では、どうぞ。
翌日。
俺と楽は一緒に家を出て、通学路を通り学校に向かう。
「はぁ……。一昨日は酷い目に遭ったぜ」
「まあうん、大変だったな」
俺がそう言うと、楽の片眉が僅かに上がる。
「……他人事だと思って、つか変わってくれよ」
「いや、俺は居候の身だし、それに一条家の血は流れてないから」
「だよなぁ」と項垂れる楽。
通学路を歩いていたら、電柱の傍らに桐崎さんが立っていた。俺から見るに、楽の登校を待っていたのだろう。ともあれ、その場に歩み寄る俺と楽。
「おはよう、ダーリン。歩夢」
お、おう。俺を名前呼びですか。まあいいけど。
「おはよう、ハニー……ずいぶんやつれてんな」
「……一昨日のデートの質問攻めにあって」
「……あ、ああ。お前もか」
がっくりと肩を落とす桐崎さんと楽。
「質問攻め、凄かったよな……。俺、ちょっと引いたし」
俺がそう言うと楽は「見てるだけの薄情者!」と俺に言っていた。
「あ、小咲には本当のことを話したから、サポートはしてくれるはずだぞ……悪いな。独断で判断して」
「ほ、本当に!?やっぱり、歩夢はもやしより頼りになるわね!」
桐崎さんは、肩を上げてから笑みを浮かべた。やはり、事情を知りサポートしてくれる者の存在は大きいのだろう。
「んだとコラ!……まあ、いいや。休まる場所は、学校しかないってことか」
「そうね。てか、これを三年?冗談でしょ?」
「でも、恋人のフリをしないと戦争だぞ」
楽と桐崎さんは溜息を吐き、
「「……だよね」」
と、声を合わせるのだった。
そんな会話をしながら、学校に到着し、下駄箱で上履きに履き替えてから一年C組に向かう。んで、教室の扉を開き、俺が先に入る。
「おはよう、歩夢君」
「おはよう、小咲」
教室に入り、此方にやって来た小咲と挨拶を交わす。
「座ろう」
「うん。――るりちゃん、また休み時間に」
「わかったわ」と、るりちゃんと呼ばれた女の子が返事をする。見た感じ、小咲がかなり気を許している女の子かも知れん。と考えながら席に着席した時、
『おおっとー!?一条と桐崎さんじゃねぇかーっ!』
遅れて教室に入って来た楽たちを見て、歓声が上がる。
『おーいみんな!二人がきたぞーっ!』
『よっ!待ってました!』
『おめでとー!お前ら付き合うことになったんだってなっ!』
『末永くお幸せにーっ!』
クラスメイトたちの言葉を聞いた所、一昨日デートしたことが露見してたらしい。てか、クラスの情報網怖っ!クラスメイト一人に露見したらこれって……。
んで、楽は誤解を解こうと思っていたが、外の木から見ていたクロードさんを発見し、
『……そ、そーそ。今のは誤解だよ。オレたちはカップルじゃなくて、“超ラブラブのカップル”だっつーの~~!』
今の発言で、楽と桐崎さんは学校でもニセコイは継続ということになった。……頑張れ。とかしか言えない俺であった。
俺と小咲は対面になり、顔を合わせた。
「なんつーか、すぐバレたな」
「う、うん。早かったね」
「だなぁ。デートから二日しか経ってないのにな。ま、できる範囲でサポートできたら頼む」
「わ、わかった」
さすが、頼りになる幼馴染です。
授業を受け放課後になり下校し、俺と小咲は“秘密の場所へ”とやって来ていた。何でも、あの時の電話で“旧友”のことを“羽さん”に話した所「歩夢ちゃん。その子と話したいな」ということになったので、小咲の承諾をもらい今に至る。つか、無言の“圧力?”のようなものが通話越しから伝わってきて怖かったです、はい……。
「じゃあ、かけるな」
小咲が頷いたのを確認してから電話をかけた所、二回の着信音で繋がった。
『もしもし、歩夢ちゃん。どうかしたの?』
「前“
俺は「電話が終わるまで離れてるな」と言って、スマートフォンを小咲に渡して、この場から離れるのだった。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
「も、もしもしお電話変わりました。小野寺小咲です」
『わたしは奏倉羽、よろしくね。――といっても、わたしと小咲ちゃん歩夢ちゃんは、初めましてじゃないだけどね』
羽さんは『歩夢ちゃんは、わたしの幼少期は覚えてないらしいけどね』と語尾に付け加え苦笑した。そしてわたしは、ある記憶に行き着いた。羽さんと接点があるとしたら“あのこと”しかない。
「も、もしかして――
『正解!ま、わたしは三日しか一緒に居れなかったんだけどね。小咲ちゃんは?』
羽さんが聞きたいことは、どれくらい歩夢君と一緒に居たか?ということだろう。
「えっと、小学生に上がるまでです。正確な年数はわかりませんが、約五年といった所でしょうか」
『ふふ。なら、わたしとの記憶が薄れるのは納得かな。それにしてもずるいなぁ、小咲ちゃん。わたしも同じくらい居たかった』
「で、でも。歩夢君から聞いた話だと、五年間中国で過ごしてたって聞いてますよ」
これで、五年対五年だ。歩夢君と一緒にいた時間は変わらないだろう。
わたしは幼少期の歩夢君を知っていて、羽さんは成長期の歩夢君を知っているということになる。
『ふふ。何の勝負してるんだろうね、わたしたち』
「そ、そうですね。でもこの期間で、わたしの心は歩夢君に奪われちゃいました」
『わたしも同じく、かな』
『「歩夢(君)(ちゃん)タラシだね」』と言って、わたしと羽さんは苦笑した。でも、今は幼馴染の関係でいいかなぁ。と思ってるわたしだけど。
『わたしも日本に行きたいなぁ。てか、小咲ちゃんとお茶したいよ』
「そ、その時はお願いします」
わたしの予想だと、近い内にそれが叶いそうな気がする。
『小咲ちゃん、敬語は外そうよ、初めましてじゃないんだし』
「わかり……わ、わかった」
でも、名前は“羽さん”呼びで妥協してもらった。さすがに、呼び捨てはハードルが高いです。
それから少しだけ、わたしの周囲にあったことや、羽さんの身近で起きていることを話した。
『じゃあ、そろそろ切るね。またお話ししたいね』
「ん、そうだね。連絡先は、歩夢君から聞けばいいのかな?」
『うん、それでいいと思うよ――またね、小咲ちゃん』
「またね。羽さん」
そう言って、スマートフォンの通話終了ボタンをタップし、わたしたちの通話が終わった。
歩夢君は、それを見てからわたしの元まで歩み寄る。
「どうだった?羽さんは」
「とても優しい人、きっと心も暖かい人だと思う、羽さんは」
「そっか。――んじゃ、帰るか」
歩夢君が言うには「羽さんの連絡先は帰ってから送るよ」ということだ。
「ん、帰ろう」
そう言ってわたしたちは、“秘密の場所”を後にしたのだった。
歩夢君と小咲ちゃんは、歩夢君の転校初日に連絡先を交換してます。
追記。
羽姉は、小咲ちゃんのことは、歩夢から事前に聞いてます。
小咲ちゃんも、羽姉が中国に在住してることを知ってますね。