ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 リターンズ   作:ヴァルナル

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12話 条件と相談と

「俺は―――――大会に出る」

 

ヴァーリとの会話を終えた後のことだ。

釣りに出かけていたメンバー全員の前で俺はそう宣言した。

 

反対されるかもしれない、そう思っていた。

うちの眷属だって、今回は見送った方が良いと言っていたんだ。

他のメンバーからも同様の意見が出てもおかしくはない。

 

だけど、皆は反対することもなく、驚くこともなく、ただ黙って俺の宣言を聞いてくれていた。

まるで俺の答えが分かっていたかのように。

 

そして―――――

 

「とりあえず、イッセー。醤油出してくれない?」

 

「このタイミングでそれ言うぅぅぅぅぅぅ!?」

 

俺の宣言は醤油に流された。

 

 

 

 

帰宅して、入浴後。

俺は自室のベッドにダイブしていた。

 

朝から夕方までぶっ通しでの釣りは流石に疲れました。

十分に楽しんだからこそ感じられる疲れなんだけど。

あと、よくよく考えると悪魔の俺達が炎天下のもと、釣りをするっておかしな状況だったよね。

まぁ、そんな野暮なことは口に出したりしないけども。

 

俺は一分ほど枕に顔を埋めると、同じく隣でゴロゴロしていた美羽に話しかけた。

 

「なぁ、さっきの話なんだけど」

 

「………」

 

さっきの話というのはもちろん、俺がレーティングゲーム国際大会に参加することなのだが………俺はまだ眷属の皆からハッキリとした答えは貰っていない。

 

俺の問いかけに美羽は無言のまま、足をベッドの上でバタバタさせる。

そして、少し間を開けた後、美羽が顔を上げた。

 

「お兄ちゃんの気持ちは分かってたよ。皆が参加するんだもの。自分も大会に出たいってなるのも普通なんだと思う。そこにライバルからの言葉もあれば、自然とそういう答えになるんだってことも。でもね………」

 

そこで言葉を一度途切れさせると、美羽は俺の目をじっと見て言ってきた。

 

「ボク達の気持ちはどうなるのかな?」

 

「………っ」

 

言葉を詰まらせる俺に美羽は静かな口調で続ける。

 

「お兄ちゃん達は男の子だもん。そこには譲れないものも、ライバルだからこその感情もあると思う。そこはボクも理解してる。この間、モーリスさんが言っていたことは正しくて、眷属のボク達は主であるお兄ちゃんの気持ちを考えて、支えなきゃいけない。でもね、ボクは………お兄ちゃんの眷属である前に、家族なんだよ? ボク達がお兄ちゃんを心配してるってことは忘れてほしくないな」

 

今回の参加表明は自分の気持ちを優先させた結果だ。

元々は美羽やレイヴェル、他の眷属メンバーも体調を考えて、見送るべきだと言っていたんだ。

それを俺は、自分も出場したい、ライバル達と戦いたい、俺を待ってくれている奴らの想いに応えたい、そんな想いで、美羽達の想いを無視することと等しい行為をしてしまった。

 

「ごめん………」

 

俺は美羽と向き合うと、頭を下げた。

すると、美羽は俺の手を取って首を横に振った。

 

「怒っているわけじゃないんだよ? ただ、お兄ちゃんを待っている人がいるように、お兄ちゃんを心配している人がいることを忘れないでほしいだけで」

 

そう言うと美羽は優しく微笑んでくれた。

 

レーティングゲーム国際大会。

今までのように命をかけた戦いじゃないけど、危険はある。

神々も参加するんだ、その危険度はこれまでに行われてきたゲームとは比べ物にならないだろう。

ゲームだからと、侮っちゃいけない。

心配してくれる人がいることを忘れてはいけないんだ。

 

美羽は人差し指をこちらに向けると、注意するようにいった。

 

「お兄ちゃんがゲームに参加するなら、ボク達もそれに従うし、全力で支える。でも………参加するに当たって、お兄ちゃんには条件があります!」

 

「じょ、条件?」

 

俺が聞き返すと、美羽は頷いた。

 

「うん。実はね、レイヴェルさん達と話し合っていたんだ。お兄ちゃんが大会に参加したいって言うのは何となく分かっていたからね。だから、お兄ちゃんが参加表明をした時は条件を付けようって」

 

そう言うと美羽は指を三つ立てて、その条件とやらについて説明していく。

 

「一つ、無理はしても無茶はしないこと! 神クラスも参加するゲームだから、易々と勝てるはずがないのは分かるけど、命を削るような力は使わないこと!」

 

「ま、まぁ、それは最初からそのつもりだけど………」

 

「二つ、体に異常があった時はすぐに申告して、ゲームを棄権すること! たとえ、ゲーム中であったとしても!」

 

「ゲーム中でも!?」

 

「当たり前だよ! ケガはしょうがないとしても、お兄ちゃんの場合、生命力や魂が不安定なんだから! 深いところで異常があったら、絶対に棄権すること! 絶対だからね!」

 

「は、はい!」

 

「三つ、過激な特訓はしないこと! 対戦相手が強いからといって、無理な修行は禁止です! オーバーワークにならないよう、適度な範囲で修行すること!」

 

「いや、それは前々からそうしてるけど………」

 

オーバーワークにならないようにするのは基本だしね。

そのあたりは日々、自分にあった分量をこなしてきているよ。

 

今、美羽が挙げた条件はどれも俺の体の状態に関するものだ。

ようするにゲーム中のケガはともかく、生命力を削るような真似をするなってことだな。

 

まぁ、現在進行形で治療中の身だし、ゲームに参加すると言ったものの、その辺りは気を付けるようにすると決めていた。

ライバル達との約束があるとはいえ、命を削るような戦いをするつもりはないよ。

というか、俺の可愛い嫁さん達を幸せにした後も生き続けるって約束もしてるし、死んでたまるかってんだ!

 

美羽は更に話を続けた。

 

「以上、この三つのことが守れなかった場合、お兄ちゃんは一ヶ月おっぱい禁止! 見るのも、触るのも、語るのも禁止だよ!」

 

「マジでか!?」

 

見るのも触るのも語るのも禁止!?

しかも、一ヶ月もだと!?

そんなの死活問題じゃないか!

おっぱい欠乏症で死ぬぞ!?

 

「ちなみに、なんで一ヶ月?」

 

「おっぱいドラゴンの仕事があるからね。スケジュールの調整がギリギリ利く範囲で」

 

なるほど、おっぱいドラゴンの仕事がある以上、おっぱいに視線がいくしなぁ………。

レイヴェル、君は俺への罰もスケジュール管理に入れてるんだね。

どこまで有能なマネージャーなんだ………!

 

「更に!」

 

「これ以上にまだあるの!?」

 

おっぱい禁止以上の罰があるというのか!?

今日の美羽ちゃん、なんか厳しくないですか!?

 

美羽は深く息を吸うと、肩を震わせた。

そして、物凄く決心した顔でこう言った。

 

「もし、お兄ちゃんが条件を守れなかった時は―――――ボクとサラはお兄ちゃんの妹をストライキします!」

 

「な………なぁぁぁぁぁぁぁぁにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

 

俺の妹をストライキするって………え!?

ちょ、マジでか!?

マジなのか!?

そんなの冗談でも………って、美羽の目が本気だ!

 

う、嘘だ………。

俺の可愛い妹達が………妹をやめるっていうのか?

もう、『お兄ちゃん』とも『にぃに』とも言ってくれなくなるのか?

そんなの………そんなのって―――――

 

「世界の終わりじゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

『そこまでのことか!?』

 

そこまでのことなんだよ、ドライグ!

 

美羽とサラが妹じゃなくなるんだぞ!?

こんなの、世界………宇宙の終わりに等しいことだ!

 

くっ………もう体中が震えてるし、動悸もする!

もう死ぬのかな?

ねぇ、もう死ぬのかな、俺?

 

『しっかりしろ、相棒ぉぉぉぉぉぉぉ! それは気のせいだ! 気のせいだから、深呼吸しろ!』

 

む、無理だ………。

妹ストライキをくらった俺はもうダメだ。

 

『いや、ストライキされるのは条件を破った時ということで、今くらったわけじゃないぞ!?』

 

そ、そうか………。

俺はまだ妹ストライキをくらった訳じゃないんだな。

 

美羽は涙目になって言う。

 

「ボクだって、お兄ちゃんの妹をストライキするなんて嫌だけど………こうでもしないと、お兄ちゃんは無理すると思ったから………。だから、ボクは自分の心を殺してでも言うよ。条件を守れなかったら、ボクとサラは三時間、お兄ちゃんの妹をストライキする!」

 

『なんだ、その中途半端なストライキは!? 三時間なんぞ、一瞬ではないか!』

 

「それ以上はボクが我慢できなくなる!」

 

『それはストライキというのか!?』

 

「うわぁぁぁぁぁぁん! 三時間も美羽とサラが妹じゃなくなるのかぁぁぁぁぁぁぁ! 死ぬぅぅぅぅぅぅぅ!」

 

『相棒は三時間すら我慢できんのかぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』

 

「無理ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ! 美羽、俺は絶対に約束守るから! だから、ずっと俺の妹でいてくれぇぇぇぇぇぇ!」

 

「うん! ボクもお兄ちゃんに無理させないように頑張るから! お兄ちゃぁぁぁぁぁぁぁん!」

 

「美羽ぅぅぅぅぅぅぅ!」

 

『えぇい、このシスコンブラコン兄妹がぁぁぁぁぁぁぁ!』

 

ドライグのツッコミを無視して、俺と美羽は号泣しながら抱き締めあった。

 

 

 

 

大会に出場するための条件を呑んだ後、部屋の扉がノックされた。

 

「にぃに、少しいいかな?」

 

そう言って入ってきたのは―――――猫パジャマ姿のサラだった!

 

「「ガフッ! こ、これが一日のご褒美なのか!」」

 

吐血する俺と美羽!

だよねだよね!

そうなるよね!

ちょっと照れたサラが可愛いよね!

 

俺は立ち上がって言う。

 

「この猫パジャマのチョイスをしたのは誰か!」

 

「ボクであります! お兄ちゃん隊長!」

 

「やはりな! 出かしたぞ、美羽軍曹!」

 

感動の涙を流しながら、敬礼する長男と長女!

 

流石は美羽、自分用とアリス用に猫パジャマを用意していたように、サラ用も購入していたか!

しかも、紫色の生地だから、サラのイメージにピッタリじゃないか!

 

ちくしょう、今から寝るつもりだったのに、バッチリ目が覚めてしまったじゃないか!

なんなら、これから撮影会でもしちゃう!?

ヤッフゥゥゥゥゥゥゥ!

 

ふと見ると、いつの間にか美羽も猫パジャマ(黒色)に着替えていて、

 

「どうかな、姉妹の猫だよ~? にゃーん」

 

「に、にゃーん………」

 

美羽に続いて、恥ずかしそうに言うサラ。

 

こ、これは………あの時の再現じゃないか。

初めて、美羽とアリスが猫パジャマを披露した時のあの―――――。

 

「ガッハァァァァァァァ!」

 

ダメだ、この姉妹、お兄ちゃんを殺しにきている!

お兄ちゃんを萌え殺す気だ!

でも、これで死ねるなら俺は本望だよ!

『死因:妹に萌え死』でも一行に構いませんよぉぉぉぉぉぉぉ!

 

っと………ゲフンゲフン。

一旦、落ち着いた方がいいな。

サラは何か用があったみたいだし、まずは話を聞いてあげないと。

 

「どうしたんだ? 何か相談か?」

 

そう問うと、サラはコクリと頷いた。

サラの反応に美羽が言う。

 

「お兄ちゃんに相談なら、ボクは外すよ?」

 

「ううん、ねぇねにも聞いてほしいかなって」

 

その言葉に顔を見合わせる俺と美羽。

俺達三人はベッド上に座ると、互いに向き合った。

 

サラの相談………まぁ、なんとなく内容が分かるよなぁ。

美羽も気付いているようで、こっちに視線を送ってきている。

 

サラは言葉を出そうとしているが、凄く言いにくそうにしているので、俺が話を切り出した。

 

「………学校のことか?」

 

俺の問いにピクッと体を震わせるサラ。

 

「その………クラスメイトとどう接したら良いのか分からなくて………」

 

そこからサラは話を続けていく。

 

内容は大方、ルフェイから聞いていた通りだった。

クラスの子とどんな話をすれば良いのか分からない、どうやって話しかければ良いのか分からない。

話しかけられると、緊張してしまうせいで、相手が話しにくい雰囲気を作り出してしまう。

そのせいで、自分に話しかけてくれる生徒が少なくなってしまった。

 

話を一通り聞いたところで、俺はサラに問う。

 

「サラは友達作りたいのか?」

 

「………分からない。友達ってどんな感覚なのか、いまいち分からなくて………」

 

そもそもの問題がそこかぁ………。

そういや、サラもまだ小さい時は体が弱くて、家に引きこもってたって聞いたな。

英雄派に入ってからは言わずもがなだし。

 

美羽が言う。

 

「でも、仲良くしたいとは思ってるんだよね?」

 

「………うん」

 

小さくうなずくサラに美羽は微笑んだ。

 

「それじゃあ、友達の意味を理解するよりも、仲良くなってみる方が早いかな? まぁ、その仲良くする方法をサラは聞いてるんだけど」

 

「まずは緊張を解すところからか? それが無くなれば、もっと簡単に………。サラはなんで自分が緊張すると思う?」

 

親しい人を作ってこなくても、人と話すことくらいは普通にやってこれたはずだ。

英雄派にいたときもそうだっただろうし、兵藤家に住むようになってからも、会話で緊張しているような様子はなかった。

まぁ、美羽以外にはあまり自分から話しかけようともしてなかったけども。

 

すると、サラはこう言ってきた。

 

「………怖い、から」

 

「怖い?」

 

話すのが怖い?

どういうことだ?

 

俺が聞き返すとサラは俯きながら、小さな声で返してきた。

 

「私、これまでは冷たい言い方しかしてこなかったから………。もし、そんな言葉で誰かを傷つけたらって考えると言葉が出てこなくなって………。傷つけてしまった時のことを考えると………怖いの」

 

………そういうことか。

自分の言動がクラスメイトを傷つけるのではないか。

何をどう話せば良いのか分からない状況に加えてそれだ。

知らず知らずの内に他者を傷つけてしまうこともあるだろう。

事情を知る俺達はともかく、一般の生徒に対してはあり得る話だ。

だから、サラは話せないのか………。

 

「にぃに、ねぇね………私、どうしたらいいの?」

 

サラは今にも泣きそうな顔でそう訊いてきた。

 

俺はそんなサラの頭に手を置いて、ポンポンと撫でた。

 

「よく話してくれたな。ずっと悩んでいただろうに、助けてやれなくてゴメンな?」

 

そう言うと俺は話を続けた。

 

「サラは他人を傷つけてきたって言うけどさ、そんなことはないと思うぞ? だって、俺達を助けてくれただろう? 父さんと母さんが拐われそうになった時も、命をかけて助けてくれたじゃないか」

 

俺達の危機にこの子は駆けつけてくれた。

父さんと母さんがリゼヴィムの野郎に捕まりそうになった時も全力で阻止してくれた。

サラは誰かのために力を使える、強い女の子なんだ。

 

俺の言葉に美羽が続く。

 

「サラは自分が思っている以上に強くて優しい子なんだ。大丈夫、ありのままのサラでクラスの子達と触れあえば良いんだよ」

 

ここで美羽が人差し指を立てた。

 

「と言っても、いきなりは難しいだろうから、まずは手助けからやってみようよ」

 

「手助け?」

 

首を傾げるサラに美羽は言う。

 

「そう。困っている人を助けてあげること。プリントを運んだりでも良いし、教室の清掃でも良い。とにかく、困っているクラスの子を手伝ってあげるんだ」

 

なるほど、それは良い。

そうすれば、自然な形で話せるだろうし、サラの優しさを知ってもらえる機会にもなるだろう。

ゼノヴィアも色々なところで助っ人をしていたこともあって、学園での支持も高かったしな。

 

俺はうんうんと頷いた。

 

「慌てなくて良い。ゆっくりでも良いから、まずはサラのことを知ってもらうんだ。そうすりゃ、皆、サラのこと好きになってくれるよ」

 

でも、いきなり告白する男子とかいたら、にぃには絞めちゃうかもしれないぜ☆

 

俺達の―――――兄と姉の言葉にサラは、

 

「私、やってみる………。時間がかかるかもしれないし、上手く出来るか分からないけど………やってみる」

 

「「よし、頑張れ!」」

 

決心したサラに親指を立ててエールを送る長男と長女だった。

 

 

 

 

「にぃに、ねぇね、もう一つだけ良い?」

 

「ん? まだ悩みがあるのか?」

 

俺が聞き返すとサラは枕をギュッと抱いて、こう言ってきた。

 

「今日も一緒に寝て………良い?」

 

「「オッケィ! ヘイ、カモーン!」」

 

今夜も兄妹三人で川の字になって寝た。

 

 

 




ここまではプロローグ(笑)!
次回からは………
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