ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 リターンズ 作:ヴァルナル
[木場 side]
試合終了後、観戦ルームを出た僕達一行はイッセー君が治療を受けている医療室に向かっていた。
アザゼル先生によると、試合に勝利した後、体調を崩してしまったようだ。
小猫ちゃんが言う。
「最後の大技、錬環勁気功を最大限まで使って撃っていたので、その反動が来ているのかもしれません」
錬環勁気功の奥義は自身の限界を超えて、周囲の気を取り込むせいか、使用後は体が痛みで動けなくなるらしい。
以前、京都で英雄派と戦ったときにも辛そうにしていたしね。
ちなみにアザゼル先生はバラキエルさんの方に向かった。
倒された雷光チームのメンバーもイッセー君とは別の医療室で治療を受けており、そちらの見舞いに行っている。
………どちらに行くか聞かれた朱乃さんは迷わずイッセー君と言っていたけど。
バラキエルさん、多分ショックを受けると思うので、後で行ってあげてくださいね?
そうこうしている内に目的の場所に到着。
リアス姉さんがノックをしようとすると、中から声が聞こえてきた。
それは美羽さんのもので、
『うぅぅ………ごめんね。ボクが足を引張ったからこんな………』
『いやいや、気にすることないって。あれは俺のミスでもあるし』
『でも、ボクがもっとしっかり対応できていれば………お兄ちゃんがこんな姿になることなんてなかった!』
その言葉に僕達は嫌な予感がした。
さっきの戦いでそこまで深いダメージを受けたと言うのか!?
只でさえイッセー君のコンディションは万全には程遠いのに、そんな………!
リアス姉さんや朱乃さん、他の皆も顔面蒼白になっており、完全に血の気が引いてしまっていた。
いてもたってもいられなかったのか、リアス姉さんはノックをすることも忘れ、部屋の扉を勢いよく開く。
「イッセー! 体に何か影響が―――――っ!?」
ベッドの上にいるイッセー君を視界に捉えた瞬間、リアス姉さんは言葉を詰まらせる。
なぜなら、
「ごめんね、お兄ちゃん………。うぅぅぅ………でも、やっぱり、ちっちゃいお兄ちゃんは可愛いなぁ………グスッ」
「ね、ねぇ、美羽ちゃん。私もそれしたいんだけど………」
「うふふ、イッセーは小さくなるとこんなにも可愛くなってしまうのですね」
「い、イッセー様! 私にもその………抱っこさせてください!」
ベッドの上で美羽さん達に抱き締められ、まるでぬいぐるみのように扱われるイッセー君。
そう、イッセー君は―――――また小さくなってしまっていた。
今度は小学生くらいに。
「「「「あぁぁぁぁぁぁぁ! ズルいズルいズルいズルい!」」」」
ダッシュで駆け寄るリアス姉さん達だが………とりあえず、僕の心配を返してほしい。
[木場 side out]
▽
「なんでぇ、モテモテじゃねーか。良かったな、イッセー」
どっかりと椅子に腰掛け、バナナを食べながらそう言ってくるモーリスのおっさん。
モテモテ?
モテモテだと?
この状況が?
確かに女の子達の間で取り合いになっている状況ってのは、モテモテと言われてもおかしくはない。
でもさ、今のこれは明らかにそれと違っていて………。
「やーん、イッセー可愛いわ!」
「リアス、私にもイッセー君を貸してほしいですわ。あぁ、イッセー君ったら、こんな………うふふ」
「イッセーさん、欲しいものがあれば、なんでも言ってください!」
リアスの手から、朱乃の手へ。
朱乃の手から、アーシアの手へと渡される俺。
………うん、なんか久し振りだわ、これ。
このぬいぐるみとか、ペット的な扱いされるの。
これは俺が思うモテモテじゃない。
これはペットショップで、可愛い子犬を発見した時の反応だよ。
「グスッ………ごめんね、お兄ちゃん。あぁ、でも………可愛いなぁ」
美羽に至っては涙を浮かべながらも、小学校低学年くらいになった俺の頭を撫で撫でしてくるほどだ。
「謝るのか可愛がるのかどっちかにしようか、美羽。いや、別に謝る必要もないんだけども」
美羽が追い詰められたのは、そこまで思考が至らなかった俺のミスだ。
アルマロスさんが美羽対策をしてくるとは思っていたが、完全に封殺してくるとは予想外だった。
モーリスのおっさんが言う。
「俺が間に合ってたから何とかなったしな。それに、その後すぐにイッセーがバラキエルを倒したんだ。結果オーライってことで、そこまで気にしなくても良いんじゃね? まぁ、実戦だったら、ヤバかったがな?」
「うっ………ごめんなさい」
最後の言葉にズーンと沈む美羽。
モーリスの言うことはある意味正しくて、これが実際の戦闘だったら、やられていたかもしれない。
まぁ、その時はその時で、俺が美羽のところに駆けつけていただろうけども。
リーシャも顎に手を当てて、考え込むように言う。
「私もあそこまで対策されているとは思いませんでした。術式を読まれないように、速攻で勝負を決めてきたと言うのに………。こちらの世界の研究者も侮れませんね」
リーシャがこれまでの試合でスピード勝負をしていたのは理由がある。
それは魔法狙撃の術式を読まれないようにするため。
術式が分かれば、今回のようにアンチマジックで防がれる。
そうなっては狙撃の意味がない。
まぁ、リーシャの魔法狙撃を解析するなんて、アルマロスさんクラスの研究者でないと難しいんだけども。
リーシャが言う。
「やはり、アレの製作は必須ですね。これから先のゲームでは神クラスとの対戦も考えられますし」
「そうだな。ルフェイには頼んであるよ。あとはヴァーリの了承のみだ」
リーシャが神クラス対策として作ろうとしているものはルフェイの協力なしでは作れない。
ルフェイの力を借りるなら、チームリーダーであるヴァーリの許可が必要だけど………あいつのことだから即了承してくれるだろう。
今度はアリスが言ってきた。
………俺を膝の上に乗せたままで。
「というか、あんたもヤバかったんだからね? あの技、本選まで取っておくんじゃなかったの?」
「うっ………すいません」
美羽と同じくズーンと沈む俺。
今回、俺が使った魔法『イクス・バースト・レイ』はイグニスの協力もあり、とてつもない威力を誇る魔法となっている。
その威力は折り紙つき、神クラスもビビるような威力。
木場がテレビを見ながら言う。
テレビでは先程のゲームのダイジェストが流されていた。
今はちょうど、俺が魔法を使ったシーンをやっていて、
「イッセー君が魔法を使ったことにも驚いたけど………射線上のものが跡形もなく消え去るなんてね。フィールドも一部、破壊されているし」
イクス・バースト・レイはフィールドの強度を超えていたようで、破壊され、崩れた向こうには次元の狭間が見えた。
うん、我ながらえげつない破壊力!
だが、高過ぎる威力ではあるが、いくつかデメリットはある。
まず、この技は錬環勁気功を限界まで使うので、使用後は身体中に痛みが走る。
これは錬環勁気功で痛みを和らげることはできるが、根本的な治療にはならないので、時間の経過を待つか、気を扱う技―――――例えば仙術で、外部から乱れた気を整えてもらう必要がある。
次に消費する気の量が尋常ではないこと。
使用後は体内の気が著しく減少するため、今みたいに体が縮んでしまう。
こちらは時間の経過による自然回復を待つしかない。
まぁ、これくらいなら、一日寝れば回復するけど。
この魔法の欠点はまだある。
それは発動するのに魔術結晶が必須であること。
魔術結晶は俺の血を原料にリーシャと美羽が製作し、イグニスが俺専用に作ってくれた魔法を刻み込んでいる。
だが、これは魔法発動ごとに壊れてしまうので、完全に使い捨てになる。
ちなみに、この魔法は俺以外には使えないものになっている。
以上の欠点から、イクス・バースト・レイは撃てて一日に一発。
しかも、使った後は身動きが取れなくなるので、本当にここぞと言う時にしか使えない。
外せば終わりだ。
と言っても、かなりの広範囲に撃てるから避けられる可能性も低いが。
ただ、念のため、ある程度、状況を揃えてから撃つのがベストだ。
今回のゲームでは、バラキエルさんを狭いエリアに封じたこと、『キャスリング』による退路を絶ったことで、確実に当てられる状況に持っていけたので、発動させた。
まぁ、こんな感じで欠点が多いからギリギリまで………出来れば、本選まで使いたくなかったんだよね。
チームともその方向で話を進めていたし。
アリスが俺の頬をムニムニしながら言う。
「隠し玉がバレた以上、また別の手を作っとかないとね。あの魔法の欠点だって、どうせすぐに広がるだろうし」
「
「もう暫く。これ、癖になる。イッセーのほっぺ、気持ちいい」
完全におもちゃじゃん!
ゼノヴィアとイリナもさっきから腹の辺りをペタペタ触ってくるし!
『王』っぽいこと言っても全然締まらねぇ!
すると、サラが髪を鋤くように俺の頭を撫でた。
「にぃに、可愛い………」
「うん。もうちょっとガッツリ撫でて良いよ」
「美羽、勝手に許可を出さないでくれ」
俺がそう言うと、サラは目元を潤ませながら
「ダメ………?」
「全然良いよ!? もっと、気が済むまで撫で撫でしてくれぃ!」
そんな目で見られたら断れるわけないじゃん!
にぃに、黙って撫でられるしかないじゃん!
ズルいぞ、サラ!
きゃわいいんだから!
ロセが俺とリーシャに訊いてくる。
「ライバルチームの私が聞くのもどうかと思いますが、まだ強化プランがあるのですか?」
イリナも少し驚くように訊いてくる。
「このチーム、これ以上強くなるの!?」
二人の問いにリーシャは頷く。
「強くなる、というよりは手札を増やすと言った方が正しいですね。もちろん、私達の地力も上げるつもりではありますが。このチームで神クラスと真っ向から戦えるのは現状、モーリスだけですからね」
「まぁ、そうよね。イッセーはまともに禁手使えないし、私と美羽ちゃんは神姫化できないし」
アリスもうんうんと頷いていた。
レイヴェルも続く。
「チーム全体の強化のため、合宿も考えていますわ。実現にはもう少し時間が必要になりますけど」
そう、実はチームメンバーの強化のため、短期集中特訓も考えていたりする。
今はレイヴェルが修行に適した良い場所がないか探してくれている。
「某、主のため、全力で修行に励みまする!」
気合いを入れるミニドラゴン化したボーヴァ。
うんうん、頼もしい限りだ。
モーリスのおっさんが首を鳴らして言う。
「よーし、おじさんもまだまだパワーアップできるところを見せてやろうじゃねぇか」
「「「「あんたは今でも十分チート!」」」」
全員がツッコミを入れた時、ガララッと部屋の扉が開いた。
「イッセー。素晴らしい試合だったぞ。流石は私の認めた―――――」
「イッセー君、ゴメンね! バラキエル様の指示とはいえ、やっぱり―――――」
入ってきたのはティアとレイナだった。
ティアはアジュカさんの付き合いで、この大会の運営側にいる。
多分、この会場のどこかで試合を観ていたのだろう。
レイナはバラキエルさんのところに行っていたのかな?
そんな二人と小さくなり、リアス達に抱っこされている俺との視線が合った―――――。
「「ああっ!? ズルいズルいズルい!」」
………小さくならない手札を増やそう。
俺はぬいぐるみのように扱われながら、そう誓った。
▽
[アザゼル side]
リアス達と別れた俺はバラキエルがいる医療室を訪れていた。
部屋に入ると………包帯でグルグル巻きになったミイラ男がいた。
予想外の姿に思わず俺は吹き出した。
「ブハッ………酷くやられたな」
「ふんっ」
そっぽを向くミイラ男、もといバラキエル。
俺はそんなバラキエルを面白く思いながら、椅子に腰かけた。
「完全にオーバーキルだな。治療は受けたんだろう?」
「ああ。しかし、傷は塞がったものの、体力が回復するまでは絶体安静を言いつけられた」
「ほう」
不安定とはいえ、人工神器の禁手を使ったバラキエルにここまでダメージを与えるか。
この大会で使用されるゲームフィールドは神クラスの参戦に応じて、かなり強固な作りになっている。
壊せるのは上位の神クラスくらいかそれ以上だろう。
それをイッセーのやつは破壊しやがった。
禁手もまともに使えない状態で、だ。
「それでどうだった? 直接殴り合った感想は?」
俺の問いかけにしばし黙るバラキエル。
バラキエルは掌を見つめながら言った。
「………強かった。神器を使わなくても十分過ぎるほどに。あのまま、彼と殴り合えば勝っていただろう。だが、もう少し時が経てば、勝てなくなるだろうな」
「それはイッセーが神器を使わなくても、おまえを追い越すということか?」
「そうだ」
………っ!
おいおい、マジか。
バラキエルは頼もしそうに言う。
「彼はまだまだ強くなるぞ。たとえ、神器が使えずとも魔王や神にだって勝つほどに」
「冗談………じゃあないな。あいつなら、マジでその領域に達しそうだ」
考えてみれば、おかしな話じゃない。
あいつの使う錬環勁気功は異世界の神の世界で確立されたもの。
それだけで、神を倒せる可能性は十分に秘めているんだ。
それだけじゃない。
あいつの周りにいる奴らはあいつに魅せられて、より強くなろうとしている。
このまま行けば………ハハッ、想像しただけで笑みが零れちまう。
「いつか、俺達古い世代は必要ないと言われる日が来るのかねぇ」
「その時は縁側でのんびり茶でも飲めばいい」
「『神の雷光』と呼ばれた男の台詞じゃないな。だが………」
―――――そういうのも悪くない。
「そういや、イッセーかおまえの見舞いに行くってなった時、朱乃は迷わずイッセーを選んだな」
「ぬぁぁぁぁぁぁ! 義息子めぇぇぇぇぇぇ! おっぱいドラゴンめぇぇぇぇぇぇ! 次は絶対に勝ぁぁぁぁぁぁぁぁつッッッ!」
この後、暴れたバラキエルはナースにこっぴどく絞られた。
そして、俺は―――――その光景をカメラにおさめた。
[アザゼル side out]
この章はもうちっと続くんじゃ