鉄血もグリフィンも争わない平和な世界を死に損ないが満喫するだけ 作:葉桜さん
本文を少し変えました。
内容はあまり変わらないです。
「行け!行けッ!」
扉が壊される音と共に、戦火の火花が散った。
声を張り上げ、突入の合図を送る。
ここからが正念場だ、耐えてくれ。
内部にいる彼女らに、そのメッセージを込めて……
いちばん身軽な俺が先陣を切り、周囲のクリアリングを行う。ここら辺の敵はほとんど無力化されている。
だが、自分たち以外の足音も多々聞こえ始めている。
援軍がもう到着したのか。
それとも、既にもう到着してしまっていたのか。
考察をしている暇はない。
早く敵を制圧し、早く助ける。
最優先事項を間違えてはいけない。
足早に、気づかれる心配もせずに走り抜ける。
時間だ。今は時間が惜しい。
そんじゃそこらにいる雑魚に構っている暇はない。
5人分の通行音がビルに響く。
そんな違和感に、敵が気づかないわけもない。
「居たぞ、グリフィンの野郎だ!撃て!」
応援の1部隊と出くわす。
運悪く、自分たちの進行方向の真正面に現れた。
数は見積って10人程度。こちらは5人。
今回ダミーは急ぎのために用意していない。
だが、こんな程度ダミーが居ない所で結果は変わらん。なぜなら、俺でさえもこんな奴らに負けはしないのだから。
「邪魔だ、退けよクズ共が!」
怒鳴りつけながらSaverを相手に向け、トリガーを引く。このハンドガン……ベレッタM93Rは連射が聞く物だ。拳銃でありながらも、サブマシンガンと似た運用ができる。
他には目もくれず、駆けながら真正面の敵を撃ち抜く。
敵の銃弾を恐れて何が救助か。
この程度の戦場、いくらでも切り抜けてきたはずだ。
1人、2人。頭を目掛けて撃ち続ける。
偶然か否かは分からないが、何発かは相手に吸い込まれ赤い水溜まりを作り上げていく。
奴らはそれに圧されて勢いが弱まっている。
アイツはイカれているのか、そんな風に呟く奴もいる。
だが、もうここは戦場だ。
一瞬の気の迷いが命取りになる。
医療処置と同じだ。重要なタイミングで迷えば、それで命が失われる危険性が大幅に上がってしまう。
誰かが言っていた。
ビビったら負けだと。
遮蔽物から遮蔽物へと身を隠しながら、確かに一つ一つ段階を踏んでいく。
そんな中、メイドの姉妹がアイコンタクトで何かを伝えあった。この2人だ、面白いものが見れそうな予感がする。
「失礼致します」
軽やかな動きで銃弾を回避しつつ、敵へと接近するG36C。奴らは同様からか、狙いが上手く定まっていない。
弾が当たらない恐怖と、相手の間合いに入っている焦り。咄嗟に地を蹴り、後ろへと飛びのこうとする。
しかし、その瞬間を今かと狙っていたかのばかりにその頭蓋は鉛の銃弾によって貫かれることになる。
「メイドを甘く見ないでくれる?」
G36が、G36Cの後方でその時を待っていたのだ。
G36Cが前方で相手を掻き回し、混乱させる。
混乱し動きが悪くなった所をG36が的確に撃ち抜く。
姉妹ならではの息のあったコンビネーションだ。
2人に負けじと、もう2人が意気揚々と攻めていく。
しかし敵は混乱こそしていれど、全くもって攻撃の手が緩む気配がない。絶え間なく飛び続けるそれに当たれば彼女らは怪我をする。俺なら最悪死ぬ。ミイラ取りがミイラになるような自体は避けたいところだ。……まぁ、ミイラになどさせないのだが。
小さい影が2つ、派手に暴れているメイド姉妹に隠れて蠢き始める。勿論、必死に抵抗している奴らがそれに気づく訳もない。
「用意……」
そう小声で呟いたのはMP5だ。
この小隊の中で最も体格や背が小さく、機転が利く。
そんな特性を生かして、影へと潜む。
素早く死角へと入り込み、そのまま裏へと回っていき。
その期を今か今かと待ちわびていた。
もう1人……獣かのような眼光が、奴らを捉えている。
「撃って!」
その合図とともに影から飛び出すMP5。
素早く捉えられない動きで弾をばら撒き、瞬く間に場を掻き乱す。不意を付かれた敵がマトモな思考でいられる訳がない。
一斉に騒ぎだし、中には味方を撃つ馬鹿まで現れる始末だ。
そんな好機の中、獲物を逃すはずがない。
「外さないから!」
噛み付くかの如く、G41が混乱し切ったところに鉛玉のプレゼントを送る。彼女の射撃精度は非常に良いことで知られている。さらに、野生ばりの洞察力を持つ彼女だ。
1発1発が正確に、相手の頭蓋を砕いていく。
弾倉一つ分の弾を撃ち切った頃には、もう立っている敵性目標は居なかった。。
敵を片付けた後、続けて駆ける。
今は止まっている暇などない。
即座に制圧し、即座に移動の繰り返し。
一つ一つ、相手の伏兵を警戒して進む。
ある程度の距離を進んだところで、G36が何かに気づいた。
彼女の耳には多数の音、音。
金属がぶつかる音。
足が地面を蹴る音。
幾多ものそれが、彼女に危機を伝えた。
「……!後方からも敵が接近してきているようです、どうしましょうか」
「無視だと言いたいが、もう近いか?」
後ろに接近する影。
正直な所を言えば、無視したい。
奴らに時間を食われれば食われるだけ、こちらの目的が達成できなくなってしまう。
かと言って、このまま追われ続けて目標の部屋まで至ってしまえば明らかに面倒なことになる。
難しい局面に差し掛かってしまった。
本当にこういう手合いは面倒な事しかしない。
予想される距離を彼女に聞く。
「かなり近いですね……無視するのは難しいと思われます」
どうやらこのチャンスを逃さんとばかりに貪欲にゴミ共が群がってこちらへ来ているらしい。
簡単にこちらも殺されてたまるものか。
彼女を助け、お前達への報復を終えない限りは死んでも死にきれない。応戦するのは非常にリスクが伴う。
そんな時、防弾ベストの胸近くに引っ掛けていたものを見つけた。……本当は、こんな所で使うはずじゃなかったのだがやむを得ない。邪魔な虫共を少し黙らせるにはちょうど良いだろう。
「勿体無いがスモークを焚く!G36、G41、後ろから出てきた馬鹿は仕留めてくれ!少なくとも抵抗の手は緩まるはずだ!」
「お任せ下さい!」
「了解しました!」
空いている左手でスモークグレネードを取り出し、口で思い切りピンを引き抜く。疾走体制を崩さないまま、後ろに思い切り放り投げる。
白い煙を噴き出しながらそれは転がり、瞬く間に周辺を白く染めて上げていく。視界がシャットアウトされ、敵は追ってこない。流石にああいう素人でも、視界の通らない場所の危険性は分かっているのだろう。利口な判断だ。
もちろん、そうであったとしても飛び出てこない訳では無い。G36とG41は最後まで警戒の目を向けた。
これである程度の時間稼ぎは出来る。
急いで現場に向かわねば。
頭の中で繰り返す言葉は何度も同じ。
自分が焦っていないように見えて、かなり焦っていることを理解させられる。余計なことは考えるな。
最善を尽くして救出することだけを考えろ。
余計な思考は、効率的な行動を阻害する。
ただひたすらに走り続ける。
「……こちらFAL!救助部隊、聞こえる!?」
「聞こえてる!どうした!」
耳障りなノイズ混じりの声。
明らかに緊迫した表情が読み取れる程の声色の通信が入る。救助対象の1人、FALだ。
焦りきった話し方、彼女らしくもない。
それ程張りつめた状況なのだろう。
急いでその状況を聞き出さなければならない。
既に、マズイ状況になっているかもしれない。
「敵増援がもう既にこちらに着いてる、私たちだけじゃ防衛しきれないわ!」
……なんてこった。
クズ共の方が一足先に着いていたか。
これではFAL達がやられてしまうのも時間の問題だ。
事態は予想以上に急を要する。
最悪の結末だけは避けなければ。
増援が完全に到着しているとなれば、殲滅に関してはこちらも応援部隊を待つしかない。
いくらこちらに戦術人形がいるとは言えど、物量には勝てない。戦場とはそういう世界なのだ。
加えて俺は人間だ。
弾の一つ貰うだけで死にかねない。
この最悪な状況だが、切り抜けるしかない。
どちらにせよ、生きる為にはそれしかないのだから。
「了解、すぐに向かう……できる限りの応急処置は施したか?」
「ええ、本当に軽度だけれど、これで本当に持つの?」
しないよりかはマシだ。
そういう風に答える。
応急処置は傷を治療することではなく、本格的な治療の前に如何に状態を悪くさせないか、如何に生存率を上げるかにかかった延命措置だと思っている。
それを行っているかいないかで、人形の死亡……完全な機能停止率が劇的に減っていることを知っている。
逆に言えば、行わなかった方が数多く消えている。
俺が行けば、もう少し良い延命措置が行える。
そうすれば、彼女が助かる確率も……
その為には何度も復唱しているが、迅速に救助に向かわなければならない。焦りは禁物だ。
FALの方もなんとか耐えると言った。
こちらも直ぐに向かうと残し、通信を切った。
「早く向かわなければ、FALさんたちが危ないんですよね?」
「ああ。……本格的に時間に猶予がなくなってきた。向こうの援軍の攻撃を受けているらしい。基地から殲滅部隊が来るのもまだ時間がかかる。最悪、俺達だけで何とかしなきゃならない」
MP5は不安そうな声で聞く。
何となく聞こえていたのか、察していたのだろう。
時間が無いだけではない。
救出のために立てこもっている部屋に突入しようにも、増援が近くにいる以上、下手なことが出来ない。
無理に突入してしまえば、内部に敵が侵入してしまう。
「それにしても、この人数……どういうことなのでしょうか」
「このくらいの人数だと、PMC規模のように思えてしまいますね……」
敵の増援はこの場所にいたであろう人数と同程度。
……何故ここまでの頭数を、人権団体程度の集団が揃えられる?この程度の人数では、小規模のPMCと同じレベルだ。
これは、さすがに報告対象になりかねない。
これは氷山の一角に過ぎないとさえ考えられ、その根が計り知れない。スケアクロウが撃たれてしまったのも、偶然ではないような気がしてきてしまう。
そもそも、拘束しようとしていた二人を行動不可にするほどの高圧スタンガンなど普通は出回っていないはずだ。
……最早、人権団体ではなく犯罪集団だ。
マフィアやヤクザと何ら変わりがない。
「……G36C、悪いが指揮官に殲滅部隊を想定より多く派遣してくれと言ってくれないか。敵の数が予想以上に多い」
「分かりました、すぐに通信を入れますわね」
彼女は連絡の取り方がスムーズだ。
G36の方でも良かったのだが、そちらは今後方を警戒している。今後ろを無防備にする訳にも行かず、そこで適任だったのがG36Cだ。指揮官とよく話していることもあり、すぐに連絡が通った。
「指揮官から了承を頂けました。後は到着するまでの間、私たちでこの場を切り抜けなければいけませんわ」
当面の目的はそれだった。
どうにかして、数倍もあるであろう戦力差の中救出に向かわなければならない。部屋は防衛のため締め切られているだろう。
普通に部屋に入ることは出来ない。
別の方法を探す必要がある。
壁を壊す……それではほとんど意味が無い。
それどころか、防衛網の崩壊に繋がる。
最悪、爆風でさらなる損害が起きる可能性もあるため論外だ。
どうするべきだ。
行動しながら考えているともう既に敵の大軍の近くに来てしまっている。ここから時間を食われるのはまずい。
入口……何でもいい、入れる場所を探さなければならない。
「……ねぇねぇ、整備士さん……」
「どうした、G41」
そんな風に人懐こく話しかけてくるG41は何かに気づいたようだ。彼女が指を指す先には、窓がある。
外は飛び出せば確実に人であろうが人形であろうが形を崩壊させかねないほどの高さだ。
こんなところを指さしたところで……普通の人間は愚か、人形でさえも空中浮遊はできない。
いや、待てよ。
もう一度よく考えろ。
自分たちの装備、取れる行動。
この場所の地形をよく照らし合わせろ。
深呼吸をして、深く考えるんだ。
時間は無い。だが、ここで答えが出なければ助け出せない。
「……何か、外から侵入することができればということですか?」
「そういう事!よく指揮官が見てる物みたいに!」
ようやくMP5とG41の言葉で見つかった。
そうか。俺は簡単なことを忘れていた。
救出作戦や、突入作戦なら常套手段だった筈だ。相手は所詮ただ武器を手に入れて暴れているだけに過ぎない烏合の衆だが……こちらは違う。
しっかりとした作戦用の装備も整っている。
それならば、道無き道を通ることだって叶う筈だ……!
つい、口元に笑みが浮かぶ。
俺はどうやら焦りすぎていたようだ。
自分で冷静になっていると思わせているだけで、本当はかなり思考能力を奪われていた。
これは、感謝しなければならないな。
「……ありがとよ、突破口が見えた!」
G41は嬉しそうに笑顔で親指を立てた。
それ、よく指揮官がやるやつだなと少し微笑ましくなった。逆にMP5は困惑しながらも照れていた。
……さぁ、ここからは逆転の時間だ。
奴らが慌てる様が目に見える。
頭の中で自然と取る行動が組み立てられていく。
ここを切り抜ければ、後は俺の仕事だ。
全員を見渡し、指示を出す。
「……今、目標の部屋の外部では敵増援が防衛線を崩そうと戦闘を行っている。……そのまま俺たちが突入することはまず無理だ。今提案してくれた方法を行ったとしても、防衛線が崩れるのは時間の問題だ……」
黙って聞く一同。
俺の判断を信用してくれると言わんばかりの沈黙。
……責任は重大だ。
だが、これなら。
2つの問題を一度に解決し、後の作戦が楽にもなる。
リスクの伴う行動だが、それでも賭ける。
そう自分に言い聞かせ、内容を説明し始める……
「……まだなの!?救出部隊が来るのは!」
霞む視界に見えるのは、必死になって抵抗するFALとFNCの姿。増援から私達を守るために、必死になって銃弾を放つ。
今まともに動けるのはあの二人のみ。
Five-SevenとFN49は感電の影響か、まともに銃を構えられない。その状態で抵抗できる力を持つのは、あの二人だけだった。……私が、こんな過ちを犯さなければ。
自分の浅はかさを悔いた。
自分の愚かさを恥じた。
敵は私たちを排除しようとするもの達。
あらゆる手を使っての抵抗は予想出来たはずなのに。
私は油断してしまっていたのだろう。
敵を甘く見たのか、それとも私が己を過信したのか。
どちらにせよ、私がこの事態を招いたのは間違いない。
戦えない2人は必死に私の処置をするが、私はそれさえも申し訳なく思えた。私の過ちで、彼女たちまで……
そんなことになったら、悔やんでも悔やみきれない。
ただの下級の人形に、必死になって治療をしても事態を悪化させるだけだと。
……私は、彼の望みを叶えられないだろう。
どうか、願う事ならば……私を、許して欲しい。
「ダメ!そろそろこっちも限界だよ!」
「……ここまでなの?ここまで防いでおいて……!」
貴女の責任じゃない。
私の責任だ。
……彼を責めないで。
この全ては、私が招いたこと。
その結果が私に来るのは、当然の事。
「目を閉じないでスケアクロウ!閉じたら、本当におしまいになっちゃうわよ!」
「どうか気をしっかり……!」
必死に私の意識を繋ぎとめようとする二人。
それでも、迫り来る暗闇は止まらない。
段々と、黒く染っていく。
周りが見えなくなっていく。
防衛線が崩壊し、私が意識を閉ざす。
そんな時だった。
「……ッ!フラッシュバンよ!伏せて!」
FALの叫びと共に、総員が伏せる。
私は何とかFN49に目を隠されて食らうことは無かった。
皆がもうダメだと諦めた。
この作戦は失敗だ。
恐らく、全員……
そう思った。
奇跡でも、起きない限りは。
「お前らッ!窓から離れろォォォッ!」
通信越しの叫び声。
大きな、何かが割れる音。
そんな破壊音と共に、それは現れた。
刹那が長く感じられた。
私の閉ざされかけた意識が、ハッキリと目覚める。
飛び散るガラス片、差し込む光。
それは、私も見た事のある顔。
それは、あまりに神々しく見えた。
私の知る、私の友人。
いつもそこにいて、いつも笑顔をくれる人。
白銀の拳銃を構えた救助者は、奇跡の如く現れた。
・救命行動-Operation Lifesave-編4話目。
ようやくそれらしくなった。
前回後回しにしたキャラ紹介。
今回も上手くキャラを立たせられていない気がするなぁ……
G36:通称メイド長。今回の4人の中では作戦経験が1番豊富。戦闘力で勝るという訳では無いが、非常に頼りになる人物。
G36C:G36の妹。機転の利く器用な子。サブマシンガンという扱いではあるが、アサルトライフルのような行動も出来るため色々引っ張りだこ。
MP5:この中で一番ちっちゃい子。しかし、PDWは伊達ではなく相手の攻撃を捌くことや無力化することが得意なためかなり信頼が置かれている。
G41:今回のMVP枠。相手を倒すことが大の得意。時々単純な事を思い出させて突破口を開くなど侮れない子。今回はそれのお陰で窮地を脱した。
・無理やり……無理矢理っぽくない?(疑問)
戦闘描写は下手くそだし、文章は短いわで申し訳ありません。
なかなか難しいんです……
・次回は”彼”が助けに来たところから。
次の話も、お楽しみに。