントと共に幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

普段の私なら、料理係のオリジナルに話を聞きに行くだろう。

しかし、ノイントと彼女の仲はこのバレンタインに限れば最悪の状態だ。

ノイントに協力している私もツーンとした対応を取ってくるに違いない。

何より、光輝が来て私が変わって(戻って)いるように、ノイントのようなオリジナルは表情豊かになっていっている。

そんな人間味のある状態のオリジナルに話を聞きに行ったりでもしたら...

 

『やっぱり、箱入り娘のお嬢様だったエヒトルジュエ様は料理出来ないんですね』

 

と煽ってくるに違いないわ。

私はあの子達の前では完璧で無ければいけないのだから!

それに、手作りのチョコを光輝に渡したら、どんな反応を見せるかしら。

私が料理出来ることに驚くかしら。

笑ってくれるかしら。

そして、あわよくば私のことをエヒトお母さんなんて...

だ、駄目、駄目よ。

いくらもう私に子供が出来ないからって、光輝を息子にするだなんて。

 

「あの、主様。そろそろその瞑想()を辞めて頂けませんか」

「うっ、五月蠅いわね!貴女たちもこれが出来るようになったら、四六時中物思いにふけるわよ!」

 

兎に角、まずはチョコを作る必要があるわ。

とびっきりに美味しいチョコを作ってみせるわ!

当代最強と呼ばれた魔女の実力を見せつけてあげる!

 

 

 

 

 

 

 

その頃、下界・トータス

 

 

 

 

 

「やあー!」

 

俺、天之河光輝は現在リリィの修行に付き合っている。

雫や香織と話している内に、護られているだけの自分を卒業したいと俺に申し出て、修行を見て欲しいとお願いされた。

自分の身を自分で守れるようになるのは良いことだ。

だが、王族には個の力よりも、群をまとめ上げる磨く方が良いと伝えたものの、リリィの経歴を見れば才女と呼ばれるのに相応しく、一国を任せられるラインのカリスマはあるだろう。

更に、王族として命じられれば、断りようも無かった。

 

『最初に言っておくけど、リリィはとても弱い。優しい指導というものをするべきだろう。でも、リリィが手にしたい強さはそれでは手に入らない。リリィが手に入れるべきは死なない力。生き残る術だ。俺はそれしか教えることが出来ない。王族として表向きに必要な技は、他の近衛の人から教えて貰って。あと、俺は厳しいですよ』

『構いません。私は戦えるようになりたいんです』

『王族が剣を持つのは薦めたくは無いんだけどね。じゃあ、早速今日から始めるよ。まずは体を作る所からだね。手始めに王国は、流石に無理か。城下町を二周ぐらいしようか』

 

そうしてリリィの修行が始まった。

今は徒手空拳を教えている。

流石にスパーリングはまださせられない。

でも、筋は良い。

王族にさえ生まれなければ、優れた戦士になれてただろう。

それに、一度彼女のレイピア捌きを遠目から見ていたが、惜しいと本気で思った。

だからこそ、彼女の申し出を強く断ることは無かった。

リリィはその分野における十年に一人の天才や各世代に生まれる偉才には劣るだろうが、毎年一人はいる上手い奴にはなれるだろう。

少しの才能と本人の突き詰めていく資質が合わさり、俺にとっては理想的な秀才とも言える。

正直、ランデル殿下を憐れむ位だ。

ランデル殿下も凡才ではなく、同年代で見れば非凡の部類には入るのだが。

 

「光輝!どうですか、今の突きは!自分でも中々な出来だと思うのですが!」

「うん。正直もう少し時間が掛かるかなと思っていたよ。じゃあ、明日からは模擬戦をしてみようか」

「はい!」

「じゃあ、今日はこれまでだね。ゆっくり休んでね。じゃあ───」

「光輝、待って下さい!」

「うん?なんだい」

「その、これを受け取って欲しいのです」

 

リリィが紙袋を渡してくる。

 

「本日はバレンタインという、トータスで流行の祝い事で...えっと、手作りです。よかったら食べて下さい。こんな事、婚約者がいる身でやって良いかは疑問ですけれど、まああちらも妾や側室は沢山いますし。私も良いですよね」

「うん。そうだね。お互い様だ。大切に食べるよ。何かお返ししないとな」

「一月後のホワイトデーで構いませんよ!お返しは」

「そうか。ゴメンね。うん。とびっきりの物を用意するよ。君の思いにしっかり答えるよ」

 

紙袋のハート模様や、手触りから分かるチョコの型。

俺の思い違いで無ければ、まあ本命チョコだろう。

しかし、リリィには申し訳ないな。

その場でお返しをしたかったけど。

この世界にもバレンタインがあるのか。

それを気にする余裕はなかったな。

クラスの皆は知ってただろうか。

廊下を歩いていると、チョコの匂いが辺りからする。

調理場を覗くと、チョコ作りに励む女子の姿が。

ああ、知らなかったのか。

今日の晩餐にはデザートにチョコが出るのは確定したな。

胸やけをする前に、リリィのチョコを味わおう。

 

 

 

その日、男子は女子からの手作りチョコに歓喜の涙を流し、食べても食べても終わりの見えないチョコ群に胸やけと少しの後悔と一粒の涙を流し、裏切り者に怒号と悲鳴を浴びせて男泣きをする。

 

 

 

 

 

 

 

そして、俺は神域に招待された。

 

「天之河様。ようこそお越し下さいました。つきましては、我々一同より、このチョコを」

 

凄い。

既製品そっくりのチョコだ。

ここまでそっくりなのは、流石としか言い様がない。

それでいて、妙に光っているのは、此処で作ったからだろう。

 

「このような形になったのは、深い事情があります。が、簡単に言いますと、主やノイントを苦しめておきながら、自分たちだけというのは厚かましいと思いましたので、このような形に致しました。大きさも一口サイズの物に。確か『ちろるちょこ』なる物にしました。味も様々ですので楽しんで下さい」

「ありがとう。返礼なんだけど、もう一人の方に全て伝えているから、後日貰ってくれないかな?」

「了承しました。ノイントの方から行って頂けると、主は助かります」

「じゃあ、先にノイントに会いに行ってくるよ」

 

そうして、ノイントの元へ先ずは向かった。

 

 

 

「あっ、お師匠様。こちらを受け取って下さい」

「バラ、かな?」

「トータスでは異性に想いを伝える際に送られる花です。何度か送られたことがあります。それから調べて、今の私が貴方に送りたいと思いました。お師匠様。許して下さい。私は貴方のことを」

 

ホワイトチョコで作られたバラ。

それに込められた意味。

トータスでの意味は分からない。

それでも、彼女の思いに相応しいのなら...

 

「ノイント。それ以上先を話してはいけない。君の立場や、エヒトルジュエや俺のことも関係ない。君の種族もそうだ。ノイント、人を好きになるのに、そういった物は関係ない。関係ないんだよ。完璧な物など存在しないのだから。生きて学び続けている以上、君のその想いは誰かから赦しを貰える物ではない。君の内から生まれた物だからその結果を受け入れるべきだ。それはバグでも何でも無い。イレギュラーでも無い。君が学習したその結果をどうか、否定しないでくれ」

「私は女───みたいです。これが昔あの子が教えてくれた恋する乙女というものですか。返礼の品はいりません。ただ、どうか私を抱きしめてくれませんか。今はそれだけで...」

 

ノイントを優しく抱きしめる

 

「ああ、私は確かに、私だけの幸せを確かに見つけられました。この私の高鳴る鼓動に、安らぎを覚えているのですから。同型機にはきっとバグと思われます。お師匠様が言ってくれた、特別という言葉が分かった気がします。貴方の弟子でよかった。どうか、直ぐに主様の元へ行かれて下さい。このままだったら、私もう二度と戦えなくなりそうですから」

「ノイント。じゃあ、目を閉じていてくれ」

「はい」

 

目を閉じたノイントの髪をそっと纏める。

概念礼装のリボンで髪を纏める。

装飾は一切無い。

だからこそ、ノイントによく似合う。

純粋な彼女に。

 

「後で、鏡を覗いてごらん。師匠からの卒業祝いだ」

 

そう伝えてエヒトルジュエの所へ跳んでいく。

 

 

 

 

それが、最後に彼女とあった出来事だった。

 

 

 

 

エヒトルジュエが待っている。

彼女は生粋の貴族の娘だった。

料理をすること自体が初めてだっただろう。

指を包丁で切っては治癒魔法をかけている姿が目に浮かぶ。

そして、変に凝った物を作っているのも分かる。

プライドが邪魔をして、義理のチョコなのに最上級の物を用意する。

着いた場所には、テーブルと椅子そして、不格好なチョコケーキが置かれていた。

向かい側の椅子にエヒトルジュエは座って待っていた。

右手の椅子にはもう一人の俺がいた。

 

「光輝。そこに座ってくれ。既に■■■は着席しているからな」

 

俺は腰をかける。

 

「お前達への感謝も勿論している。日頃の礼として用意をしたつもりだ。だが、どうしてもな。こんな時だからこそ、私の我が儘に付き合って貰えないか」

 

エヒトルジュエはきっと、作っている途中に思ってしまったんだろう。

俺も、正直覚えがある。

だから、笑って許す。

 

「マスターの命じるままに」

「すまない。お前も私の過去を覗いたから分かるだろう。私には子供がいない。そして、気づいているとは思うが、告白する。私はお前を子供として偶像を重ねてしまっている」

「俺も過去にそういうことはあった。妻に、子供に、ミルに誰かを重ねたり、物思いにふけったりしてたさ。だから文句は無い。そういう所まで似てるとはな」

「──────」

「私に一日だけ、母親をさせてくれないか。私は、子供に手料理を振る舞ったことも、誕生日を祝ったことも、楽しく会話をしたこともない。だが、どうしても、お前にチョコを作っていると、生れてこなかったはずの子供を映してしまうんだ」

「分かっている。もう、食事の時間だよ。早く食べよう、お母さん(・・・・)

「ええ、そうね」

 

互いにケーキを食べる。

 

「お母さんの手料理あんまり美味しくないね」

「酷いことを言う息子ね」

 

思えば、俺は今生においての家族に距離を取っていた。

素直に甘えることが出来なかった。

キュリアは母親を頑張っていた時期もあったが、俺にとっては同士で互いに支え合う夫婦みたいな感じだった。

俺は、初めて母親に甘えたのかもしれない。

母に甘えることが出来る子供になれた。

それは確かに幸せな時間だった。




FGO風にサーヴァント(光輝)にチョコを渡して、その返品をするって感じの甘い話を書こうと思っていたんですけど、渡している人間を読者目線にしていると、うん?あれ?これは、ここに突っ込んでいい話なのか?となり断念。

こうして、光輝のバレンタインが始まりました。
思えば、これってハーレムになるんでしょうか?
好意を持った相手が複数いるので、ハーレムになるんですかね?

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