鉄血もグリフィンも争わない平和な世界を死に損ないが満喫するだけ   作:葉桜さん

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とても、とてもお待たせしました。
リアルの様々な事情にて遅れていると同時に、不定期行き当たりばったりの弊害があり話の流れや何やらが少し変かもしれません。
これから更新ペースを戻して行ったり、またやる気を取り戻すように頑張ります。

また、展開を少し予定より変えているためもう少し続きます。

お久しぶりの最新話、どうぞ!


状況訓練IV:混迷の雑音

「三陣営総員が1つの戦場に集まりつつあるな……」

 

「1人でも離脱者が出ると焦りが出てくる。そういう物さ」

 

 

 

今この戦場を客観的に見ている者は多い。

その中で、その事に気づけるものは少ないだろう。

彼が言うには、チームの1人でも欠ければ焦りが出るとの事。基本的にチームというのは、誰も欠けずにある状態が完璧だと言う。それは当たり前だ。

 

 

 

完璧な状態を想定して作戦は形作られる。

その作戦通りに動こうとして一部が崩れてしまえば、そのあとの対処が難しくなっていく。

下手に継続をしようものなら、完全にチームが壊滅する可能性だってある。しかし、作戦に失敗は許されない。

故に不安要素が積み重なり、焦りとなって現れるのだと。

 

 

 

「少しでも痛手を受けたところを補修しようと合流に向かうだろうから、結果として中央の総力戦になる。……逆に言えば、この状態を逆手に取ることが出来たのなら、上手くやれるかもしれないな」

 

 

 

最初のうちは室内ということもあり、奇襲や潜伏などがメインとなって行動していたように見える。

しかし、戦闘が始まればそれぞれのカバーや応戦などでなかなか作戦通りに行かないということがある。

特に今回など、皆が想定していない相手からの攻撃を受けているという状況なのだから。

 

 

 

「……実戦ではこれ程酷い情報の錯綜はないと思いたいんだが」

 

「いいや?戦場では何が起きるか分からない。下手をすれば……仲間の裏切りだってね」

 

 

 

その一言に、鋭い視線を向ける。

向けられた指揮官は、何とも思っていない。

それはそうだ。何一つ間違ったことは言っていない。

俺がそんな事起きるわけないと馬鹿のように信じているだけだ。

 

 

 

「でもまぁ……」

 

 

 

彼女らは、そんなことをしないと信じているよ。

そんな声が聞こえた。

そうだった。彼は指揮官なのだ。

時に、冷徹に振る舞わなければいけない時もある。

信じたくないことを信じざるを得ない時だってある。

それが、戦場を指揮する者だったと。

だからこそ、真面目に考えた意地悪をする訳だ。

 

 

 

「……野暮なことを言ったな」

 

「良いんだよ、そう思うのは当たり前だ」

 

 

 

人権団体との戦いは、そう遠くない未来だろう。

そんな中で彼女達を生かすためには、多少なりとも冷徹になる覚悟が必要だった。このような事を想像させなければ、彼女達がいざと言う時に死んでしまっては……きっと後悔さえもできない。そんな思いが、アレの胸の中にあるのだろう。

 

 

 

画面に戻ろうか、という一言で再び映像に目を向ける。

擬似戦はもう終盤。被害こそ少ないが……

一箇所に戦力が集中するこの時が、このルール上1番脱落者が出る。しかし、1点のみに集中しては同じ轍を踏むと彼女たちも知っている筈だ。その裏の掻き合い……

果たして天秤はどちらに傾くだろうか?

 

 

 

……今思えば、この訓練の目的は人権団体との戦闘において被害を出さないための訓練だ。

そのために想定外の事態への対応に関する部分を改善する、という目的だったはずが今となっては普通の撃ち合い……

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おい、この訓練の目的……だんだん逸れてきてないか?」

 

「……大丈夫、大丈夫。ボクの思惑通りだから、多分」

 

 

 

白々しい誤魔化し方にため息を付く。

お前が”僕”なんて言う時はふざけてる時だけだろうが。

このバカはしっかりと考えているのかふざけているのか判断に困る。今だけはアーキテクトに付いて回るゲーガーの気持ちがわかる気がした。

流石にあそこまで酷くはないと思うが……

 

 

 

「まぁもしそうだったとしても、常日頃から戦闘時の動きを実践で復習しておくことはいい事だからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《逃げ足が早くて上手く追撃できない……!》

 

《ビットも上手いこと扱ってるから弾が当たらないよ……これじゃあ取り逃がしちゃいそう!》

 

 

 

2人は苦戦していた。

狙う目標は定まってはいる。

しかし、そこを上手く撃墜できない。

的は小さく、更にはちょこまかと動く。

狙いを定めたとして、上手く当たる相手ではない。

彼女の処理スピードも早く操作も正確だ。

さらに頭を悩ませる要因が……

 

 

 

《逃げても無駄です!》

 

《大人しく私たちと戦った方がいいんじゃない?》

 

 

 

後ろからは2人の追手。

RO635とSOPMODIIだ。

弱ったハイエンド達を狙う404小隊に標的を定めて追跡に来ている様子。今2人は退路を塞がれている以上、追い続けてスケアクロウを撃破しなければ後ろの2人に撃たれるだろう。

 

 

 

逆ならばどうか、という話だが……

もしもAR小隊の相手をすれば、ハイエンド達は確実に潜伏するだろう。人数的な差もある以上、自ら出てくる事がなくなる。そうなれば、AR小隊との戦闘で少しでも被害が出れば鉄血たちが逃げ切ってしまう。

UMP姉妹の置かれた状況は、まさに最悪だ。

 

 

 

《……獲物に気を取られすぎたかも。私としたことが……!》

 

《後ろからも来てるし、まずはスケアクロウを倒さなきゃ……!》

 

 

 

予断を許さない状況。

1つでも間違えてしまえば、こちらはやられる。

最初に優位を取ったのが嘘のようだ。

アレの言った通りだ。

焦りが目に見えるようになってきている。

このまま、最善の選択をできるのか。

45は常にそういう状況で切り抜けてきたはずだ。

そこに関しては、心配はないのだろうが……

判断力が確かに鈍ってきてもいるだろう。

 

 

 

絶体絶命の危機。

そう思っていた。

 

 

 

しかし、あのAR小隊が言うように。

ヒーローとはーーー

 

 

 

《!?後ろから撃たれている?》

 

《わわわ、嘘でしょ!あっちの方はM4とAR-15が見てたんじゃ……!?》

 

 

 

 

《隊長の姉たるもの、常に切り札でいないといけないもんね!》

 

 

 

ーーー遅れてやってくるものだ。

追っ手のさらに裏にいる人物、UMP40。

彼女が、処刑人の追跡を躱して救援に来たのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画面を見ていた俺は、完全に呆気に取られていた。

あの状況から、良くもまぁなんとか抜け出せたものだ。

 

 

 

「……別のカメラには映ってたけど、処刑人は2人の退却とともにUMP40の追跡を止めたわ。逆に40はそこで下手に追撃をせず、妹たちの救援に向かったって訳ね」

 

 

 

それを見かねたWA2000が、俺にその状況を説明してくれた。40は処刑人が逃げる所を追撃しても良かった。

しかし、それを行ったら確実に今狙われている2人が更に不利になる。連携が大切となる室内戦で、仲間を失うのは不味い。それ以上に妹に手を出させまいという使命感が彼女を動かしたのだろう。結果として、彼女がROとSOPの裏を掻けたという訳か。

 

 

 

「いい判断だった。元から相手に対して奇襲を仕掛けようとしたのも良かったが、こんなところで上手く作用するなんてね……さらに言えば、AR小隊のターゲットの優先度を理解していたからかもしれない」

 

 

 

しかし大前提として、40が一旦奇襲のために離れていたという状況があった。下手をすれば不利な状況ではあったが、前々の選択がここに響いて来たようだ。

彼女はそれだけでなく、45から事前に通信でとあることを言われていた。俺達が別の場面を見ている際に、簡単に推測した行動パターンを彼女に伝えていた。

 

 

 

AR小隊は定められた任務に忠実であり、404小隊ほどの柔軟さを持ち合わせているとは言えなかった。

そこで予想された行動パターンが、鉄血ハイエンド達を優先的に狙う……という予想だった。

それは見事に的中し、40が抜け出せたということだろう。

またもやひっくり返る盤面。

エースの戦いとは、こうも目まぐるしいものなのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《相手は1人、ですが向こうの2人が振り向いたら……》

 

《逆にピンチになっちゃった……!》

 

 

 

一転攻勢。

ROとSOPはいきなり劣勢に立たされてしまった。

M4達の判断は、命令からすれば悪くなかった。

しかし、現場から見れば結果として悪い方向へと向かっている。この状況をどう切り抜けるか。

考えるよりも先に、行動しなくては。

 

 

 

《M4、AR-15!聞こえてたらすぐーー援に来て!敵に挟まれーーーった!》

 

《相手は3人、場所的にも逃げ場がーーません!》

 

 

 

通信機に向ける切羽詰まった声色。

それを聞いていた2人からの返事がない。

それどころか、少し回線が悪くなっている。

聞こえる声にノイズが走り、どうにも聞こえづらい。

そう、それはこちらにも言えることだ。

 

もしかしたら、交戦中なのかも……

そんな風に思い、不安を募らせるSOP。

最悪の場合、2人のみでこの状況を切り抜けなければならない。

 

 

 

《……SOP、追跡は止めーーょう》

 

《ええ!?なんでーーれじゃあ2人を逃がしちゃうし、下手したら挟まれてやらーーゃうよ!》

 

 

本当に最後の手段ならば、SOPMODは助けられるかもしれないとROは考えている事だろう。

実戦でやろうものなら、説教物だが。

しかし、意外にもROの答えは違った。

 

 

 

《彼女たちが必死になって向こうのチームを追いかけているのなら、それなりの理由があるはずよ。それなら、向こうは向こうで相打ちになることを願う。その間にこの予想外な追跡者を倒せれば、それだけ相手は見えないところで不利益を被るはず!》

 

 

 

なるほど!と納得したように声を上げるSOP。

この推察は間違いではない。

 

 

 

現に2人が追跡をやめない理由は、ここで逃がせば相手は潜伏に徹する。これは実戦でも有り得ることで、逃がした残党が結局見つからずじまいになり、最終的に援軍を呼ばれてしまうなどといった事例もあるレベルだ。

さらに言えば彼女たちは暗部のようなものと同じ。

狙った獲物は逃がしてはならないというプライドがある。それも相まってこの状況になっている。

そこまで考えられているのなら凄いな、と感心する。

 

 

 

《ここで彼女を倒せば、結果ーーて私たちが優位をーーるはず!》

 

《後ろが不安ーーど、やるしかないーー!》

 

 

 

そう言って追撃の足を止めた2人。

振り返り、迫りくる1人へと銃口を向ける。

 

 

 

《あれ……わわっ!そうなっちゃう?》

 

 

 

意外にもこの展開は彼女も予想していなかった。

確かによく思い返してみれば、自分も優先標的の1人だと呟く40。姉妹で頭は回るのに、どうもこういう所は弱いのか。

そこに少し呆れも混じりながら、もう少し見守る。

 

 

 

《しょうがないなぁ……あたいがここでやられーーったらーーが危ないし、姉の威厳……見せーーうよ!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーSystem OverLord。

SMGを携える戦術人形特有の思考。

回避を中心に立ち回り、守りに徹すること。

その思考回路の中身全てを1度、0へと戻して。

 

 

 

《さぁ、派手に撃ちまくるぞー!》

 

 

 

目の前の敵を殲滅するように、思考を再び修復する。

その大元は、守りではなく攻め立てへ。

枷から解放されたかのように、真の姿を現す。

にっと歪めた口は、明らかな狩人の様相で……

 

 

 

 

 

 

 

パァン!

 

 

 

 

 

 

 

……甲高い音。

あまりにも不自然な炸裂音。

壁に開けられた1つの穴。

それは2人の方にも、40の方でもない。

丁度よく垂直になる様に軌道を描いたそれは、明らかに異質であることを物語る。

 

 

 

引き金に指は掛かっているが、引かれていない。

40は、確かに引き金を引こうとした。

だが、その前にそれは起きたのだ。

同時に反撃のチャンスでもあるが、相手の2人さえ硬直している。

そう、可笑しい。

 

 

 

なぜなら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《……実弾……!?》

 

 

 

 

 

 

 

 

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