オーバーロード~死の支配者と始祖の吸血鬼~   作:魔女っ子アルト姫

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褒美

「……さて一旦落ち着こうか友よ」

「そうだな、うむ」

 

精神の強制鎮静化が発生した事であれほどの喜びを消し去れてしまったアーカードとモモンガはもう少し浸っていたかったという思いと階層守護者の皆がいるのだから確りとしなければと意志を取り直す。こちらを見つめている皆の視線は驚きとどういう事なのか、という感情に囚われているのが幸いだった。確りした態度でいなければ……自分達はナザリック地下大墳墓における最高位に立つ身なのだから……と内心で深呼吸をする。あのデミウルゴスがポカンとしているのだから、流石にやばいと二人も思ったのかもしれない。

 

「さて、皆にも確りと説明しなければならないだろうな。シャルティアが持ち帰ったこのアイテム、それは正しく途轍もない価値を秘める程のアイテムなのだ」

「ああっこのアイテムの名は<傾城傾国>という、その力は対象を洗脳する事だ」

 

洗脳を齎すアイテム。それだけを聞くと至高の御方である二人が歓喜するほどのアイテムなのかと一瞬首をかしげるが、頭の回転が速いデミウルゴスやアルベドはただの洗脳を齎すアイテムではないと察する。

 

「お前たちも何故洗脳を行うアイテムがそれほどの価値があるのかと思う事だろう。当然だ、既にナザリックにも洗脳を行うアイテムは存在している。だがそれでは済まないのがこれなのだ。なぁ友よ」

「ああそうだ。皆聞くが良い、シャルティアが入手したこの<傾城傾国>は最高峰のレアアイテムである世界級アイテムに該当する代物なのだ」

 

玉座の間に大きなどよめきが走った。それも当然だ、それほどに希少かつ強力なのが世界級アイテムなのだから。それを聞いて思わずデミウルゴスが声を上げる、その声にも動揺が入っているのかやや震えている。

 

「そ、それは至高の御方々が力の限りを尽くし入手したという世界級アイテムの一端という事で御座いますか!?」

「うむ。我がギルド、アインズ・ウール・ゴウンが欲した世界に匹敵する力。我らは200あると言われる中でも十程度しか入手出来なかったアイテム。それと全く同じ価値があるものだ」

 

それを聞いて更にどよめきが強くなる。至高の御方が力を尽くしたとしても十幾つの数しか確保出来なかったアイテム、それを今回シャルティアが手に入れたという事実。ナザリックがこの世界に転移してからでは一番の大手柄とも言える事を成したのである。

 

「これはシャルティアが大手柄だなアーカードさん。何か褒美を取らせなくてはならないな」

「全くもってその通りだ。これほどの手土産だ、相応の物をやらなければ」

「ほ、褒美など……畏れ多くございます!!私は御二方にお褒め頂くだけ十分過ぎるほどの褒美でありんす!!」

 

シャルティアは褒められたことによる頬の朱さを持ちながらも頭を下げる、彼女は決して謙遜している訳ではなく本気でそう思っている。ナザリックにいる者たちにとっての喜びとは即ち至高の御方に仕える事。言うなればモモンガとアーカードに仕える事こそ喜びでありそれこそが給金のようなもの。これ以上何か貰おうなど考え付きもしなかった事。しかしモモンガ達としても何も与えないという訳にもいかない。シャルティアが成したのは正しく世界を一つ手に入れたに等しい偉業なのだから。ギルドメンバーがいたら暫くの間シャルティアを持ち上げ続けるし、生みの親であるペロロンチーノなんて彼女を抱き上げて号泣して喜ぶことだろう。

 

「それでは私たちの気が済まないのだ。言葉だけで済ませるほどに軽い事ではない、是非受け取ってくれ」

「そのようなお言葉だけでも私は……!!」

 

シャルティアが感動に浸り、近くでアルベドが何やら悔しがっているのが見える。そう言えばアルベドはアルベドでギルドメンバーを愛している設定にしているので、そんな二人に褒められているシャルティアに嫉妬しているという所だろうとアーカードが思う。そしてそんな中で思う。

 

『……モモンガさん言うのは良いけどさ……どんな褒美が相応しいんだこれ』

『……あっ』

 

褒美を与える事自体はアーカードも大賛成、与えるべきとすら思っている。それほどの事をしたのだから当然。だが……逆にどんな褒美が相応しいのか全く分からない。手柄が逆に大きすぎる。例えるとしたら何だろうか……夏祭りの福引で自分の代わりに行かせたら特賞を当てた……いやそれ以上。もう本当にどんな褒美を与えたらいいのか冗談抜きで分からない。

 

『……もうモモンガさんの子供産む権利で良いんじゃねぇかな……』

『ちょぉっ!!?んな事言ったらどんな事になるか分かってるんですか!!?というなんで俺なんですか!?それなら貴方でいいじゃないですかっ同じ吸血鬼でしょうが!!?』

『ザケんなお断りだぁ!!!』

『俺だっていやですよ!!?』

 

と<伝言>を駆使して脳内会議もどきは白熱していくのである。その場は閉じ、後に褒美を与える事で一時的な終了を見せた。そして二人はギルドメンバーのホームポイントにされている円卓で改めて頭を悩ませる事にした。此処ならばNPC達は入ってこないので遠慮なくぶっちゃけられる。

 

「はぁぁぁぁっマジでどうしよう……」

「とんでもない大手柄だからなぁ……」

 

真剣にどうするべきなのかと思案する二人、そんな時にアーカードに名案が降りてくる。

 

「……ペロロンチーノのアイテムを渡すっていうのは如何だ?」

「ペロロンチーノさんのアイテムをですか?」

「ああ。シャルティアにとっては生みの親である至高の御方の物を貰える、これはナザリックの皆にとっては相当な褒美になるんじゃないか」

「ああっ確かにそれは名案ですね!!」

 

確かにそれならばNPC達からすれば至上の喜びになるかもしれない、ペロロンチーノも引退する際に装備を含めてアイテムをモモンガへと渡している。それらは宝物庫にて管理されているのでその中からどれかを渡す事にすればシャルティアも喜んでくれる事だろう。

 

「後はそうだな……俺がシャルティアのために何か作るか」

「えっアーカードさんも何か出すんですか?というかそういう系のスキルって持ってました?」

「あるぞ、裁縫が出来る」

「裁縫!!?」

 

アーカードは基本的に防御や回復系のスキルがあるタンク系のスキル構成にしているが、ゲームなのだから遊びの要素がないと行けないという事で遊びで制作系のスキルを有している。それが生産系スキルである<裁縫>なのである。このスキルを使えばユグドラシル内で好きな衣装を制作して着る事が出来るという完全な遊びスキル、がユグドラシル内の市場では憧れの衣装を着たい!というユーザーもいたのでそれなりに需要はあった。その後、その衣装に効果を付与などして実際の戦いの場で着るというのも流行っていた。

 

「マ、マジだ……アーカードさんもガチビルドだと思ってましたよ……」

「いやぁ俺だって遊ぶときは遊ぶぞ。それにリアル趣味が裁縫だし、ほら昔に見せただろ?」

「あっそう言えば!!」

 

思い出すのはユグドラシル時代、ある日アーカードが見せたいものがあると皆にある画像を公開した。それは部屋の中に飾られているギルドメンバーのデフォルメ人形であった。どれもかなりのクォリティで特に女性陣からは凄い人気で是非とも欲しいというのでプレゼントした事もある。

 

「そうかそう言えばそうでしたね……んじゃ今回も何か作るって事ですか?」

「そうだな……ペロロンチーノのぬいぐるみなんて喜ぶと思うんだけどどうかな、それに触ると声が出るような仕掛けにするんだよ。あいつの音声データ確かあった筈だから」

「絶対喜びますよそれ!!」

「よし決定!!」

 

最初こそ困ったりもしたのだが、シャルティアへの褒美は割と順調に決定していくのであった。

 

「んじゃ俺も何か送った方がいいかな……あっ<リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン>送ったら喜びますかね?」

「あ~確かにそれもいいだろうな」




裁縫は史実ネタ。

アーカードの元ネタともいえるヴラド公は幽閉中に刺繍と裁縫に嵌っていた。更に家事も出来たらしく、客人に手料理を振舞ったらしい。割と家庭的な一面もあったそうな。

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