茨魔堕天記   作:アルクロ

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第七輪「逃亡」

<廃教会内部>

 

(あれは……兵藤一誠…あぁ、あの娘を助けに来たのか…それにしても…)

 

教会の地下からレイナーレに肩を貸されつつ上がってきた茨郎の目に写ったのは、教会へと踏み込まんと入り口に立っている同級生の兵藤一誠の姿

 

そして、それとは別に教会内部を動き回り、フリードと剣戟を繰り広げる高身長の金髪の剣士と、教会内部の長椅子を両手で持ち上げ、今にも投げてきそうな雰囲気を漂わせている小柄な白髪の少女の姿だった

 

「よっ、ほっ」

 

「はっ、セイッ、やぁぁ!」

 

(アレは…同級生の…木場祐斗(きばゆうと)?それに…)

 

「退いてください…」

 

「うっひょぉぉ!あっぶねぇ〜」

 

(アレは…一年の…塔上小猫(とうじょうこねこ)ちゃん?何であんなメンツまで…)

 

レイナーレに肩を貸され続けつつ周囲を見回した茨郎が何時の間にかやってきていた兵藤一誠以外の人物に驚きをやや顕にしていた、すると、防戦一方のフリードは長椅子を躱した後に息を少しだけ切らしつつも口を開き始めた

 

「いんやぁ、二人がかりで来るとは、汚い!流石悪魔やる事が汚いねぇ!」

 

「えっ?悪魔!?」

 

「おやおや坊っちゃん、上がってきてたんですかぃ?って事は計画は」

 

「止めたわ、トワイライトヒーリングを手にしたところでワタシは至高の堕天使になれないって分かったもの」

 

「ほっほぉー、それなr」

 

茨郎を挟んでレイナーレとフリードは茨郎が止めた計画の顛末について話し始めた、が、それと同時に教会入り口の一誠が叫び声のような怒号のようなものを上げ始めて

 

「レイナーレぇぇ!」

 

「危ない!」

 

「キャッ!」

 

「ふぅっ……はぁ…はぁ…」

 

そして、少しの間叫んだ後に一誠はレイナーレに向かって走ってくると同時に左手に紅い手甲の様な物を出現させて殴りかかってきた

 

それを見ていた茨郎は肩を貸してくれていたレイナーレを突き飛ばし、息も絶え絶えな状態なのにも関わらず、茨で包まれた右手の掌で一誠の一撃を受け止めた

 

「オマエ…堕天使の仲間か」

 

「そうだよ…だから…レイナーレさんは殴らせない」

 

「離しやがれ!俺はレイナーレからアーシアの行方を聞き出さなきゃならないんだ!」

 

「アーシア……あぁ、金髪のあの娘なら…地下の奥に居るよ…ちゃんと生きてる…」

 

一誠の拳を受け止めた茨郎は息を切らし続けつつも一誠がレイナーレから聞き出そうとしていた情報を伝え、それと同時に一誠の拳を手離した

 

「ただ、あの娘は疲労してたから早く行ってあげた方が良いんじゃないかな…」

 

茨郎にそう言われると一誠は茨郎の脇を通り抜けて教会の地下へと下る階段を猛ダッシュで駆け抜けて行った

 

(これで兵藤は問題無し……だけど)

 

「坊っちゃん坊っちゃん、耳を塞いどいて下さいな」

 

「えっ?……わ、分かりました」

 

一誠が地下へと駆けていった姿を見届けた茨郎が振り返ると、そこには自分達を逃すまいという気配を漂わせた木場と小猫の姿があり、その二人をどうやって切り抜けようかと茨郎は困っていた

 

その時、フリードが小さな声で茨郎に耳を塞いでおくように伝えてきて、茨郎は言われた通りに耳を茨で塞いだ

 

「そんじゃあ、此処にはもう用はねぇし、旗色も悪そうなんで、バイ、チャラバ!」

 

「くっ!」

 

「うっ…」

 

茨郎が耳を塞ぎ終えると同時にフリードは隠し持っていた閃光手榴弾を地面に叩きつけた、すると、周囲は眩い光に包まれ、木場と小猫は光を手で遮っていて何も見えなくなっており、フリードはその隙にレイナーレの手を引き、茨郎を担いで教会から出ていった

 

「いやぁ〜、割と上手く行くもんですなぁ」

 

「貴方ねぇ、あぁいう物を使うんなら先に…」

 

教会からの脱出に成功したレイナーレは閃光手榴弾を投げたフリードに文句を言おうとフリードへと近づいていたが、その時茨郎達の周囲をピリピリとした空気が包んできた

 

「……まだ…居たみたいね……」

 

「もう閃光手榴弾はねぇんだけどなぁ……」

 

「空気が……痛い…」

 

三人がピリピリとした空気に体を少し竦めていると、教会の周囲の森の中から草を踏みしめて近付いてくる足音が二つ、聞こえてきた

 

茨郎がその音に反応して恐る恐る足音が聞こえる方向へと視線を向けると、そちらからは紅色の長髪の女性と、黒髪のポニーテールの巫女服の女性が歩いてきていた

 

(アレは……リアス・グレモリー先輩と姫島朱乃先輩……)

 

「いやぁ〜、まだこんな大物が残ってたんですなぁ……ヤッベェ…」

 

その二人の接近に、周囲の二人の反応や周りの空気などから茨郎はかなりマズイ状況に陥った事を悟りつつもどうにかこの場から逃げる為の算段を必死に考えようとしていた。すると、茨郎の頭の中にアルラの声が響くように聞こえてき始めた

 

『茨郎、その二人を逃したいか?』

 

「えっ、まぁ…レイナーレさんも反省してるようですから…逃してあげたい、ですけど…」

 

『ふむ……ならば少しの間私に身体を貸せ、そうすれば私がどうにかしてやろう』

 

「貸すのは別にいいですけど。どうにかって、どうやっ、わっ!」

 

茨郎の頭の中に響くように話しかけてきたアルラは茨郎にレイナーレやフリードを逃したいかを確認してきた、そして、茨郎の反応を聞いたアルラは茨郎に体を貸すように提案してきた

 

すると、茨郎はアルラの提案を了承すると同時にどうやってこの状況を切り抜けるのかを聞き出そうとしたが。アルラは茨郎の了承を聞くと同時に茨郎の意識を引っ張り、茨郎の体の主導権を奪うように入れ替わった

 

「………そこの堕天使と、白髪神父」

 

「な、何かし……えっ?」

 

「早く逃げよ、あの二人の相手は私がしておこう」

 

「んじゃ、俺ちゃんはお言葉に甘えて!自分の命のが優先っすわ!」

 

茨郎と入れ替わり終わったアルラはレイナーレとフリードに逃げるように命令するように喋り掛けた、その言葉に反応した二人はレイナーレは驚いた様子で固まっていたが、フリードは我先にと走り去って

 

「貴様も早く行かんか」

 

「えっ、ちょっ、キャアァァァ!」

 

「逃がすと思ってr!」

 

「やらせはせんよ?紅髪の」

 

そして、驚いた様子で固まっていたレイナーレの様子を見たアルラは左手をまるで指揮者のように動かした、すると地面の下からやや太い茨が現れ、レイナーレの身体を巻き取るとそのままフリードが走り去って行った方向へと投げ飛ばした

 

それを見ていたリアスはすぐさまレイナーレに攻撃をしようと魔力を打ち放ったが、その魔力はレイナーレに当たる事なく、突如として地面の下から現れた茨の壁によって防がれてしまった

 

「アナタ……ワタシの邪魔してタダで済むと思っているの?」

 

「フフッ、小娘二人に負けるほど私も廃れては居らぬ」

 

「小娘ですってぇ!」

 

「あらあら、これはお仕置きが必要なようですわね!」

 

自らの攻撃を防がれた事でやや頭に血が上った様子のリアスはアルラの方向を向き、魔法陣を展開していた

 

だが、アルラはその魔法陣に対してもリアスに対しても一切怯む様子も無く、リアスと朱乃を嘲笑気味に挑発し、その挑発を聞いた二人はアルラに向けて同時に魔力をそれぞれに放ち、アルラが居た場所には砂煙が立ち昇った

 

「達者だったのは口だけだったみたいね、さっ、行くわよ朱乃」

 

「はい部ちょ」

 

「キチンと相手の状態の確認もせずに勝ちを確信とは…だから私は貴様等を小娘と呼ぶのだ」

 

「なっ!?」

 

砂煙により、攻撃が命中したと思った二人はアルラへのダメージなどを確認すらせずに腰のあたりから黒い悪魔の羽を出して飛びさろうとしていた

 

が、二人の飛行は地面から生えてきた巨大な茨により阻害され、それどころか全身に絡みつかれた後に地面に叩きつけるかのように引っ張られていった

 

「自らの力に自信が有るようだが、慢心をしていてはこのように足下を掬われるぞ?」

 

「くっ……」

 

「さて、貴様等には少しの間ここに」

 

「テメェ!リアス部長に何してやがる!」

 

リアス達を上空から引き摺り下ろしたアルラはリアス達を行動不能にしようとリアス達に近付いた後に二人に向けて手をかざそうとしていた

 

その時、アルラが宿っている茨郎の顔を右側から赤い竜の様な手甲に左手が包まれた兵藤一誠が殴り、茨郎の付けていた仮面の一部が欠けた

 

(ふむ、少しこの二人に集中しすぎたか…流石に五人も相手取るのはこの身体では難しいな)

 

「何とか言いやがれ!リアス部長と朱乃さんをこんなエッ、んんっ、酷い格好にしやがっ、って、待ちやがれ!」

 

「ふんっ、エロ小僧如きに待てと言われて待つ阿呆は居らん、では、さらばだ」

 

右頬の辺りを殴られて、やや後ろに後退したアルラは周囲の状況を把握し終えると、流石に多勢に無勢と判断し、両足に魔力を回して戦線を離脱していこうとした

 

その際に木場祐斗と塔城小猫が追いかけてこようとしていた為、アルラはすかさず薔薇の花弁を周囲に目くらましにばら撒き、無事に戦線を離脱していった

 

「スミマセン部長…」

 

「良いのよ裕斗、それにしてもあんな隠し玉がこの街に…」

 

協会近くにて茨郎含む堕天使達を逃したリアス・グレモリー眷属達は、茨郎が去っていった虚空を眺めていた

 

その後、自宅まで帰り着いた茨郎はアルラから自分の体の主導権を返してもらった後に、身体に溜まった疲労からか食事や風呂を終えた後、泥のように眠りについた




(お久しぶりの更新です…すごく長いこと更新せずすみません…ただ、ここからの進展がちょっと思いつかなくてスランプというやつです。なのでちょっと新規が出てくるまでまたお待ちいただく事になるかもしれません…)
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