鉄血もグリフィンも争わない平和な世界を死に損ないが満喫するだけ 作:葉桜さん
グリフィン基地内。
喫茶 鉄血支店……もとい、カフェ。
最近は本当によくここに来るようになった。
部屋に居ると良く騒がしくなるからだ。
ある程度はいい。だが、あまりにも多い。
俺の部屋はお悩み相談やら溜まり場やら、多目的室となりかけているのが現状だ。
デストロイヤーやドリーマーが暇潰しにやって来ることもあるし、45や40が任務で疲れたからってくつろぎに来ることもある。時にはスケアクロウがちょっとしたことを話に来たりもするし、ヤバい例だと時々M16が禁酒令を出されてるってのに呑みに来ることさえある。
さらに言えば、この前の面子勢揃いでだ。
流石にそれは叩き出すぞと言ったが。
まぁ、そんな状況が今日も今日とて続いていた。
さすがに俺も疲れを感じていた頃だ。
そんな中、この前カフェに来たことをきっかけにここによく入り浸るようになったのだ。
ここは比較的穏やかで、雰囲気としても好みだ。
落ち着くにはうってつけの場所で、結構気に入っている。入り浸る理由は他にもあるのだが……
いちいち説明をしていたらキリがないな。
「……あー、今日はコーヒーを頼めるか?」
「はい、ですがちゃんと飲めますか?」
スプリングフィールドがそんな風に茶化す。
うるさいやい。俺にだって格好つけたい時はある。
クールな男にはブラックのコーヒーが似合うと誰かが言っていた。俺のキャラにぴったり……という訳では無いが。
たまには渋く行ってみたいじゃないか。
「リオンさんは甘党ですもんね」
「……なんの事だか。今日の俺は一味違うぞ」
Dまで言ってきた。
そこまで俺が甘党なイメージが定着しているのか。
まぁ、基本甘い物ばかり頼んでいるが……
そんなDが持ってきてくれたカップを手に取り、恐る恐るというのをバレないように口を付ける。
……ダメだこりゃ。
苦い。凄く苦い。
思わず顔を顰めてしまった。
絵に描いたのなら口が菱形になってしまっていることだろう。そん見え見えな見栄を張っている自分がなんだか虚しい。
「……悪い、やっぱり砂糖とミルク貰っていいか?」
「そんなことだろうと思いまして……もう用意してたんですよ」
やっぱりバレてる。
うん、分かってはいた。
甘党にブラックのコーヒーは厳しい。
目を逸らしながら砂糖とミルクを要求する。
向こう方も完全に分かっていたようで、もう事前に用意されてしまっていた。手の平で自分から踊っていたな。
Dが砂糖とミルクを渡してくれる。
自業自得とはいえなんだか悔しい。
2人は完全に生暖かい目で俺を見ている。
ちょっとその視線がつらい。
そんな平和な時間が過ぎる中、2人の新しい来客があった。
「いらっしゃいませ、お好きな席へどうぞ」
そんな2人の来客だが、組み合わせとしてはあまり想像がつかないコンビだった。片や委員長気質で生真面目、小隊内で唯一のSMGである人物……AR小隊のRO635。
もう片や奇天烈で大暴走する上司に頭を悩ませる、これまた生真面目で苦労人な鉄血のハイエンド……ゲーガー。
この2人の組み合わせなどほとんど見た事がない。
多少話している事は見かけるが、そんなに仲が良かっただろうか……2人は俺を見つけると一瞥して近い席へと座った。
「何だ、ROとゲーガーが一緒に居るなんて珍しいな」
そんな風にボヤいてみる。
2人は意外とそんなことは無いとばかりに答えてくれた。
「いえ、ゲーガーさんとはよくお話しますよ」
「お互い、何となく気が合うようでな」
彼女たちはなんとなく気が合うらしい。
聞いてみれば確かにと思うのだが、彼女たち2人には意外に共通点がある。1番なのは、性格面だろう。
お互いに生真面目な事もあり、しっかりとした話が出来るお互いを気に入っているという所か。
他には、上司や関わりの深い人物が適当やら暴れまくったりするところだろう。代表例を上げると、ROならM16……ゲーガーならアーキテクトと言った所だろうか。
彼女らを止めるブレーキは基本的に彼女たちだ。
他のメンバーが止めないということは無いのだが、真面目な人物までもがノッてしまったら最終的にしわ寄せが来るのは根から生真面目な彼女たちだ。
「よく息抜きでここに来ることが多いですね、この2人は」
「私は新参だけど、二人が一緒にいるのはいつも見てるかな?」
そんな中で苦労することも多いからか、ここで集まって共に苦労話をする事が多いようだ。今日もそのうちの1回なのだろう。
「まぁ、言われてみれば……」
彼女達にとっては数少ない悩みの共有相手だ。
よく話すのもおかしい話じゃない。
たしかによくよく思い出してみると、彼女達は意外と話している。真面目な者は真面目な者を好むのだろう。
「まぁ、たまにはこうしないと私も胃に穴が開きそうなのでな」
「ええ、本当に……」
心中お察しします。
特にゲーガー。
ROはまだ常識的なM4やAR-15がいるが、彼女の負担を軽減してくれるようなものはほぼ居ない。時々様子見に来る代理人程度か。いや、言うならDもだろうか?
つい、微妙な表情になってしまう。
どちらにせよ、彼女たちは確かに負担がかかっているというのも事実だ。そんな彼女たちには息抜きが必要不可欠だろう。
「まぁ、今日くらいはゆっくりと休んだ方がいい。幸い俺もいる事だし、なんかあってもある程度は止められるから」
「そうだな……なら、お言葉に甘えるとしよう」
「と言っても、彼女たちと言えどここで騒ぐことは無いと思いたいものですね」
正直なところを言うと、俺も苦労していると思っている。今ここには苦労人達の集会が出来てしまっているのだ。
されど、俺たちにとっては安息の地だ。
お互いの苦労を分かち合い、そして次もまた頑張ろうとお互いに元気づける……そんな会話だろう。
そんな様に意気投合をする……
ある程度、3人で苦労話をしたり、何となく起きた良い話をしたり。なんというか、普通に普通の日常会話をしている。本当に何の変哲もない。
「……またアーキテクトが突拍子もない事を始めてな……後で謝る私の身にもなって欲しいものだが」
「あー……」
ゲーガーはアーキテクトに振り回された時の話を良くしている。正直、俺も無関係ではないといえば無いから少し罪悪感がある。仕方が無いじゃないか。彼女は男のツボを分かっているのだから。でもやっぱり罪悪感はある。
悪い、ゲーガー。
だが、彼女はそう語りながらもその顔はどこか穏やかな雰囲気だった。彼女も、そんな日常を悪くないと思っているのだろうか?
「私の方はまた小隊の方であれこれありまして……」
「そちらの方はなんと言うか、上司と部下じゃない分勝手が違うな」
ROはAR小隊内の色々な話をしている。
その殆どがM16の暴走であったり、SOPMODが色々とはしゃぎ回った故の混乱などの話だったが。
でも、所々見せる平和な顔は、たしかにその日常を楽しんでいるかのような穏やかな顔だった。
彼女もなんだかんだ言っていながら、内心ではそんな平和な日常を楽しんでいるんじゃないだろうか。
そうなのだとしたら、俺としては微笑ましい。
「……なんと言うか、話す内容の割には楽しんでそうだな」
「本当ですね……なんだかんだ言って、本当は楽しいんだったりして」
スプリングフィールドがちょっとしたボヤきに反応してくれた。そんな俺はあいつらの顔、笑ってるしなと付け足して言った。ROは確かに苦笑いをしていたが、ゲーガーは無意識だったようでそんな事は無いと必死に否定していた。
何もそこまで否定しなくてもいいのに。
でも、無意識という事は自然と悪くないと感じている証拠だ。そう考えると、余計に温かく感じる。
「……よくよく考えると、確かに騒がしい日常の方が楽しい……なんて感じてしまうこともありますね」
「そうじゃないと逆に退屈しちゃうかもしれないから、少し騒がしいくらいがちょうどいいと私は思うよ?」
まぁ、本当にその通りなのだろうな。
多少刺激がある程度だから面白く感じる。
……または、殺伐しすぎているからこそ、こんなちっぽけな騒ぎでワイワイできる平和さを再認識出来るのか……
その答えは、俺には出しようがない。
ただ言えるのは、なんだかんだ言って付き合ってやっている彼女達も実は楽しんでいるということ。
そして、そんな風に付き合ってやろうとしてやれる程仲が良いのだと言うことだろうか。
本当に仲が良くなければ、こんなやり取りは出来ない。
俺はまた、頬を緩めて穏やかな顔になった。
「平和って……いいな……」
近くにいたゲーガーは完全に何かを察したような目でこちらを見ていた。決して空気を悪くしたいわけじゃない。
純粋に思ったことを言っただけだ。
もちろん、俺の置かれていた境遇は決して良いものではなかった。でも、その辛さを彼女らに押し付けるつもりなどさらさらない。平和な者達は、平和なままで居るべきだ。
ただ、改めて平和なことの良さを確認しただけ。
だが、その一言が気を使わせてしまったのだろうか。
まだまだ、周りが見れていない証拠だ。
「悪い。気にしないでくれ」
そう言ってカップに入ったコーヒーを喉に流し込む。
苦味がより強く感じられた気がして、口の中に残したくはなかった。苦いものが苦手だと言うのに、なぜ見栄を張るのか。正直、俺もよく分からない。
「……まぁ、お前の過去に何があったかは分からないが……私たちと同じように適度に外に出しておくべきだと私は思うぞ」
見透かされていたか。
いや、当たり前か。
あんなそれっぽい言葉を吐いたのだから。
分かった、気が向いたらそうするよと軽く返す。
せっかくの空気を壊してしまった気がした。
俺の中では、重苦しい空気がまた流れてきた。
そんな中だった。
「あっ、いらっしゃいませ!」
また来客だ。
「……あれ、RO。どうした、ゲーガーと一緒にいるなんて珍しいな」
「あ、本当だ!おーい、RO〜!」
彼女が見慣れた姉貴分と妹分。
M16A1とSOPMOD2だ。
そういえばM4A1とAR-15は今日2人で任務だったな。
そんなことを思い出しつつ。
ROは2人の方を見ると確かに微笑んで手を振った。
彼女も、ついさっきの話で少し気持ちが穏やかになったのだろうか?
「よし……とりあえず、酒はあるか?」
「……M16、ここに来てまでお酒ですか。それに、貴方は禁酒令を出されていた筈ですよ!……全く、貴女はいつもからして……」
前言撤回。
やはりいつも通りだった。
ROによるM16への怒涛の説教。
着いてきたSOPもまた始まっちゃったと呟くが、肝心の問い詰められている姉を気にすることも泣く。
Dちゃん私これー!と自分の好きな物を頼んでいる。
Dもはーいと和やかに返事を返している。
さらに客は続く。
今度は1人だが……
「やっほー、またさぼr……息抜きに来たよ〜……って、げげ、ゲーガー!?」
いつもいつもとんでもないタイミングだ。
次に来たのはゲーガーの上司にして俺の悪友……
アーキテクトだ。
完全に入店時にサボりに来たと言おうとしていた。
それでいいのか鉄血ハイエンド……
「ほう……?またお前は仕事を放り出して来たというわけか……?」
確実に額に青筋が浮かんでいるゲーガー。
俺もちょっとビビる。
だって怖いもん。
すごく怒ってるんだもん。
お前がビビってどうするんだと言われそうだが、本当にこればかりは仕方がないことだ。
静かに手で十字を切って手を合わせる。
アーキテクト、死ぬなよ……と。
「お前には話がある……着いてきてもらうからな……済まないRO。今日はここまでにしておこう」
「ええ、こちらこそ済みません……また今度 」
別れの挨拶と共にアーキテクトの悲鳴が上がる。
引きずられカフェを出たあとは言うまでもないだろう。
カフェの中も中で、M16が正座をさせられている。
ROはカンカンだ。こりゃひどい。
SOPはいつもの事で慣れたのか、特に気にする様子がない。
カフェのスイーツを堪能している。
「……悪いな、なんだか騒がしくなって」
「いえいえ、大丈夫ですよ。それがこの基地の良いところですから」
「騒がしいのは私たちの場所でも同じだったけど……でも、こういう光景を見られるのも平和だからこそ、だよね!」
それもそうかと2人の言葉に同意する。
騒がしいのも、確かにそれはそれでありだな……
そんなふうに思えた気がした。
いつもが葬式のように暗く静かな場所より、ここのようにどんちゃん騒ぎしている方が良い事など火を見るより明らかだ。こんな光景は確かな平和の象徴だ……
またカウンターで頬杖をつきながら、そんなワイワイやっている光景を微笑ましそうに見つめていた……
・更新遅れすみませんでした……(遺言)
今回はカフェでの苦労人2人の話でした。
なんだかんだ言ってROとゲーガーは仲がいいと思うんです
・UA数15000を突破致しました!
いつもこんな駄文を読んで下さりありがとうございます……!
・次はリクエスト回になる予定です。
次の話もお楽しみに!