ゲームシークレットエヴァンゲリオンからの派生ストーリー。
詳しく知りたい方はwikiなどで話を調べてください。

ゲームの主人公剣崎キョウヤ視点のお話です
EOEアスカ救出からシンジを初号機へ送り出すまで。
シンジは始終うつ気味なので苦手な人は注意。
※出血や若干のグロあります。

*作中に出てくるUSPはドイツ製のハンドガン(ミサトも使ってる)
シグザウエルはスイスなどで作られた自衛隊が使っているハンドガン

またキョウヤの性格は原作ゲームより前向きな感じに改変してます。
基本ストーリーは旧劇場版エヴァなので暗めな話になってます。
シンジくんが救済されるとしたらのもしもの話。
そういったものでもokな方読んでみてください。


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初めて書いたエヴァ短編です。よろしくお願いします。
アニメと旧劇を知っているとより楽しめると思います。
(ゲームの方も)


生まれゆく絶望と再生する希望(While there is life there is hope.)

ネルフ本部が戦略自衛隊に襲撃され、施設が破壊されスタッフが殺害されていく中、ネルフ諜報部員である剣崎キョウヤは、アスカのいる病室へ向かっていた。

 

惣流・アスカ・ラングレー。

エヴァンゲリオン 弐号機パイロット。

先の15使徒戦による精神汚染が原因でエヴァとシンクロできなくなりこころを病んでしまった。身体的には問題ないが、人と会話できる状態ではないらしい。今は鎮静剤を投入して安静に眠らせている。

 

幸い病院がある施設の奥にはまだ戦自は侵入しておらず内部は怖いほど静けさで満たされていた。時折…蝉の鳴き声が響くのがかえって不気味に感じるほどだ。

 

いずれここも危険な戦場と化すことが嘘のような静寂。だが確実に死を運ぶ者達は彼らを探し殺すために動きだしている。

 

対人スキルも設備も持ち合わせていないネルフでは長く持ちこたえられまい。焦る心が剣崎の足を速めさせる。

 

左脇に吊っているUSPではせいぜい数人相手にしか通用しないことなど想定済みだ。

拳銃とショットガンではあきらかにこちらの方が分が悪い。だから、戦自と鉢合わせる前に任務を果たしてしまいたいと彼は考えていた。

 

延々と続く白い廊下を暫く進むと

真っ白なネームプレートの中に303という数字とともにアスカの名前が書いてあるのを見つけた。ドアノブに手を伸ばしかけ、途中でやめる。

 

「ロックされてるな他に誰かいるのか?」

 

怪訝に思いながらもドアをノックしてみる。

 

が、応えはない。

 

数秒してからロックの表示がオープンに切り替わりドアがかすかに開いた。

この機会を逃せばまた時間を失うと踏んだ剣崎は迷うことなくドアの隙間に革靴を差し入れ強引に開け放つ。

 

「……………!」

 

突然の襲撃者に驚き恐怖に顔を引きつらせたのは見知った少年。

サードチルドレン。エヴァ初号機パイロット碇シンジだった。

 

「剣崎さん…。どうしてここに?」

 

動揺しているのか語尾が震えている。

 

「セカンド…アスカ君を保護しにきました。

ここはいずれ戦自に占領されるでしょう。そうなる前に連れ出してエヴァ弐号機に乗せます」

 

「そう…ですか。アスカは、必要とされてるんですね」

 

君こそ何故ここに?という剣崎の言葉を無視してシンジは呟く。

「僕は誰からも必要とされてない。やっぱりいらない人間なんだ。」

うつむいているため表情はわからないが、明らかに憔悴しきり疲弊しきっているようだった。

 

「アスカ君を弐号機に乗せるように指示したのは葛城三佐です。碇司令。君の父親じゃない」

 

それを聞いてはっとため息をついたかと思うと顔を上げ信じられないとでもいうような目をこちらに向けてくる。

「じゃあ、アスカは必要とされていない。要らなくなったって言うんですか?」

 

「おそらく、エヴァに乗ることができない彼女を碇司令は不必要だと判断したのでしょう。」

 

そうですかと項垂れ少年は言い。背を向け黙り込む。それから会話らしいものは一切なく時が過ぎる。

 

 

 

 

 

 

 

長い沈黙に耐えきれなくなったのは剣崎の方だった。

 

「君も早くエヴァに乗るんだ。エヴァの中なら安全だ。

ここが占拠されてからでは遅いし、アスカ君と君2人をケイジに連れて行くのは無理だ。シンジ君をケイジに連れて行ってくれるよう」

「今から葛城三佐に電話を…」

 

「…もう、生きていくことに疲れました。」

剣崎が話し終える前にシンジが投げやりな言い方で話はじめる。

 

その言葉に苛立ちを感じながら剣崎は携帯をとりだし葛城へ電話をかける。もう時間がない。やつらの手にかかったら助かる確率は皆無なのだから

 

「葛城三佐…アスカ君を保護しました。シンジ君もそこにいたので無事です。残念ながらケイジに2人を連れて行くのは難しいかと…」

 

「そう、アスカもシンジくんも無事なのね。

なら私が向かうわ。剣崎くんはしばらくそこで待機してて」

 

「はいわかりました。ルートは表からの方が安全のようです。」

 

「ありがと。じゃ剣崎くんそれまで2人をよろしく」

 

「はい」

 

電話を切るとシンジを無視して剣崎はドアにロックをかけアスカが寝ているベッドを一瞥してみる。着衣が乱れているがこれといって異常はなさそうだ。投薬は止められているがいまだ眠ったまま。

 

「アスカくんは葛城三佐に任せた方が良さそうだな…問題は」

 

少年は床に座り込み微動だにしない。

それに構わず剣崎は話しかける。

 

「シンジくんは私と一緒に初号機に行くんだ。

そして君のできることをやってくれ」

 

「僕にできること…僕にできることなんかないですよ。必要とされてないのに」

 

「こんなに辛い目にあっても誰も僕を助けてくれない。助けてくれる人を見つけても僕自身の手で傷付けてしまう。だったら生きる意味もない。死にたい」

無気力と虚構に浮かされ正気を失っている少年の戯れ言に剣崎は言いようのない怒りを覚えた。

 

剣崎自身と同じ反応を彼が反芻する事による同族嫌悪。ふつふつと湧き上がる怒りは抑え切れず噴出しはじめる。明らかな言葉となって溢れ出てくる。

 

「そうですか、なら、死にたいなら勝手に死ねばいい。私は君を止めない。だが、本当に死にたいなら自分で始末をつけろ」

USPを少年に差し出す。

シンジは座り込んだまま。

 

「剣崎さんも僕を助けてくれないんだ。」

 

「生きようとしない君を助ける義理は俺にはないな、いや、生きたいのに死にたがるふりをするやつに手を貸すほどお人好しじゃない」

 

「僕のこと何も知らない癖に…知った風なこと言わないでください。剣崎さんに何がわかりますか?」

 

図星をつかれたかのか少し語気を荒げた少年を冷たく見下ろす剣崎。

 

「そんなものわかるわけないでしょう。君のことは君しかわからない。」

「だが、何もしないのは罪になる」

 

「何もしないのが罪?カヲルくんを殺したのは罪じゃないっていうんですか…あの時カヲルくんを追っていなければ」

 

「違う。彼をああしていなければ私も君もここには生きていないだろう。

今回だって

何もしなければアスカくんも君も葛城三佐も無駄死にするだけだ。君のエゴで皆が死ぬ。それでいいのか」

 

「必要になった時だけエヴァに乗せる。大人はズルいですよ。そんな時だけ。だったら皆んないらないみんなし…」

 

「剣崎くん!着いたわ開けてくれる」

 

ドアの向こうから葛城三佐の声がする。

USPを片手に構えながら

ロックを外しゆっくりドアを開けた。

息を切らしながら葛城が病室に入ってくる。

 

「足止めはしたけど長くは持たないわ。私はシンジくんを連れて行くから剣崎くんはアスカをお願い」

 

「いや、シンジくんは私が初号機に連れていきます。葛城三佐はアスカくんを連れて弐号機へ」

 

「いいけど…その大丈夫なの。」

座り込み動かない少年を胡乱げに見やる葛城三佐。

 

「大丈夫です。彼1人ならなんとかなるでしょう」

 

「わかったわ。じゃシンジくんをよろしくお願い」

 

まだ寝ているアスカを抱えて葛城三佐は剣崎に目で合図する。それに軽くうなづき返す。

 

「シンジくん私たちも行きましょう」

 

「いやだ…乗りたくない」

 

「ダダをこねてる暇はない行くぞ」

 

いやいやをする少年を無理やり立たせるとすぐさま病室を出る。ケイジまで連れていくには複雑なネルフ内の通路を抜けなければならない。

 

病棟を抜けしばらく通路を進むと人の気配と物音がし始める。本部には既にかなりの数の侵略者たちが入り込んでるようだ。

銃を撃つ音。悲鳴。もしくは怒号。

負傷者の泣き喚く声。遠くからだんだん大きくなっていくそれらで戦場にいることを否が応でも自覚させられる。

 

無人の通路が終わり人影が見えてきたところで剣崎は少年を庇いながら壁にはりつき様子を伺う。

(この先に行けば見つかるか…だが、ここを通らないと初号機ケイジにはいけないな)

 

「シンジくんいいか?この先は戦自がいる。

一気に走るぞ」

 

シンジが返事をしたかどうか確かめる間も無く

壁から身を離すと剣崎は身をかがめながら長い通路を走り出す。いやに響く靴音が恐怖を煽るが怯むことなく駆け抜ける。

 

「いたぞ!エヴァパイロット発見!」

「見つけ次第殺していいそうだやれ!」

 

「ちっ…」

 

あと数メートルというところで

銃器を手にした男たちに見つかり足を止めざる得なくなる。背中にシンジを庇いつつUSPを構えた。

 

「ネルフの犬か無駄な抵抗はやめろ。お前がそいつをかくまったところで俺たちをどうすることもできまい」

 

「それはどうかな?俺もただの犬ではない」

口元を歪め吐き捨てると。すぐにセーフティを外し指に力を込める。

 

「がっ」

乾いた音がして腹に銃弾を受けて倒れる男。隣にいた若い兵士は動揺したのか脚ががくがくと震えだす。

 

「なっ…お前何を」

 

ネルフの職員は無抵抗であろうと思い込んでいたのか突然の惨劇に何が起こったかわからず。

呆然と腕を下ろしたままこちらを見つめてくる。USPをしまいゆっくり距離をつめる。

 

「悪いなここは通してもらう」

 

「うわあああ」

 

狂ったように叫び出す男を尻目に側まで近づくと護身用に持ち歩いていたスタンガンを脇腹にお見舞いする。

気絶して動かなくなったのを確認するとケイジへ急ぐため再び足を早める。

 

「あともう少しでケイジだ…」

 

相変わらず無言のまま凄惨な現場を見ても心ここにあらずといった風な少年はかすかにうなづいたように見えた。

 

赤く染まった通路。

倒れて動かない死体と痛みのあまりうわごとを言い続けている半ば死にいくものの声。

咽せるような血の匂い。生臭い何か汚物かもっと醜悪な生き物の匂い。硝煙と化学物質が混ざったようなきな臭さ。

 

それらが散乱しているフロアをいくつも抜け、時々生きている簒奪者から逃げ逆にその者の命を奪う。

 

生きるため

傍らにいる少年を生き残らせるための矛盾した行為。

 

「葛城三佐は無事だろうか…」

 

人のいないフロアにつき一息ついた頃、ふと葛城三佐が無事かどうかが気になった。彼女がただでやられると思えないものの万が一ということもありえるのだ。

 

「ミサトさんなら多分大丈夫ですよ」

 

「余程葛城三佐を信頼してるのかわからないが君がそう言うなら大丈夫な気もしてくるな」

 

「ミサトさんは僕なんかより強いですから、アスカだってそうです。自分で決めたことから逃げたり諦めたりしない」

 

「君はそうじゃないと…」

 

「僕は違いますよ。ズルくて卑怯で弱虫でいつも逃げてばかりのろくでもない人間なんです。だからエヴァに乗らない僕には何もない。助けてもらう資格だってないんだ」

 

「他人と比べて自分を愚かだと決めつけて自分を守っていても何も変わらない。人生を他人任せにするな、どうすべきかは君自身で決めろ」

 

「自分でですか?」

 

「そうだ…そしてその答えに安易な死を選ばないことだ。ここで死ぬことを選ぶのは勝手だが

私は、俺は君に生きて欲しいんだ」

 

「他人なのに?」

訝しげな表情を浮かべたシンジは剣崎をじっと見る。何か裏でもあるのかと疑っているようだ。

 

「セカンド・インパクトで家族を亡くしたからな、シンジくんを見てると他人とは思えない。

あんな父親だとしても実の親がいることが少し羨ましかったな」

 

「父さんとは離れて暮らしてましたから、それほど話した記憶ないです。剣崎さんが思ってるような家族じゃないですよ。母さんがいなくなってから先生のところに預けられて、ろくに会ってないですし」

少し心を開いたのかやや饒舌に語る少年は人類の命運を託されたパイロットではなくごく普通のありふれた少年と変わらなかった。

 

そんな少年に重い責任を背負わせざるを得ないのが腑に落ちない。

 

「そうか…だが父親なんてそういうものかもしれないな。息子に対して冷たいというのが本来の父というのも」

 

ええ…とうなづくと何か思案するかのようにじっとシンジは自分の手を見つめた。何か思うところがあるようだが言葉にできないようだった。それを邪魔しないように剣崎も口をつぐむ。

 

左脇に吊ってあるUSPを取り出しマガジンを交換すると一息ついてから「そろそろ行こう」と目配せする。シンジが自分の後ろに続くことを確認して先へ進む。

 

 

ネルフ施設の電源は戦自の襲撃の際に破壊されたらしく一部使えない施設や乗り物もあった。

ケイジへ続くエレベーターもその一つだった。

 

エレベーターが使えないと困る。

仕方なく葛城三佐に連絡を取ることにした。

内部施設のことは彼女の方が詳しい。特に非常時の際は。

 

「もしもし剣崎くん?どうしたの?」

 

「第7ケイジに行くエレベーターが使えなくなって困っています。他ルートでの行き方を教えてくれませんか」

 

「ああ、やつらのせいね。初号機ケイジへはキャットウォークを突き当たった先の部屋にある非常用エレベーターで行けるわ。有事の時でも電源は生きているはずだから、そこからシンジくんを第7ケイジへ送ってあげて」

 

「ありがとうございます。

葛城三佐…アスカくんは大丈夫ですか?」

 

「アスカは無事よ。さっき弍号機へ搭乗させたから大丈夫。私もまあなんとか、へい…き」

へいきと言ったときに漏れた苦痛の声音に剣崎は違和感を覚えた。

 

「まさか、撃たれたりは」

 

「そのまさか…ね。でも、目的は…果たしたわ…

アスカをエヴァに乗せ…る。それができたら私の命が…つき、ても、ほんも…う」

 

「葛城三佐!!」

 

「…剣崎、く、ん…シン…ジくん、を、たの…んだわ、よ」

 

それきり通話は切れてしまう。

通話終了の音を垂れ流す携帯を握りしめふうっとため息をつくと剣崎の喉から感情を押し殺した声が漏れた。

「葛城三佐…くっ」

 

「ミサトさんがどうかしたんですか?」

 

「初号機ケイジへの迂回ルートを教えてもらった。それからアスカくんは無事だと」

 

「葛城三佐も…」

咄嗟に嘘をついたのは再び少年を絶望させないためだった。偽りの希望。

 

それを聞き安堵の表情を見せたシンジだが、すぐさまその表情が恐怖に変わる。

 

発砲音。ひとつ。ふたつ。

みっつめが剣崎たちの近くをかすめていき近くの壁へ派手な音をさせて被弾する。

 

「もう、来たか」

 

「銃を置いて手をあげろ」

振り向くと後ろから追いついてきた戦自の兵士がライフルを構えてこちらに狙いを定めていた。

 

「言われた通りにするわけ」

「ないだろう!シンジくん伏せろ」

 

USPを両手で構えてすぐ撃つ。

2、3発間髪撃つとぐらりと相手の身体が傾いで倒れた。

剣崎よりも早く撃ち返してきたが当たらずに済んだ。

 

落ち着くいとまもなく今度は伏せていたシンジを兵士が捕らえ羽交い締めにしてしまう。

コンバットナイフを少年の首にあてがい安易な反撃もできない。

 

「銃を置け…こいつを殺すぞ」

「剣崎さん!」

 

「銃を置けばいいんだな」

素直に従い床にUSPを置く。

相手を刺激しないようにするためだ。

こいつは本当にシンジくんを殺す気だと剣崎にはわかったからだ。

 

「そうだ」

 

「言われた通りにした、彼を離してくれ」

 

「馬鹿なやつだなパイロットを渡すわけがないだろう」そういいナイフに力を込めようとした隙に剣崎は動いた。

 

床を蹴って一気に距離を詰めると

ポケットに忍ばせていたボールペンを握りしめ

構える。

 

「気でも動転したのか、ボールペンで何ができる」

「動転なんてしてない。俺は正気だ。

お前にはこれ一本で充分だろう…たかがボールペンと舐めるなよ」

 

 

武器を失ったはずの相手がまさかの反撃をしてきたことにショックを受けた男はシンジを離しナイフを剣崎の方へ振りかぶってきた。

 

左肩に刺さるナイフ。

時間を一瞬置いて裂くような痛み、それを剣崎は無視してボールペンの切っ先を相手の首に思い切り突き立ててやる。

 

「いてえ」

 

仰け反った男の鎖骨あたりを今度は拳で殴る。

 

「ぐはっ」

 

続いてナイフを持った腕をひねりあげた。

床に凶器が落ちたのを確認するとそれを蹴って手が届かないようにする。

うつ伏せに倒れ込んだ男を一瞥したが戦意は無さそうなのでそのままにしておく。

 

(加持に貰ったボールペンがこんなことに役立つとは皮肉なものだな)そう心の中でつぶやきながら剣崎はボールペンをまじまじと見つめた後上着の内ポケットにしまう。

 

「シンジくん…怪我はないか?」

少し離れたところでへたり込む少年は返事をするかわりにうなづいた。

 

「行こう」

 

その場を離れようとした途端、足を掴まれる。

ナイフで襲ってきた兵士が追いすがるように剣崎の足を掴んでいた。

 

「ちっ…往生際が悪い」

蹴り上げようとしてもしっかり足首を掴まれていてそれができない。

 

「諦めろ…お前とガキはここで終わりだ」

男はシグザウエルを反対側の手に持つとにやりと笑った。

 

剣崎のUSPは少し離れた床に置いたままだ。

反撃の方法がない。

 

「剣崎さん!」

「シンジくんだけでエレベーターに行ってくれ!俺のことは構うな」

 

「っつ……!!」

何を思ったのか少年は立ち上がるとUSPを拾いに行こうとする。

 

「ダメだ!」

やられると覚悟するが、幸いだったのは剣崎を捕まえていた男の利き手が逆だったため、反応が遅れたことだった。

 

男が足から手を話す。

(間にUSPを拾いこちらへ向かうシンジ)

立ち上がる。

(USPをもらい受ける剣崎)

 

「終わりなのはお前だ」

冷めた口調でそう言うなり剣崎はトリガーを引いた。肩に1発胸に2発。更に1発。

ジグザウエルを手にしたまま倒れていく男から血が滲み床を濡らしていく。

 

「シンジくんありがとう…助かった」

 

刺された左肩の痛みに顔をしかめながら剣崎は少年に礼を言った。

 

「いえ、僕は大したことしてないですよ」

シンジは自嘲めいた顔でそう答えて顔を伏せた。

 

 

 

 

 

 

なんとかキャットウォークを抜け、非常用エレベーターのあるフロアに入ると厳重な扉をすぐに閉めロックをかける。どうせ戦自が爆発物か何かで破壊してしまうだろうが、それでも気やすめ程度の時間稼ぎはできそうだった。

部屋の奥にある非常用エレベーターの電源も生きている。後はシンジをどう説得するか…

 

「エレベーターに乗れば初号機のあるケイジに行ける。早く行ってください」

 

「今更エヴァに乗ったところで何かできると思えないです。」

 

「何かできるできないかを憶測で決めつけ、はじめから何もしないのか君は」

 

「エヴァに乗りたくないんですよ。乗っても誰も褒めてくれない。助けてくれない。それでも

僕に乗れって言うんですか」

 

「乗れば嫌な思いをする。だから乗りたくないと」

 

「そう、ですよ皆んなエヴァに乗らない僕はいらないんだ。乗っても辛い目にあって、好きな人もいなくなって綾波もミサトさんも学校の友達もいなくなって…辛すぎますよ」

何かに耐えきれなくなったという風に思いを吐露するシンジ。

 

「さっきだって何も剣崎さんを助けようとしたわけじゃないです。ひとりはイヤだから。ひとりになりたくなかったからそうしただけで…結局僕はズルくて卑怯な人間で…」

惨めで何もできないどうしようもない人間なんだと泣き出す姿は14歳の少年の肩に乗る荷があまりにも重いのだとわからせるには充分なものだった。

 

「それは辛かったでしょう。シンジくんはシンジくんなりに頑張った。にも関わらず周りはそれを分かろうとしてくれなかったのは不幸なことだ」

「君の父親がシンジくんを子供として見なかったことでいつも君は傷ついてきたんだな…助けようとする人もいなかった。」

そんな風に追い込まれれば絶望するのも無理ないのだ。傷つき絶望し、もう無理だと拒絶してもネルフの大人たちは彼を利用するだけ利用しようとした。その中の1人に自分も含まれるのが皮肉だと剣崎は思った。

 

日本国政府、ネルフ、ゼーレ醜い睨み合いと嫉妬。あらゆる策略スパイによる情報戦。加持が三重スパイをしていたのはそれを打ち砕きたかったからかもしれない。

彼らの均衡が崩れたことでその企みにまんまとのせられた子供たちが犠牲になるとは馬鹿げたことではないか。それを阻止する手立てはもはや無い。であればできることはひとつしかなかった。

 

「シンジくん」

エレベーターの扉に寄りかかるようにしているシンジに詰め寄ると剣崎はそっと抱きしめる。

「剣崎…さん。なに、を?」

戸惑う少年はされるがままに抱きしめられていた。

「いいか、世界が滅ぶからエヴァに乗れだとかサードインパクトを止めろなんてもう言わない。だが、シンジくん。君は生きてくれ、また裏切られるかもしれないまた傷つくかもしれないそれでも生きて欲しい。生きろ」

 

「生きる…?」

 

「そうだ希望は生きているからこそ持てる。生きていなければ未来は作れない。」

 

「生きて未来を作る」

 

「ああ、君の心の中に生まれた希望が次の世界を形作るだろう。」

 

「俺は君を信じている。そしてエヴァに乗らないシンジくんも必要としてる」

 

彼の父親の代わりにはなれない。しかし失われた希望を再び芽生えさせる役割はになえるのではないかと。わずかでもシンジを勇気付けられたなら

 

「今は生き残るために君はエヴァに乗らなければいけない。だから行ってくれ」

 

「………」

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「わかりました。これで最後かもしれないですが乗って…みます」

 

 

しばらく押し黙った後、少年はおずおずと答えた。

 

「ありがとう。無事を祈る」

そう言ってから身体を離すとぐらりと視界が揺らいだ。少し血を流しすぎたようだ。

なんとか踏み止まり、サングラスを外した。

 

シンジのシャツにべったりと染み付いた血の赤が目に痛い。随分と深く切られたらしい。

「剣崎さん目が…」

赤い目。綾波レイと同じ。ヒトではなくなった証。利用されていたのだ剣崎も。

 

鈍い痛みと朦朧とする意識に苛まれながら

剣崎は険しい顔をする。

 

「君と話せて嬉しかった。もしまた、会うことごできたら話したい」

そして目元を和ませ笑み浮かべるとエレベーターの扉を開き少年を中に入れる、

 

「剣崎さ…」

 

有無を言わさずすぐ扉を閉め、ケイジまで直行で行くボタンを押した。

 

「これで、良かったんだよな加持…。葛城三佐」

最後の力を使い果たし床に伏すと剣崎はゆっくり目を閉じる。死を覚悟しながらもその顔は安らかな表情をしていた。

 

人間と人間の憎しみが交差し絶望が生まれゆく中、希望を与えることができたのか剣崎にはわからない。が、大人たちに操られていた1人の少年の心の苦痛をわずかでめ和らげることができれば自分が生きていたことも無駄ではなかったのではないかと思うのである。

 

それは都合のいいエゴかもしれない

側から見れば単なる偽善かもしれない

しかし、絶望を覆すように再生した希望はやがて世界を大きく動かすことになるだろう。

誰かのための真摯な祈りがやがて届き叶うようにそれは着実に育つであろう。

 

 

終劇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最後まで読んでくださりありがとうございます。
勢いで書いた話なので粗や誤字脱字、話の整合性がない部分もあると思いますが、どうしても書いてみたかった話なので書いてみました。英題の訳は「生きている限り希望がある」です。

昔のアニメシリーズ、旧劇、新劇場版ヱヴァを観る限りシンジくんはどう動いても悲劇に見舞われるように思えてしまうのでもし、誰か1人でも彼を本当の意味でわかってあげられる大人がいたらシンジくんの心が少しでも救われていたかもしれないのかと…。

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