鉄血もグリフィンも争わない平和な世界を死に損ないが満喫するだけ   作:葉桜さん

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今回の話は実は前回よりも前に書いていました。
というわけで高速更新です。
今回は作戦編第1話。
短いですがどうぞ。


救命行動I:作戦概要 -Mission Briefing-

グリフィン管理下敷地内。

とある廃ビル……

 

 

 

「……敵は見ただけで約数十名。中規模の拠点という所でしょうか」

 

 

 

目の前に見える大きな廃墟。

小さなカメラ越しに見える風景には、幾多もの人間。

ある者は銃を構え遠くを見張り、ある者は油断しきって気を抜いている。ある者は周囲を警戒し、ある者はサボっている。その全てに言えるのは、全員武装をしているということ。

誰も彼もが思い思いの武装で身を固めているということ。柄の悪そうな集団は、ここを根城にしている。

 

 

 

……いわゆる、最近になって存在感を大きく示してきた反人形団体……自称、『人権団体』と呼ばれる集団のアジト。

私達が招集され任された任務は、この人間至上主義にして差別主義者達の居城を潰すことや、後に繋がるであろう他の人権団体共のデータを集める事。

何かが起きる前に根を取り払っておきたい。と。

グリフィンのクラウス指揮官や、鉄血工造上層部からのお達しだった。正直な所を思うと、彼らも十分に苛立っているでしょうがこの辺りよりもっと腹が立っているであろう人物を私は知っている。

……寧ろ、彼が真っ先に出てきた。

野蛮な者達を放置して、私たちが怪我でもしてしまったら彼は怒るだろうか?……それとも、怒らずに心配が先へ行くだろうか?彼がどんな反応をするかは分からない。

だが、確実にそのものたちに対しての怒りは沸き立つだろう。

 

 

 

……私は、彼の過去を本人から聞いた。

人形思いの優秀な技師が、人形を道具としか思わない人間の手によってあらゆることをダメにされた話。

人形を人間と同じ観点で見る彼は、誰よりも人形を道具扱いすることに対して怒りを覚え、誰よりも人形達が貶されることを嫌う。……彼は優しかった。

しかし、それが報われることは無かったと私は記憶している。彼にこれ以上辛い思いをさせたくはない。

勿論、他の人形たちが傷つくことも私にとっては嫌な事だ。それを含めた上で被害が及ぶ前に手を打ちたかった。

 

 

 

故に私が今回の作戦を買って出た。

私は本来電子戦特化モデルであり、通常の戦闘はあまり得手では無い。だが、今回の作戦は私だけではなく、他の人形も参加している。指揮系統は鉄血が優れているという所から、現場の指揮は私達鉄血のハイエンドが担うことになっている。逆に言えば、指示を受け動くことに関してはI.O.P製……グリフィンの人形達の方が優れていると言えるだろう。

適材適所。故に双方のいい所取りをして結成されたのがこの部隊……グリフィン・鉄血合同部隊。

実際に戦場に出ることは少ない。

最近はほぼ人権団体の制圧、またはE.L.I.Dの討伐程度だった。

 

 

 

実戦経験も少ない部隊が、数少ない拠点制圧に赴く。

予期せぬ事が起きない訳でもない。地盤は固めておくべきだ。

そう思いビットの何体かを偵察に出していた。

見える人影は複数。

まとまりも何も無い連中がアジトに集っている。

そんな烏合の衆に、戦術人形が劣るわけがないと思いたい。

しかし、万が一がということもない訳では無い。

だからこうして偵察を行っている。

 

 

 

「……随分と慎重なのね。人権団体如き、私たちの敵じゃないと思うんだけど?」

 

 

 

そう自信ありげに答える人物……

今回協力してくれる小隊……FN小隊の隊長、FAL。

彼女は様々な場所での様々な経験を持ち合わせており、戦力としては願ったり叶ったりな程に有難い助っ人だ。

しかし、彼女は少々自信過剰ではないかとも私は疑っている。経験は確かに裏切らない。しかし、私が何度も思うように……経験したことの無い例外(イレギュラー)が起こってしまった場合はその経験を生かすことも難しくなる。

その経験に腰掛けて自信過剰になってしまっては、いざと言う時の対応が難しくなってしまう……その事を懸念していた。

 

 

 

「……例外が起きない訳ではありません。下拵えはしっかりとしておいた方が良いかと思ったまでです」

 

「確かに、貴女の言う通りね。何かあって怪我しました〜なんて言ったら、指揮官がものすごく心配しちゃうもの。……それに、整備士のお兄さんにも注意されちゃうしね」

 

 

 

肯定の意を示してくれたのはこの隊唯一の小型銃を扱うFive-Sevenだった。偵察や斥候などはほとんど彼女が担ってくれるが、今回は私のビットや必要とあらば本業の鉄血製スカウトがいる。偵察というのは常にリスクが伴うものだ。

見つかってしまえば即座に攻撃を受けるだけでなく、下手をしたら救助できないはおろか、人質としてそのまま鹵獲されてしまう事さえ有り得る。

グリフィンの人形に対して、そんな危険なことをあまりさせたくは無い。少しでもリスクのある行動は避けるべきだと踏んだ。

 

 

 

私は鉄血ハイエンドの中でもかなりの慎重派という認識が強いらしい。元々、戦闘能力が高いという訳では無い。

それ故に知略を張り巡らせた戦法を取らねば、直ぐに現場指揮の私が倒れてしまい部隊は壊滅するだろう。

そんな負け方ははっきり言って恥だ。

そんな醜態を晒す訳には行かない。

故に直接相手を潰すよりも、しっかりとした下準備をした上での戦いを行うのが私だ。

それに今回は、私自身も壊れるのを避けたい。

 

 

 

 

普段ならそんなことを思わない筈だけれど、私が壊れて帰ってきてしまえば彼は……。

この前のあの話を聞いて以降、私はそういうことを考えるようになってしまった。慈悲や、優しさというものを覚えたのかどうかは分からない。

ただ、謎の使命感だけが私の生存欲を煽り立てた。

 

 

 

「んー……ねぇねぇ、お菓子食べない?頭をすごく使ってるみたいだし、糖分取った方がより働きやすくなるよ?」

 

 

 

そう緊張感もへったくれもない言葉を放ったのはFNCだ。

彼女はいつも何かしらのお菓子を頬張っている。

一体どうしたらそんなにお菓子が出てくるのか、とはいつも考えている疑問。しかし頭を使う時に甘いお菓子がいいとはよく言うものだ。

差し出してくれたチョコを受け取り一言、ありがとうとお礼を言った。いえいえ〜、とにこやかな顔をしている。

殺伐とした戦場には、こういった人物も必要なのかもしれない。

 

 

 

受け取ったお菓子を1口。

……甘い。受け取ったのはとびきり甘い物だったらしい。

ちょっともうひとつ欲しいと言いそうになってしまったのは内緒。あくまでこれは頭を効率よく回すため。

そう言い聞かせてちょっとずつ。

 

 

 

「あ、あのぅ……偵察中のところ申し訳ありません……今偵察中の場所の他にも、見回りで何人かが外で警戒しているようです……」

 

 

 

最後に口を開くのは、偵察に手を貸してくれていたFN49。彼女には私がビットを制御して内部の偵察を行っている間にスコープを利用して外の偵察を任せていた。

彼女はこの小隊の狙撃手であり、遠距離を見渡すのは慣れたもののようだ。詳細を聞いても、かなり正確な位置を特定してくれている。気弱そうに話しているが、彼女もまた優秀な戦術人形であることには変わりはない。

 

 

 

助かります、と一言かけると恐縮したようにはい、と言う二つ返事しか帰ってこなかった。なかなかに彼女も変わった人形だ。

もう少し自信を持っても良いと思うのだが。

その誇らない所が、彼女の魅力なのかもしれないけれど。

 

 

 

「……これである程度の内部・外部状況及び、敵の巡回パターンの解析が出来ました。今そちらの端末にデータとして送ります」

 

 

 

送ったデータには、敵の大まかな配置や武装状況、巡回ルートなど得られた全ての情報が入っている。内部の見取り図やトラップなども抜け目なく把握した。

情報収集や処理は、自慢ではないが得意な方だと思っている。私からしたら、かなり分かりやすくまとめた方ではないかとさ思っている。

 

 

 

「……なるほど?流石は鉄血工造のハイエンド。このデータ、もちろん信用してもいいのよね?」

 

「そう噛みつかないのFAL。彼女は準備において最善を尽くしているだけよ」

 

 

 

よほど自分の目で見なければ納得がいかない様だ。

まぁ、そうやって生き抜いてきたのだから仕方がない。

目で見て体感して、自分の経験で判断する。

それが悪い事だとは言わないけれど。

少しは情報をあてにして欲しいものだ。

それとも、私が得たデータが信用ならないのか。

 

 

 

「これはあくまで現在時点でのデータです。変わる可能性もありますが、大体のパターンや配置が分かればある程度の例外に対応できる筈です」

 

 

 

情報というのは基本的にあてにはなる。

寧ろ、情報がなければ暗中模索の中進行しなければいけない。それの方が余程危険だ。ここに関しては、私と彼女ら……作った企業による思考パターンの違いなのだろうか?

ただ、こんな所で内輪揉めを起こしても仕方がない。

これからそんなことをしていては、自分たちの身が危なくなってしまうだけだ。作戦中のチームワークの乱れは致命的な弱点となってしまう……それがこの程度の小隊であれば、尚更。

 

 

 

「……そろそろ鉛玉パーティに行く?」

 

 

 

物騒な単語を並べてFNCが私に聞いてきた。

……そろそろ、頃合だろう。

 

 

 

「……そろそろ始めましょう。作戦概要を説明します」

 

 

 

ーー今回の作戦目的は、人権団体の中規模拠点を潰すことによって活動を抑制すること。および『人権団体』と呼ばれる物の勢力が実際にどれほどなのかを知るために内部に存在しているであろうデータを回収すること。

外部内部含めて十数名の団体員の存在が確認されている。

 

今回は遠距離射撃に長けたFN49を主として、中距離戦にも対応できるFALと共に外部の敵を排除。

外部の敵を排除した後Five-SevenとFNC、私で建物内に侵入……敵を殲滅するという作戦だ。殲滅とは言えど、抵抗できない程度に戦力を削げば良いだろう。

わざわざ殺してしまう必要は無い。

しかし、危なくなれば撃つ他ない。

……せめて、あまり抵抗してくれなければいいのですが。

 

 

 

「……最初は、私が重要でしたよね……よし。」

 

 

 

最初の鍵になるのは、いかに外部の敵を気付かれずに倒すか。ここで1人取り逃がしてしまえば内部や他の場所からの増援を呼ばれかねない。

そういった所では、遠距離戦のメインとなるFN49がいちばん重要になる。彼女だって戦術人形……きっと上手くやってくれる。彼女がスコープを覗き、射撃体制を取る。

 

 

 

 

 

 

 

「こちらスケアクロウ、及びFN小隊……作戦、開始します。」

 

 

 

電子音と共に、開始の合図が放たれた。

 

 

 

 

 




・今回は下準備やブリーフィングでした。
前回Vectorが警告してくれたことをきっかけに、人権団体を制圧しようというお話です。
今回の新登場人物。(一言短め。)


FAL:FN小隊のリーダー。だいたい原作と違わないと思うけど自信家具合が少し悪化しているかも……?Five-Sevenに宥められるのをあまりよく思ってないけど正論なので言い返せないタイプ。

Five-Seven:唯一ハンドガンの子。意外とFALの自信家なところを抑えている。FALがなんだかんだ言って好き。うちの基地にはまだいません()

FNC:この部隊の中で1番平和的な人物……と思わせておいて結構物騒だったり腕前がいいお菓子平らげマシーン。ちょっとした気遣いもできるよ!


FN49:臆病系女子。FN小隊の狙撃手なだけあって自信を持っていいレベルで射撃精度は抜群。FN小隊の良心。もっと誇っていいのよ。


・次回は行動開始から。
タイトルの四文字で不穏さがありますが……はたして。
予定としては5〜6話程度続きます。


次の話もお楽しみに!
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