ニセコイ~夢に紡ぐ物語~   作:舞翼

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コイビト

「お、帰ったか歩夢。楽はどうした?」

 

 俺が家に帰り、靴を脱いで居間に入ると、そこには義父が立っていた。

 

「そろそろ帰って来ると思うけど」

 

「そうか。楽が帰ったら、歩夢もオレの部屋に来い。お前にも、第三者として立ち会ってもらうぞ」

 

 「第三者?」と疑問符を浮かべた俺だが、

 

「わかった」

 

 と、返事をするのだった。

 玄関に上がってから靴を脱ぎ、部屋に戻る。それから、楽が帰って来たのは十分後だった。聞いた話だと、桐崎さんと仲直りできたということ。

 ともあれ、義父の部屋入った楽が、

 

「で、何だよ親父。オレと歩夢に話って?」

 

「お前ぇらも小耳に挟んでると思うが、最近ギャングとの抗争があってな、それがいよいよ全面戦争になりそうなのよ」

 

 全面戦争。と聞き、楽は「戦争!って大丈夫かよ!?」驚愕の声を上げ、俺も内心では動揺していた。

 

「そこでだ!オレと向こうのボスと話し合った結果、戦争を回避する方法が見つかってな。しかも、それは楽にしかできないことだ」

 

 楽は「歩夢はどうなんだよ?」と聞いていたが、俺の場合は、血が繋がってないので無理らしい。んでも、見届け人としての影響は絶大ということだ。

 

「お、オレにしかできないことって何だよ?」

 

「ああ。向こうにも、お前ぇさんと同じ歳のお嬢さんが居るらしんだが――――そこでだ、楽。お前ぇには、その子と恋人同士になってくんねぇか?」

 

「は?…………はぁ――――ッ!!」

 

「なーに、フリをするだけでいいんだ。互いの組の二代目が恋人とあっちゃ、若ぇ連中も水差すわけいかねーだろ?」

 

 なるほどねぇ。戦争回避の為の、ニセコイって所か。……でも、俺にも少しは関連がありそうなんだよなぁ。それが何なのかは未だにわからないけど。

 

「悪ぃが、こっちも命がかかってっからな。泣きごと言ってもやってもらうぜ」

 

 義父は部屋を出てから奥の襖に向かって「入ってくれ」と口にする。既に、楽の恋人のフリをするギャングの二代目は到着してるらしい。

 

「さぁ、この子がお前ぇの恋人になる――」

 

 襖が開かれ、現れたのは二人。一人は、男性で父親なんだとわかるが……女の子の方は、見知った顔である。

 

「桐崎千棘ちゃんだ!」

 

 楽の反応は、

 

「へ?」

 

 と、口をポカンと開けるのだった。つーか内心で「俺じゃなくてホントによかったぁ」と思う俺であった。

 そして俺は、目を見開くことになったのだ。

 

「あ、アーデルト(・・・・・)、さん?」

 

 そう。桐崎さんの父親、アーデルトさんは、俺がアメリカ(・・・・)に在住していた時に、お世話になっていた人なのだ。

 

「やぁ歩夢君。数年月ぶりかな」

 

「あ、はい。ご無沙汰してます」

 

 俺が一礼すると、楽と桐崎さんが目を丸くして、

 

「「え――――――ッ!?」」

 

 義父は驚きながら、

 

「何だ、歩夢はアーデルトと知り合いだったのか」

 

「ま、まあ。アメリカで暮らしをしてた時、親身にしてくれた人だよ」

 

 まさか、集英組で再会できるなんて予想外だけど。

 

「ほぉー。世の中、面白ぇこともあるんだなぁ」

 

 確かに、義父の言う通りである、アーデルトさんとの再会や、十年越しに咲ちゃん(小咲)との再会など、世の中何が起こるかわかるもんじゃない。ということなのだろう。

 

「つ、つーか。お前、ギャングの娘だったのか……!?」

 

「あ、あんたこそ……ヤクザの二代目って……」

 

「いやだから、指を差し合うのは止めろよ……」

 

 楽と桐崎さんは人差し指を差し合い、俺は突っ込みを入れるのだった。

 

「何だお前ら。面識があったのか?なら話は早い。改めて紹介だ、楽、歩夢」

 

 義父は、楽と俺を交互に見て呟く。

 

「こいつがギャング組織“ビーハイブ”のボス、アーデルト・桐崎・ウォグナーと桐崎千棘お嬢ちゃんだ」

 

 アーデルトさんは、俺と楽に一礼してから口を開く。

 

「君のことはよく知ってるよ、よろしくね楽君。歩夢君も、またよろしくね」

 

「こちらこそ、お世話になります」

 

「あ、どーも……じゃなくて!」

 

 楽は声を荒げる。

 

「ムリムリムリ!こいつと恋人なんて、絶対ムリ!」

 

「そ、そうよ!パパは知らないでしょうけど、私たち学校ではすっごく仲悪いのよ!?なんで、こんなもやし男と!」

 

「んだと、コラ!そうだぞ親父!こんな奴と上手くいくわけねぇって!」

 

 それからも口論をするが、義父が、

 

「なんだお前ぇら、仲良いじゃんか」

 

「「良くない!」」

 

 と声を合わせる、楽と桐崎さん。

 

「……しかしなぁ。戦争を止める手にゃ、もう他に手はねぇ……それに」

 

 その時、突然壁が破壊され、扉が吹き飛んだ。

 

「見つけましたよ、お嬢……。どうやら、集英組のクソ共がお嬢を攫ったというのは本当だったようですね……」

 

 眼鏡をかけ、髪をバックに整えたスーツを来た奴が乗り込む。その後ろには多数の部下が居る。

 

「く、クロード!」

 

 桐崎さんがそう叫ぶ。

 

「ご安心ください、お嬢。お嬢を守るのがビーハイブの幹部としての私の役目。不肖このクロードがお迎えに上がりました」

 

 この騒ぎを聞き付けた、集英組の皆さんも到着する。

 

「おうおう、ビーハイブの大幹部さん……。こいつぁ、ちょいとお痛が過ぎやしやせんか……?今までは手加減してやって来たけんどのぅ……今度という今度は許さへんぞ」

 

 そう言う、竜さん。

 

「ふん、猿どもが……お嬢に手を出したらどうなるか教えてやる」

 

「やってみろゴラァ……坊っちゃんたちに手を出したら、ビーハイブに関わるもん二度とお郷の土、踏めんようにしてやらァ」

 

 正に一色触発、このままでは戦争が起きてしまうのは時間の問題だろう。

 俺は溜息を吐き、殺気(・・)を醸し出し、低い声で、

 

「……お前ら、少し黙れ……」

 

「……あ、歩夢、坊ちゃん……」

 

「……き、貴様。この殺気は……」

 

 クロードさんが言うように、俺の殺気は海外にいた十年間で身に付けたものだ。

 俺は殺気を霧散させ「やっと黙ったか」と嘆息する。

 

「いいか、よく聞けよ。桐崎千棘と一条楽は恋人同士だ。そんな中、戦争を起こすのか?なぁ義父、アーデルトさん」

 

 クロードさんは「ぼ、ボス」と声を上げる。この場に居ることに気付かなかったのだろう。

 そして、それぞれの親父が、楽と桐崎さんを肩を密着させる。

 

「そうだよ。僕らが認めた恋人さ」

 

「こいつら、超ラブラブの恋人同士だしな」

 

「見届けた、神埼歩夢だ。んじゃ義父。俺はここら辺で」

 

「ああ。助かったぜ、歩夢。後は任せな」

 

 と言うことなので、俺はこの場を離れたのだった。

 そんな事もあり、縁側で月を眺めていたら、俺のスマホが震えた。ポケットに手を突っ込み、スマホの画面を確認する。そして画面に表示された名前は、

 

 ――――――奏倉羽(かなくら ゆい)

 

 俺が中国(・・)に居た時にお世話になった女性だ。

 ともあれ、俺は通話ボタンをタップし、通話口を右耳に当てる。

 

『もしもし、歩夢ちゃん。日本はどうかな?』

 

「楽しいよ。旧友とも会えたし、集英組の皆も良くしてくれるから。羽さんは色々と大丈夫?」

 

 羽さんとは、チャイニーズマフィア、叉焼会(チャーシューかい)首領(ドン)のことだ。

 俺が中国に居た時は、羽さんの傘下で仕事をしていたのだ。

 

『大丈夫……って言いたいと所だけど、ちょっぴり寂しいかな。歩夢ちゃんが中国に居た時は、いつも一緒だったから』

 

「……そう。じゃあ、何か話そうか」

 

『うん!楽しみ!歩夢ちゃんの話』

 

「いやいや、そんなに楽しいものじゃないと思うけど」

 

 俺は「変わらないな、羽さん」と内心で呟きながら、凡矢理高校であったことや、旧友と再会したことなどを話し始めたのだった。




歩夢君は、中国とアメリカで過ごした設定です。だからまあ、羽姉やアーデルトと面識があるんですね。

追記。
~千棘の義弟~の話の流れを似せてる感もあるかもです。
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