鉄血もグリフィンも争わない平和な世界を死に損ないが満喫するだけ 作:葉桜さん
グリフィン・鉄血合同宿舎。
もはや説明する必要も無い部屋。
今日は珍しく、技術屋としての勉強中だ。
俺は基本、修理やメンテナンスを専門としている。
それ以外の技術はからっきしだった。
何せまだ俺は20代に入って間もない。
技術を学ぼうと思ったのはまだガキの頃。
第三次世界大戦が起きたあと、人形という物が現れてすぐの頃にその技術を学びたいと思ったはずだ。
……そのきっかけは、今やわからないが。
そんなガキが覚えられるものなど1つを深く掘り下げるのが限界だ。俺はマルチタスクができる方ではない。
故に、俺は修理技術に関する道へと行った。
何故だろう。これも覚えていない。
いや、覚えていないというのは違う。
曖昧なのだ。鮮明には覚えていない。
ただ、人形を助けたい……そういう動機だったのは覚えている。だが、それ以外が分からなかった。
何をきっかけにそう思ったのか。
そこがどうしても思い出せないのだ。
……柄にもなく、また考え込んでしまった。
最近になって、妙に気になる。
殺伐とした所から平和な所に来たせいだろうか。
殺伐としていないから、自然とそういう風に頭が回ってしまうのかもしれない。悪癖だ。
俺はここで平和に過ごすと決めたのに。
……元の世界のアイツらはどうしているだろうか。
元々の敵を心配するというのも、どうかとは思うが。
どうも、こういう所の心配性は治らないらしい。
……この話は置いておこう。
頭の片隅にもあまり入れておきたくない。
なぜ別の技術を学ぼうと思ったのだろうか?
ここに来てから、整備以外の仕事も見てきた。
人形たちを支えるための装備の開発などに興味を何故か持ったのだ。なぜかと言われれば……
「おーっす!アーキテクトさんじょ〜!」
……大体この
完全におちゃらけている。見るからにハイテンションだ。
あれ?真面目な雰囲気ぶち壊ししちゃった?とすっとぼけて言っているが本当にその通りだ。
とは言ったものの……
「……いや、よく来てくれた。同志
思わなかった煩くも嬉しい来客に手を伸ばす。
そこには、初めて顔を合わせた時と同じ構図。
固い握手。謎の共鳴。妙な同族感。
そんな彼女こそ……
天才……いや、天災技術屋人形、アーキテクトだ。
「いやー、急に押しかけたのに意外とすんなり入れてくれたね?普段ならやめてくれ!って結構拒否られるって聞いたけど?」
まぁ、それは言えている。
普段の俺なら、こんな1番騒がしい奴を入れない。
実はこのアーキテクト、鉄血ハイエンドの中でもかなり騒がしい部類に入る。俺の胃痛が加速するくらいには。
本当は、もう1人……これの見張り役の相方がいるのだが、大方そいつから逃げおおせてこっちに来たのだろう。
今の俺はどんな精神状態をしている?
お前、ついに壊れたかと言われそうだが。
俺が彼女を招き入れた理由は単純。
俺のつい先程勉強をしていた分野の技術に関して、アーキテクトが非常に良く知っているという理由だ。
最近になってやってきた人形だが、アーキテクトは兵器製造や設計などの技術を蓄えたハイエンドになる。
俺が今自主的に学んでいたところもそういう分野だ。
そして何よりも……
「見てみてリっさん!新しい兵器案!」
「……こいつぁ……すげぇな……!」
このアーキテクト、ロマンというものを分かっている。
年頃の男が燃えるような、そんなツボを分かっているとんでもない理解者なのだ。通りで話が合う訳だ。
今アーキテクトにみせてもらっているのはドラグーンの二足歩行ロボットに装備する兵器らしい。
複雑な機構、無骨なデザイン。
そして何よりも、一撃に賭けた最強のコンセプト。
さすがアーキテクトだ。
駆動時の挙動とかの予想まで書いてある。
抜け目がないな。
ただ……
「これさ、E.L.I.D.相手ならまだしも、生身の人間相手じゃヤバいだろ……大変なことになるぞこれ」
あからさまに口笛吹き始めた。
流石にこのご時世戦車とか使うのも一苦労だというのに対機械特化の武器を作ってもアレだよなとなってしまう。
かと言ってそれを生身の人間に打ち込むなんてとんでもない。そいつは風穴空くどころか下手したら破裂する。そんなものを見た奴からするとトラウマになりかねない。
いや、皆戦うために作られたから大丈夫か?
いやでも心配にはなる。
あと、実用的かどうかも作るとなれば考えなければならない。ドラグーンはある程度の耐久性を持っているとはいえ、そこまでの近距離に高速で向かえるほどの機動力はない。
「いーじゃないの!かっこいいは正義!正義は全てにおいて優先される!つまり、かっこいいものは全てに優先される!」
「それじゃ暴論だぞ!?」
まぁ、かっこいいは正義には同意するんだが。
アーキテクトはブーブーと不満を漏らしている。
だってしょうがないじゃん。
巨大な二足歩行型の高速移動出来る機械が空中を飛び回って撃ち合ったり斬り合ったりする世界じゃないもの。
いつの間にか水の中で推進器が壊れてそのまま沈没するなんて世界線じゃないもの。
「そういや、この設計図のここってどういうことだ?」
「んー?あー、それはね……」
本題のことももちろん忘れていない。
正直なところを言うと、アーキテクトはおちゃらけているからこそ、意外に説明が分かりやすいというかなんというか。想像のしやすい説明をしてくれるものだから、すんなりと概要が頭の中に入ってくる。
彼女は意外にも、阿呆では無い。
ふざけた様に見えるが、実際に頭がいい。
そうでなければここまでの事はやってのけない。
……ただ、本気を出してくれるところが限られているが。
「……ってわけ!わかった?」
「なるほど、バッチリだ」
それにしても彼女、前の鉄血ではイントゥルーダーと同じく見たことがなかった。
初めて会った時に説明されたのだが、彼女とその相方のもう1人はこの世界でも本来この時期に完成する予定ではなかったらしい。が、妙に開発が順調に進んだ挙句I.O.P社の協力も得られたからか予定より早く完成したようだ。
それでこれだから凄いものだ。
鉄血の開発陣は化け物か。
「……にしても、よくこんなもん思いつくよな。元のモデルはあるとはいえ、ほとんどこの機構オリジナルじゃないのか?」
「うん、威力高くするために大分変えてるねぇ」
良くもまぁこんなものを思いつくものだ。
最近ではこんな武器はもう使われないどころか存在を知っている人物さえ知らないのではないか。
それの大元を理解した上でさらに改良するとは……
「いやー、旧世代のゲームにハマっちゃってさー」
いろいろと昔のデータを漁っていたら、かつて存在した電子遊戯……いわゆる、テレビゲームのデータを発掘したらしい。それを何となく遊んでみたら、どハマりしたらしい。
鉄血側の一室から何かとはしゃぐ声が聞こえたのはそのせいか。とっつきサイコー!とか、コ〇マキャノン最強!って聞こえてたのはお前のせいだったのか。
お陰でこちとらスケアクロウから最近隣がうるさくて眠れないって相談受けたんだぞ!ダメでしょ!
まぁ、そのおかげでこっちは素晴らしいものを見せてもらっているわけだから、一概に悪いとは言えなくて困るんだが。
何かと話す彼女は楽しそうだ。
むしろ、真面目そうな雰囲気になっているところが想像つかない。
「我々戦術人形にもさ、ブレードを導入するべきだと思うんですよ私!」
「銃とリンクさせてんだからそんなもん付けたらごちゃごちゃになるんじゃないか?」
相変わらず凄いことを口走るやつだ。
というか、お前の言っているそれはちゃんと実現できるものなのか……?という根本的な問題もあるが。
戦術人形に新しい装備を……とは確かに思ったことはあるが、人形のシステム上問題が起きかねない。
大雑把に言うと、戦術人形が銃の名前を冠しているのはその中を認証してその個体に登録しているからだ。
ある程度のサブアームならまだしも、恐らくアーキテクトが言っているものは装備させてしまったら不具合が生じかねない。俺も予想できないエラーを吐いてしまうだろう。そうなったら俺が治すことも困難になる。
そのことに関してはあまり同意出来なかった。
「だよねー……認証システムに上手く干渉しないものならいいんだけどさ」
よくまぁ人形本体がここまで話をできるものだ。
さすがは天才さん、と言ったところか。
相変わらずロマン武器の魅力を語っているが。
そこまで必死にならなくても。
良さはわかる。良さは。
「こんどリっさんもやろーよー、ゲーム。色々といい影響受けるよ?」
「まぁ、時間と余裕があったらな。あと、お前のそれはアイデア的には良い影響かもしれないが思考的にはアウトだろ」
妙なツッコミを入れながら、専門的な話を広げている。
……今思えば、記憶にもないというのにあって直ぐにここまで打ち解けるというのも珍しいな。
コミュ力お化けか?
まぁ、明るいのが取り柄とか言ってたし……
そんな話や思考を巡らせている時に、インターホンが鳴った。人が来るのはこいつも含めて珍しいことではない。
最近は人が来る事に慣れているからか、オートロックを解除している。それなのにも関わらず律儀に呼び鈴を鳴らす律儀な人形は限られているが……
「……ごめーん、私用事思い出した★」
静かに肩に手を置く。
ちょっとだけ力を入れてみる。
完全に顔が平仮名の”の”と片仮名の”ワ”で現せそうな完全にボケを狙ったような顔をしている。
「大人しく……お縄につきましょか……アーキテクトはん……」
「リっさんなんか口調おかしいよー!?やだ!やーだ!普通のお仕事は退屈ー!!」
予想出来た来客。
予想出来た彼女が来た理由。
乾いた笑いを浮かべながら、玄関まで連れていく。
「……済まないリオン、
玄関に現れた人形。
硬い口調に半ば呆れ混じりで話すこの人形が、あのアーキテクトの相方……俺と同じく、苦労をしがちな人物。
その名を、
なんとなく、彼女が来そうなことは分かっていた。
更にアイツがあからさまに逃げようとしていた事からも、確信を得ていた。アーキテクトは何かと彼女から逃げたがる。いや、彼女から逃げたがるというよりは仕事から逃げたがる。彼女は趣味ならば本気を出すが、仕事となると本気を出せなくなるタイプらしい。
そんな彼女を見張っているのがゲーガーだ。
相方が奔放な分、しわ寄せも沢山だろう。
「はいはい、ここに居ますよっと」
大人しくならなさそうなアーキテクトを引っ張り出してきた。俺がまともに引っ張ってこれるあたり、本気の抵抗ではないようだ。本気で抵抗されたら普通に無理。
俺は人間です。人形には勝てません。
ゲーガーの前にアーキテクトを突き出す。
まるで本当に捕まった人のようだ。
「申し訳ない、騒がしくしてしまった」
悪そうに言うゲーガー。
普段苦労しているからか、色々なことに付き合っている俺の苦労を分かってくれる数少ない人物だ。
だが、迷惑していた訳では無い。
別に大丈夫だと微笑んで返した。
「……そうか。ならいい。アーキテクトが迷惑をかけてしまったら、私の責任でもあるからな」
「ちょっと待って?私上司、君部下よ?私の方が上なのになんで凄く上司感出してるの、ねぇ?」
聞くや否やゲーガーはアーキテクトに対して握り拳2つでこめかみをグリグリやり始めた。あれは痛い。
確実に痛い。ものすごく痛い。
俺は知ってるんだ。
ギャーッというけたたましい叫び声が廊下に響いた。
何だか可哀想に思えてきた、がこれはさすがに自業自得だ。
「今度は、お詫びの品でも持ってこよう」
「じゃーねー、リっさん。今度はうちに遊びに来てねー!」
痛みで蹲っていたところを完全に担がれて連行された。当のアーキテクトは担がれてる状態でも軽いノリを崩さなかった。逆に感心するレベルだ。
2人の騒がしい新顔が帰った。
まぁ、この2人は見てて飽きない。
仲が良いなとも思えるし、気は合うし。
何だかんだで楽しい時間を過ごした。
その後、けたたましい叫び声がまた聞こえた。
ゲーガーのお仕置きはどうやらかなりえげつない様だ。
追悼、アーキテクト殿。
君のことは忘れない。
「私死んでないんですけどー!?」
「誰に向かって叫んでいる、アーキテクト」
・今回はアーキテクトとゲーガーが初登場しました。本当はウロボロスを先に出した方がいいかなと思ったのですが、実はキューブ作戦がやっていた当初夜戦部隊が全くと言っていいほど育っていなかったためウロボロスの所まで行けていません。
故に未だにキャラが掴めていないのです……ゴメンよウロボロス……
今回のキャラ紹介。
アーキテクト:旧世代のサブカルにどハマりした天才人形ちゃん。方向性は違うが技術は非常に良く覚えているどころかリオンが教えを乞うほど。馬鹿だけど馬鹿じゃない。ロマン至上主義だからか整備士君と気が合う。ゲーガーによくシメられる。
ゲーガー:アーキテクトの見張り役にして、苦労人。アーキテクトをなんだかんだ言って相棒とは思っているけど奔放すぎるし周りに迷惑をかけるわでずっと胃痛が止まらない。故にアーキテクトに対するお仕置きがかなり苛烈。
・最近レベリングが厳しくなってきました。製造は星5が出ません。出ても416ちゃんばかり出てきます。(通算製造数20越え)
フレンドのIDとか出してみるべきでしょうか?(謎の近況報告+ここで書くことなのか疑問に思う内容)
・まだまだ誰かの話が見たいというリクエストは受け付けております。反映はいつになるかは分かりませんが、頑張って書かせていただきます。
・いつもの事ながら、閲覧・感想・お気に入り登録ありがとうございます!励みになりすぎて爆発します。
また、遅くなりましたが誤字報告ありがとうございます。該当の場所は修正致しました。
次の回もお楽しみに!