鉄血もグリフィンも争わない平和な世界を死に損ないが満喫するだけ   作:葉桜さん

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残酷な描写が今回あります。
今回は殺伐。ほのぼのの裏にはこんな背景だってあるんです。


救命行動II:開けられた風穴 -Pierce Bullet-

響き渡る悲鳴。

満たされる紅。

崩れ落ちる人型。

灰色の空の下、それは始まった。

 

 

 

「ーー……こちらFN49、正面と左側は全滅させました……。残りは側面と建物後方のメンバーのみです」

 

「ーー左側は私でやったわ。突入隊、準備はいい?」

 

 

 

廃棄された街中。

既に薬莢は落ちていた。

火薬と硝煙の匂いが充満し、確かにそこが何も無い廃墟郡から戦場へと変わったことを自覚させる。

しかし、それでいて静かだった。

あまりにも、何も無かったかのように。

 

 

 

作戦の第一段階は好調だ。

内部の敵に気づかれることなく、相手を全員排除することが出来た。本当ならFN49の銃声で気づかれるかと思ったのだが、今日は妙に風が煩かった。助かったといえば助かったと言える。

しかし、これを遂行しているFALとFN49からしたらとてつもないプレッシャーになったはずだ。

銃弾といえどこの世に存在する物質。

物理によってその軌道を変えてしまう。

だが、彼女らはその障害を難なく乗り越えた。

流石はI.O.Pの戦術人形と言った所か。

 

 

 

「こちらは準備完了しました。時間差でこちらの方へ合流をお願いします」

 

 

 

そういう返答を返すと、2人から了承の言葉が帰って来た。

2人は室内戦には向いているとは言えない。……特に、FN49は狙撃をよく行うライフルだ。室内で狙撃を行える機会は少ない。FALはアサルトライフルではあるが、正確にはバトルライフルになる。バトルライフルは確かに殺傷力に優れており、威力の面では申し分ない。

しかし、これによる難点としてフルオートの射撃の難易度が跳ね上がることが挙げられた。

彼女は戦術人形、ある程度の制御はできるだろう。

しかし、その反動は何度も続けていれば身体に来る。

彼女を1番活かせるのはセミオートの単発射撃なため、制圧で弾をばら撒きやすい室内線には不向きだと判断した。

 

 

 

よって今回、最初の外部の敵の排除をこの2人に任せることにしたのだ。とは言っても室内の方が危険な場所だ。

そんな中で分断されたままでは後に厳しくなると踏んで、外部の敵の殲滅後は合流する事を伝えている。

……しかし、気づかれるのも時間の問題。

待っている時間はない。

なので先に私たちが中に入りある程度の敵を掃討したあと内部で合流、残りの残党を排除するプランになった。

外の2人の行動が終わったとなれば、今度は私たちの番だ。素早く敵を無力化し、2人が安全に合流できるルートを意識しなければならない。思考回路をフル稼働させ、最善の手を導く。

それが私の役目だ。

 

 

 

「……そろそろ行きましょ、2人が待ちくたびれてるわ」

 

「敵の排除なら任せて、正確に撃つことなら自信あるから!」

 

「頼もしい限りです。……Five-Sevenの言う通り、行動に移りましょう」

 

 

 

突入部隊の行動が開始した。

Five-Sevenが裏口の鍵をこじ開け、密かに中へと侵入した。無論、私も気づかれないようにビットの展開は最小限に抑えながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……結構騒いでるみたいね。品の無い台詞が所々で飛び交ってるわ」

 

 

 

人権団体という名ではあれど、その実態はほぼ人形を差別する者達ばかりだ。さらに言えば、最近のここは差別主義者と言うだけでなく殆ど野蛮人と変わりない行動をとり始めているそうだ。片っ端から戦術人形がいる基地を襲撃し、略奪や被害を及ぼす最悪な蛮族共だ。

 

 

 

元は人間が私達人形に仕事を取られてしまうという思い込みからの反抗活動だったというのに、今となってはここまで悪化している。もはや目的は自分たちの仕事を取り戻すことではなく、人形そのものの根絶と化してしまっているのだろう。

馬鹿馬鹿しい。人間は新しいものに適応しきれない場合は拒絶反応を起こしてそれを避けようとすると聞いたことがあるが、まさにそれの代表例だ。

ただ自分に対応できないものが現れただけで、ここまでになる人間の類は呆れを通り越してもはや憐憫を感じる域だ。

 

 

 

そんな者達に、私達の平和な日常を奪われてはたまらない。元々私たち鉄血工造とグリフィン……I.O.Pが友好関係になったのも、こういった輩が活発化してきてほぼテロリストと化した状況で私たちが協力するべきだという理由だ。

結果として、私達も知らない平和な日常が繰り広げられるような世界へと行くことが出来た。

殺伐としてしかいない、ただ殺し殺されの世界とは違う場所を知れた。そういった面では感謝するべきかもしれない。……だが、それを奪いかねないとなれば話は別だ。

 

 

 

「……ここが1番人が集まってるみたいだよ。乗り込む?乗り込む?」

 

 

 

FNCが喜々と聞いてくる。

廊下で聞こえてくる声があまりに不快で仕方がなかったのだろう。……時に彼奴ら、人形を捕らえて自分の欲望の捌け口にすることさえあるという。必要無いとは言っておきながら、そういう用途では使用するのかと考えると吐き気を催す。

ここの基地の司令官や、彼がそういった人間で無くて良かったと心から安堵する。その反面、彼女たちは余計に奴らへの苛立ちが募るばかりだった。

 

 

 

……今回は内部から聞こえてくる音や声的に、そういったことは無さそうだ。もしもそんな人形がいたら、必ず救出するという任務が追加されてしまう。

面倒とは言わないが、目的の達成が難しくなる。

それでも無理にお願いされてしまうのがここなのだが。

それに、そんな人質がいたなら簡単に撃ち合うことは出来ない。その人質の安全が最優先なのだから。

そう思うと、かなり今回は楽な仕事になるだろう。

 

 

 

「……構いません。突入の要は貴女です……好きなタイミングでどうぞ」

 

「私達もそれに合わせて突入するから、お構いなくどうぞ」

 

 

 

私とFive-Sevenの意見は一緒だった。

Five-Sevenもハンドガンだ。私と同じように、お世辞にも戦闘が得手とは言えない。

ハンドガンはその携行性の良さや取り回しの良さからサポートや隠密行動等に優れた銃種だ。

アサルトライフルやサブマシンガンで武装された相手と正面切って撃ち合うのはあまりにも不利だ。

しかし、ダミーを最大まで配備したFNCが居る。

正面の打ち合いは彼女に任せ、こちら側がサポートに回り制圧する。それが私たちの作戦だった。

 

 

 

奴らは軍人ではなく、あくまで素人の犯罪者達。

強襲、急襲への備えはほとんど出来ていない筈。

静かに侵入し、内部で爆発的に暴れる。

そうすれば、相手は対応が遅れ気づいた時には手遅れ……そういう風にことが運べる算段だ。

相手が素人だからこそ行える作戦だった。

FNCがドアに手をかけ、カウントダウンを始める。

 

 

 

 

 

 

「……3……2……1……」

 

 

 

 

 

思い切り部屋の扉が開かれる。

中にいた数人が大きな音に気づき、慌てて銃を取り出し構え始める。……が、遅い。

無警戒な相手に対して奇襲を仕掛けた場合、真っ先に攻撃を行えるのはこちらだ。既に銃を取り出している方が早く引き金を引けるのは当たり前の話。

 

 

 

「打て打てー!」

 

 

 

すぐさま発砲の構えを取った者達をFNCは何ら焦らない様子で撃ち抜いていく。撃て、という合図に合わせてダミー達も一斉に別々の対象へと弾を撒いて。

戦術人形達は時々変わった構え方や姿勢で銃を運用することがあるが、FNCのそれは完全な模範と言えるほどに理想的な射撃姿勢だった。

銃弾のばらつきは少なく、ものの数秒で無力化を進める。反動も容易く制御しており、兵士としての力量はなかなかに高いのではないかと感心させられてしまった。

少しすれば人だったそれは蜂の巣のように穴だらけの物体に変貌していた。

 

 

 

「初めまして……少し眠っていてください」

 

 

 

彼女に続いて私も、ビットによる撹乱や援護射撃によって相手をどんどんと混乱させていく。

撃たれた痛みや、意図せぬ痛みは人の恐怖を煽る。

恐怖や苦痛は、悲鳴となって響き渡る。

そうやって連鎖して煽られた恐怖は、やがて人の内にある平静を崩して行く。悲鳴を上げた者達はのたうち回り、味方を撃つことさえあった。

こういった殺し合いの場所では、冷静さを欠いたものから死んでいく。彼女らの様な手馴れた者はいくら口で騒いでいたとしても、その中身は必ず冷静だ。

如何に効率的に鉛玉を食らわせるか。

いかに相手の抵抗を減らせるか。

戦闘中の頭の中などほとんどそんなものだろう。

 

 

 

「のろまさん達、私についてこられる?」

 

 

 

一部の敵は一番無力だと思われがちなFive-Sevenに狙いを絞り引き金を引いている。ハンドガン持ちごとき、簡単に殺せる……その考えは、大きな間違えだ。

ハンドガンは小型の銃……サブマシンガンには劣るが、その身のこなしは軽快で、なかなか銃弾が掠ることさえない。弄ぶかのように駆け抜け、的確に相手を撃ち抜く。

一部は死なずに済んでいる……だが激しく抵抗する相手に対して慈悲をかけられる程私達も肝が座っている訳でもなく、後ろから撃たれないという確信がある訳でもない。中には、急所に入り確実に死している人型も転がっている。

 

 

 

「クソッ、応援を呼べ!グリフィンと鉄血の鉄クズ共をさっさと潰しに来いと命令しろ!」

 

 

 

彼らは口々に私たちを罵倒しながら応戦する。

私達も超人らしく銃弾を避けられる訳では無い。瓦礫や家具、壁などに身を隠しながら確実に対象の数を減らしていく。

……私たちを鉄クズと呼ぶけれど、そんな鉄クズにさえ撃ち抜かれる彼らは一体何になるのだろうか?

今度、彼に聞いてみるとしよう。

とてもでは無いが、人前に出せないような言葉で形容されそうなのが目に見える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大きな発砲音と軽い薬莢の落下音が響きつづける。

辺りは一面の赤、赤、赤。

風穴の空いた何かが無造作に倒れ、その光景はまさに地獄絵図。戦いに身を置くものにとっては日常だが、それ以外の物にとっては衝撃的で狂気的なものだ。

未だに激しい抵抗は止まない。

 

 

 

「もう!しぶといよ!さっさと倒れて!」

 

「一体何でここまでやられておいて諦めないのかしら……そんな抵抗は、無駄な行為よ」

 

「早く投降することを推奨します。……そうすれば、身の安全は保証しましょう」

 

 

 

向こうとしても最悪の光景のはずだ。

こんな状況は、訓練を受けていない人間ならまず耐えきれない。それなのにも関わらず、未だ抵抗を続けているのは彼らが異常者ということだろうか?

銃声は鳴り止まない。

数少ない者達で、決死の抵抗を続ける。

言葉も通じなくなったということか。

このまま続いていたらまずい。

別の場所のメンバーもそろそろ気づいてもおかしくない頃合いだ。早く片をつけなければ。

そんな時だった。

 

 

 

抵抗の手が一気に緩んだ。

いや、正確には抵抗の手が減った。

私たち以外の銃声……聞き覚えのある、1発ずつの銃声。

 

 

 

「随分と手こずってるじゃない……手を貸すわ」

 

「……は、早い合流ですが、ちょうどいいタイミングでしたか?」

 

 

 

別働隊の2人。

FALとFN49が予定より早く合流した。

裏から回っていたらしく、相手の不意をさらに付く事が出来た。もうこれで、残りは1人程度。

 

 

 

もうさすがに勝てないということを悟ったのか、武器を下に落として両手を上げた。もう降参だ。

命だけは助けてくれ……そんな典型的な三下の言葉を吐いて、ただひたすらに懇願する。

……抵抗の意思がなくなったのなら、拘束して終わり。

最初にも彼女らに行ったが、わざわざ殺す必要は無い……指揮官からも、そういう様なお達しが来ていた。

ならば、ここは彼を拘束して終わりだ。

 

 

 

「……Five-Seven、彼を拘束してください。……何かしら、次の情報を握っている可能性があります」

 

「わかったわ。……大人しくお縄につきなさい」

 

 

 

横には警戒のため銃を向けるFALとFNC。

彼を拘束する行動を取るFive-Sevenとそれを補助するFN49。生きたまま捕えれば、次の情報が手に入るかもしれない。ある種、これも任務の遂行だ。

それに、私がやる訳では無いが、やろうと思えば今までの行いを解らせる事だって可能だ。その場合は、被害に遭った人形がメインとなるだろうけれど。

複数の意味で、彼を生かしておくのは得な選択だ。

Five-Sevenがようやく捕縛を終える……

 

 

 

 

 

 

「……ッッ!?」

 

「何をしているんですか!大人しく……きゃぁっ……!?」

 

 

 

筈だったのだが。

彼女の身体に、激しい電流が走った。

反射的に手を離してしまい、捕縛が解けてしまう。FN49が慌てて押さえつけようとするが、同じように強い電流が彼女の身体を襲う。……スタンガン。

激しい電流によって、動きを止める護身用の道具。私達は戦術人形……あくまでも機械だからか、並の人間よりもその影響を強く受ける。2人は倒れ込み、それに気づいた2人がそちらに目を向けてしまったその瞬間だった。

その男は、確かに……FALに向けて、捨てたはずの拳銃の先を向けた。既にトリガーに指はかかっている。

 

 

 

「……っ!FAL!」

 

 

 

叫ぶ声。

避けきれない身体。

 

 

 

「馬鹿が……壊れちまえ、鉄クズ風情が!」

 

 

 

響き渡った銃声。

食い込む鈍い音。

片腹に感じる違和感。

 

 

 

……私は、それを認知してしまった。

 

 

 

体が赤黒く染っている。

白黒の服にべとりとした感触がまとわりつく。

 

 

 

……私は……

 

 

 

「……嘘……あんた……何やって……?」

 

 

 

鮮血が私の身を染めている。

大きな風穴が空いた。

痛みが脳にフィードバックされる。

声が出ない。息が上手く吐けない。

私は確かに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

撃ち抜かれていた。

 

 

 

 

 

 




・サツバツ!非常にサツバツ!
不穏な空気マシマシな今回の話。
雰囲気に合わせて、あとがきも短めに。


・そろそろもしかしたらこの救命行動-Operation Lifesave-編が終了後、どなたかとコラボさせていただくかもしれません。こちらからお声かけしてやりたいです!と言って回るかもしれないです。


次回も、お楽しみに。
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