ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 リターンズ   作:ヴァルナル

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今回こそはシリアス


15話 絶対不変の正義

[木場 side]

 

 

昨年、僕達が修学旅行から帰ってきた後のことだ。

僕達はリアス姉さんのお母さん―――――ヴェネラナ様に呼び出しを受けたんだ。

なんでも、リアス姉さんの眷属である僕達に頼みたいことがあるとのことだった。

その頼みたいことの内容というのが―――――リアス姉さんの部屋の掃除。

 

詳しくは省くけど、リアス姉さんの部屋は物で埋め尽くされていて、足の踏み場がないくらいだった。

部屋に置かれたものは日本のお土産ばかりで、『ボブ』『大吉丸』『レオン』と名付けられた木彫りの熊達から、金閣寺と銀閣寺の模型、そして各地の温泉を巡った時に買ったという木刀が何本も。

コレクションと称して買われていたお土産物は明らかに無駄遣いしていたもので、これについてはヴェネラナ様はおろか、節約に厳しいロスヴァイセさんまでお怒りだった。

それで、僕達はヴェネラナ様の命令のもと、リアス姉さんのコレクションを廃棄した………はずだったんだけどね。

 

僕はテレビ画面を指差して問う。

 

「あの………あの木刀はもしかして、一度回収したんですか?」

 

僕の質問に皆の視線がリアス姉さんに集まった。

既に涙目のリアス姉さんは僕達の視線から逃れるように後ろを向いて一言。

 

「だって………木目が綺麗なのを一生懸命選んで買ったんだもん」

 

「その理由、前にも聞きました」

 

なんということだ。

処分したものを回収していたというのか。

あの大掃除の日も色々と駄々を捏ねていたけど………。

 

リアス姉さんが言う。

 

「きっと、お母様にバレたのね………」

 

映像の向こうを見るにそうなんだろう。

モーリスさんが握っている二本の木刀は間違いなく、リアス姉さんが買ったものだし。

 

すると、イッセー君のお母さんが言った。

 

「ああ、あれね。ヴェネラナさんが私経由でモーリスさんに渡したの」

 

「お義母様が!?」

 

なんと!

ここにその当事者がいたとは!

というか、お二人は本当にママ友なんですね!

まさか、ヴェネラナ様がイッセー君のお母さんにそんなことを頼んでいたとは!

 

驚くリアス姉さんにイッセー君のお母さんは苦笑しながら言う。

 

「ヴェネラナさんがね? 『リアスの部屋で埋もれるくらいなら、必要としている人が使った方がいいでしょう』って。モーリスさんも程よい武器を探していたらしくて………。グッドタイミングだったわね!」

 

「一言教えてくれても良かったのでは!?」

 

「ヴェネラナさんが、リアスさんにはバレないようにしてほしいって」

 

「そんな!」

 

これはヴェネラナ様からの罰なんだろうね。

不必要に物を増やしたり、無駄遣いをすれば、こうなるという………。

いや、まぁ、これに関してはリアス姉さんが悪いかな?

 

朱乃さんも「あらあら」とニコニコしているだけで、フォローに回る気配もなく、その他のメンバーも同様。

そう、この件に関して、リアス姉さんの味方は一人としていなかった―――――。

 

「いいもん! 私、グレてやるもん!」

 

「では、リアスは放置して観戦しましょうか」

 

「朱乃!?」

 

朱乃さんの言葉に頷き、テレビに目を戻す僕達。

映像の向こうでは、モーリスさん(木刀装備)と相手チームの『戦車』『騎士』『兵士』の三名と対峙している。

フィールドは廃屋が並ぶ小さな町のような場所。

普通なら、この廃屋を利用して戦うことになると思うが………。

 

『第一試合、開始してください!』

 

審判の合図により、試合が始まる。

相手チームの三人はフォーメーションを組み、『戦車』と『騎士』が前衛、『兵士』は後ろに回り『僧侶』にプロモーションした。

 

過去の試合によると、あの『兵士』はサポート能力が高いようで、自身も魔法による攻撃を行うが、基本は誰かと組んで、魔法による味方の強化係を務めていた。

『女王』にプロモーションしなかったのは、下手に役割りを増やすよりは自身に最も合った駒の方が上手く立ち回れると判断したからだろう。

『僧侶』にプロモーションした『兵士』は魔法により、味方に強化を施す。

赤、青、緑の三つの魔法陣が『戦車』と『騎士』に展開された。

 

ロスヴァイセさんが言う。

 

「赤色がパワー、青色がスピード、緑色が魔力の強化ですね。かなりの使い手のようです。過去の記録でも、あれが決着を左右したものもあります」

 

「『騎士』がパワーを、『戦車』がスピードを得る。それだけで厄介ね」

 

リアス姉さんが真剣な表情でそう言った。

 

確かに、パワータイプの者がスピードまで得てしまったら、それだけで攻撃の威力は桁違いにあがる。

僕の禁手第二階層―――――騎士王形態もそうだ。

スピードタイプの僕が破壊力を得ることによって、攻撃力は劇的に変わったからね。

だけど………。

 

「モーリスさんですからね」

 

「相手の選手が気の毒すぎますぅ!」

 

小猫ちゃんの呟きとギャスパー君の言葉に頷く僕達。

そう、そこなんだよ!

あの人には常識が通じないんだよ!

というか既にあの人はやらかしていて―――――。

 

『な、なんだ、このおっさんは!? 私の剣技をこうも容易く!?』

 

『俺の攻撃が通じないだと!? えぇい、この木刀は普通の木刀じゃないのか!?』

 

『というか、僕の魔法が気合いだけで消し飛ばされましたよ!? どういう理屈なんですか!?』

 

炎を纏った剣は木刀で捌かれ、スピードに加えて魔力の乗った拳も木刀で弾かれる。

後方からの魔法攻撃は気合いでかき消されて………。

あぁ………また被害者が増えてしまう。

 

とりあえず、彼らの疑問に一つ一つ答えるとしよう。

そのおじさんはチートおじさんです。

その木刀は普通の、温泉街で売ってるお土産物の木刀です。

どういう理屈か?

理屈なんてないんです。

魔法すら無に返すただの気合いなんです。

 

『ふはははははは! おらおらぁ! 元気が足りねぇぞ、おまえらぁ!』

 

笑いながら振るわれる、木刀の一撃。

地面を割り、フィールド上の建物は豆腐のように斬られ、相手の攻撃の悉くを制していく。

普通の木刀による常軌を逸した攻撃は、ただ相手を恐怖させ、見る者全てに様々な疑問を持たせた。

 

おじさんってなんだっけ?

木刀ってなんだっけ?

気合いってなんだっけ?

魔法?

ナニソレオイシイノ?

 

「もうやめて! もうこれ以上、彼らをいじめないで!」

 

「これ以上やると死ぬぞ! 心が!」

 

イリナとゼノヴィアの心からの叫び!

あれを経験しているからこそ、分かってしまうんだ!

今まで自分が磨いてきた技は、力は一体なんだったのか!

信じていたはずの自分を疑ってしまうんだ!

 

ふいにモーリスさんが腰を沈めて―――――。

 

『必殺☆草津神剣!』

 

ふざけた技名と共に、束に『草津』と彫られた木刀を横凪ぎに振るう!

次の瞬間―――――フィールドにあった物全てが上下に分断された!

建物が崩れる音がフィールドに轟く!

 

「「「ええええええええええええっ!?」」」

 

驚愕の声をあげる僕達一同!

 

「あれ、本当に温泉街で買った木刀なんですか!? 買ってから魔改造とかしてませんよね!? グレモリーの技術を結集させた兵器とかじゃないですよね!?」

 

「してないしてない! あれ、観賞用に買ったのよ!? もう! なんで、私が疑われるのよ!? というか、グレモリーの技術はそんなところに使わないわよ!」

 

「それより、相手は無事なの!?」

 

身内の応援よりも相手の心配をしちゃってるよ!

でも、気持ちは分かる!

 

分かっていた!

分かっていたけど、あの人、無茶苦茶だ!

狭いフィールドとはいえ、フィールド上全てのものを斬るって!

しかも、木刀で!

あの人、またパワーアップしていませんか!?

 

相手選手は―――――

 

『『『…………』』』

 

三人とも白目を向いて、その場で固まっていた!

完全に気絶している!

そのまま三人を淡い光が包んでいった!

 

審判が戸惑い混じりの声で告げる。

 

『え、えーと………第一試合、勝者「異世界帰りの赤龍帝」チーム………』

 

勝者を宣言するが、会場の誰一人拍手をする者はなく、ただ呆然とフィールド上に佇むチートおじさんを眺めていた。

ちなみに、主のイッセー君はというと―――――。

 

両手で顔を覆い、相手チームに対して申し訳なさそうな雰囲気を出していた。

 

 

 

 

波乱と理解不能な戦いを繰り広げられた第一試合。

その後は比較的まともに試合は進んだ。

第二試合はアリスさんが出場し、勝利。

第三試合は美羽さんが出場し、こちらも勝利。

第四試合はリーシャさんが出場。

相手は『戦車』一名で一対一の戦いだったのだが―――――

 

『第四試合、始めてください!』

 

 

パァンッ!

 

 

審判の合図がされると同時に鳴り響く銃声。

一瞬、何が起きたのか理解できなかったが、すぐに気づいた。

リーシャさんの手にハンドガンサイズの魔装銃が握られていることに。

魔装銃は相手選手に向けられており、銃口からは煙が上がっている。

それを理解して数秒後、相手の『戦車』はリタイアの光に包まれていき―――――。

 

相手選手が完全にフィールドから消えても審判は動かない。 

あまりに早すぎる決着に唖然としているからだ。

 

リーシャさんが微笑んで言う。

 

『うふふ、終わりましたよ?』

 

『あ、はい! すいません!』

 

慌てて勝者の宣告する審判だった。

 

色々と言いたいことはあるが、第一試合以外はまともな試合だったと思う。

問題は次の第五試合で起きた。

 

次の試合で出す選手を決めるべく、両チームの『王』が同時にダイスを振るう。

出た目は―――――イッセー君が1、相手の『王』が2。

合計は3だ。

 

相手チームは既に『女王』、『戦車』二名、『僧侶』一名、『騎士』一名、『兵士』一名を失っている。

イッセー君達は全勝の無傷。

この局面で出すのは誰か………。

 

時間になり、フィールドに選手が転送される。

相手は『騎士』。

対してイッセー君の陣営は―――――ディルムッド。

つまり、『騎士』対決になる。

 

イリナが言う。

 

「これはまともな試合になりそうね」

 

「イリナ、それはフラグというやつではないのか?」

 

「えっ!?」

 

ゼノヴィア、不吉なことを言わないでくれ。

そんなこと言われると、本当にそう思ってしまうじゃないか。

でも、ディルムッド一人だし、そんなシリアスを壊す展開には―――――。

 

『それでは第五試合、始めてください!』

 

審判の合図により、『騎士』同士の対決が始まる。

相手は剣を抜いて構える。

しかし、ディルムッドはインカムでイッセー君とやり取りしているようで、

 

『にぃに………本当にやるの? うん………うん、分かった。やってみる』

 

何やら顔を赤くして頷いていた。

なんだろう?

そんなに恥ずかしがるような作戦なのだろうか?

義妹を溺愛しているイッセー君がそんな酷いことはさせないと思うけど………。

 

ディルムッドの様子に相手の『騎士』も怪訝な表情を浮かべている。

すると、ディルムッドが口を開いた。

潤んだ目で、顔を赤くして、今にも泣きそうな表情で、一言――――――。

 

『ディルと………戦う、の?』

 

ズキュゥゥゥゥゥゥンッという音が聞こえた気がした。

いや、気のせいではないのだろう。

なぜなら、

 

『む、無理だ………俺には出来ない………』

 

相手の『騎士』は震えた声を発して、剣を落としたのだ。

そして―――――。

 

『俺にはディルたんを傷つけるなんてできなぃぃぃぃぃぃ!』

 

『なんでだぁぁぁぁぁぁぁ!?』

 

相手の『騎士』の叫びと『王』のツッコミが炸裂した!

 

『おまえ、なにやってんの!? しかも、今、ディル「たん」って呼んだよね!? ふざけてるの!? 温厚な俺でも怒るよ!?』

 

『無理です、我が主! ディルたんは………こんな可愛い妹を傷つけるなんて私には無理ぃぃぃぃぃぃ!』

 

『いや、その娘、おまえの妹じゃないし! 他所様の妹だし! ハッ! そうか、それがその娘の能力か、赤龍帝!』

 

相手の『王』から受けた言葉にイッセー君は冷静な声で答えた。

 

『能力? 違うな。こいつはそんなものじゃない。なぜ、あんたのところの眷属が力を振るえなかったか。それはな、そこに正義があったからだ』

 

『正義だと?』

 

『そうだ。世の中には色々な正義があると思う。所属している組織によっても違うし、その時代ごとに正義ってのは別れると思う。だがな、この世界にはいつの時代、どんな奴でも変わらない、そう絶対不変の正義がある。それは―――――「KA WA I I」だ!』

 

『はっ!?』

 

混乱気味に返す相手の『王』に対して、イッセー君は高らかに叫ぶ。

自分の陣営から身を乗り出して!

思う存分シスコンを発揮させて!

 

『見よ、うちのディルちゃんを! うちのディルちゃんはなぁ! 容姿も、心も、仕草も何もかもが可愛いんだ! いいか、よーく聞けぃ! 「KA WA I I」はあらゆるものに勝る最強の存在! それを体現したうちのディルちゃんは最強なのだ! この「KA WA I I」を突破できるというのなら、やってみるがいい! 相応の覚悟と信念がなければ、うちの「KA WA I I」を倒すなんて不可能なんだよぉぉぉぉぉぉ! ディルちゃんんんんんんんんん!』

 

『あぅ………にぃに、恥ずかしいよ………』

 

顔を更に赤くするディルムッドに相手の『騎士』が悶え始める!

 

『ぐぅぅぅ! また、そんな可愛い表情を………! 我が主! やっぱ無理です! 私にはこの「KA WA I I」を突破できる程の覚悟も信念もありません!』

 

『おま、自分でそれ言うか!?』

 

『だったら、あんたは突破できるのかよ!?』

 

『あ、この野郎、あんた呼ばわりしやがったな!? よぅし、分かった! そんな小娘の「KA WA I I」など、容易く―――――』

 

フィールドにいるディルムッドに視線を向ける相手の『王』。

それから数秒間、無言を貫いた後―――――

 

『ごめん! 俺が悪かった! うぉぉぉぉぉぉ! ディルたぁぁぁぁぁぁぁん!』

 

なんで!?

なんでそうなる!?

 

何をどうツッコミをしていいのか分からないでいると、リアス姉さんが言った。

 

「初代英雄ディルムッドは女性を虜にしてしまう魔法の黒子を、妖精に付けられていたと聞くわ」

 

「そういえば、最近、サラちゃんに泣き黒子が出来ていましたわね。もしかすると、初代にかけられていた魔法が変質して、『女性を虜にする魔法の黒子』から『相手をシスコンにする魔法の黒子』になった………?」

 

どんな変質化!?

なんなんですか、相手をシスコンにする魔法の黒子って!?

 

というかね、イッセー君!

君の上級悪魔としてのデビュー戦がこんな感じで良いのかい!?

すっごくグダクダなんですけど!

 

「これがイッセー先輩クオリティ………」

 

小猫ちゃんの呟きに、思わず泣きそうになった。

 

こんな調子で、イッセー君達のレーティングゲーム国際大会は続いていくのだった。

 

 

 

 

~一方その頃、大会運営のアザゼル先生~

 

 

「主が妹大好きおっぱいドラゴン、ツンデレ女王、ブラコンシスコン妹、チートおじさん、狙い打ちたがりスナイパー、夜のマネージャー、ロリコンメイド長にムッツリ事務員。加えて、シスコン製造機か………。やべぇな、このチーム。まともな奴がいねぇ」

 

赤龍帝眷属の酷すぎる試合にアザゼル先生は鼻水を出した。

 

 

~一方その頃、大会運営のアザゼル先生 終~

 

 

 




シリアス?
ナニソレオイシイノ?
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