~新年~
俺は袴姿で、とある神社の鳥居前である人物を待っていた。
その時、パタパタと下駄を鳴らしながら、待ち人が姿を現す。
「ごめん。待たせたかな」
そう言ったのは、ピンク色を基調とし、所々に紫陽花があしらってある着物に袖を通した小咲だ。
俺は「全然」と言ってから、
「着物似合ってる」
「そ、そうかな」
小咲が言うには「無理に大人びてる」感があるから似合っているか不安だとも言っていた。まああれだ、着物に着られている心配があったのだろう。まあ、そんな心配は一切ないのだが。
ともあれ、俺と小咲は歩幅を合わせて歩き出し、神社へ足を進めた。
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「かなり混雑してるな」
「年越し直後だから、込んでるのかな?」
俺と小咲は、お賽銭箱の順番を待ちながら呟く。
順番になり俺と小咲は右手に準備していた5円玉お賽銭箱に入れ、両手を合わせて目を閉じる。
「(――歩夢君と、ずっと一緒に居れますように)」
「(――皆が健康で過ごせますように)」
願い事が終わった所で本堂を後にし、俺たちは出店を見て回ることになった。
出店は、破魔矢や松竹飾り、鏡餅や輪飾りなど様々な正月飾りが鎮座していた。
「破魔矢でも買っていくかなぁ」
「わたしは、注連飾りと餅花かな」
そう言ってから、俺が店員を呼び会計を済ませる。
目的の物を買い終わった所で、俺たちは神社を後にする事にした。
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「ところで、桐崎さんたちはどうしたんだ?」
俺が帰り道で小咲にそう聞く。
「一条君のお家だと思うよ。朝千棘ちゃんにメールしたら、一条君と偽デートの予定。って返信があったから」
なるほど。小咲は神社の参拝に桐崎さんを誘っていたのか。
だとしたら、楽を誘っておけば良かったか?まあでも、楽は家でゆっくりしているので桐崎さんと合流するかもだし、結果オーライということで。
「もうすぐ三学期だね」
「だなぁ。てか早いな、もう新学期かぁ」
小咲と再会したのを半年前と考えると、時間が経過するが早く感じる。
「新学期も、隣の席のままだったら嬉しいんだけどなぁ」
「でも新学期だし、それに合わせて席変えとかあるだろ。まあ俺の勘だが」
まあ確実にあるだろう。
新学期も、小咲の隣がいいなぁ。
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初詣が終了し、小咲を自宅に送る道中で、俺は気になっていたことを小咲に質問する。
「ところで小咲。春ちゃんは元気か?」
俺が小咲に聞いた“春ちゃん”とは、小野寺小咲の妹で、小野寺春。のことである。
ともあれ、俺が凡矢理に帰って来てから一度も会ってないので気になったのだ。
「うん。春なら元気だよ。でも中学は寮住みだから、今は住んでる地区が違うんだ」
俺は、なるほど。と頷く。
また小咲が言うには、春ちゃんとは定期的に連絡を取っているということ。
「てことは、来年は凡矢理高受験か?」
「どうだろう?でも、このまま何もなければ、凡矢理高だと思うな」
確かに、この辺りの高校と言えば凡矢理高しかない。
もし違う高校となれば、凡矢理を跨ぐことになるだろう。てことは、ほぼ受験は凡矢理高ということだ。
「そうか。つか春ちゃん、俺のこと覚えってかな?」
「覚えてるんじゃないかな。春と歩夢君、いっぱい遊んでた記憶があるから」
まあ確かに。小咲と遊んでいた時は春ちゃんも一緒だった記憶がある。といっても、昔の記憶なので、春ちゃんが俺のことを覚えているとは限らないが。
「でも、一番遊んだのはわたしだけどっ」
ふんす。と胸を張る小咲。……あと、そこまで胸を強調しないで。俺が視線に困るから。……それより独占欲?強すぎませんかねぇ、小咲さん。いやまあ、俺的にはありがたいけど。
「いや張り合うなよ。でも確かに、一番小咲とは付き合いが長いな」
小咲は保育園児から小学高学年まで一緒にいたが、春ちゃんと知り合ったのは小学生低学年からだ。
てことは、春ちゃんとも幼馴染になるのか?
「うん。年数では、わたしが一番かなぁ」
年数にすれば、約10年間である。
ちなみに、春ちゃんとは2年弱だ。
「そうだなぁ。羽さんとも4年弱、だからな」
そんなことを話しながら、俺と小咲は、小咲の自宅の玄関前まで到着する。
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「またな小咲。明後日の朝迎えに行くよ」
「うん、待ってる」
俺は「じゃ」と言ってこの場を後にした。
そして、明後日からは新学期が始まる――。
凡矢理は、1月の第一週から学校が始まる設定です。
さて、もうそろそろもう一人の幼馴染(春ちゃん)の登場ですね。次回かその次当たりですね。