《???》
「ここは……何処だろう」
「良く来たな、茨郎」
「誰ですか?貴方は…それにどうして僕の名前を」
「あぁ、自己紹介がまだだったな、私の名は''アルラ''。貴様の中にある神器に宿る意思。とでも考えておいてくれ」
アザゼルに安静にしているように言われた茨郎は大人しく深い眠りについたはずだった。だが、気が付くと茨郎は風が吹き抜ける草原に立っていた
そして、茨郎が周囲の状況を把握しようとしていると、唐突に背後から声を掛けられた。茨郎がその声がした方を振り返ると、そこには綺麗な紅色の髪をした女性が立っていた
その女性は自らの名、それから自分が何者なのかを正直に茨郎に話した。その内容を聞いた茨郎は納得した様子で自分の胸に手を当てていた
「神器に宿る……意思」
「まぁ、こうして話した所で貴様は目が覚めれば全て忘れてしまうがな」
「えっ?それってどういう事ですか?」
「今から説明してやるから少し待て」
「………はい」
アルラが不意に呟いた言葉を聞いた茨郎がその内容について聞き出そうと茨郎がアルラに近づいていこうとしていると、アルラは右手を茨郎の胸の中央辺りに当てて少し落ち着くように促した。茨郎はアルラに促されると大人しくなっていった
「先ず、ココは謂わば貴様の夢の中、というよりも精神の奥底といったところだ、そして、夢の中で起きた事柄を人は良く忘れるだろう?」
「夢の…中……だから、忘れてしまう、と?」
「そうだ、そして、貴様はこれからココで私と神器の使い方を修行して、無意識下に使い方を刷り込んで貰う」
「えっ、いやいや、神器の修行って、女性にそんな事し。ヒッ!」
「甘ったれた事を言うようならば貴様を叩き潰すまでだが?」
アルラに今居る場所について聞くと、茨郎は納得したのかアルラの右手から少し距離を取って頷いていた、その後にアルラが修行して貰うと言って茨郎が離れた右手に茨を巻き付け、それを鞭のようにしならせていた
それを見た茨郎は女性に修行の相手をさせられないとアルラに向けて言おうとしていると、その言葉の途中で茨郎の頬を掠めるようにアルラの右腕から茨が茨郎に向けて伸ばされてきていた
「分かったな?」
「は、はい…」
「宜しい、ならば先ず神器を出せ」
「えっと……どうやって出せば…」
「頭で出したい体の箇所を念じ、そのまま身体に移せば出るぞ」
茨郎がアルラに脅され、修行について異論を唱えられなくなっていると、アルラは追い打ちをかけるかのように茨郎に了解を聞いてきた
茨郎はその返答にはいと言いつつ頷き、その返答を聞いたアルラは優しい表情を見せつつ茨を引っ込めていき、茨郎に神器の使い方を教え始めた
「こ、こう…ですか?」
(うぅむ、少し形が歪だな……まぁ、最初から完全には出来ないか)
「あの……アルラさん?」
「ん?あぁ、始めてやった割にはしっかり出来ているな。それから私の事はアルラ、もしくは、親愛を込めてアルラお姉さんと呼ぶが良い」
「……それじゃあ、アルラ、次はどうすれば良いんでしょうか?」
茨郎がアルラから聞いた神器の出し方を実践してみると、茨郎の左腕にある程度丸みはあるが、硬そうな見た目の茨が現れた。それを見たアルラは少し不満を抱きはしたが、それを口に出すことはなかった
「今日はそれを持続させ、展開する練習だ。上手く全身に張り巡らせられればこの前のように傷を負わなくて済むようになる」
「分かりました!頑張ります」
「良い返事だ。まぁ、貴様が起きるまでおおよそ後18時間は存在するがな」
「……はいっ!?じゅ、18時間?」
アルラに次は持続と展開範囲の拡張の修行を言い渡されると、茨郎は自身の体に歪かつ空間がやや空いた状態であるが茨を巻き付かせた
が、アルラが次に口にした18時間という時間を聞いた途端に茨に空いていた隙間は大きくなり、茨郎はぽかんと口を開いて驚いていた
「ん?あぁ、言い忘れていたが、この夢の空間内部の時の進みは遅くてな。三倍程現実の方が早く時間が進む」
「………………そ、それって僕は大丈夫なんでしょうか?」
「何、私も鬼ではない。限界まで持続し、休みを挟みつつまた展開をすれば良い。時間が許す限りはな」
「は、はい…分かりました」
アルラに休みを挟みつつ頑張るようにと言われると、茨郎は言われたとおりに自分の限界近くまでは茨を展開し続けた。そして、疲れれば休みを挟んでから展開を再開させていった
そんな風にしていると、修行の時間は着々と進み続け、あっと言う間に時間が通り過ぎていった
「そこまで!」
「ハァ………ハァ………ハイ…」
「良く頑張ったな。てっきりすぐにでもギブアップするかと思っていたんだがな」
「だって…ンッ…頑張らないと…ハァ…正義は…フゥ…貫けないから……」
「正義…か、ならば今後もその考えを胸に抱え続けておけ。また鍛えてやる」
「分かり…ました…有難う…御座います……」
「うむ、それではお早うの時間だ。またな茨郎」
「はい…また会いましょう、アルラ」
茨郎は結局、十回以上は休憩を取りはしたが。それでも自分が出来る精一杯は茨を展開し、持続させていき、完全に疲弊した様子だった
そして、アルラはそんな様子になるまで頑張った茨郎を褒め、そして、また会おうと約束し、茨郎は目を覚ました
《アザゼルの自宅》
「んんぅ……ファーァ……」
(良く寝た筈なんだけど、何でだろ、すっごい眠い、それに何か忘れてるような……)
「よぉ、起きたか茨郎。っと随分眠そうだな?俺が出てってから何かしてたのか?」
「そんなはずは無いんだけど……」
「まっ、どうせ傷治すのとかで疲れが出たんだろ。飯は持ってきてやるからそれ食ってもうちっと寝てろ」
「いや……でも、起きておかないと…それに悪魔とかの知識をもっと知っておきたいし」
「あー……なら、また飯を食いながら俺の話を聞けよ」
「…分かった」
茨郎はアルラとの修行終了後には夢の中の出来事をすべて忘れてしまった様子で目を覚まし、自分の体にある謎の眠気や疲労感などに疑問を抱いていたが。その考えに割り込むかのように部屋にアザゼルが入ってきた
そして、アザゼルにまた寝るように促されたが、茨郎は悪魔等の知識を深めたいと言い、アザゼルはまた茨郎の布団の上にご飯を持ってきて、茨郎はそれを食べながら悪魔等の講座を受けていた
「そういや、駒王学園にリアスって名前の女子居るだろ?」
「あっ、うん。三年に」
「ソイツと生徒会は悪魔だから、一応注意はしとけよ」
「えっ、あっ、はい……って、やっつけたりとかは」
「要らねぇよ、そんな事すりゃまた戦争だ。そんなのは俺等もアッチも望んじゃいねぇから眷属とかにされないようにだけ注意しとけ」
「はい」
「まぁ、それよりお前さんはとっとと傷を治すのに集中するために寝てろ」
「はぁい……おやすみなさい」
「あぁ、お休み」
講座を受けながらアザゼルの話を聞いていた茨郎は自分の身近にいた悪魔の存在に驚きつつも、アザゼルの命令をちゃんと聞き、そして、傷をささっと治すためにもとまた深い眠りに落ちようとしていった
そして、アザゼルが退室して五分後。夢の中での修行で余程疲れていたのか茨郎はやすやすと眠りに落ちていた。今度は修行をする事も無くぐっすりと眠っていた