ニセコイ~夢に紡ぐ物語~   作:舞翼

20 / 34
更新が遅くなりました、すいません。


テツダイ

 時期は7月下旬。

 終業式が終わり、俺たちクラスはキョーコ先生からの注意事項を終え、立ち上がって挨拶を終えると各々談笑しながら教室から出て行く。

 

「歩夢君、帰ろっか」

 

 小咲の話によると、いつものメンバーは飼育係や日直の仕事があり、一緒に帰れないということ。

 

「おう。帰るか」

 

 そう言ってから、俺と小咲は教室から出て、下駄箱で靴に履き替え学校を後にした。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~通学路~

 

 談笑しながら歩いていたら、小咲は口ごもったように、

 

「あ、歩夢君。週末って空いてるかな……?」

 

「予定は入ってないはず。どうかしたのか?」

 

 小咲は、少し困ったように笑みを浮かべながら説明する。

 

「実はね、バイトをお願いしたいの」

 

「バイト?“和菓子屋おのでら”のか?」

 

「う、うん。従業員さんが、急用で来れなくなっちゃって……」

 

 俺は「なるほどな」と頷く。

 ちなみに、その日は人手が足りなくなるので、小咲も店に顔を出すそうだ。

 

「でも俺、和菓子を作ったことないけど、大丈夫なのか?」

 

 一応、俺は料理ができるが、専門料理(和菓子)を作ったことがない。

 

「だ、大丈夫。歩夢君、料理するの上手だもんっ!」

 

「お、おう」

 

 バイトを“了承”と答え、小咲から時間等を聞く俺。

 ともあれ、週末にバイトが決定したのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~週末~

 

 “和菓子屋おのでら”の扉の前に到着し、俺が足を踏み出すと自動扉が開く。

 

「お邪魔しま……」

 

 俺が店内に入った所で、怒鳴り声が俺の耳に届く。……間違いない、小母さんの声である。

 

「んだとぉ~~!?仕入れが一品も来ないだぁ~~!?」

 

 声が聞こえた方を見ると、其処では丸椅子に座って受話器を耳に当てながら、メモ帳とボールペンを持った小母さんの姿。

 

「いい!?夕方には間に合わせて!後でそっちに取りに行くから、わかった!?」

 

 そう言ってから、電話を一方的に切る小母さん。

 小母さんは、受話器を乱暴に元に戻し、額に手を当て呟く。

 

「……ん?」

 

 小母さんは俺を見て、何かを確信したように、

 

「……お前、歩夢の坊やか?」

 

「あ、はい。ご無沙汰してます、小母さん」

 

「ああ。でかくなったなお前」

 

 確かに、小母さんの中では、俺の背丈は小学生で止まっている。

 

「てか、何でウチにいるんだ?」

 

「えーと……」

 

 邪魔になるから帰れ、いう風に小母さんが立ち上がると、小咲が姿を現し、小母さんの腕にしがみ付く。

 

「お母さん!歩夢君は、今日のバイトの人!」

 

「……歩夢の坊やが?」

 

「そ、そう。歩夢君、料理がとっても上手なの!」

 

「……うーん。そこまで小咲が言うなら。じゃ、何か作ってもらいましょうか。駄目だったら帰ってもらうよ」

 

 ……何か、話が勝手に進んでるんだが。

 まあ、和菓子のことは勉強してきたので、基本知識ぐらいは大丈夫だと思うが…………たぶん。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~調理場~

 

 調理着に着替え、俺は和菓子を作る為に調理器具を用意していき、準備したボウルの水気を取りながら調理を進めていく。

 

「(かなり料理慣れしてるね。まあ、和菓子のことはよく解ってないようだけど。……この子、昔からスペックが高かったけど、今でも上がり続けてるのね……)」

 

 小母さんはこのように思っていたらしいが、俺が知る由もない。

 ともあれ、俺は牡丹餅を皿の上で完成させ、小母さんはそれを手に取り、口に入れ咀嚼する。

 

「……ほー」

 

 咀嚼し、牡丹餅を飲み込んだ小母さんがそう呟く。なんつーか、かなり緊張するんだが……。

 そして、小母さんはにっこり笑い、

 

「歩夢の坊や。ウチにお婿に来なさい」

 

「いや、話が飛び過ぎてません!?つか、小咲と俺――まだ(・・)恋人じゃありませんよ」

 

「――“まだ”、ねぇ」

 

 小母さんは、意味深にニヤリと笑う。

 そして、顔を真っ赤に染める、俺と小咲。

 

「ま、その様子だったら、小咲の貰い先は決まってるものよね」

 

 お婿は無理ね。と呟く小母さん。

 

「お母さん!!!」

 

 そこへ、小咲が声を上げる。

 ともあれ、俺は落ち着きと取り戻し息を吐くのだった。

 

「まあそれよりも、これなら少しは任せられそうね。小咲、一番簡単なやつと、餡の作り方を教えてやんな。私は午後まで店番してるから」

 

 先程とは打って変わって、真面目な様子で小咲にそう呟く小母さん。

 ともあれ、小母さんはレジに向かう。

 

「それにしても、あんたらはホント仲が良いのね~~。――私が孫の顔を見るのは、そう遠くないのかしら♡」

 

「お母さん!!!」

 

 にょほほほほ。と笑いながら、小母さんは調理場を後にする。

 

「……小母さん、まるで台風みたいだな」

 

「ご、ごめんね、歩夢君。気にしなくていいから」

 

「お、おう。でも、俺も先のことを考えるよ。だらだらしてたら、小咲たちが不安になっちゃうしな」

 

 「そっか」といい、小咲は微笑んだ。ともあれ、俺は小咲の指示通りに簡単な作業を進めていく。

 作業としては、俺が下準備を整え、小咲が和菓子の飾り付けをして完成させる。

 

「一緒になったら、これが日常の一部になるのかな」

 

「たぶんな。羽さんも加わりそうな感じもするけど」

 

「ふふ、そうだと嬉しいな」

 

 このように会話に花を咲かせながら、俺たちは作業を進めていくのだった。

 

『小咲―。ちょっと出てくるから店番よろしくー』

 

「あ、はーい」

 

 作業を終えた時、店番をしていた小母さんがそう呟いた。

 それから、俺と小咲はレジに向かい、二人並んでお客さんを待つ。すると、一人の老人が店の中に入って来た。

 

「「いらっしゃいませー」」

 

「おおー、今日は小咲ちゃんが店番かい。こりゃツイとるのぉー」

 

「こんにちは、吉野さん。毎度ありがとうございます」

 

「いやいや……えーと、隣の坊やは――」

 

「えっと。未来の旦那さまです」

 

 ……うん、その切り返しは予想してなかった。

 

「なんと!?」

 

 老人は目を丸くする。

 まあ確かに、婚約者です。って言ってるものなんだから。ともあれ、老人がショーケースの中から商品を選び、それを俺が専用のトングで取り箱に詰めてから手渡し、老人から代金を受け取る。

 

「どうじゃ?よかったら今度、儂とデートでも」

 

「もー、またまたご冗談を~」

 

 そう言って老人は、小咲にデートを申し込んでいた。つか、婚約者(偽)が居ると言ったのに、デートを申し込む老人はある意味猛者やね。

 

「お爺さん、小咲を口説くのはその辺にして下さい。お釣りの、615円です」

 

「お、ありがとよ、坊主」

 

 老人は「またよろしくなー」と言って、店を後にする。

 

「随分色気づいたお爺さんだな」

 

「あはは。吉野さんは、いつもああなの。……歩夢君、嫉妬してくれた」

 

「……まあ、そうだな」

 

「ふふ、そっか」

 

 順調に店番をし、バイトが終わりに差しかかった所で、店のドアがガタガタと音を鳴らす。それだけでは無く、外の方からは、強い風の音。その数分後には、大雨が降りつける。

 

「風も強いし、降ってきたね、雨」

 

「だな。そういえば、台風が接近してるってニュースでやっていたような」

 

 また、雨だけでは無く雷の音まで響く。俺もバイトが終わったら、すぐにお暇しよう。

 すると、レジ横の電話が鳴り、小咲が受話器を耳に当てる。

 

「お電話ありがとうございます。和菓子屋おのでらです。……え、お母さん?」

 

 電話の主は小母さんだ。

 この天候だ。交通機関でトラブルがあったのかも知れない。小母さんは大丈夫だろうか?

 

「え!?え、お母さん!待って!」

 

 小咲が、慌てたように声を上げる。

 小咲は、そっと受話器を戻して、俺を見る。

 

「小母さん、どうかしたのか?」

 

「う、うん。お母さん、台風が危なくて帰れないって……」

 

「まあ、そりゃ仕方ないよ」

 

 やはり、小母さんは帰ってくるのは難しいそうだ。

 たぶん、近場のビジネスホテルを取るなどで一時的に凌ぐだろう。と、俺は根拠のない結論に至る。

 

「あ、あとね……」

 

「お、おう。あと、どうした?」

 

 次の小咲の言葉で、俺は驚愕することになる。

 

「――帰るのは危ないから、歩夢君には泊まってもらえって……」

 

「………………………………はい?」

 

 俺と小咲は沈黙し、店内に備え付けられている針時計の音が響く。

 こうして、俺のお泊りが決定したのだった。




次回お泊まり会。
では、次回もよろしく(@^^)/~~~
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。