ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 リターンズ   作:ヴァルナル

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3話 悪友との関係

休み明けの授業。

それは学生にとって、ハードなものであり、避けられないもの。

休みが長いとその反動なのか、始まった授業がいつもの数倍キツく感じてしまう………なんてことは、恐らく全国の学生のほとんどが感じていることだろう。

 

今の俺がまさにそれだった。

 

「サザエさんのエンディング聞くと、休みの終わりって感じするよね」

 

「それは分かるけど、俺が言いたいのはちょっと違うよ。あと、さらっと心の声を読まないでくれ、美羽」

 

春休みが終わった駒王学園はさっそく授業がスタート。

進学校でレベルの高いうちの授業は、とにかく進むのが早い上に内容が濃い。

特に三年生になると、大学進学に向けて一層難しくなっている。

 

微分? 

積分? 

ナニソレオイシイノ?

三角関数?

サイン、コサイン、タンジェント?

いつ使うんだよ?

………なんて考えてしまう俺は心が荒んでいるのかもしれない。

 

「お兄ちゃんは数学苦手だしね………」

 

「うん。我が妹よ、後でさっきのところ教えてくれ」

 

「アハハ………帰ったら、一緒に復習しよっか? 分からないところはボクが教えてあげるよ」

 

「うぅぅぅ………ゴメンね、こんなダメダメなお兄ちゃんで………」

 

俺、この学園に入学してからずっと美羽に教えてもらってて………!

勉強面に関しては美羽の足元にも及ばない!

お兄ちゃんとして、それはどうなんだ!?

妹にカッコ悪いところばかり見せてるけど、俺はそれで良いのか!?

 

ダメダメな自分にブルーになっていると、美羽は俺の頭を撫でて、微笑みながら言った。

 

「大丈夫。お兄ちゃんは全然ダメダメなんかじゃないし、カッコ悪いなんてことない。ううん、それどころか、ボクにとっては格好良い最高のお兄ちゃんだよ」

 

「美羽………おまえ………!」

 

う………うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!

妹が、我が愛しの妹が良い娘過ぎて辛い!

冷えきった俺の心を温かく包み込んでくれる!

 

「ありがとう、美羽………! 俺、頑張る!」

 

「うん! 一緒に頑張ろ!」

 

そんな会話をする俺達の状況を説明しておこう。

今、俺と美羽は高等部校舎のなんて中庭にあるベンチにいて、俺は美羽に膝枕をしてもらっている!

この太股の感触!

見上げると素晴らしいおっぱい!

そして、美羽の微笑み!

美羽の全てが俺を癒してくれているのだ!

 

そこへ―――――。

 

「「イッセー、貴様ぁぁぁぁぁぁ!」」

 

むっ、背後から奴らの気配が!

俺はすぐに立ち上がり、振り下ろされた拳を受け止め、流す。

流された拳―――――松田の拳は元浜の顔面へ、元浜の拳は松田の顔面へめり込んでいく。

互いの拳を受けた二人は鼻を抑えながら踞りながらも、俺に指差して叫んできた。

 

松田が怒り心頭の表情で言う。

 

「この裏切り者め! 美羽ちゃんとイチャイチャしやがって!」

 

今度は元浜が、鼻血と血涙を流しながら俺の襟首を掴んで叫んだ。

 

「そうだ! おまえだけにそんな甘いシチュエーションがあってたまるものか! このリア充め! 忘れたのか! 七夕の日は三人で『彼女が出来ますように』と願ったあの頃を!」

 

「いやー、そういえばそんなこともありましたな」

 

「ありましたな、じゃねぇよ!」

 

七夕の日は町の広場で開かれる七夕祭りに三人で行って、短冊に願いを書いたもんだ。

『彼女が出来ますように!』ってデカい文字で書いたのは遠い過去の記憶だ。

 

まぁ、俺もこいつら二人と合わせて学園ではエロ三人組で通ってる。

共にエロDVDを観賞もしたし、エロゲーもやった。

思春期の男子らしく、互いの性癖、エロスについて熱く語り合ったもんだ。

 

松田が興奮した様子で言う。

 

「しかも、上級悪魔ってのは一夫多妻が許されるんだろ? それはハーレムが作れるってことで………!」

 

「つまり、おまえは同居してるリアス先輩や朱乃先輩、アーシアちゃん達を………! クソッタレめ! 俺は認めんぞぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

アセムとの戦いの後、目が覚めた俺は一つの決心をしていた。

それは俺の正体をこの二人に話すことだ。

 

あの戦いでイグニスの真の力―――――エクセリアの力を使った俺は、一時的に世界の意思を受け止める器となった。

それは世界中の人達の想いを繋げて、俺自身の力にする。

もちろん、代償は大きかったわけだが。

 

あの虹の輝きで世界を繋いだ時、俺は松田と元浜の声を聞いたんだ。

つまり、二人に俺が戦っている時の声が聞こえたということ。

俺が眠っている間に、各勢力が人間界の混乱を避けるために、大規模な記憶改竄を行ったとのことだったが、二人には夢という形でその時の記憶が残っていたみたいだ。

それに前々から俺が二人に隠し事をしていたことに気づいていたようで………。

 

無論、そこは隠し続けることが出来たし、そうすることが正しいことなんだと思う。

それでもだ、二人が俺が話してくれるのを待つと言ってくれた以上、その想いに答えなきゃいけない。

美羽から見舞いに来た二人の言葉を聞かされた時、俺は強くそう思った。

 

だから、俺は二人に話した。

俺が異形―――――悪魔であることを。

この世界には様々な異形が存在すること、更には異世界についても。

もちろん、全てを話した訳じゃない。

あまり多くのことを語ると混乱するからだ。

 

俺が語った話をこいつらはただ黙って聞いてくれた。

そして、驚きはしていたものの、今はこうして普通に接してくれている。

 

「おまえらさ、本当に変わらないよな」

 

不意に俺はそう呟いてしまった。

受け入れてくれたのは嬉しいことなんだけど、今までと変わらない接し方なので、逆にこっちが驚かされる。

 

すると、元浜が眼鏡をくいっと上げて言った。

 

「美羽ちゃんにも聞いたが、イッセー。おまえ、おっぱい好きか?」

 

「当たり前だろ? おっぱいは命より重い………ッ!」

 

元浜の問いに拳を握り締めて返す俺。

 

俺がおっぱいに飽きるとでも思ったのか?

そんなことはあり得ん!

俺はおっぱいを愛し、おっぱいのために戦い続ける!

なにせ、俺はおっぱいドラゴンだからな!

 

俺の言葉を聞いて松田が吹き出しながら言った。

 

「じゃあ、結局は悪魔だろうが、何だろうが変わらないだろ。今度はほら」

 

松田が制服の懐を探り、あるものを取り出した。

それは一本のDVD。

そのDVDはもしや………!

 

「なん、だと………!? それは『真救世主伝説 乳王伝』じゃないか! 今はもうどこにも売ってない幻のDVDをどこで見つけたんだ!?」

 

「フッフッフッ、ちょっとしたツテでな。おっと、どこの誰とは教えられないな。提供元を教えない約束なんでな」

 

「ちくしょうめ!」

 

おのれ、松田め!

斜め四十五度のキメ顔なんかしやがって!

そんなツテがあるなんて聞いてないぞ、羨ましい!

 

松田がDVDを仕舞いながら言う。

 

「この反応見てたら悪魔とか言われてもなぁ」

 

「まぁ、悪魔の翼とかも見せてもらったし、美羽ちゃんの魔法も見せてもらったから信じちゃいるけどな。というか、中三の時の謎が解けたからしっくりきた」

 

あー、そういや、中三の夏休み明けに学校行ったら、俺の体格が変わってたから驚かれたっけ。

身長はやたら伸びてるし、筋肉ついてるし。

異世界のことを知ったから、その辺りも納得できたってことか。

 

元浜が言う。

 

「それに悪魔とか言っても、別に俺達を取って食おうって訳じゃないんだろ? むしろ、俺達を守ってくれるって言うなら怖がることじゃないじゃないか」

 

「そうそう。この間あったっていう戦いの話し聞かされたらさ、世界のために戦うヒーローって感じで格好いいと思うぞ」

 

うんうんと頷く二人。

 

「とにかく、イッセーはイッセーだろ」

 

「おっぱい大好き野郎のな」

 

………こいつらも桐生と同じこと言うんだな。

確かに驚きもしたし、自分達とは違う存在なんだってところも理解していると思う。

それでも、変わらない関係でいてくれる。

 

俺は改めて自分が幸せ者だと思う。

長い人生でもそうは巡り会えない悪友が二人もいたのだから。

 

俺はフッと小さく笑んで二人に言った。

 

「なぁ、今日帰りにカラオケでも行かないか?」

 

「予定はないから、別に良いけど………おまえ、悪魔の仕事があるんだろ?」

 

「あることはあるんだけどさ。この間、一段落したところだから、今日は時間があるんだ」

 

「なるほど。じゃあ、駅前のカラオケにするか。あそこ、新曲すぐに入れてくれるしな。確かクーポンが何枚かあったはず………」

 

財布の中を漁り始める元浜を置いて、松田が美羽に訊いた。

 

「美羽ちゃんも来れる? というか、来てくれ! 俺はイッセーよりも美羽ちゃんに来てほしい!」

 

「それは激しく同意だ!」

 

「てめぇら、そりゃどういう意味だぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「「そりゃあ、男よりも美少女の方が良いだろ!」」

 

それは分かる!

分かるけど、今のシーンでそれを言ってほしくなかったぞ!

 

俺達のやり取りに美羽が苦笑する。

 

「うん、それじゃあ、ボクも行こうかな。あっ、それなら、アーシアさん達も誘おうか。多分、時間あると思うし」

 

「なに!? まさかうちのクラスのアイドル達が集合するというのか!」

 

ちなみに、三年生になってからのクラスだが、俺、美羽、アリス、アーシア、ゼノヴィア、イリナ、レイナ、木場とオカルト研究部の三年生が同じクラスに集まったことになる。

で、クラスのアイドルというのは、このメンバーから俺と木場を抜いた女性陣のこと。

 

目を見開く松田の言葉に美羽が頷く。

 

「うん、木場君も誘おうと思うけど」

 

「あー、木場はいいかな。イケメンは敵だ」

 

「そうなると、やっぱりイッセーもハブるか」

 

「なんでだよ!?」

 

提案者ハブるってどういうこと!?

流石に酷くない!?

 

すると、元浜が再び血涙を流して言ってきた。

 

「イッセー、おまえが悪魔で、俺達と違う存在になっても俺達は構わない。だがな! やっぱり、ハーレムが作れるという点は許せんのだぁぁぁぁぁぁ!」

 

「元浜の言う通りだ! 上級悪魔羨ましい過ぎるわ! 俺もなりたい!」

 

「いやいやいや、上級悪魔も結構大変だからね? 俺、何度も死にかけた………というか、一回死んだことあるからね? この間の戦いでも死にかけて、右腕無くなったし」

 

上級悪魔はハーレムOK。

ここだけ切り取れば羨ましく思えるだろう。

でも、権利を与えられる分、色々な義務が生じてきてだな………。

特に俺はチーム『D×D』のメンバーだから戦いに赴くことが多いし、その殆どが死線。

まだまだ新米の上級悪魔だけど、こいつらに言えることがあるとすれば、

 

「ハーレム作りたいなら、物理的に死ぬ覚悟がいるぞ」

 

そう言うと二人は顔を青くして、

 

「うん、やっぱやめとくわ」

 

「流石に手足がもげる覚悟は持てない」

 

こうして、二人は上級悪魔に対する憧れを捨てたのだった。

 

 

 

 

それから、数分後のこと。

何気ない話を四人でしていると、ふいに元浜が美羽に訊ねた。

 

「ところで、美羽ちゃん。最近、噂で『兵藤兄妹は毎晩合体してる』っていうのがあるんだけど、本当?」

 

「そうなの!? ボク達、そんな毎晩なんてしてないよ!? ………あっ」

 

 

 

「「「「…………」」」」

 

 

 

凍りつく空気。

俺に集まる二人の憎しみと悲しみが籠められた視線。

そう、この時、俺は今まで築いてきた関係が一瞬で崩れ去る音が聞こえたのだ。

どんなに弁明したとしても許せないものがそこにはある。

触れてはいけない領域、俺は二人のそれに触れてしまったのだ。

ドラゴンよりも恐ろしい童貞の逆鱗に―――――。

 

…………オワッタ。

 

「「イッセェェェェェェェェェェェッ! 貴様ァァァァァァァァァァァッ!」」

 

この直後、どんな悪鬼よりも恐ろしい顔をした悪友達が飛びかかってきた。

更に―――――。

 

 

イッセー撲滅委員会が俺を襲撃してきたのだった。

 

 

 

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