ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 リターンズ   作:ヴァルナル

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8話 最強への挑戦

顔合わせが終わり、デュリオ達を玄関で見送った時のことだった。

 

「今日はありがとうございました。デュリオも今日は楽しかったよ」

 

「俺もだよ、イッセーどん。相変わらずイッセーどんの周りは賑やかだったよね。うちの監督見て緊張するかと思ったら夫婦漫才始めたもんねぇ」

 

「アハハ………」

 

苦笑する俺と、微笑む『天界の切り札』メンバー。

俺とアリスのやり取りは回りから見ると夫婦漫才に見えるのね………。

いや、否定はしないけどね?

俺の発言にアリスパンチが飛んでくるのはいつものことだもの。

 

「だ、だって、イッセーがあんなこと言ってくるんだもん」

 

顔を赤くしてそっぽ向くアリス。

その顔はズルいよ、アリスさん。

後でギュッてして良い?

良いよね?

可愛いお嫁さんをギュッてするのは夫としての権利であり義務だよね?

 

リュディガーさんが言う。

 

「フフフ、こちらもすっかり毒を抜かれた気分だよ。これが赤龍帝………兵藤一誠と戦うということなのかな?」

 

「以前にも似たようなこと言われましたよ………」

 

バアルとのレーティングゲームの前に行われた記者会見の時もサイラオーグさんに言われたっけなぁ。

俺のレーティングゲームって、こんなんばっか………。

ま、まぁ、俺達が原因だから何も言えないんだけどね。

 

リュディガーさんが言う。

 

「次に会うときはゲーム当日になるだろう。と言っても私は監督なので、実際に相対するわけではないが。それでも全力でやらせてもらうよ。では、これで失礼する」

 

そう言ったリュディガーさんに続き、メンバーも挨拶と共に家を出ていく。

最後に残ったデュリオも彼らに続き、この場を後にしようとする。

すると、デュリオは玄関を出る直前に立ち止まり、こちらを振り返った。

そして、真っ直ぐに俺の目を見てきた。

 

「どうしたんだ?」

 

怪訝に思った俺は首を傾げた。

デュリオは少し沈黙を続けた後、口を開いた。

 

「イッセーどん、俺はこの大会で優勝するよ。そこには俺の願いでもあり、チームの、監督の願いでもある」

 

「………ああ」

 

大会で優勝すれば、世界に混乱をもたらすような願いでない限り、叶えられるとされている。

大会に出場する以上、大なり小なり何かしらの願いはあるだろう。

デュリオにも優勝してでも叶えたい願いがあるのだろう。

 

「次のゲーム、絶対勝つよ」

 

俺は不敵な笑みを浮かべた。

 

「俺が勝つさ。絶対に負けねぇよ」

 

デュリオ達が帰った後、俺達は先程の顔合わせについての意見を交換しあうことにした。

レイヴェルは冷や汗を流して言う。

 

「噂通りの恐ろしい方ですわ、リュディガー様は。ゲームの前に相手の情報を調べあげるのは当然のことです。ですが、あちらは私達の普段の生活、その隅々まで把握しているようでした」

 

リュディガーさんはアリスやサラの日常、何気ないところまで知っているようだった。

こちらの癖や弱点も既に把握しきっているとすれば、次のゲームではそこを突いてくるかもしれないな。

 

レイヴェルが鋭い顔つきで言う。

 

「もう戦いは始まってますわ。あの方がここに来られたのは最終確認です。こちらの顔、態度、生活、空気、雰囲気をご自身で見に来られたのでしょうね」

 

「怖い話だな」

 

「上位ランカーたる七位まで上がったのがあの方です。リュディガー・ローゼンクロイツ様は相手の精神まで摘み取り、ゲームを詰ませると言われてますわ。あの方にゲームで心を砕かれた元七十二柱の上級悪魔は数知れません」

 

弱点を作られるなんて話も聞いたことがある。

過去に完璧に近い運用をしていたチームが、とある選手の抱えていた精神的な脆さを相手チームに巧みに突かれて、チームバランスが崩壊した……なんてこともあったらしい。

 

俺やここにいるメンバーは経験豊富と言って良いだろうが、相手が相手だ。

顔合わせじゃ、自分でも気づかない弱点を見つけられたなんてこともあるかもしれないな。

 

加えて、あのストラーダの爺さんも向こうのチームにはいる。

こりゃあ一筋縄ではいかないだろうな。

 

次のゲーム、どう立ち回るか思考を巡らせているとモーリスのおっさんが顎に手を当てながらじっと俺を見てきた。

 

「おっさん? どうしたんだよ?」

 

「……強敵、か」

 

「「え?」」

 

おっさんの言葉に聞き返す俺とレイヴェル。

 

「確かにあのリュディガーもストラーダの爺さんも油断ならねぇ相手だ。だがよ、イッセー。おまえにとって真の強敵になり得るのは別にいるんじゃねぇか?」

 

「デュリオのことだろ? もちろん、デュリオも凄い奴だし油断できる相手じゃないのは分かってるよ」

 

つーか、あのデュリオ相手に油断できる訳がない。

間違いなく強敵の一人だ。

 

俺の言葉におっさんはやれやれとため息を吐く。

 

「合ってることには合ってるがそうじゃねーんだよ。……おまえ、もうちょい自分の立ち位置を考えた方が良いぜ?」

 

「それってどういう……?」

 

首を傾げる俺の頭に手を置いておっさんは言う。

 

「そこは自分で考えな。俺の口から言っても意味がねぇ」

 

その言葉に俺達は怪訝に首を傾げるだけだった。

俺の立ち位置ってどういうことだ……?

 

 

 

 

 

明くる日、俺は隣県にある船着き場に来ていた。

そこの堤防にてリフレッシュのため釣りをしている。

釣りには一人で来たわけではなく、二人ほど誘っていた。

 

「まさかキミから誘われるとはね」

 

隣でそんな風に言いながら釣糸を垂らすのは―――――ヴァーリだ。

こいつが一人目だ。

 

「なんとなくな。木場達は試合が近いから呼べないしなーっと」

 

リールを巻きながら俺はそう返した。

こいつとは大会前にも一度、こうして釣糸を垂らした仲だしな。

思い付きではあるけど誘ってみたんだ。

 

というわけで、一人目はヴァーリ。

そして、もう一人はというと―――――。

 

「だからって、このメンツはないだろ……。二天龍に俺って……」

 

更に隣で竿を握るのは匙だ。

ちょうど、俺の家に用事があって来たところを捕まえて強制的に俺のリフレッシュに付き合ってもらうことにしたんだ。

どうやら、同伴しているヴァーリのことが気になって仕方ないようで、少し落ち着かない感じだった。

 

「そういや、このメンツで集まるのは初めてか。というか、匙ってヴァーリのこと苦手なのか?」

 

俺が訊くと、匙はジト目でヴァーリに視線を送り、

 

「苦手というか何というか……まともに話したこともないしな」

 

確かに匙とヴァーリが話してるところって見たことないかも。

 

ヴァーリが一匹釣り上げてから言う。

 

「五大龍王なのだから気後れする必要もないだろう、匙元士郎?」

 

「俺の名前、知ってたのね」

 

「とりあえずはね」

 

「とりあえずは、ね……」

 

俺を挟んでの二人の会話は独特の壁があるな。

せっかく、一緒に釣りに来たんだし、これを期に仲良くしてもらいたいものだ。

 

俺は餌を釣り針に刺しながら言う。

 

「家に来たとき、モーリスのおっさんのこと聞いてきたけどさ。おっさんに何か用事があったのか?」

 

家の前で会ったとき、匙はモーリスのおっさんはいるかと聞いてきたんだ。

おっさんはアザゼル先生のところに行っていたので、今日は留守だったんだけど。

 

俺が訊くと、匙は言いにくそうにしながら、髪をかいた。

 

「あー………実はさ、俺、あのおっさんに修行つけてもらってたんだわ、個人的に」

 

「マジでか!?」

 

匙、モーリスのおっさんに鍛えてもらっていたのかよ!?

俺、そんな話なんにも聞いてないんだけど!?

 

「いつから?」

 

「前にシトリー眷属がしごかれただろ? 全員グロッキーになったやつ」

 

「皆、生まれたての小鹿みたいになってたやつか」

 

「そうそう。あの後、頼み込んで、ずっとマンツーマンで鍛えてもらってたんだよ。ちなみにソーナさんも知らない」

 

ソーナも知らないって………まぁ、ソーナのことだから、聞かないだけで何となく察してそうな気がするけど。

 

おっさんがこっちの世界に来てからは、チーム『D×D』のメンバーか集まって修行を見てもらうことがあった。

だけど、大会が始まってからは集まる機会もなくなったので、メンバーが修行をつけてもらう機会もなくなったんだ。

そんな状態なので、匙がおっさんと修行していると聞いて驚いたよ。

というか………。

 

「おまえ、よく生きてこれたな」

 

「………修行頼み込んだの、何度も後悔した」

 

薄く涙を浮かべる匙。

きっと、何度も泣かされたんだろう。

 

だが、今の話を聞いて納得した。

大会中、シトリー眷属の試合動画は何度も見た。

その中で匙の動きは以前よりも数段、レベルアップしていたんだ。

あのチートおじさんにずっと鍛えてもらっていたのなら、そりゃ強くなるわな。

 

「凄いな、おまえ」

 

俺が呟くと、匙は首を横に振った。

 

「そんな大したものじゃないって。ただ、目標に届きたかっただけだ」

 

「目標って大会で優勝することか? それにしては随分、早い段階から………」

 

匙の話では修行を始めたのは大会開始宣言の前だ。

優勝を目標に修行を始めたと考えるのは違うか。

それじゃあ、匙の目標って………。

 

その時、俺はある解答に辿り着いた。

 

「そうか! セラフォルーさんに勝つためか! そういや、ソーナと付き合うってなった時、自分より強くないとダメとか言ってたもんな!」

 

「違ぇよ!? いや、それもあるけどよ! つーか、それあの戦いの時じゃねーか! どのみち、時期が違うし!」

 

「あ、そっか」

 

セラフォルーさんにバレたの、アセムとの戦いの時だっけか。

じゃあ、違うな。

 

すると、ヴァーリがフッと笑んだ。

 

「―――――兵藤一誠を超えるため、だろう?」

 

ヴァーリの言葉に俺は匙と顔を見合わせた。

 

「ったく、白龍皇に言われるなんてな」

 

匙はそう呟くと、深く息を吐いた。

 

「兵藤、おまえは悪魔の同期で同じ『兵士』。それなのに、おまえってばメチャクチャ強くてよ。転生したてなのに上級悪魔は倒すし、あのコカビエルも倒した。だから、思ってたよ。なんで、こんなに差があるんだってな」

 

でも、と匙は続ける。

 

「おまえの過去を知ったとき分かったんだよ。おまえが戦う理由、強くなった理由も。それを知った時、俺の中でおまえは目標になったんだ。おまえみたいに強くなりたい、おまえみたいに誰かを守れるくらいにって」

 

そんなのことを考えていたのか………。

大会開催の際にも木場にも言われたっけ。

 

俺は木場や匙にとって、ライバルであり、目標―――――超えたい人間ってことか。

 

ヴァーリが言う。

 

「先日、この先のマッチングが決まったんだったな。シトリー眷属と兵藤一誠達がぶつかることになるとはね。匙元士郎、君にとっては願ったり叶ったりと言ったところなんじゃないか?」

 

そう、俺達のチームとシトリーチームは後日ぶつかることになる。

試合はデュリオのチームとの対戦の後だ。

こうも連続で身内と当たるとはね。

 

「本当はもっと雰囲気作ってから言おうと思ってたんだけど………もう、こうなったら言ってやる!」

 

匙は俺と向き合うと、真っ直ぐに言ってきた。

 

「兵藤! 今度の試合、俺は絶対に勝つからな! おまえのチームがどんだけチート揃いでも、俺は、俺達は負けねぇ!」

 

いや、チートなの、おっさんだけなんだけど………。

まぁ、そこは良いか。

 

匙の宣戦布告に俺は内側が熱くなるのを感じた。

こんな風に宣言されて、燃えないわけがない。

俺も匙と全力のバトルをしたい。

 

匙の宣言に俺は応えなきゃいけない。

でも、その前に知りたいことがあった。

 

俺は水平線の向こうを見つめながら口を開いた。

 

「なぁ、匙。それからヴァーリにも訊きたいことがあるんだ。………二人にとって、俺はどういう存在なんだ?」

 

俺の問いにヴァーリが訊いてくる。

 

「質問の意図がよく分からないな」

 

「この間、モーリスのおっさんから言われたんだよ。自分の立ち位置を考えろって。俺は、おまえ達をライバルだと、負けられない相手だと思ってる。そして、おまえ達もそう思ってくれているんだとも。でも、なぜかそれだけじゃない気がして………」

 

おっさんの言葉がずっと引っ掛かっていた。

匙の宣言を聞いて、それは確かなものに変わった。

俺は皆にとって―――――。

 

俺の言葉にヴァーリと匙は笑った。

 

「フフフ、今更、訊いてくるなんてね。そんなもの、決まっているだろう? なぁ、匙元士郎?」

 

「ああ。多分、この大会でおまえと当たる奴等は皆思ってるよ。兵藤、おまえは俺達にとって―――――」

 

匙とヴァーリは言葉を揃えて一言。

 

「「―――――最強」」

 

二人は静かにそう告げた。

 

ヴァーリは言う。

 

「大会の前にも言ったな。君が万全の状態でなくとも、俺達の認識は変わらない。あの戦いで誰もが魅せられたはずだ。確かに、今の君では全盛期のオーフィスや赤龍神帝グレートレッドには遠く及ばないのだろう。だが、君の力は単純な力量だけでは測れない」

 

「どんな奴が相手でも勝つ。不可能を可能にしてきた最強の勇者様。それがおまえだろ、兵藤。そんなおまえを超えたいんだよ、俺達は。兵藤一誠を―――――最強をな」

 

………最強、か。

ライバルに挑む、目標に挑む。

それも強い覚悟が必要だ。

だけど、最強に挑むとなると、また別の熱が入るのだろう。

 

ライバルであり、目標であり、最強。

それが俺に対する皆の認識。

なら、俺は―――――。

 

「来いよ。俺は絶対に負けねーぞ?」

 

不敵に言う俺。

 

「いや、俺が勝つね」

 

「じゃあ、俺は二人に勝つな」

 

匙、ヴァーリとそう続き、それから俺達はひとしきり笑った―――――。

 

 

 

 

 

「ところで、最近、ソーナとはどうなんだ?」

 

「レヴィアタン様に勝つまでは手も繋げねぇ………」

 

「色々頑張れ」

 

「おっと、また一匹……どうした、青い顔をしているぞ、匙元士郎?」

 

 




イグニス「我が敬愛する赤龍帝チームメンバー達よ、今や相手チームの半数がアリスちゃんのおっぱい・レイによってリタイアの光に消えた。この輝きこそおっぱいの正義の証である。決定的打撃を受けた相手チームにいかほどの戦力が残っていようと、それは既に形骸である。敢えて言おうカスであると!」

アリス「おっぱい・レイってなに!? 今度は私に何をさせる気なの!?」

イグニス「ジーク・おっぱい!」

アリス「人の話聞きなさいってぇぇぇぇぇ!」

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