鉄血もグリフィンも争わない平和な世界を死に損ないが満喫するだけ   作:葉桜さん

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今回はちょっとシリアス風味。
予約投稿をミスしました。()



温和日常V:夜空の下の記憶語り

グリフィン・鉄血合同宿舎。

もはや溜まり場と化している最上階。

 

 

 

今日は珍しく、いつもの喧騒がない。

それもそうだ。

もう日が沈み、月が雲から顔を出している頃だ。

さすがにこの時間まで人の部屋で騒ぎ立てるやつはいないと思うが……いや、AR小隊のバカ姉貴(M16)や処刑人……アルケミストやスプリングフィールド(妹が可愛すぎる同盟)はそうしかねない。

 

 

 

久々の静寂。

特にはしゃぐことも無く、バルコニーで夜風に当たっている。

欠けていない完全な月が外を照らす。

本当は、適度にこうであればいいんだがな。

 

 

 

そんな中、日中の様に1つ。

自分を呼ぶ電子音。

……今日は久々に気分がいい。

お出迎えしてやるとしようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「申し訳ありません、なかなかスリープモードに移行出来ないもので」

 

 

 

意外な客だった。

何時もは誰かしらに付いてくる人物が、珍しく1人でこの部屋へやってきた。この世界でも、初めての人物。

いつも通りふよふよと浮いたり、そのまま地に足をつけたり。どことなく落ち着かない様子だ。

 

 

 

「いや、そういう時は誰だってある。……昼間みたいにバカ騒ぎしなきゃ別に上がったって構わない」

 

 

 

スケアクロウ。

鉄血ハイエンド勢の1人にして、自分に関する様々な関わりを持つ人形だ。普段はガスマスクを被っているようだが、今日は珍しくそのままの素顔を晒している。

彼女は隠すほど醜い顔では無いと思うが。

寧ろ、よく整った魅力的な容姿だ。

眠れないようだったから、眠る前の状態のままこちらへ訪れたのだろう。

 

 

 

たまには、荒廃した夜景でも見ながらお話しましょうか。そんな1度は言ってみたいようなセリフを微笑みながら口ずさみ、2人でバルコニーへと移った。

 

 

 

 

 

 

 

「……こちらに来てから早1ヶ月、どうですか?元いた世界と比べて」

 

「……やっぱりここは平和だよ。この一週間の間の出来事だけでも十分実感できるほどにはな」

 

 

 

フェンスに背中を預け、天を仰ぎながらそう言った。みんながみんな、あの事件がないことをきっかけに穏やかになっている。

鉄血ハイエンド達に敵意が無くなったのは勿論、人形虐待に定評のあるSOPMODもその凶暴性は全く無くなっていた。

416はM16と殺し合いを行うほど互いに嫌っていたが、ここではただライバル視しているだけで、殺そうとするほどにまでは至っていない。そんな具体的な例があるのだから、ここが平和と思えない理由がない。

 

 

 

いや、むしろ自分がたどってきた歴史が、あまりに残酷すぎただけなのかもしれない。

人間と人形が殺し合うだけではない。同じ人形同士が殺し合うなんて酷い有様だ。それこそ、その人形たちを間近で見てきた俺からすれば、地獄絵図だ。

とても苦しかった。

一緒に過ごした仲間が壊れていくところを見る度、俺の心にヒビが入る気がした。苦しんでいくところを見る度、俺の精神が悲鳴をあげていた。

 

 

 

それでも、俺は愚かにも死を恐れた。

人形たちの幸せが自分の幸せであり、人形たちの願いが俺の願いだと、そう純粋に思っていた俺は馬鹿だったと思い知らされた。俺はやはり所詮ただの人間。恐怖には打ち勝てないと知った時、酷い無力感と虚無感に襲われた。

俺は、結局自分本位のエゴで動いていた。

人形達の為と言っておきながら、最後まで彼女らの為に生き、そして彼女らに殺される道を選べなかった。

 

 

 

スケアクロウは、心配そうな顔でこちらを向く。

……ああ。今の俺はきっと酷い顔をしている。

あまりに、生きていないような壊れた目をしているのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……貴方の居た場所での私は、どんな人物でしたか」

 

 

 

スケアクロウは、思い出させるのを申し訳なさそうにしながらも俺の記憶の中の彼女の事を聞いてくる。

 

 

……変わってしまう前は、大して変わりがないよ。

 

 

そう答えた。

いつも何処か静かで丁寧で。

それの筈なのに、時々天然で、時々お茶目で。

愉快な奴だったよと答えた。

ただ、今のスケアクロウの方が、若干天然さが強いかもなとも答えた。そんな答えを聞いた彼女はそんなことはありませんわと頬を膨らませてちょっと拗ねる。

 

 

……そうだ。静かで無表情だと思ったのに、意外と表情豊かでもあったなと付け加えた。

そこに関しても、今の方がもっと表情豊かだが。

もしかしたら、普段のガスマスクのせいで分からなかっただけであって、本当は俺が思う以上にもっと喜怒哀楽がハッキリしていたのかもしれない。

 

 

 

「……そう、ですか。……辛いことを聞きますが、変わってしまった後の私は……どんな酷いことになっていましたか」

 

 

 

曇った表情。

それでも、彼女は聞きたがっている。

なら、答えるしかないだろう。

せめてもの、昔の罪滅ぼしとして。

 

 

 

本当に、穏やかだったのが嘘の様に機械的になってしまった。自分の事も覚えていなかった。その姿を見た時、俺は疑った。本当にお前は、俺の知っているスケアクロウだったのか……?未だに俺は信じられていない。

あんな冷徹な目をしたアイツが、本物だとは思いたくなかったよ。だんだんと、自分で傷跡を抉る感覚を覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……それでも、私を止めようとしたのですか」

 

 

 

別の世界線の自分が、目の前にいる心優しい人物を撃ち抜いた。その事実の存在が、彼女の罪悪感を煽る。

死ぬと分かっていたのに、なぜそれでも止めようと思ったのか。彼女はそれを俺に質問した。

とんだ質問攻めだ。

 

 

 

「……”スケアクロウ”はな、向こうでも、こっちでも、一番最初に出会って、一番最初に話した奴なんだ。こっちに至っては、助けられさえしちまったしな」

 

 

 

だから、是が非でも止めたかったと答えた。

 

初めて、鉄血工造で整備をした相手……いきなりハイエンドの整備をするだなんて思ってもいなかった。

テストや電子戦適性を高める為の調整を施した後、メンテナンスを行う。その時のメンテナンス役に抜擢されたのが俺だった。

作業は難なく終わったさ。

俺以外に優秀な奴が集まっていたからな。

 

 

 

でも、俺はその結果が本当かどうか不安になって、ずっと経過を見守っていた。自分の腕が本当だったかどうか。間違っていないかどうか。俺は自信家でもなんでもない。逆に不安症だったんだ。だから、ずっと見守ってた。

 

 

 

アイツがしばらくしたら、ぱっちり目を開けた。そばで眠ってしまっている俺を見て、きっと首を傾げていたよ。起き上がったことを確認した俺は、メンテナンスに問題はなかったし、失敗もしていないと安心した。

でも、何を勘違いしたか、こう言ったんだ。

 

 

 

『……初めて会う人形だと言うのに、心配してくれていたのですか』

 

 

 

……なんてな。

別にその時、俺はアイツを心配していた訳じゃない。ただ、自分のやったことがとんでもない事だったらどうしようとビビってただけだ。

でも、アイツは勘違いしてた。

正面から堂々と、微笑んで礼までしてな。

そこで、他愛もない話をしたよ。

いつからここに来たのか、どんな事が出来るのか。

そんな話から、どうでもいい話まで。

それから何かと、人形とのコミュニケーションが長所と思われるようになって、色々なハイエンドたちとも交流するようになった。当時にしては異質だったんだってさ。

人形相手に、人間と変わらず話が出来る相手は。

 

 

 

初めて、仲良くなった相手。

初めて、話せた相手。

アイツ(おまえ)には、色々な初めてを受け取ったよ。

だから、酷く辛かった。

自分の敵として目の前に現れた時、どうしようもなく絶望した。

だから、ここで初めて会った時も酷く動揺した。

最初は戻ってくれたのかと思った。

でも、そうじゃなかった。

それでも、前のようなスケアクロウが居て、それがとてつもなく嬉しかった。勿論、他のハイエンドたちも同じだ。

 

 

 

「……俺な、今までずっと悪夢を見てたんだ。ここに来る前はさ」

 

 

 

スケアクロウは何も言わずに聞く。

その表情が、さらに不安と心配に満ちる。

……紛れもなくこれは事実だ。

眠る度に、悪夢を見る。

自分が一緒に過ごしたものたちの悲鳴。

断末魔、破壊音。

鳴り響く無数の銃声が、ここまで恐ろしいものだとは思わなかった。いつも日常的に聞いていた音が、眠りの中で首を絞めてくる。

一緒に笑いあった相手が、自分に銃を向ける夢。

酷い恐怖と、酷い絶望が俺を覆った。

 

 

 

 

まぁ、こんな平和な場所に来てからは、段々とマシになってきてる。それでも、止まることは無いんだが。

……ビビってるな、俺。

1人で語って、1人でビビって。

何をやっているんだろうなと呟いた。

 

 

 

そんな風に呟いた俺の手に、温かい感触がした。

冷たいようで、あたたかい。

隣を見れば、目を瞑った彼女がそっと手に触れていた。

 

 

 

「……大丈夫」

 

 

 

辛いなら、私たちは傍に居ますわ。

だから、1人で抱え込まないでください。

辛いなら、この場所のみんなが支えてくれますから。

そんな優しい声が、俺に響いた気がした。

 

 

 

「辛かった分、今度は君が報われなければ割に合いません」

 

 

 

その言い回し、俺の受け売りか?

そうやって冗談のように笑った。

いいえ?どうでしょう?

そんな風に向こうも冗談のように笑う。

……本当に、どこからどこまでも……

 

 

 

ダメだ。

普段から調子に乗っている奴がこんなに真剣な顔をしちゃあせっかくのイメージが台無しだ。

俺は常に、皆と騒ぐ皆にとっての馬鹿な友になれるように立ち回っている。そんな俺が、こんなに真面目にしんみりした顔になっちゃいけないな。

 

 

 

「悪い。せっかくの静かに話せる貴重な時間……辛気臭い話で潰しちまったな。俺のイケてる顔が台無しだ」

 

「いえ……そのお人好しの裏に隠れた真実が見れたのは、私にとって十分な成果です。……たまには、弱い一面を見せることも大切ですよ」

 

 

 

本当はここまで話すつもりは無かったのだが。

辛いことを全部吐き出してしまった。

……あぁ、もう。

本当にこいつと言うやつは。

いつでも、俺を狂わせやがる。

 

 

 

「貴方が向こうにいた頃からお世話になっている分、恩返しくらいさせて下さい……”リオン”」

 

 

 

……ありがとう、スケアクロウ。

 

 

 

 

 

その日、いつもでは感じない程に。

救われた気がした。

夜空の下の記憶語りというのも、時には悪くないのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そういえば今、君って……

あと、俺を呼び捨てにした……?

そんな風に聞いて振り向くが、スケアクロウはそっぽを向いて知らんぷりだ。……誤魔化しきれてないぞ。

私はそんなこと言ってませんー。気のせいですー。そんないつものスケアクロウらしからぬ緩い誤魔化しが聞こえてくる。……お前もちょっとは、素の姿を見せてくれているのか。

そんなふうに思うと、少し嬉しくなる。

 

 

 

その日以降、ちょっとは前のように冗談を言い合えるような仲になれた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……スケアクロウがいつも以上に感情を見せてくれるのは嬉しいが、周りの微笑ましいものを見るような目が地味に気になるようになったのは、また別の話だ。

 

 

 




・最近ネタ切れ期間に入りました。
今回はリオンの過去について触れてみました。
少し文章が纏まっていないけどこういう話が書いてみたかったんです……orz
今回のキャラ紹介(1人)です。

スケアクロウ:この世界に飛んできたリオンを保護した第1発見者。本文中にもあるように結構天然だけど茶目っ気のある子。結構色々誤魔化したりするけど下手。いちいち誤魔化しかたや知らんぷりとかが可愛い。(作者談)

正直口調が迷走気味。
お嬢様口調にしても何か違う気がするし、かと言って敬語ばかりでもなく。結構難しい。
色々な人のスケアクロウを参考にしています。
が、性格は完全に想像のうち設定です。


・感想が最近増えていて嬉しく思います。そういったところで読者の方と交流できるようになってからモチベーションがすごく上がった気がします。(なおネタ切れ←)


・次回はネタ切れにつき間が空くかもしれません。頑張ってネタを調達します。こんな話がみたいなどというリクエストがありましたら、頑張って書いてみようと思います。


次回もお楽しみに!
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