今日は縁日であり、俺は屋台に立ち、鉄板の上の焼きそばの麺をヘラで混ぜていた。縁日の期間、集英組は屋台を出しており、組の資金源にしているそうだ。
俺は『何か手伝えないことはないか?』と聞き、屋台の手伝いをしているのだ。さすがに、タダで居候という訳にはいかない。
「歩夢坊ちゃんも、楽坊ちゃんも朝から働き通しじゃないですか?そろそろ、休憩を取った方がいいじゃないですかい?」
「そうだなぁ。じゃあ、今焼いてるやつを他の連中に渡してから入るよ。――歩夢もそれでいいか?」
俺は楽の問いに「構わないぞ」と頷く。
それから、焼き上げた焼きそばをプラスチックの容器に盛り付け蓋をしてから、割り箸をつけ袋にいれていく。
「んじゃ、行くか」
俺がそう言ってから、楽と一緒に屋台を出て、皆さんの屋台に焼きそばを届けいく。
渡し終わってた所で、再び周りを見渡す。日が昇っていた頃と比べ、夜の方が賑わっている気がする。
「じゃあ、オレはある任務があるから、ここで別れるな」
楽が言うには、今後の事も考えて“恋むすび”というお守りを購入したいらしい。
何でも、お守りの効果として、持っているだけで恋愛成功成就が発揮し、販売直後に品切れが発生する代物らしい。
ともあれ、楽と別れた俺は屋台を見て回ることにした所で『――歩夢ちゃん、だよね?』と呼ばれた。その人物は、紫陽花のあしらった桃色の浴衣を身に付けており、長い黒髪はシュシュで纏まられていてサイドポニーだ。
俺は声の主を見て目を丸くし、
「――
「久しぶりだね、歩夢ちゃん。まさか、会えるとは思わなかったよ」
羽さんの話では、凡矢理では縁日に合わせて帰国したらしい。
話を聞いた所、
「花火を?」
「うん。だから、この日には毎年帰国してるんだよ」
俺は「なるほど」と頷く。
「折角だし、一緒に回る?」
「お。デートだね」
羽さんはそう言うが、これはデートに入るか微妙な所だ。
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俺と羽さんは、様々な遊戯を堪能した。
金魚掬い、輪投げ、射的。でも射的では、1人分を羽さんと密着して的を打っていたので、俺の理性の壁がガリガリ削られていった……。まあ、役得だったけど。
談笑しながら歩いていた所、知っている
「歩夢君、バイト以来だね」
小咲は、向日葵はあしらってある、蒼を基調とした浴衣を身に付けている。
「羽さんも久しぶり。また会えて嬉しいよ」
「久しぶりだね、小咲ちゃん」
と言って、小咲と羽さんは笑みを浮かべていた。
「小咲は、何で縁日に?」
「えっとね。縁日で上がる花火を見に来たんだ」
「小咲もなんだ」と内心で呟く。
ともあれ、一緒に回ろうということになり、俺たちは目的の場所を目指して歩き出す。
その途中では『早くしないと売れ切れちゃう!』『買えた!買えたよ!』『“恋むすび”ゲット!』等の声が届く。
「歩夢君は、“恋むすび”は買わないの?」
「歩夢ちゃんは現実主義だし、“神頼み”はしない派からね」
小咲と羽さんがそう呟き「まあな」と俺は頷く。
数分歩いていたら、見渡しが良い丘(隠しスポット)に到着する。この場所は、屋台を準備していた時、偶然見つけた場所である。
数分経過した頃、
ド―――ン!
という音が響き渡る。
花火は様々な形をしていた。輪の花火や、花形を模った花火などだ。
花火を見ていた、小咲と羽さんの横顔はとても幻想的に見えた。
「来年も、また一緒に見ような」
「「うん。約束ね」」
俺は、今思った疑問を小咲と羽さんに聞く。気持ちは確認してあるが、一応である。
「今思ったんだが、俺たちって付き合ってる、でいいんだよね?」
小咲と羽さんは「確かに、そこはハッキリさせないとね」と頷いた。
「気持ちを確認しただけで、そういう形式はとってなかったね」
そして、羽さんと小咲が振り向き、俺の瞳を見ながら――、
「――歩夢ちゃん、ずっと好きでした。付き合ってください」
「――わたしも、10年前から気持ちは変わっていません。大好きです」
「――あ、ああ。俺も大好きだよ。これからも、末長くお願いします」
小咲と羽さんは「ふふ」と笑みを浮かべる。
「歩夢君、結婚する時の決めセリフになってるよ」
「でも、歩夢ちゃんらしいよ。わたしたちも、末長くよろしくね」
花火が終わった所で、俺たちは将来を誓い合った。
ちなみに、翌日にデートすることに決まったのは余談である。