鉄血もグリフィンも争わない平和な世界を死に損ないが満喫するだけ 作:葉桜さん
グリフィン・鉄血合同宿舎。
何時もの如く俺の部屋。
救出作戦終了後、ある程度の休暇のようなものを取らされた。俺も含めてだが、何よりも他の当事者達がだ。
特にスケアクロウは完治するまでに時間のかかる傷を負わされた訳で、治るまでは安静にするように言ってある。
が……意外にも傷の治りが早いため、激しい行動以外は別段制限をかけている訳でもないのが現状だ。
お陰でよく俺の部屋に来るようになっている。
皆して困ったら俺の部屋に来るの止めてくれよ……
そんな風には思うが、もはや今更の事だ。
開き直って俺の部屋に来るといいとまで自分で言っている始末だ。そんな上で文句を言うのは流石にアレか。
まぁ、今日も今日とて平和に客人を迎えるわけだ。
この辺りは大して変わりはない。
もうあまりにいつもの事だ。
なにをするでもなく待っている。
ただ……
「お邪魔します、リオン……」
あの作戦以降、よく部屋に来るようになったスケアクロウがまたいつものように遊びに来た。
まぁ、怪我人である以上暇なのはしょうがない。
いつも通りにいらっしゃいと出迎えるが、彼女の顔は妙になっていた。なんとも言えなさそうな表情で俺の方を見ている。……何となく、理由は分かるのだが。
正直に言って、俺にはどうしようもなかったんだ。
膝の辺りにはかなりの重み。
正直言って足がつりそう。
そんな俺の膝元を見て彼女は一言。
「……
「何でって、ここが私の特等席だから?」
俺の膝の上に陣取っている小娘ひとり。
突っ込む気にもなれない。
うん。だっていつもの事だもの。
鉄血ハイエンドの中でもかなりのハイスペックな彼女。名前はスケアクロウが呟いた通り、
デストロイヤーをよく虐めていて、俺がその度に止めていたような気がする。
だが、頭が切れるし、確かに優秀な人形だ。
実力は充分買っている。
……だが、俺が見たドリーマーはやはり平行世界故か印象がだいぶ違っていた。
まず、時々デストロイヤーに対してみせていた恐ろしい形相を見せる……と言うより、豹変することが無い。
俺のいた世界でのドリーマーは所々不安定な部分が垣間見得るというか、狂気的な一面を見せることがあった。
さすがの俺でも理由は分からない。
ただの憶測しか出来ないのだから。
本人はそれを語ることは無かったし、俺から聞いたとしても彼女はきっと頑なにそれを話そうとはしなかった。
だから、俺はその理由を知らない。
だが、ここの彼女は違う。
確かに他の人に対して嫌味を言ったり、煽ったりすることは多少あれど豹変する事が恐ろしいと言っていいほどなかった。
お前は本当にドリーマーかと聞いたら、もれなくライフル弾1発プレゼントされるところだった。
まぁ、流石に本気で撃とうとは思っていなかっただろうが。まぁ、なんだかんだ言ってある程度の原型はあるが、かなり穏やかな方になっている。
デストロイヤーとの関係も、ただ利用できる道具として見ているということではなく普通に姉妹のようになっていた。
そんな彼女が、俺の膝の上にちょこんと座っているのだ。なんでお前はここがお気に入りになっちゃったの?
別に膝なんて硬いだけだろうに。
ドリーマーは俺の手を運んできては、膝の上から落ちないようにして欲しいと言わんばかりに俺の腕を腹の前で固定した。まるで抱っこしているような感じの体制だ。
お前ももうそんな子供じゃないだろう。
そんな光景を見ているスケアクロウはなんだか複雑そうな表情だ。なんかそんなになるようなことを俺はしたか?
「そろそろ離れてくれないか?」
「嫌よ」
即答。こりゃひどい。
お前は猫か。どかそうとしても無理無理戻ってくる。
足痛いんだって。この前の疲労もあるんだから。
本人曰く、近くでこうしていると安心すると。
本当になんと言うか、幼くなったな。
「ドリーマー、本人もこう言っているのですから離れなさい」
そんな風に降ろしにかかるスケアクロウ。
だが、依然として彼女が離れる気配はない。
そこまで頑なに維持するポジションか?そこ。
お前普段は気が乗らないからいいやって断ったりする割にはこういう時に全く離れないのはどういうことだか。
スケアクロウは唇を尖らせて困ったものですと対処に困っている様子だ。ガスマスクをつけてしまっていて分かりづらくはなっているが、未だに微妙な表情だ。
「別にいいでしょう?だって、貴女が座る訳でもないし?」
その言葉を聞いたスケアクロウは一瞬固まった。
別に何の変哲もない言葉だったと思うのだが、妙に刺さりでもしたのだろうか?
暫くすると、だんだんと彼女の顔が熱を帯び始めているのが分かった。何を考え込んでいるのやら。
というより、若干目が泳いでいる。
(私が……?普通は人の膝に座る事なんてしない筈で、当たり前の事のはずなのに……何故か、妙に引っ掛かりを覚えますね……)
本当にどうしちゃったんだと少し不安だ。
ちらりとドリーマーの方を見ると、あからさまに悪い顔をしていた。豹変している訳では無いが明らかになにかを考えている。イタズラやら何やらをする時の顔だ。
そんな不安の中、ドリーマーが口を開いた。
「もしかして……貴女もこういう状態になってみたいの?」
……おい待て。
どうしてそうなった。
乗せないよ?と内心でボヤく。
お前はまだ小さい少女のボディだから難なく座らせてやれるが、スケアクロウはさすがに無理だろう。
普通の女性くらいの身体だ。
俺の足の負担がさらにかかる。
……なんて、俺の体の事ばかりを考えていたがこいつの本心は読めない。どういう事なんだか。
ちらりとスケアクロウの方を向いたが……
(いや、そんな事はないわ……だって、私はそんなことを考えたことすらないのだから、有り得るはずがない……なのに、何故か妙にどうしても引っ掛かりの様な、何かを言い当てられたかの様な感覚を覚えるのは何故……?)
追い打ちをかけられたかのように汗をかき始めるスケアクロウ。だんだんと顔の辺りに帯びていた熱が強くなっている気がする。おーい、スケアクロウさーん、戻ってこーい。そんな様に軽く呟きながらスケアクロウの目の前で手を振る。
「はっ……!どうしました、リオン」
どうしましたじゃないよ。
お前がどうしましただよ。
完全に一瞬意識が別のところに飛んでいただろう。
すぐに何事も無かったかのように取り繕っても分かるんだからな。お前明らかに何かおかしかったからね。
「……いや、完全にお前上の空みたいな感じになってたから引き戻そうかと」
そんな言葉で、ようやく自分の陥っていた状況を理解したらしい。小さくふるふると首を振って、なんとか自分で平常心を取り戻したようだ。
対するドリーマーは何かの確信を得たかのような表情をしており、未だに悪い顔をしている。
幼い少女がする顔じゃない。
もっとなにか別のものに見える。
(これは……もうちょっとだけ揺すってみようかしら)
そんなドリーマーは、ある行動に出た。
「ねぇ……もっと構って?私だって任務中とか、他の人が来てる時とか寂しかったんだから少しくらい良いでしょう?」
急な猫撫で声。
逆に怖くなるわ。発言も問題だが、それ以上に問題行動を起こしている。膝の上で向きを少し変えては……
ぎゅーっと俺に抱きついてきた。
完全に兄に甘える妹の様相だ。
ドリーマーは見せつけるかのように大胆な行動に出ていて、それでいてどこか挑発的だ。
俺の胃が痛くなるからやめて?
当の俺の表情はと言えば、ジト目で見つめているが恥ずかしさが隠しきれていないだろう。
多分、変な顔をしている。
傍から見ているスケアクロウからすると、見せつけられるのはたまったものじゃないだろう。
俺もチラリと見る分には微笑ましいと思うが、見せつけられたらうわぁ……ともなる。それが普通だと思う。
「……ドリーマー……いい加減にして下さい」
「あら?怒っちゃった?ただ私は構って欲しかっただけなんだけど……」
またもや何かが刺さったように硬直するスケアクロウ。俺視点からすると、完全に彼女はドリーマーに遊ばれている。姉よ、それでいいのか……?
スケアクロウはちょっとするとブツブツと何かを呟き始めている。ドリーマーは面白そうに頬を緩ませ、純粋な悪戯心を振り回している。おかげで大災害だ。
少しばかり聞き耳を立ててみると……
いや、何も聞こえない。
もごもごと音がするだけだ。
ガスマスクで聞こえなくなっているのだろう。
(ドリーマーはただ構って欲しかっただけ……そう、ただそれだけだと言うのに何故ここまで気分が晴れないのでしょう……別にただ構って欲しかっただけで、それ以上のやましい事も考えていない筈。もしそう考えていたとしてもなぜ私はそこまで気にして……つい先程から、私は一体どうしてしまったと言うの……?)
ガスマスク越しには小さい声は届かないし、表情だって読みづらい。ただ、俺に見えるのは……
完全にオーバーヒートしかかっている。
顔は赤熱しているし、煙を噴いている。
これは流石にヤバいだろと内心思う。
そろそろ止めるべきだと止めようとした時だ。
ドリーマーは未だに追い打ちを続けてしまった。
「もしかして……嫉妬?」
俺は全く訳が分からなかった。
なぜ嫉妬?と完全にボケた顔で頭には?マークが浮かんでいるだろう。目に見える。
本人でさえ見えるからきっと見える。
そんな訳の分からないことを口走るほど理解が追いついていない。嫉妬する要素などどこにも無いはずだ。
それなら訳が分からないのも当たり前になる。
「わ、わたくしがしっと……?」
呂律が回ってない、もうヤバいぞこれは。
オーバーヒートしかしっている状況だからか、心做しか表情も少しとろんとしている気がする。
絶対目をぐるぐるに回して混乱してるよこれは。
少しの沈黙。
妙な時間が流れる。
何この時間とツッコミを入れようと思った瞬間。
「ふしゅー……」
そんな音がした。
と言うより、スケアクロウの口から自然にこの擬音が発された。それと同時にパタリとスケアクロウが倒れてしまったのだ。これには思わず俺とドリーマーは同時にあっ……と素っ頓狂な声を出してしまった。
バカ、相手は怪我人なのにぶっ倒れさせちゃいけないだろうが!と上手く止められなかった自分を叱りつける。
ドリーマーの方もまさかここまでなるとは思っていなかったからか、かなり大慌てだ。
「ど、どうするのこれ……スケアクロウ倒れちゃった……」
「あーもうこいつ怪我人だし病気したら余計に体調も傷の調子も悪くなるってのに……とりあえずドリーマー、冷凍庫に氷嚢とかあるだろうから持ってきてくれ!」
分かったと返事を返したドリーマーは慌てて取りに行った。イタズラも度が過ぎるのは良くないと言うことをはっきりと言うべきだった……
「……ん……?私は……」
彼女が目を覚ました。
少し呆れもあるが、大事がなくて良かったという気持ちの方が強い。微笑みながら、彼女の顔を覗き込んでいた。
「おはようさん、体調は大丈夫か?」
「……まだ、少し変な気分で……」
スケアクロウの頭の上には氷嚢が乗っている。
ガスマスクは外され、ある程度排気もできるように寝かしていた。彼女は人間でいう熱中症のような状態にも似ていたが……どちらにせよ、高熱を出していたことには間違いない。
彼女もまだ気分が優れないようだ。
そんな彼女だが、ふとした時に目を見開く。
「……っ!」
よくよく彼女が状況を見た。
周りには人はいない。
ドリーマーは仕事が入ったらしく、謝りながらもスケアクロウを任せて部屋を出ていった。
実質二人きりだ。
目を開ければ、目の前に俺の顔がある。
後頭部には、多少柔らかくも芯があるような感触。
「リオンの膝で、寝てしまっていた……?」
「……ドリーマーが、こうした方がきっとよく眠れるって言ってたからな。試してみた迄だ」
彼女の顔がまた再び赤みを帯びる。
……まぁ、友人と言えど膝枕は流石にな。
でも、大人しく眠る彼女の寝顔は少し可愛らしく見えた。こんなことを言っては、変態に見られるだろうか?
「……迷惑をお掛けしました」
「良いんだよ別に。減るものじゃないしな」
俺は俺で良いものを見させてもらった。
対価はそういう事だ。
彼女はほんの少し、頬を緩めて微笑んで見せた。
いつも通りの光景だ。
彼女は病人になってしまったようなものだ。
早めに部屋に送り返して安静にさせなければ。
彼女がダウンしてからそう時間は経っていない。
だが、また熱で倒れても困る。
「今日は体調も優れないだろ……部屋まで送っていこう、立てるか?」
「え……いえ、そこまで迷惑を掛ける訳には」
迷惑だなんて思っていない。
そんな風に呟き、スケアクロウを抱えて部屋を出る。よく考えたら、オーバーヒート後は体調もかなり優れないらしい。特にそれが思考系であれば余計に。
それなら、もしものことを考えて俺が抱えて連れていくべきだと踏んだ。抱えられたスケアクロウは何も言わないが、視線は完全に逸らしている。
悪いことをしてしまっただろうか。
そんな風に思っていたが、彼女の顔は不思議と嫌ではなさそうだった。
(膝枕……不思議と、心地よかったのは何故……?自然と眠りに落ちてしまうほどで私も嫌ではなかった……でも、とても何か得をした気分で、嬉しい様な……本当に、私の考えることはよく分かりませんわ)
また何か考えているようだ。
考えすぎはさっきのようになるというのに。
でも、その顔は引きつってはいなくて、リラックスしている様子で。そんなに俺の腕の中は心地がいいのだろうか?後でセクハラだなんて訴えないでくれよ?
そんな風に冗談を吐きながら、彼女を部屋へと送り届ける。
彼女は少し嬉しそうにしていて、最後に一言。
いつもありがとうと声をかけてくれた。
そんな一言だけで、やはり頬が緩む。
ダメだな。格好はどうもつけられないらしい。
それでもまぁ、いいか……
彼女がぐっすり眠ったのを確認してから、自分もまた部屋へと戻った。
後に二人でいるところを目撃されて基地内の話題となってしまい、ちょっとした騒動に発展するのは、また別の話だ……
・遅れてしまい申し訳ありませんでした!
今回はドリーマーとスケアクロウの話でした。
今回のキャラ(1人)紹介。
ドリーマー:豹変するような要素の抜けた結構煽りスキルの高い年相応(?)の人形。凄く気分屋だけどリオンには懐いてる。他にも懐くのは色々いるけれど、UMP45,40には絶対に懐かない。
・ドルフロ1周年ですね!
自分は416と誓約したのでスキン欲しいと意気込んでガチャを引きましたが全弾外しました(瀕死)
・次回はOTs-12のお話の予定です。
次の話もお楽しみに!