鉄血もグリフィンも争わない平和な世界を死に損ないが満喫するだけ   作:葉桜さん

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今回はリクエスト回です。
残りはシリアスパートとか時期を見たりして消化するので待っててください……()


温和日常XVI:腐れ縁はどこまでも

グリフィン・鉄血合同宿舎。

最上階、いつもの如く俺の部屋……

 

 

 

今日も今日とて、俺の部屋には来訪者が。

今日の時刻はもう夜方。

外を照らすのは、点滅を繰り返す街灯と淡い月の光のみ。荒れ果てながらも、俺はこの風景を嫌いになれなかった。

何時も、どうしても見入ってしまうのだ。

人の気配一つ無い荒廃した風景が、あまりにも焼き付いて離れないのだ。安心するような、不安なような……

よく分からない気分になる。

 

 

 

……普段は。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう!部屋借りるぞリオン!」

 

「邪魔するわよ」

 

「俺の部屋はレンタルじゃないって言ってるだろうが!!」

 

 

 

今日ばかりは、そうもいかないらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

酒の瓶を持ちながら部屋に乗り込んできた2人の人形。

腐れ縁の宿敵同士の二名だ。

M16A1と、HK416。

 

 

 

前居た場所では、様々な事情が重なった結果味方同士であると言うのにも関わらず殺し合いを始めるほどの険悪な仲だった。

最も、殺意があったのは416の方のみだが。

しかし、M16の方も恨まれる覚えがあるという様な立ち振る舞いをしていたのは非常に気になるところだった。

……なんて言っているが、俺は事の成り行きを知っている。

彼女達は、本当に仲間同士だった。

 

 

 

あることをきっかけに、殺すべき対象と変貌してしまったが。それに関してはあまり思い出したくはない。

まぁしかし、ここではあくまでライバル程度で収まっているからまだ良いだろうと考えられる。

だから一緒にいることも大して不思議には思わない。

 

 

 

ただひとつ思うことがあるなら……

 

 

 

「またかよ!お前らまた何処から酒なんて持ってきているんだよアル中共が!禁酒令どうした!」

 

「大丈夫大丈夫、前にもあったんだし」

 

「私は完璧なのだから、誰かに制限されるまでもないわ」

 

 

 

もうこの組み合わせの時点で俺は胃が痛い。

この前の騒動起こした面子から処刑人(ブレーキ)モシンナガン(まだおだやかなこ)を抜いたこの2人だ。

しかもよりにもよってM16に416だ。

何も起きないわけがない。

既に頭は現実逃避モード。

流石に酒気で酔うわけではないが……

ここで暴れられたらたまったものではない。

 

 

 

M16の言っていることは褒められたものではないし、416に至っては正直言い返したい。

お前酒入ってる時だけは完璧じゃないぞ。

普段完璧でもそれだけは擁護できないぞ。

しかも今回、誘ったのはM16では無いらしい……

あれ?非常に嫌な予感が……

 

 

 

「今日は私が飲みたいから誘ったのよ。コイツ以外は付き合ってくれないから」

 

 

 

よくM16も付き合おうと思ったものだ。

彼女にアルコールが入るということは、凶暴な彼女の枷を外すのと同義だ。俺だったらできない。

いや、むしろ俺以外でも出来ないだろう。

彼女は真っ先にグリフィンで禁酒令が出された人形だ。入った時の荒れ様はもう酷い。

その辺一帯が荒地のようになる。

それほどにまで恐ろしいのだ。

 

 

 

しかし、このM16……

416が荒れた時でも平然としているのだ。

ブレーキにならない人間が1番平然としているというのはなんとも言い難いが、貴重な人物であることも確かだ。

普通ならこの416を躱し切れる者はいない。

が、彼女だけは躱し切れるのだ。

本人曰く、ジャックダニエル飲んでると強くなる

らしい。酔拳じゃないだろうに。

 

 

 

「まぁ、そういう訳だから、場所借りるぞー」

 

「どうせ帰らないだろ、お前ら……良いよ、ただもう夜だからあんましはしゃぎ過ぎるなよ」

 

「もちろん、分かっているわよ」

 

 

 

自信満々な回答。

俺はそれが不安で不安で仕方ない。

分かってます?君お酒飲むと変わるよね?

と、丁寧口調で聞きたいほどには不安だ。

 

 

 

今日の夜は悪夢として出てきそうだ。

せめて明日に支障が出なければいいのだが。

 

 

 

 

「さぁ、飲むわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「M16ぅ……わらひ(わたし)はまだのめるわ……」

 

「呂律が回ってないぞ、416」

 

 

 

案の定。416は既に酔いが回っている。

しかも、この前とは違って呂律が回らないほどにまで。

この前よりも酔いが酷い。

M16は禁酒令を破っでいることをチクられたらまずいと思っているのか、完全に酔うまでは飲んでいない。

彼女は普段からこう自重してくれていれば良いのだが。

まぁ、叶わぬ願いなのだろう。

ただ、今日は妙に酔いが酷い割には416が大人しいような気がした。

 

 

 

「……なぁ、なんだか今日は416が妙に大人しくないか?」

 

「同感だよ、私もこんなのは初めて見た」

 

 

 

どうも彼女も同じことを思っていたようだ。

普段の416ならもっと暴れたり、荒れ狂うほどだったと認識しているのだが……そんな素振りは全くない。

なんだかM16にじゃれているような、そんな状態だ。

 

 

 

「おい416、どうしたんだ。普段ならそんな寄ってこないだろ?」

 

「……」

 

 

 

無言ではあるが、M16にしがみついているのは変わらない。

本当にどうしてしまったのか。

あの対抗意識の塊である416がここまでなるとは。

何かあったのだろうか。

そんな風に思った。

が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わらひは(わたしは)M16のらいはる(ライバル)なの……わらひかいちはん(わたしがいちばん)M16のあいほうにふさわひい(あいぼうにふさわしい)の……!!」

 

 

 

大人しいかと思ったら急にじたばたし始めた。

なんだ、いつもの416だったか。

しがみつかれたままバタバタされているM16は流石に困惑している。いつもとは違い、くっつかれている状態だからだろう。さすがの彼女といえど困惑もする。

 

 

 

さらに言えば、彼女の出したセリフに関しても気になるところはあるだろう。”私が1番M16の相棒に相応しい”。

突拍子もないことを言っているのもそうだが、それ以上にその言葉の意味が一瞬理解できなかった。

そんな言葉もM16は聞いていたからこそ、余計に困惑している。いつも敵視しているような416が、本当はそんなことを考えていたのかと。

困惑と同時に顔を少し赤くして恥ずかしそうに頬を掻くM16。あいつもそんな顔をするんだなと珍しいものを見た気分だ。

 

 

 

たからわらひにもっとかまっへよ(だからわたしにもっとかまってよ)……」

 

 

 

恐らく、私に構ってよ。と言ったのだろう。

その言葉を輪切りに余計に擦り付く。

彼女、もしかしてM16に自分を見て欲しかっただけなのだろうか……?そう考えると、何かと納得する部分がある気がする。

 

 

 

「……構ってやったらいいんじゃないか?どちらにせよそれ以外に方法はないだろ」

 

「私はこいつと違って子守りは苦手なんだがな」

 

 

 

そう言いながらも、穏やかな微笑みで擦り寄る416の頭に手を置く。まるで、妹たちに見せる微笑みのように。

 

 

 

……あぁ、やはりここは平和だ。

きっと今までなら、こんな光景など見られなかった。

殺しあってばかりいた2人が、ここではこんなにも仲が良いのだから。

 

 

 

「頼りにされてるんだな、M16」

 

「さあな。……まぁ、なんだかんだ言って何度も喧嘩してるが……AR小隊のメンバー以外じゃ、1番こいつが私の隣にいるのは確かだよ」

 

 

 

彼女達は、元々最初は味方だったのだ。

俺の居た世界線でも、それは変わらなかった。

しかし、歴史を大きく変えた”あの事件”によって、2人の未来も大きく塗り替えられてしまった。

416は所属していた軍を追われ、その原因の一端を担ったM16に対して殺意と復讐心を抱く。

M16は確かに己が成すべきことを成した。

416は自分のプライドに従い動いた。

その違いが、彼女達の間に亀裂を入れる原因。

 

 

 

故に彼女達はAR小隊と404小隊に別れた後も殺し合いを続けたのだ。416は復讐のために何度も襲い続けた。自分の存在価値を証明するために。こうやって考えると何ともくだらない理由と取れるが、それでも本人にとっては譲れないものだった筈だ。

 

 

 

ここでも、M16と416はなんだかんだ言って味方同士なのだ。それは全く変わらない。

しかしここでは、対立していながら助け合っている。

お互いに皮肉を言い合いながらも、結局背中を任せられるのは自分が最も苦手な相手という訳か。

きっとあの事件が起きていなかったからこそ、今の彼女たちの関係があるのだろう。

 

 

 

戦場にこの二人が共に立てば、どれほど頼もしいだろうか。きっと、その連携は凄いものじゃないかと1人勝手に期待する。彼女の眼差しは、確かに擦り寄る彼女に向けた信頼の証なのだろう。

 

 

 

わらひ(わたし)……このまへはすこくかんはっらの(このまえすごくがんばったの)……すこいれひょ(すごいでしょ)……?」

 

「ああ。凄いよお前は。さすが私の相棒だな」

 

 

 

ポンポンと頭に手を載せる。

まるで今の416は子供のようだった。

きっとここの416の敵愾心に見えるそれは、彼女に自分を見てほしいという気持ちの裏返しなのかもしれない。

それとも、自分が早く彼女と同じ立ち位置に追いつけるようにと素直じゃない相棒意識でそうなっているのか。

 

 

 

烙印(ASST)で刻まれた記憶だけではない。

彼女の対抗意識には、それ以上の意味があったように思えた。本来の彼女たちの関係とは、こういう物だったのだろう。それだけに、自分の辿った歴史が嫌になる。

今更過ぎたようなことを言ったところで何も変わらないとは俺が1番分かっているはずなのだが。

 

 

 

だが、こんな平和なところを見せられては、暗い気分も晴れるというものだ。穏やかな温かい空気が1番の薬のように思える。2人の信頼や付き合い……一言だけじゃ表せない関係が、少し見えた気がした。

 

 

 

 

 

 

「……今日ばかしは飲ませて正解だったかもな。シラフじゃこんなこと言わないだろ、416は」

 

「まぁ、そうだろうな。素直じゃない奴だ……こうでもしないと本音が出ないのは困りものだよ」

 

 

 

もしかしたら……

さすがにこれはないとは思うが。

416は、狙って飲みに誘ったのか?

……なんてことは無いか。

もしそうだったとしたら……

中々完璧な作戦じゃないかと感心するところだ。

 

 

 

 

 

 

「……416も、中々やるよな」

 

あはひまへよ(あたりまえよ)……わらひはかんへひらから(わたしはかんぺきだから)

 

 

 

 

 

 

いつものキリッとした表情はなく、にへらぁとした気の抜けるような表情。もしかしたら、本当はこんな姿か彼女の素なのかもしれない。

なんだかんだ言って、今日だけはこの酒盛が良いものだったんじゃないかと感じられた。

普段は暴れるだけで、俺の胃が痛められるだけだったが……今日は、良いものを見せてもらったのだから。

 

 

 

らから(だから)……わらひはM16の……」

 

 

 

そこまで言いかけると、416はM16の腕の中で眠りこけてしまった。幸せそうに寝息を立てている。

M16はあーあと口にしてはいるが、心做しか頬が緩んでしまっている。あんなことを言われれば、それもそうか。

俺も少し温かい気持ちになった気がした。

今は辛いことを忘れよう。

いずれ向き合わなければならなくなるのなら、こういう時に平和ということを実感しておかなければ。

 

 

 

次に同じことが起きそうになったら……

その時は、絶対に止めてみせる。

彼女達の腐れながらも美しい縁は、誰にも切らせない。

どこまでも続くこの友情を、まだまだ見ていたいと思いながら……

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、そろそろお暇するか。今日は助かったよ」

 

「気にするな。俺もいいもの見せてもらったしな」

 

 

 

そう言って見ると、M16は苦笑いを返した。

本人としても柄ではないところを見せてしまったとでも思っているのだろう。柄でもないことと言うのは、人の目には不思議と良く見えるものだ。

普段が残念な以上、余計に。

少しM16に失礼なことを考えていただろと言わんばかりにジト目で睨まれたが、口笛を吹いて誤魔化す。

 

 

 

「416は私がちゃんと帰しておく。安心してくれ」

 

「……一人で大丈夫か?」

 

 

 

大丈夫だよと一言。

背中におぶられる416はより幸せそうな顔を浮かべている。こちらはいつも頼りになる分、余計に珍しく見える。

思わず、俺も笑みが零れた。

帰りに怪我をするなよと一言忠告を入れて。

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、もしかしたら今度は普通に飲みに来るかもな」

 

「そいつは勘弁してくれ」

 

 

 

 

 

冗談のようなやり取りを交わして、波は過ぎ去った。

今日は色々と思うところが沢山だった。

416とM16の事。

それに繋がる過去の話。

良い事を知った反面、思い出したくなかったことを思い出してもいる。まぁ、でも今日は……

 

 

 

 

「まぁ、楽しかったからいいか」

 

 

 

自室のベッドに飛び込む。

今日は少しだけ良い夢が見れそうだ。

最近は悪夢続きだっただけに、少し希望が持てる。

元よりここ自体が夢のようなものだが。

 

 

 

 

あの二人には、これからも良き仲でいて欲しいと願った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

余談だが、あの後404小隊の部屋ではお互いに惚けて寝ていた416とM16が発見されたそうだ。

416は昨夜何があったか覚えていなく、大混乱したらしい。M16はそれをニヤニヤしながら眺めていたようだ。

そんな状態でまた小競り合い勃発。

……やっぱり、良くも悪くも彼女達は変わらないらしい。

 




・今回はリクエストのM16と416のお話。
この平和な世界ならこんな関係も有り得たかなという妄想の元書いております。+大半が眠気のある状態で書いている為おかしな所がマシマシなのでは……?


・感想も評価もお気に入り登録も沢山いただけて非常にありがたく思っています……!更新速度は下がりつつありますが、これからも頑張っていきます!良ければ評価とかつけて下さるとモチベが上がって更新速度が上がる……かも知れません。(露骨)


・コラボに関してはいつでも受け付け中です。使って欲しい、逆に使いたいなどありましたら活動報告でもメッセージでもどうぞ!


・次回のお話は未定。



次の話もお楽しみに!
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