部屋を出た俺たちはクラスメイトと共に夕食を摂り、食べ終わり部屋で一休みした所で風呂の時間になり、着替えを持って風呂の準備をする。
「風呂行こうぜ。集、歩夢」
「ああ。てかお前ら、覗きをしようとか考えんなよ」
「言わないって、オレもガキじゃねぇーんだし」
「しねぇーよ。バレたら退学もんだぞ」
集、楽と呟く。ともあれ、部屋を出て風呂場に向かう俺たち。
風呂場に向かっている途中でキョーコ先生が、
「おーい一条。フロントに電話がかかってるぞ~」
楽は思案顔をする。
「電話?誰からだ?」
「わからん。てか、俺は待ってるから、集は先に行っていいぞ」
「りょーかい。んじゃ、先に行ってるわ」
集はそう言って、先に風呂に向かった。
数分が経過し、電話を終えた楽が歩み寄る。
「誰からだったんだ?義父からか?」
「それなんだがよ、誰からも電話がかかってきてなかったんだよ」
「つまり、悪戯電話か?」
「そうなんじゃねぇか」
そんな話をしながら俺と楽は男風呂の暖簾を潜り、脱衣所で服を脱ぎ、風呂のドアを開け体を洗ってから入浴する。
「今日一日疲れたなぁ」と思いながら入浴してると、血相を変えて楽がやって来る。
「あ、歩夢。緊急事態だ!」
「は?」と思いながら周りを見渡すと、楽の焦りの正体が解った。……これはあれだ、洒落にならない事態である。
「……もしかして、ここって女湯、なのか?」
「あ、ああ、たぶんな。オレの予想だと、主犯はあのオールバックだと思う」
オールバックとはビーハイブ幹部のクロードさんだろう。……クロードさんは恋人関係に疑問を持っていたので、桐崎さんと楽を引き離す為の策なのだろう。……つっても、この策は拙いでしょ。俺と楽、露見したら社会的に抹殺されるかも知れないし。
『すご~~い。露天風呂だ~~』
こ、この声は小咲である。
いや待て、よりによって小咲も居るのかい!?いや、誰でも拙いんだけどさ!?
「……楽。脱出場を探すしかない」
「あ、ああ。二手に別れるか。どっちかが生き残る可能性が上がるしな」
「……いや待て、その言い方だとどっちかが社会的に抹殺されるってことだよね?」
それから二手に別れる俺と楽。
「やばいやばい」と考えながら周りを見渡すが、脱出できる場が見つからない。そして、刻一刻と時間が過ぎていく。そして、体を洗い終わった女子が湯船に浸かるではないか……。
女子から隠れるように潜水すると、壁の方に大きな目の穴を見つけた。もし、あそこが男子湯と繋がっていれば、ここから脱出できる。……それはそれで、露天風呂には欠陥が見つかるってことになるんだけど。
そんなことを考えながら顔を浮上させると、女子と目が合いました。てか、穴に目を向けている時に湯船に浸り、こちらに移動してたてたらしい。
「あ、ああ、歩夢君。なな、なんで女湯にいるの!?」
「……た、たぶん、知り合いのせいなんだよ」
俺は今の状況を説明すると、小咲は「……な、なるほど。う、うん、助けてあげる」と頷いた。
「で、でも一つ貸しだからね」
「マジでありがとうございます。じゃあ、端まで俺を隠せるか?」
「端まで?大丈夫だと思うけど」
小咲の背に隠れながら端に移動していると、一人の女子が近づいて来て小咲に話かける。
「ねぇねぇ寺ちゃん。私聞きたかったんだけどさ、神埼君とは付き合ってるの?」
すると、もう一人の女子もやって来る。
「凄いラブラブだしねぇ。クラスでは、公認カップルになってるんだよ」
「そ、そうなんだ。で、でも、付き合ってないよ。わたしと歩夢君」
「あれで付き合ってないの?てか、男子で神埼君だけは名前呼びじゃない」
「わ、わたしと歩夢君、幼馴染だし、昔から名前で呼んでたから」
「うそ!寺ちゃんと神埼君って幼馴染なの!?」「え?その話聞きたい聞きたい」「私も私も」と言い、女子が徐々にこちらにやって来る。
俺は小咲が隙を作ってくれてる間に潜水し、男子湯に繋がると思わる穴に飛び込む。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
「ぷはっ――!」
「おわッ!楽の次は歩夢かよ!ど、どうしたんだよ、お前ら」
男子の一人がそう言う。てか、楽も脱出できたらしい。
「い、いや、ちょっとばかり潜水を……。な、楽?」
「お、おう。歩夢の言う通りだ……」
「てか楽。出ようぜ、俺風呂入ってたのにどっと疲れたわ」
「あ、ああ。オレもだ……」
楽はげんなりしながら呟く。
んで、風呂から上がり下着諸々を購入し、常備してあった浴衣を着て風呂を出た。
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~一階フロア~
俺は浴衣姿で、小咲を向き合っていた。
「あ、歩夢君。着替え取っといてあげたよ」
そう言って、黒い袋に入った着替えを渡してくれる小咲。
「わ、悪い。助かったよ」
「んーん、気にしないで」
頭を振る小咲。
「ところで何処まで見たの?場合によっては許さないかも」
……え?小咲の背後に修羅像が見えるんだが。き、気のせい?
「み、見たのは小咲の裸だけだ。ほ、他の奴は見てないぞ」
これ、状況によっては変態発言である……。いや、たぶんだけど。
「ならいいや」
「な、何か軽いな」
「ん、減るものじゃないしね。貸し一つで十分だよ。――じゃあ、この話はこれで終わり。歩夢君、星、見に行こう」
「りょ、了解だ」
俺と小咲は玄関の二重ドアを潜り外に出る。
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ホテルを出て数分歩き、空き地付近で止まってから空を見上げる。
「月が綺麗だね」
「ああ。綺麗だな」
小咲は苦笑した。
「ふふ。歩夢君、月が綺麗だねって意味知ってる?」
「知ってるぞ。愛してるって意味だろ?」
「じゃあ改めて。歩夢君、
「ああ。俺も
それから何十分が経過した所で、俺たちはホテル戻ると一階のフロントは暗くなっていた。おそらく、消灯時間になってしまったのだろう。
「わたしたち不良生徒だね」
「だなぁ。班から抜け出したり、消灯時間過ぎたりしてるからなぁ」
部屋に戻ると、集たちは大富豪をしていた。全員が揃ってから就寝するとのことだ。……帰って来た所でからかわれたけど。まあ、男女が一緒に帰って来れば当然なのかも知れないけど。
就寝に入ると、隣から男子の悲鳴が聞こえる。どうやら、集が襖を開けて女子部屋を覗き見しようとし、宮本さんに締められ、布団に包まった状態でテルテル坊主のようにベランダで吊らされた。ちなみに、楽もそれに巻き込まれていた。ともあれ、俺は布団から起き上がり二人を助けてから、三人並んで就寝した。
――――こうして、林間学校一日目が終了したのだった。
男子湯に、何で着替えが売ってるの?という突っ込みはなしでお願いします。
では、また次回(@^^)/~~~