翌日の学校。
わたしとるりちゃんは、凡矢理高校の屋上へ柵に両腕を乗せながら、花壇付近で会話をしている一条君と桐崎さんを眺めていた。
それから体を柵から離し、るりちゃんと向かい合う。
「小咲。私に用って何かしら?」
わたしは両腕を柵から離し、るりちゃんと向かい合ってから、事前に準備していたある物を手持ちの鞄から取り出す。
「ん。これ、るりちゃんにお土産」
わたしがるりちゃんに手渡したのは、中国で購入した貝殻形が括り着いているストラップだ。
るりちゃんは、ストラップに記載された製造場所を見て思案顔をする。
「……小咲、中国に行ってたの?」
「うん。先週の土日を使って行って来たんだ」
るりちゃんは、目を丸くする。
「……小咲だけでかしら?」
「歩夢君と一緒にかな」と答えると、るりちゃんはその場で硬直してしまった。確かに、中学時代のわたしを知ってるるりちゃんならば、わたしが男の子と海外旅行。という光景は、衝撃だったのかも知れない。
「小母さんが、よく許可を出したわね」
「わたしもそう思った。でも、お母さんは歩夢君をよく知ってるし、信頼もしてるんだよ」
「幼馴染だしねっ」と、わたしは語尾に付け加える。てことは、わたしは羽さんとも幼馴染ということになる。
このことも話した所、るりちゃんは驚愕を通り越して呆れが入っていた。
「……歩夢君が転校してきてから、小咲の行動には驚かされてばかりだわ」
「そ、そうかな。いつもと変わらないと思うけど」
るりちゃんは溜息を吐く。
「無自覚なのね。小咲、一ヵ月前と比べたら良い方向で変わってるわよ。てか、中国に幼馴染がいたとはね」
「うん!とっても暖かくて可愛い人なんだ、羽さんは」
「そ、そう」
るりちゃんは、若干押され気味に返事をする。
「ところで小咲。あなた歩夢君のこと好きでしょ?」
「――――大好きだよ。でも今は、幼馴染の関係でいいかなぁって思ってる。逃げにも見えるかも知れないけど、今はこれでいいんだ」
「……そう言っても、歩夢君の気持ちはわからないわよ」
「んー、でもきっと大丈夫。根拠は無いんだけどね」
――それにもし、歩夢君が他の子を気になり出しそうになったら、アタックして振り向かせる自信があるしね。……自信家に見えるかも知れないけど、自身の気持ちには嘘はつきたくない。
「まあ確かに。小咲と歩夢君は、
「そうだと嬉しいな」
わたしは、熱い感情を込めて呟いた。
「小咲も色々と考えてたのね、意外だわ」
「ひ、ひどいよ~、るりちゃん」
「ふふ、冗談よ」
るりちゃんは「そういえば」と言ってから、
「小咲。そろそろ中間テスト期間だけど、あんた勉強――「あっ!完全に忘れてたよ!」
はあ、と溜息を吐くるりちゃん。
「だと思ったわ。一条君と桐崎さん、歩夢君と勉強会を開きましょう」
それと同時に、桐崎さんと一条君の関係が気になるから、それを見極めるということだ。「本音が半分に、私情が半分ね」といい、るりちゃんは花壇付近で会話をしている一条君たちを見つめた。
もう一つの要素としては「歩夢君と小咲を近場で観察したいわ」ということ。
「それじゃあ戻るわよ、小咲」
「わ、わかった」
そう言ってから、わたしたちは階段を下り教室に戻る。
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「一条君、桐崎さん、歩夢君。今日勉強会開きたいんだけど」
俺と楽、集と桐崎さんが雑談をしていたら、教室に入って来た宮本がそう口にする。ちなみに、場所は一条家が良いということ。
「俺は居候の身だし、楽が“承諾”を出せば構わないと思うけど。――で、どうだ、楽」
「いいんじゃねぇか。そろそろ中間期間だし」
「べ、勉強会っ。私も賛成だよ!」
ということで、今日の放課後一条家で勉強会を開くことに決まった。
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「お待ちしてやしたぜ、勉強会ですってねー!?」
楽が家の玄関に入ると、大勢のヤクザさんたちが整列していた。その人たちの手には、ボードを一人ずつ持ち、『おいでませ』の文字が映る。
「あ、ああ。茶頼む、竜」
「了解しやしたア!」
そう言ってから、厨房に向かった竜さん。
「……何であんたまで着いてくんのよ、舞子君」
「やだなー、るりちゃん。こんなに楽しいこと滅多にないじゃんか」
相変わらずの、集と宮本さんである。
楽の方は「何でそわそわしてんの?」「わ、わくわくしてないわよっ!」という会話であった。んで、小咲はというと、目を輝かせながら回りを見回していた。
俺は小咲の隣まで移動し、
「小咲、悪いが最初に俺の部屋に来てくれない?羽さんからのプレゼント預かってるから」
「う、うん。わかった」
そんなこともあり、皆が上がり楽の部屋に向かう途中で、俺と小咲は皆とわかれる。
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部屋の前に到着し、襖を開け一歩入ると、入った右側には小説が並んだ本棚で、左側には勉強机。奥に鎮座するのは大き目のテレビだ。んで、俺は部屋に入り、送られた物を小咲に手渡す。ちなみに、部屋に入った小咲は、珍しそうに回りを見回していた。
「これは、中国語の教本?」
「見たいだな。羽さんが言うには『小咲ちゃんも中国語を習得すれば、中国での会話は問題ないよ』だそうだ。まああれだ、中国語が必要になる時がくるってことじゃないか?てか、羽さんの無茶ぶりとも言えるかもな」
「な、なるほど」
そんなやりとりがあり、着替えた俺と小咲は、楽の部屋に向かったのだった。
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楽の部屋に入り、俺は空いてる席に座り、小咲は俺の隣に座った。
ともあれ、俺は持ってきたスクールバックの中から、勉強道具を取り出しテーブルの上に置いて、教科書を開き問題集をシャーペンを持ち問いていく。
「歩夢君。この問題わからないんだけど解ける?」
「ん。見せてみ」
俺は躓いている問題を見る。
「わかる?」
「ああ。この問題はな、この計算を先に問いてから、導かれた答えをYに代入するんだ」
俺は問題の解答を導き出す。
「やってみ。わからなかったら、いつでも相談してくれ」
「うん」
そう言ってから、俺と小咲は勉強を続けるのだった。
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「るりちゃん。あの二人、付き合ってたりするの?」
集がそう言うのは尤もだ。
歩夢が小咲に勉強を教えてる距離は、あと数㎝顔が動いたらキスできる距離感なのだ。
「どうでしょうね。でも歩夢君と小咲は、友達以上の関係なのは確かね。――それにあの距離が、歩夢君と小咲のいつもの距離感なんでしょう。きっと、二人の間に入り込める存在なんて一握りだと思うわよ」
「だろうね。ていうか、小野寺狙いの男子が玉砕していく様を思い出したよ……」
集の言う通り、あの親密さを見せつけられたら他の男子は諦めるしかないだろう。
すると、問題集を解き終わった千棘が、小咲が一段落したのを見た。
「ねーねー、ところで小野寺さん、小野寺さんは好きな人とかいないの?」
小咲は、想いを隠すことはなかった。
「――いるよ。大好きな人が」
小咲の言葉には、想いの強さが込められていた。
ここまでくれば大体察っせるのだが、千棘はその点鈍感だった、
「え、だれだれ?」
小咲は、頬を僅かに桜色に染める。
「え、えっと。――――わたしの隣に座る“神埼歩夢”君、だよ」
それを聞いた歩夢は、身悶えるような感覚に陥る。
歩夢は語っていないが――――歩夢も、小咲が大好きなのだ。二人は、お互いに想っているということだ。
「(す、凄ぇ小野寺。言い切ったよ)」
「(小咲の行動には驚かされるわ。中学時代はどこにいったのかしら)」
「(やっぱ、十年の想いは伊達じゃないねぇ)」
楽、るり、集と内心で声が上がる。
千棘は目を輝かせ、言葉を続ける。
「で、歩夢はどうなの?」
もちろん、歩夢も想いを隠さない。
「――――今すぐ一緒になりたいくらい好きだよ」
これはもう勉強会ではなく、公開告白である。
「もう理想のカップルじゃない。――私も、素敵な恋がしたいわねー……」
千棘がそう言うと、空気が凍った。
そう。小咲は事情を知っているが、集とるりはこの件は知らないのだ。
「……ジョークよ、ジョーク!ダーリンに、ちょっとイタズラしてみたくなったの~~!」
「こ、こら!ひ、ひどいぞハニー!?僕という人がありながら」
慌ててイチャイチャする、千棘と楽。だが、勘の良い集とるりには露見してるだろう。
すると、集が口を開く。
「ねぇねぇ、楽、桐崎さん。ちょっち聞いていいかな?」
「あ、ああ」
「い、いいわよ」
「じゃあ遠慮なく。――お前らって、ぶっちゃけ、どこまで行ってんの?」
「「ぶっー!」」
盛大に噴き出す千棘と楽。
「ど、どどどどどこまでとおっしゃると……?」
「そりゃあもちろんキ……」
「集、ちょっとこっち来い!あと歩夢、お前もだ!」
「ちょ!俺もかよ!」
千棘の問いに答えようとした集は楽に口を塞がれ、歩夢はというと楽に右腕を引かれて部屋を出ていったのであった。
小咲ちゃんと歩夢君、公開告白になりましたね(笑)
ちなみに、歩夢君は高校三年までの勉学は習得済みです。また、歩夢君と小咲ちゃんが付き合うのかは、未定ですね。
では次回(@^^)/~~~
追記。
お茶等は、歩夢君たちが来る前に運んでます。