ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 リターンズ 作:ヴァルナル
とある休日、俺はタンニーンのおっさんが治める領地を訪れていた。
その理由はというと………
「だぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!」
空高く飛び上がり、気弾を放つ俺。
バスケットボール大の気弾は勢いよく、モーリスのおっさん目掛けて降っていくと―――――軽々と真っ二つにされた。
おっさんは木刀で肩をトントンと叩く。
「おらおら、そんなショボい攻撃じゃあ、ハエがとまるぞ!」
などと言って、目にも映らぬ速さで木刀を振るい、斬撃を飛ばしてくる!
ただの一振りによる一撃は阻むものを全て両断しながらこちらに迫ってくる!
俺は更に気弾を連続で放って迎撃するが、打ち消すどころか、勢いを弱めることすら出来なかった!
辛うじて避けることは出来た………が、当たったら確実にアウトだ。
「危ねぇな! 俺を殺す気か!?」
俺の苦情におっさんは耳をほじりながら言う。
「あー? おまえが厳しめに修行つけてくれって頭下げてきたんだろうが。しかも、こんな山奥まで来てやったんだ。ありがたいと思って泣いて感謝しろ」
そう、俺がここに来ている訳とはつまり修行のためだ。
普段なら兵藤家地下のトレーニング室や、グレモリーの地下に作られた修行場を使うところだが、今は俺もリアスも別チームでレーティングゲームに参加している。
同じチーム『D×D』のメンバーとは言っても、今はライバル同士。
修行中を覗いてしまったりしてはお互いに良くないだろうとのことで、俺のチームは修行場所を変えることにした。
そのため、俺はタンニーンのおっさんにお願いして、誰も住んでいない領地の一角を修行場として借りることになったと言うわけだ。
リアスからはグレモリー領に別の修行場を設けることも提案されたんだけど、今回は断らせてもらった。
………以前、タンニーンのおっさんとティアに修行相手をしてもらった時、戦闘の衝撃が近くの町まで響いていたらしいしね。
うちのチーム専用の修行場についてはレイヴェルが手配してくれているようで、もう少ししたら、そちらを使えるようになるとか。
別荘も作ってくれるそうで、完成が待ち遠しいよ。
それはさておき………。
「もう既に泣いてるよ! 修行お願いしたの、ちょっと後悔してるよ! だって、修行じゃないもの、これ! 一方的な蹂躙だもの!」
更にレベルアップをするべく、おっさんに修行を頼んだものの、ただただボロボロにされている現在。
こちらの攻撃は全て断ち斬られ、向こうの攻撃は一撃一撃が死を覚悟されるレベル。
しかも、おっさんの得物は相変わらずリアスの木刀という理不尽。
本当になんなの、このチートおじさん。
なんでこんな強いの?
なんで日に日に強くなっていってるの?
もう意味分からないくらい強いんですけど。
アセムとの最終決戦前に木場達剣士三人組はこのチートおじさんに修行つけてもらったらしいけど、よく生き抜いたと思うよ。
世界の終わりが始まる前に自分が終わってしまいそうになるもの、これ。
そりゃ、あの三人も強くなるはずだわ。
今、木場とガチで戦ったら勝てるかどうか………。
おっさんが言う。
「
「その笑顔やめろ! 怖すぎるから! あんた、ゲームを見てる人から、その笑顔が怖いって言われてるの知ってるだろ!?」
「泣く子は更に泣き叫ぶ、チートおじさんとは俺のことでぃ」
「自覚あるんかい!」
質悪いな、このおっさん!
おっさんは木刀を軽く振るう。
「そら、お喋りする余裕があるなら、俺に参ったと言わせてみな」
このチートおじさんにそんなこと言わせた時には、俺もチートの仲間入りってか。
変革者や英龍化が使えたらいけるだろうど、今の俺じゃあ、かなりハードルが高そうだ。
でも―――――
「やってやろうじゃねぇか!」
地面を蹴って飛び出す俺。
チーム『雷光』とのゲームでバラキエルさんに誓った通りだ。
俺はもっと強くなる。
そして、大切な皆を………大好きな皆を―――――
「ぜぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!」
―――――数時間後。
「グスンッ………ねぇ、皆、僕を慰めて………」
修行場に作ってもらった山小屋で俺はぐったりしていた。
おっさんとの激しい修行の結果―――――ボコボコにされて終わりました。
あれから接近戦に持ち込んだり、遠距離からアグニ撃ったりしたけど、ぜーんぶ木刀で斬られました。
神層階まで行って、武神のもとで修行してきたのにこれか。
泣けるな。
というか、もう泣いてる。
「頑張ったね、お兄さん。今はゆっくりして、私にいーっぱい甘えてくれて良いんだよ?」
そう言って天使のような笑顔を見せてくれるニーナ。
俺はコクリと頷いて、ただただニーナの胸に顔を埋めた。
「あのね、あのおっさんチートなの。僕の攻撃、なにも効かないの。もうヤダ、帰りたい」
「よしよし。でも、諦めちゃダメだよ? お兄さんはやれば出来る子だもの。後ででも良いから、もう少し頑張ろっか。ニーナも応援してるから、ね?」
「うん………グスッ」
色々トラウマ刻まれた気がするけど、ニーナが見守ってれるなら頑張れる気がする。
また泣かされると思うけど、俺、頑張る。
あと、ニーナのおっぱいが柔らかくて、凄く良い匂いがして、元気出てきました。
そんな感じで俺がニーナに慰めてもらっていると、山小屋の扉が勢いよく開かれた。
振り向くと、そこには俺と同じくボロボロになったアリスが立っていて、
「うぇ………うぇぇぇぇぇぇぇん! ワルキュリアぁぁぁぁぁぁぁ!」
ワルキュリアに泣きつくアリス。
なるほど、アリスもおっさんにやられたらしい。
今日はニーナとワルキュリア以外のチームメンバーがローテーションでおっさんに修行をつけてもらっている。
これまでのゲームを経て、おっさんが全員の立ち回りや弱点を見直してくれているのだが………多分、というか確実にほぼ全員泣かされることになるだろう。
とりあえず、今はニーナに甘えよう。
辛い記憶をおっぱいで消し去るんだ!
その後、残りのメンバーも修行を終えて帰ってきたが、予想通り全員泣きながら帰ってきた。
なお、ボーヴァは白目をむいて気絶していた模様。
▽
「一通り終わったところで、振り返りといこうか………って、なんだよ、その目は?」
前に立つおっさんに向けてジトーっとした視線を向ける俺達泣かされた組。
アリスが言う。
「モーリス、もう少し手加減しても良いんじゃない? あんた、これを木場君達にもしたのよね?」
「当然。本気で強くなりたきゃ死ぬ気でやれ。つーか、これでもそこそこに加減してるんだぞ? 今の俺が本気だしたら、こんなもんじゃ済まねぇ」
「イッセー。あんた、よくこのおっさんを眷属に出来たわね」
「俺も本当にそう思うよ………」
自分自身不思議だよ。
よくもまぁ、このチートおじさんを眷属に出来たなと。
レイヴェルが言う。
「イッセー様の場合、潜在能力が高いことも考えられますわね。変革者やその先の領域………龍神クラス以上の力を秘めていますから。まぁ、それを踏まえても、モーリス様の力は常軌を逸していますわ」
「なんだよ、レイヴェルまで。俺を化け物か何かと思ってるんじゃねぇだろうな?」
「実際、化け物じみた強さよ、あんたは」
「ハハハ………」
唇を尖らせるおっさんにため息混じりに返すアリスと苦笑する美羽。
「某、まだまだ未熟であることを思い知らされました………! 主の力になるため、精進せねば!」
ボーヴァは気合いを入れているが………。
凄いよ、この子。
おっさんとやり合って心を折られてないんだもの。
リーシャがボーヴァのおでこに絆創膏を貼りながら言う。
「モーリスが日に日に強くなっていってるのは、普段から隠れて修行しているからですよ。以前、グレモリー家が所有している島に釣りに行ったでしょう? モーリスは時々、あの島で鍛練しているのですよ」
マジでか!
おっさん、俺達に隠れてそんなことをしていたと!
つーか、あの島大丈夫!?
環境破壊とかしてないよね!?
島を真っ二つにとかしてないよね!?
「俺、そろそろ時間とか斬れそうな気がする」
何言ってるの、このおっさん。
時間斬るってどういうこと?
そんなやり取りの後、おっさんは各自の課題を告げていく。
「イッセー。おまえは体の状態を気にするあまり、相手の裏をかこうとしているのが丸分かりだ。視線や呼吸、細かな体の動き、それにオーラの動きから読めちまう」
そう言われて思い当たる節がいくつかあった。
実力が格上の相手に対して真っ向から挑むのはリスクが高い………が、今の俺は必要以上に正面からの戦いを避けていた。
「フェイントにフェイントを重ねて相手の隙を作るのが悪いとは言わん。だが、今のままではおまえの長所を殺してしまっている。弱点を守るために長所を殺すのではなく、弱点を補い長所を活かす戦いをしろ」
「弱点を補い長所を活かす戦い、か……」
おっさんの言葉を復唱する俺。
確かに、それが出来ればベストではあるけど、いざやってみると難しいよね。
そんな俺の心を見透かしたようにおっさんが言ってきた。
「簡単だ。今の手札で出来ないのなら、手札を増やせば良い」
「手札を増やす? イクス・バースト・レイみたいな?」
「アホか。あんな撃ったら即ガス欠になる欠陥技をホイホイ増やしてどうする? そこに繋がるまでの手段を増やせってことだよ。おまえの基本スタイルは体術と剣術、加えて気弾撃ったり、後ろからの砲撃とか。砲撃を除けば、現在の手段は三つってところだ」
「あー………そうやって言われると少ないような」
しかし、おっさんは首を横に振る。
「いんや、実力的にもこれだけあれば事足りし、おまえは意外と機転が利く。むしろ、これだけ出来れば上出来だ。いや、上出来だったといった方が正しいな。今までは禁手をフルで使えたからこそ今の手段で神々相手でも生き残れた。だが、この先、今のままで神クラスやそれに準ずる猛者とやり合うことを考えると、手段は増やしておいた方がいい。俺からの課題は二つある。まず、一つ目は体術と剣術以外に近接戦で使える技を持て」
体術と剣術以外?
近接戦で他に出来ることがあるとすれば………槍とか?
おっさんはニッと笑む。
「残念ながら、おまえが考えている方向とは違う。イッセー、ワルキュリアから暗器を教えてもらえ」
「えっ!?」
俺が!?
暗殺術を身に付けろと!?
おっさんの発言には他の皆も驚いたようで、目を見開いていた。
美羽が言う。
「え、えっと、暗殺術ってこと? それってお兄ちゃんに合わないような………」
「違う違う。暗器と言っても色々ある。その中で自分に合う得物を見つけるのさ。拳や剣のような真正面からぶつかるものじゃなく、相手の虚を突ける意外なものをな。そいつを使って必殺の一撃までの道を増やすんだよ」
なるほど、そういうことか。
ワルキュリアが扱うものの中には隠し武器というか、身に付けていても違和感のない、武器と分からないものもある。
おっさんの言うように相手の虚を突くにはもってこいだ。
これを機に特訓してみるか。
俺が納得していると、おっさんは二つ目の課題内容を言った。
「続いて二つ目だが、こっちは神器の方だ」
「神器の?」
聞き返すとおっさんは頷いた。
「禁手の使用時間がかなり短くなっているのは、もう周りに知られてしまっていることだ。おまえが鎧を纏った瞬間に長期戦に持ち込まれたらアウト。ま、おまえもそこを分かっているからこそ、バラキエルとの戦いでは、ここぞという時に使っただろ?」
禁手を維持できる時間はマックスでも三分。
第二階層まで力を引き上げると一分程度だ。
この僅かな時間で決着をつけるとなると、使うタイミングを上手く合わせないとキツい。
おっさんは人差し指を立てて言う。
「使える力に制限があるのなら、効率良く使えるようにすればいい。鎧の各形態、それぞれの攻撃力、防御力、スピードといったパラメータを調節して、必要な時に必要な分の力を発揮できるようにしろ。それがおまえにやる課題だ」
各形態―――――第二階層『
これをあえて崩して、より状況に応じた形態にさせる。
基礎能力を上げることを考えてきたけど………その発想はなかった。
「流石は『剣聖』。チートおじさんで無茶苦茶でドSで、マジで容赦なくて、結構スケベで、たまに仕事サボったりしるけど、ちゃんと見てるってことか」
「おいコラ。そういうことは思っていても口に出すんじゃねぇ。修行ついでにまた泣かしてやろうか?」
ソレダケハカンベンシテクダサイ。
~あとがきミニ~
サイラオーグ「兵藤一誠。俺の修行の成果を見てほしいのだ」
イッセー「修行の成果?」
サイラオーグ「ああ、いくぞ―――――なんでやねん!」
イッセー「いや、『なんでやねん!』ってあんたがなんでやねん!?」
サイラオーグ「最近、ツッコミの修行を始めてな」
イッセー「それ、結局ボケに走ってるだけですけど!?」