ひょんなことからカヲルと一緒に帰ることになり。
ゲーム鋼鉄2ndをもとにしたカヲルとアスカのラブコメです。
シンジなどクラスメイトは出てきません。
少しだけシリアスですが微糖な感じを目指しました。
苦手な方はごめんなさい。あんまりイチャイチャはしません。
(鋼鉄2ndではカヲル生存してます)
第3新東京市立第一中学校。
ある日の放課後。
教室でアスカは居残りでプリントを綴じる作業をしていた。他の生徒は見当たらない。
案の定帰ってしまったのだ。
これは彼女にとって、どうでもよく取るに足らない出来ごとだった。
先程まではヒカリが手伝いをしてくれたが家族の夕食の準備をしなければいけないからと帰宅してしまった。ごめんねと何度も謝りながら。
「べっつにたいしたことじゃあるまいし…私だけでなんとかなるわよ」
膨大な量のプリントが机の上を独占している中アスカは己一人で終わりそうにない戦いを再開した。
「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
終わらない。綴じても綴じても一向になくならない紙の束は着実にアスカの体力を削っていく。明日には二年全生徒に配布しなければならないのに………。まだ半分も残っている。
思わず頭をかきむしりたくなるが、ぐっと抑えひとりごちる。
「あ〜あ。終わらないし、もう夜になりそうなくらい日も暮れてるし…しかも眠い」
ふぁと欠伸が出てやる気が、どんどん身体から流れていくさらに睡魔が襲ってくるのに抗うことは至難の業だ。
寝てはいけないと思いつつもすでにまぶたはなかば閉じており、意識も朦朧としている。
「……すぅ、すぅ……すぅ、すぅ……」
机の上に突っ伏しながらアスカは眠ってしまった。
「…カ……」
(…………?)
「…って…てる?」
(だれ?)
「…や……も……そだし」
(なに…いっ…てる…の…?)
誰かの声がする。
誰?知ってる…。
ファースト…じゃない。バカシンジでも…って
まさか
「バカヲルッ!」
叫びながら飛び起きる。顔を上げて寝ぼけ眼で確認すると目の前に銀髪。確かにカヲルだった。
「なっ何であんたがここに?」
「うるさいなぁ耳元で叫ばないでよ惣流」
耳元?状況を整理してみる、放課後アスカはプリントを綴じていた→いつのまにか寝てしまう→そしていま。
いま?カヲルが近くに
待って、目の前に髪があってそしてなんだか暖かいこれはカヲルに背負われている…
「ちょっと!何勝手に私おぶってんのよ!まだプリント綴じる仕事残ってるっていうのに」
慌ててカヲルの背中から降りようとするアスカだったが、カヲルはそれを許さない。
「アレなら僕が半分やっておいたよ。さすがに全部はできなかったから放置してきたけど」
さらっと流すように言うカヲル。
「放置?あんたバカァ!あのプリントは明日配らないといけないね。終わってないのに何で私をおんぶしてんのよ!」
ブチ切れるアスカ。だが、カヲルは怯まない。
「惣流が全部やる必要は無かった。まして、あの量を一人でこなすのは、無理だよ。」
「それに下手したら、君は夜になっても残って作業を続けたかもしれないしね」
だからもしかして…と思い図書室室で暇つぶししてから教室を覗いてみたのだとカヲル。
「面倒くさいやつね。心配してるならそうと言えばいいでしょ」
アスカは背中から降りることを諦め、カヲルの白い髪をなんとなく見る。
真っ白でふわふわとした髪はなんだか肌触りが良さそうに思える。だからといって触ったりはしない。きっと(でも少しは)む…ない絶対ない。
「とにかく余計なことしないでよ。私に優しくしても何も返さないしあんたが得することなんて一つもないわ」
「そうかな僕にとっては得になることなんだけど」
「はぁ?なーんでバカヲルが得するのよ」
「惣流とこうやって2人きりで話せる、これは僕にとってとても有意義な時間なんだ」
2人きり。そう今は2人きりなのだ。
しかも服越しに密着していて距離も近い。
これは俗に言う恋人の距離なのではないか。
こんなの誰かに見られたら一生ものの赤っ恥に違いないとアスカの顔が赤くなる。
急激に羞恥心が湧き上がってくる。
「馬鹿なこと言ってないで早く降ろしなさいよっ」足をばたばたさせながら言うと
「はいはい、わかったよ。降ろすから静かにして」
「全くはじめに頼んだときにそうすればいいのよ」むくれ面で言うアスカにやれやれという風なジェスチャーを肩でしつつカヲルはアスカを背中から降ろす。
「到着と…」
うすぼんやりあたりを照らす街灯が少しまぶしい。場所は市内にある駐輪場のようだ。
その中に駐めてある自転車をカヲルは持ってくる。
「後ろに乗って、家まで送る」
「はぁ…?」
やっと恥ずかしさから解放されたというのに
再びカヲルにくっつかなければならないという非常事態にアスカの頭が真っ白になる。
(なな、何がしたいってのバカヲルは、おんぶの次は自転車2人乗りって恥ずかしすぎるわよ)
言葉にするのを我慢して気持ちを脳内で変換し整理してみるもののアスカにカヲルの真意は読めない。読むのは不可能に等しい。
「もうすっかり夜だし女の子一人に夜道歩かせられない。早く乗って」
「しょうがないわねぇ。乗るわ…乗らせてもらいます」
渋々許可するアスカを見て笑顔になるカヲル。
屈託のない笑顔が街灯に反射してまぶしい。少しどきどきしてしまったのはあまりに純粋な笑顔だったからだ。
「じゃ荷台のところに乗って、危ないから僕の腰に腕をしっかり掴んで…」
カヲルが最後まで言い切らないうちにアスカは荷台に飛び乗る。
急に増えた一人分の重さにバランスを崩し自転車が倒れそうになる。
「おっと」
カヲルは焦ることなく体制をたてなおす。
「たまには素直にならないと爆発するよ
特に惣流みたいなタイプは」
「なんかいった 」
「いや…」
裏のないニュアンスで言われるとペースを乱される。正直やめて欲しいとアスカは思うが反面そういうのも悪くないなと思ってしまう。
ケンカはするけど側にいるのが心地よいような不思議な距離感。これはなんだろう…。
その感覚がなんなのかわからないまま自転車をこぐカヲルの背中をアスカは見つめ続けた。
星が瞬きだした夕闇の道のりを2人乗りの自転車が軽快な速さで滑るように走っていく。
夜風が肌と髪を撫でていくのを心地良く感じながらも遠慮がちに触れているカヲルの身体の温もりを意識してしまう。
「時々どうしようもなく自分がいやになる」
「惣流は自分が好きじゃないの?」
「好きじゃないわ」
「どうして?」
「理想の私じゃないから」
思わず漏らした弱音もカヲルだから言えたのかそれとも気の迷いか。
「理想ね。リリンの理想には限りがないようだね」
背中ごしの声はいつものカヲルのもので変化はない。どんな顔してるのか気になるものの、こっちを向いてとは言えない。余計に彼を意識してしまいもやもやとしたものが胸にたまる。
「リリンだかなんだか知らないけど、完璧じゃない私を私は好きになれないの」
「完璧じゃなくても君は君じゃないか」
「だから…私が納得できる自分じゃないと嫌なの。あんたに肯定されたところで何も嬉しかないわよ」
ふうんとカヲルは相槌をうつとたわいの無い話をはじめる。シンジと何を話したか図書館で何の本を読んだか、今好きな音楽など
それをつらつらと聞きながら思うのは
(私カヲルの事、好きなのかな)
「ないないそんなワケない。気のせいよっ!!」
思わず叫んではっとする。
「………っう!?なっ何でもない独り言」
「僕がいるのに独り言?惣流は面白いね」
かぁぁっと顔が熱くなるのをアスカは自分で感じる。今振り向かれたらやばい。絶対に振り向かれたくない。ドキドキと脈打つ心臓と焦る自分をなんとか落ち着かせたくて深呼吸する。
「アス…カ…」
「ん?」
「惣流じゃなくて、アスカって呼びなさいよ名字で呼ばれるのって好きじゃないの」
「わかった。じゃアスカ…」
誤魔化すための言葉もすんなり受け取ってしまうことを想定していなかった。アスカの顔はますます熱くなる。
なんて答えていいかわからずアスカが黙っていると、カヲルはブレーキをかけ自転車を止める。アスカの方を見ることなく「降りよう」そう言うなりさっさと自転車をおり、アスカを待たずに先へ歩いて行ってしまう。
一人分の重みを失い倒れそうになる自転車をアスカは慌ててたてなおしスタンドを立てる。
すたすたと歩いて行くカヲルの背中はどんどん小さくなっていく。
急いで追いかけ追いつくと自然と口が開く。
「待ちなさいよ!バカヲルッ!家まで送るんじゃなかったの?こんなところで勝手に降ろして」
「見せたいものがあるんだ。ついてきて」
それだけ言うとカヲルは再び歩きはじめる。
しょうがないなとアスカも暗い道を防犯灯のわずかな明かりを頼り彼のあとについていく。
どれくらい歩いただろうか、無言のまま歩きに歩いてたどり着いた場所は小高い丘にある公園。人気は皆無でいまこの空間にはアスカとカヲルしかいない。
「ここになんか用でもあるの?」
「…………」
「ねぇ、返事くらいしたらどう」
なのと聞く前にカヲルが口を開いた。
「星は孤独だよね」
「ハァ?」
「こうやって何気なく見ている星の光は僕たちと何光年もへだたれている」
「光だけが届いてて、もう消えた星もあるとかそういうのは聞いたことあるわ。それを思うとなくなったことすら気がついてもらえない星は確かにひとりぼっちかもしれないわね」
「星と同じくリリン。ヒトも孤独だね」
君もとカヲルがアスカ見る。
「孤独は慣れるわよ。ひとりでいても私は気にならない」
「君だけじゃなく皆んな孤独なんだよ」
「だから?」
「ヒトは孤独から逃れることはできない。だが、誰かと一緒に前に進むことができる。ひとりよりもふたりだったらそれは素敵なことだと思わないかい?」
いきなり星の話をはじめたかと思えば、何を言いたいのかイマイチわからない。
「要するにもっと誰かを頼れってことでしょ」
なんとなく彼の言葉を自分なりに翻訳してみる。わかったフリをしているだけかもしれない。それでもいい。今は。
「そうだね。君はもう少し他人を頼りにしてもいいんじゃないかと僕は思うよ。ひとりでやれることなんて限られてるるしね」
「同情してるんだ私に」
同情。好きか嫌いかと問われれば嫌いな言葉。
「同情とは違う」
「じゃあ一体何を伝えたくて私をここに連れてきたの?」
キラキラと輝く星を見ながらアスカ。
「ヒトは孤独を消せないということ」
「そして君はひとりきりで生きようとしなくてもいいということ」
「あっそ。いちいちわかりやすく説明していただいて感謝するわ」
「ひとりはいつまでたってもひとりのままだよ。待つだけならなおさら」
アスカの隣にカヲルは歩み寄り彼女の目をじっと見つめる。カヲルの赤い目がアスカの姿を映している。
「カヲルは私のことわかろうとしてるの」
「どうだろう。わかりたくてもアスカが心を開いてくれないとわかりようがないよ」
「そりゃそうよね。今までそういうこと誰にも言ってなかったし。シンジにもミサト先生にも」
自分の本音を打ち明けた相手がいないとなればカヲルだってアスカの気持ちを知りようもないのは当たり前。
「どいつもこいつも表面でしか人のことしか見てないし、仲良くなるフリとかしちゃって馬鹿みたいって思ってた。本当に仲良いのはヒカリくらい」
「そんな仲良しごっこするなら自分だけでやった方が気楽よ。それに誰も傷つかない。」
居心地いいはずなのに。ひとりはいつまでもかわらないまま。ゼロに他の数字をかけてもゼロにしかならないように。満たされることなく乾くだけ。これほど空しく、これほど寂しいものはない。
「でも仕方のないことなのよ。私は皆みたいになれないし。シンジみたく八方美人にもなれない。ヒカリみたいに皆をまとめることだってできやしない。ただの凡人。エヴァに乗れなかったら私はいらない人間なの」
「アスカは考えすぎじゃないかな」
「バカヲルみたいに呑気になれないわ」
「アスカのそういうところ僕は好きだな」
「すっ好き?」
いきなり好きと言われまたどきどきしてしまう。ちょっと待った好きは愛してるじゃなくライクの方かもしれないし落ち着けとアスカは自制心を総動員して心を鎮めた。
「ちょっと待って…それってクラスメイトとしてよね?」
確かめるための言葉をなんとか絞り出す。
自分一人で浮かれて後で勘違いだったなんていうのはごめんだ。
「いや、なんて言ったらわかってもらえるかな
今夜は星じゃない、今夜は月が綺麗ですねとか」
「それって日本の文豪のヤツ」
なつめとかそう言う名前の文豪。
確かたしか…今夜は月が綺麗ですねは英語だと
I love youって意味じゃ…。
I love you。
私はあなたを愛しています。
「そう好きってことさ」
やっと意味を飲み込めたと思ったときにカヲルがさらりと言ってみせる。
それってそれって…付き合ってほしいってことよねとアスカは認識し改めて赤面し言葉に詰まる。カヲルはそんなアスカの反応が面白いのか黙って見つめているだけ。
「いっ…いいわよ。付き合っても」
でもあんたシンジが好きなんじゃないの?とアスカ。
「良かったアスカに嫌われなくて
シンジくんは大切な友人だからそう言うのではないんだ。」
「そう…なら問題ないわね」
何か重くのしかかっていたものが肩から取れたみたいに心が軽くなるのをアスカは感じていた。
自然と笑みが浮かんでくる。作り笑顔じゃない笑顔なんていつぶりだろう。
「Du bist der Engel, der mein Herz erfüllt」
(あなたは私の心を満たす天使)
「君の天使になれるなら僕は幸せ者かもしれないな」
カヲルも微笑みを浮かべて答える。
アスカが手を差し出すとカヲルがその手に自分の手を重ねる。
「2人も悪くないわね。あんたと一緒なら寂しくないと思うわ」
「アスカと一緒なら僕も退屈せず過ごせそうだ」
「なによそれー」
カヲルにむっとしながらも心安らぐ場所をやっと見つけられたことがアスカにはとても喜ばしいことど幸せで。
まるで天使が寄り添ってくれてるかのような幸福を感じ優しさに満たされたのだ。
その瞬間のアスカの笑顔もまた幸福を運ぶ天使のような柔らかな笑顔だった。
終わり
読んでくださりありがとうございます。
またまたノリと勢いで書きました。
短編中心に書いていくつもりですよろしくお願いします。