鉄血もグリフィンも争わない平和な世界を死に損ないが満喫するだけ   作:葉桜さん

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※今更ですが、この小説はスマホ向けに書かれています。
PCページの方は少々読みづらいかもしれません。


再会対面

 

鉄血工造、医務室。

 

 

無機質な部屋にあるひとつの白いベッド。

掛け布団は少し膨らんでおり、時々もぞもぞと蠢いている。耳を澄ませば、静かな寝息の音。

規則正しく立てられる寝息が、眠っているという事実を伝えてくれる。繋がれていたコードは律儀にまとめられており、それの駆動音も今はしていない。

 

 

外を見ればもう日は高く昇っている。外は雲1つ掛からない程に青く、今の彼が見たなら『腹が立つほどに快晴』と言うだろう。

窓から射す陽のおかげか、あまりに暖かい。

お昼寝をするにはもってこいだろう。

しかし、そんな時間になってるにもかかわらず、そこにいる人物は目を覚まそうとしない。

普段ならばそれで構わないのだが、今回はそうなると困る用事があるのだ。そんなことは知らんばかりにふかふかの布団に身を埋めて心地よさそうに寝転んでいる。分かると思うが、この完全にダメになっている人物は昨日あそこまで取り乱して2つの勢力を掻き乱したあの男なのだ。

 

 

「起きてください。もうお昼になりますよ」

 

 

ふよふよと浮いて部屋に入ってくる1人の人形。

彼が昨日話していた、ガスマスクが特徴的な人物。

入るや否や、眠っているであろう人物を起こしにかかる。

それでも狸寝入りか、ベッドから出てくる気配はない。

傷が痛むから揺さぶることは出来ない。

けれど、軽くぽんぽんと起こそうとしても起きる気がない。

困った人ですと頬に指を当てて考えるスケアクロウ。

どうしたら彼は起きてくれるか。

そろそろ、所定の時間になってしまう。

 

そんな所に、1体……いや、1匹と言った方がいいだろうか。

小型で、四足歩行をしている本当に小さい機体が背中に昼食を乗せてやってきた。そんなに飛び跳ねていたらこぼれるのではと思ったが、不思議なことに全くだった。

いつもありがとうとスケアクロウが返すと、そこにいる働き蟻……ダイナゲート(わんちゃん)はまたぴょんぴょんと跳ねた。

まるで喜んでいるようで、少し微笑ましい。

 

そうだと言わんばかりに彼女は手を叩く。

ダイナゲートを手招きして録音マイクの傍でヒソヒソと耳打ちをする。何を企んでいるのやら。

大丈夫ですか?と彼女が聞いてみると、大丈夫と答えるように首(胴体?)を上下に振った。

 

1匹が軽い足取りでベッドへ登る。

小さいからか少し落ちそうになって後ろ足をバタバタさせかけていたが、なんとか登れたようだ。

そんな調子で彼が頭を預けている場所まで来ると……

 

 

 

前足で彼の頭を叩き始めた。

ぺしぺし、げしげし。

可愛らしいが、やっている事が酷い。

傍から見ているスケアクロウはまたまた笑いをこらえているようだ。ガスマスクで何とか見えないが。

なかなか起きようとしないので、今度は器用に前足を両方使って彼の頬を引っ張る。

 

 

「痛でででぇ!ひっはふはぁ(引っ張るな)!」

 

 

起きたことを確認したダイナゲートはスケアクロウの元へ戻っていく。良い働きですとそこにいる小さい子を褒め称える。我ながら良い考えでしたと内心でどや顔をしている事だろう。当のやられた本人は叩かれたり引っ張られたりしたところを擦りながら酷い起こし方だと不平を漏らす。

そんな中で、彼女が視界に入るとすぐさまいつもの表情に戻って一言。

 

 

「……おはようさん、スケアクロウ」

 

 

「ええ、おはようございます……もう昼ですが」

 

 

どうにも不思議だ。

この前はあれほど取り乱していたはずなのに、少しの時間が経っただけでこの変わりようだ。

確かに彼にとって訳の分からないことの連続だったはず。そこで混乱するのもわかる。

だが、普通こんなに早く冷静になれるものだろうか?

少し頭が整理できたからか、いつもの調子に戻ったのか?

ここのスケアクロウは、元の彼を知らない。

だから彼が見せる穏やかな表情が妙に引っかかる。

悪い気はしないようではあるが。

 

 

「で、なんで俺を起こしたのさ」

 

 

寝癖を手で梳かしながら、自分が起こされた理由を聞いた。ついこの前まで、この場所で療養に徹してくれと言われたばかりだ。それなのに起こされては、療養も何も無いと彼は内心思っていた。何だかんだと言ってはいるが、もう体の痛みは鎮痛薬や適切な処置によってだいぶ楽になっている。

何かしらの補助は必要だが、動けはする。

だがやはり、眠っているところを起こされたのはあまり良いものでは無い。しかもそこの犬のワンツーパンチ付きだ。

駄洒落ではない、駄洒落ではないと何故か頭の中で言い聞かせた。

 

 

「AR小隊の皆さんが来ています……あなたに用事があるそうですよ」

 

 

「M4とM16が?……まぁ、そういうことなら。杖借りるわ」

 

 

AR小隊。彼が目覚めた次の日に訪れたグリフィン所属のエリート部隊。自分の知っている記憶では、16labの特製品で、他の人形とは一味違う戦闘力や思考力を持つ……今はエリート部隊というのは形骸化しているようで、そうそう出撃することは無いらしい。

クルーガーの言っていたグリフィン所属の戦術人形とは彼女らのことだった。主に言伝はM4A1とM16A1が伝えてくれているため、こちらとしても非常に助かっている。

ただ思うことと言えば、やはり彼女たちも彼のことを覚えていなかった。いや、彼女らも”知らなかった”。

 

 

まるで自分だけが隔絶されているようで、孤独感が積み重なっていた。それも何とか、療養中に鉄血の人形たちやM4A1、M16A1との交流があったからか多少はマシになっていた。

そんな彼女らが訪問してくるのは珍しくないが、いつもなら代理人がまだ寝ていると伝えれば時間を改めてくれるのだが……

 

 

今日は代理人が出払っているようだ。

スケアクロウだから起こされたのだろうか?

そういう訳でもなさそうで。

普段なら来ないはずの2人も来るということは、多分何かあるのだろう。そう思い杖を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみません、お眠りのところを……」

 

 

申し訳なさそうに謝る大人しい少女。

彼女もまた、戦術人形だ。

目の前に映る4人の戦術人形たち。

 

 

そのリーダーである、彼女がM4A1だ。

少し気弱そうではあるが、その中身にどのようなポテンシャルが秘められているかはわからない。

彼の第一印象としては、可愛らしくはあるが少々不安になるらしい。いや、不安になったの間違えだろう。死ぬ前も話したことはあるし、こちらでも何度か話しているため、一応面識はある。

彼は彼女のことも知っていた。

しかし例に漏れず、彼女は彼を知らなかった。

 

 

「いや、大丈夫。用事があってきたんだろ?」

 

 

柔らかく微笑んで返す。

口調に反した優しい声色と、穏やかな表情で彼女は少し緊張が解れたようだ。釣られて優しい笑みを零す。

 

 

「おっと、私の妹に色目を使うのは控えてくれよ?」

「使ってねぇよ、これが普段だ」

 

 

冗談を笑って放つ、所謂イケメンの人物。

片方に眼帯をつけたのが特徴的な彼女が、M4A1の姉M16A1。ここで初めて会った時も、死ぬ前に会った時も彼女はこんな調子だ。正直に言うとこっちの方が関わりやすく、こちらもしても助かると彼は思っているが……

事ある毎にいじってくるのは頂けない。

 

彼は残りの2人に目を向けた。

 

 

「2人は……”こっち”じゃ初対面だな」

 

「ええ、私たちは初見ですね」

 

「初めましての人でしょ〜?じゃあ、私たちはまず自己紹介からだね!」

 

 

こちら側では今の今まで会わなかった、残りのAR小隊のメンバー。AR-15とM4SOPMODll。

彼女たちもまた、彼が死ぬ前に共に仕事をした仲間であり、グリフィンの中では割と仲が良かった方だ。

AR-15は最初、非常に彼のことを警戒していたが。

逆にSOPMODはそこまで警戒することも無くよく懐いていた。毎度毎度良くくっついてくるものだから、どうしていいか分からなくてM4やAR-15、M16に助けを求めたのは良い思い出だ。

 

軽くお互いに、既に1度行った自己紹介をした。

意外にもすんなり進んだ。

もう少し混乱されるかと思ったが、自分の記憶関連の話をしても特に疑うことはなくそういう事なのかと理解してくれたらしい。

 

だが、彼にはまだ疑問があった。

 

もう1人、死ぬ以前さえ見た事のない人形が1人いるのだ。全体的な黄色が目を引く。フード付きの上着に、腰に下げた拡声器。赤と黄色のオッドアイ。

彼女だけは、彼が知らなかった。

 

 

「……俺の記憶にない子だ……なぁ、M4。彼女は?」

 

 

そう言って彼は彼女の正体をM4に聞いた。

見覚えのない人形。もう驚きさえしないが、気になりはするらしい。

 

 

「あの人もAR小隊のメンバーです……あの、自己紹介をしてあげてください」

 

「分かりました、M4」

 

 

その声に反応して、気になる彼女が前に出てきた。

スタイルが良く、顔も良い。魅力的に見える。

前に見た4人がそうでも無いという訳では無い。

前の4人は見慣れてしまったというのが正しいだろう。

彼とて男だ。美しいと思ってしまうのは仕方がない。

 

 

「コルト9mmサブマシンガンです。今はAR小隊の一員として活動させて頂いています。皆からは……RO635と呼ばれています」

 

「RO635……初めまして、だな。俺の事は話に聞いてるだろ?」

 

 

ええ、話には聞いていますと彼女は答えた。

本当の初めまして……先ほども彼が口に出したように、彼自身が知らない人形だった。

ここに来て初めての出会い。

記憶の中にある人物ではなく、本当に真新しい人物。

ますます、自分の置かれている状況がわからない。

しかし、せっかくこの場所を楽しむと決めたのだ。

深いことは考えずに、彼女とも仲良くしよう。

宜しくと片手を差し出す。ROの方も、微笑んでその手を握り返してくれた。随分な子がAR小隊に入っていたものだ。

 

新しい出会いもそうだが、本題に戻ろう。

 

 

「それで、要件ってのは?」

 

「それなのですが、今とある方が来ていまして」

 

 

M4が入って下さいと言うと、そこには……

 

 

 

 

 

「初めまして、異邦の技術屋さん」

 

 

「……お前……!」

 

 

自分がよく知っている顔が、自分の目の前にあった。

 

あの時、確かに彼が謝罪を伝えた相手。

指揮官(あいつ)が、ここにもいたなんて。

 




・今回から少しづつほのぼのとした雰囲気が出てきたらいいなと思っています。前半は割と平和めに書きました。ですが、話の内容がズレていたり、噛み合っているかどうかは不安になっています。

・UA数700越え+さらなるお気に入り登録+3件の評価ありがとうございます!本編に入るまでの繋ぎを長引かせている挙句どう書こうかと悩んでいるおバカですが、頑張って書いて行こうと思います!

・後半にあった、リオンがRO635を知らない理由については次回の後書きにて指揮官君に説明してもらいます。

・自分史上類を見ないくらいに伸びているので非常に嬉しい半面期待に応えられる文が書けるかどうか不安になっていますが、どうか応援お願いします!
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