ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 リターンズ   作:ヴァルナル

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18話 望むもの

[三人称 side]

 

ヨーロッパのとある国。

とある地方都市にある丘に小さな墓標が立っていた。

その前に立つのはレーティングゲーム7位であり、『天界の切り札』チームの監督、リュディガー・ローゼンクロイツだった。

彼は墓標に花と――――ロボットのおもちゃを手向けた。

 

この小さな墓の下には、彼の息子が眠っている。

リュディガーが悪魔に転生してから、長い年月が経ち、ようやく生まれた第一子だったのだ。

 

純血の悪魔と比べれば転生悪魔は子供が生まれやすい。

だが、それでも子供が出来るまでには長い時がかかると言われており、リュディガーも同様だった。

 

念願の我が子。

しかし、彼の息子は持病を抱えて生まれてきた。

 

名のある病なら、なんとでもなっただろう。

完治はしなかったとしても、冥界の医療技術、悪魔の妙技、魔法使いの魔術である程度の対応は出来たはずだから。

 

彼の息子が抱えていたのは神器だ。

人間の血を引いているため、神器を宿すことは考えられた。

実際にそういう事例は何件かあったのだ。

だが、そこは問題ではない。

 

問題なのは―――――息子の体は神器に対する抵抗力が弱かったことだ。

彼の子は神器の持つ力に、時が経つにつれ、体を蝕まれていった。

神器は無闇に取り出すことも出来なければ、封印する方法も死の危険性がある。

 

長くない命。

たとえそうだとしても、出来るだけのことをしようとリュディガーと妻は決めた。

欲しいものは何でも与え、行きたい場所には連れていった。

息子が体調を崩したときはレーティングゲームの試合を辞退したこともあった。

 

しかし、宿った神器は確実に息子の命を削っていった。

外出も困難になり、病室から出られなくなった息子を見て、リュディガーは自身の無力さを呪った。

レーティングゲームで勝ち進もうと、最上級悪魔に名を連ねようと、家族を――――最愛の息子を救えないのだから。

 

ある日、リュディガーは息子に何か欲しいものはぬきかと尋ねた。

すると、彼の子は病室の窓から冥界の空を見上げて、小さく呟いた。

 

――――天使に会ってみたい。

 

リュディガーの子は同年代の子供と比べて、変わった子だった。

周りの子供がおっぱいドラゴンに熱中する中、白い翼を持つ天使に会いたいと言ったのだ。

それも、天界の切り札たるジョーカーにだ。

 

天使に会うこと自体は不可能ではないだろう。

昔と違い、三大勢力で同盟を結んだ今なら叶う望みはある。

しかし、ジョーカー、デュリオ・ジェズアルドとなると話は変わってくる。

天界の中でも有数の実力者であり、今や三大勢力の精鋭チーム『D×D』のメンバーだ。

スケジュールも切迫しているだろう。

 

それに、息子と同じような症状を持つ子供は教会の施設に多くいると聞く。

彼は天使で、こちらは悪魔。

同盟を結び、友好的な関係になろうとも優先度に違いがある。

彼も教会の施設の子供達を第一に考えるだろう。

 

それでも我が子の願いだ。

可能性はゼロに近いが、リュディガーはわらにも縋る思いで手紙を綴り、天界に送った。

 

すると数日後―――――。

 

「はじめまして。俺に会いたい子がいるって聞いたので、飛んできちゃいました」

 

彼は来てくれた。

天界の切り札と呼ばれた男は我が子のために冥界まで来てくれたのだ。

生気を失いかけていた我が子が、デュリオと元気に話す姿は今でも覚えている。

 

その後もデュリオは暇を見つけては我が子に会いに来てくた。

他にも見て回る子供がいる。

対処すべき仕事も多い。

それらを全てこなし、自らの時間を削ってまで、我が子の元に来てくれたのだ。

 

息子は医者が宣告した余命よりも長く生きた。

奇跡だった。

それでも、死だけは避けられなかった。

けれど、我が子は満足そうな顔で逝った。

最後のその時までデュリオと話せたのが、本当に嬉しかったのだろう。

 

息子を見送った後、リュディガーはこれまでのお礼を言おうとした。

その時―――――

 

「………もっと生きたかったよな? やりたいこと、行きたいこと………夢だってあったよな? 神様からの贈り物で、苦しい思いをして、大人になれなくて………理不尽だよな」

 

デュリオは我が子のために涙を流してくれていたのだ。

悔しそうに、切なそうに。

最後まで息子の側にいてくれたデュリオにリュディガーは感謝の涙を溢れさせた。

 

レーティングゲーム国際大会『アザゼル杯』。

大会の開催が決まった後、デュリオは参加を表明した。

大会の優勝賞品は世界に混乱をもたらさない限り、あらゆる願いを叶えるというもの。

デュリオと彼に続いた転生天使達の願いは――――神器システムの改善。

これ以上、神器に苦しむ者が出ないように、もう二度と子供達を失わないように。

神器システムに干渉するのは天使長ミカエルでさえ躊躇った禁忌の領域。

だが、世界中のあらゆる神秘をかき集め、それを使えば叶えられるはずだ。

 

そんな彼らの想いを聞いたとき、リュディガーは決めた。

リュディガーはジョーカーチームの監督に自ら売り込んだ。

 

「あ、来ていたんだね、監督」

 

声に振り返ると、そこにはデュリオがいた。

手には花束とおもちゃ。

デュリオは時間を見つけては息子に会いに来てくれている。

聞けば、他の子供達の墓にも時折訪れているようだ。

 

墓に花束とおもちゃを添えるとデュリオにリュディガーは尋ねる。

 

「この間は珍しく熱くなっていたな」

 

「ハハハ、さっすが監督。良く見てる」

 

デュリオは頬をかきながら苦笑する。

 

「イッセーどんって不思議な男なんだよね。彼は色んな人を惹き付ける力がある。だからかな、イッセーどんの周りはいつも賑やかだ」

 

「そのようだな。彼が悪魔に転生してからの日々は歴史的な事変の連続だ。彼は常にそこの中心にいた。味方にしろ、敵にしろ、大勢の者を惹き付けるのは彼の才能なのだろう」

 

「………勝てると思うかい?」

 

「勝つつもりなのだろう? 最強を相手に」

 

「まぁね」

 

兵藤一誠は最強の存在だ。

異世界の神との戦いで魅せた絶対的な力は失われたのかもしれない。

以前のように十全に戦えないのかもしれない。

それでも、彼の背中は変わりなく大きい。

運命すらもねじ曲げる強い意思は未だ彼の中に宿っている。

 

――――勝たせてみせる、この男を。最高の天使を。

 

最強に勝たせる。

これが今のリュディガー・ローゼンクロイツの目標だった。

 

 

[三人称 side out]

 

 

 

 

大会当日。

俺達、『異世界帰りの赤龍帝』チームは試合開始時間よりも数時間ほど早く会場入りしていた。

余裕をもって会場に来たため、ウォーミングアップだけじゃなく、軽く会場を回ることもできた。 

 

今回の会場はアスタロト領にある『アジュカ・スタジアム』だ。

魔王アジュカ・ベルゼブブを記念して造られたこのスタジアムだけあってか、この会場はかなり近代的な造りをしている。

 

「あちこちにル○バがあるのも気になったけど、それよりも会場の横にあった展示ブース。ゲームの宣伝してたよね。おっぱいドラゴンのゲーム」

 

「これを機に財源の拡大をしようとしてるな、あの人」

 

なんて会話をさっき美羽としていたくらいだ。

ちなみに、あの人というのはアジュカさんではなく、ヴェネラナさんのことだったりする。

なんでもアザゼル先生が作った試作ゲームが目に止まったらしく、そのままおっぱいドラゴン関連グッズに取り込み、展開を広げようとしているとか。

ゲームの内容はいくつか種類があるようで、ブースでは興味を持った子供から大人までが体験版をプレイしていた。

特撮にしかり、ゲームにしかり冥界はどんどん人間界の娯楽を取り入れていくなぁ。

 

会場はかなりの大きさだが、控え室も広大だ。

通常時は人間サイズになっている大型巨人の選手が元のサイズに戻っても大丈夫なほどで、うちのメンバーではボーヴァも元の大きさに戻っている。

 

控え室には関係者も多く訪れていて、

 

「頑張るのじゃぞ、イッセー!」

 

九重も駆けつけてくれている。

 

「おう! 応援よろしくな!」

 

ニッと笑みを見せて返すと、九重もブイサインで返してくれた。

九重以外にも応援に来てくれている人達はいて、

 

「美羽、サラ、頑張れよ!」

 

「応援はしてるけど、無理しちゃダメよ!」

 

はい、うちの両親も駆けつけてくれています。

母さんお手製の段幕を掲げて、愛娘達の手を握ってますよ。

 

「二人とも来てくれて、ありがとう。相手は強敵だけど絶対に勝ってみせるよ。ね、サラ」

 

「うん、私も頑張る。お父さん、お母さん」

 

美羽とサラが笑顔でそう返すと、父さんと母さんは肩を震わせて―――――滝のような涙を流し始めた!

 

「どうしよう、母さん! 娘達が、娘達が可愛すぎるぞ!」

 

「ええ! もう悔いはないわ!」

 

うん、落ち着こうか二人とも!

つーか、毎回毎回、応援に来る度に同じ展開に成ってるんですが!?

ほら、ワルキュリアなんてモップで床掃除始めたよ!?

当然のように二人の涙で出来た水溜まりを片付け始めたよ!?

 

「これもメイドの仕事ですから」

 

クールに言われちゃったよ!

ごめんね、うちの両親が仕事増やしちゃって!

 

「もう慣れましたので」

 

「流石はデキるメイドのワルキュリアさんだ! というか、俺の心読まないでくれる!?」

 

いつものことですけどね!

 

アリスが娘二人を抱きしめてる父さんと母さんを見て言う。

 

「この光景も毎度のことだけど、お二人も少しは慣れてくれたのかしら?」

 

「それなりにかな?」

 

大会が始まってから、試合の度に二人は応援に来てくれている。

だけど、最初は応援する気持ちよりも心配する気持ちの方が大きかったみたいだ。

 

俺達の話を聞いて、モーリスのおっさんが先程まで読んでいた冥界の新聞を畳ながら言ってきた。

 

「命の駆け引きじゃない試合とはいえ、大事な息子、娘が神だの巨大な魔物だのと戦うんだ。親としちゃ、心配せずにはいられんだろうよ。特に二人の場合は、一度襲撃を受けてその恐怖を体験してる分、尚更な」

 

おっさんの言うように、二人はニーズヘッグの襲撃を受けて、異形の怖さを身をもって知ってしまった。

しかも、あの時はサラがボロボロになりならがら、二人を守るために戦う姿を見せられている。

………心配するなと言う方が無理か。

 

しかし、とモーリスのおっさんが言う。

 

「この大会はあくまで祭りだ。危ないこともあるだろうが、おまえ達が楽しんでるところを見せてやれば、多少は和らぐだろうさ」

 

おっさんの言う通りかもね。

そうなると、俺達は全力で楽しんでるところを見せないとだ。

 

ふいに視界にエルメンヒルデが映った。

彼女は今回も出場はせず、記録係として参加してもらっている。

エルメンヒルデも日々の修行で俺達のペースに大分ついてこられるようになってきている。

元々、純血の吸血鬼だし、潜在能力は高いんだ。

もう少しすれば、選手として活躍できる日も来るだろう。

 

俺はおっさんに言う。

 

「エルメンヒルデとアーシアのこと、ありがとな」

 

「へっ、こっそり聞き耳を立てたんだろう?」

 

ありゃ、バレてら。

実を言うと、おっさんと二人の会話は途中からだけど、聞いてしまっていたんだよね。

どうやら、悩み相談をしていたみたいだけど、あれから二人の表情が晴れている。

俺もおっさんには色々世話になってきたけど、今回も二人を助けてくれたようだ。

 

「まぁ、色々とお節介をしたくなる年頃なんだよ。可愛い女子とも話せて役得ってな」

 

「二人の悩みを聞いてくれたのは助かったけど………アーシアは俺のお嫁さんだからね?」

 

「ばっきゃろ。俺は昔からかみさん一筋なんだよ」

 

 

 

 

「そろそろ、時間ですわ」

 

レイヴェルの言葉に頷き、俺達は準備を始める。

俺、アリス、美羽、レイヴェル、サラ、モーリスのおっさん、リーシャ、ワルキュリア、ボーヴァ、それと百鬼だ。

百鬼は今回からの参戦で、『戦車』枠での出場だ。

 

俺は百鬼に問う。

 

「緊張するか?」

 

俺の問いかけに百鬼は不敵に笑む。

 

「いえ、腕が鳴りますよ」

 

巨大なスタジアムを埋め尽くす観客達が放つ熱気がこの控え室まで届いている。

これだけの熱に当てられても、笑みで返してくるとは………やっぱり、百鬼は凄いやつだ。

ティアが推薦するだけはある。

 

俺達は控え室をあとにして、グラウンドを目指す。

入場口まで行くと、ちょうど相手チーム『天界の切り札』の面々と出くわした。

入場はここから両チーム同時にグラウンドに入ることになっている。

 

アナウンサーに呼ばれるまで待機していると、デュリオが話しかけてきた。

 

「イッセーどん、観客席は『おっぱいドラゴン』ファンでいっぱいだ」

 

入場口からスタジアムを見るデュリオ。

観客席はおっぱいドラゴンのグッズや応援旗を手に持つファンで埋め尽くされている。

俺達が大会で勝ち進む程、ファンの熱気も増しているようだ。

 

「デュリオ達のファンもいるぞ」

 

「スタジアムの端に少しだけだけどね」

 

確かに俺達を応援してくれるファンの数に比べると、一ヶ所のみ。

会場はおっぱいドラゴンファン一色と言ってもいいくらいだ。

でも―――――

 

「誰かが見てくれている。応援してくれている。たとえ数人でも、一人でも、それは力になる………だろう?」

 

「そうさ。あの子達の声がイッセーどんのファンにかき消されるかも知れないって、仲間の天使達は言ってたけどね。俺はそんなことはないって信じてるよ」

 

俺の問いにデュリオは笑みを浮かべながら答えた。

デュリオが訊いてくる。

 

「イッセーどん、試合直前だけど一つ良いかい?」

 

「なんだ?」

 

聞き返すと、デュリオは少し間を置いて、口を開いた。

 

「もし、アーシアちゃんが普通のシスターとしての人生を送れていたら、今よりも幸せだっただろうか………なんてことを考えたことはあるかい?」

 

「ないと言えば嘘になるな」

 

シスターとしての人生。

本来なら、アーシアは今でも教会のシスターとして過ごしていただろう。

それが悪魔をも癒せる神器を宿していたことにより、教会から追放された。

神器さえなければ、アーシアは―――――

 

「それでも、アーシアはここにいて幸せなんだと思うよ。というか、俺がアーシアを全力で幸せにするって決めたしな。こいつは絶対だ」

 

悲しいことも辛いこともあっただろう。

だけど、今はリアスやゼノヴィア、イリナと出会い、学校では普通の女の子としてクラスメイトと話をして、遊んで、笑っている。

あの笑顔に陰りなんてない。

アーシアは今、本当に幸せなんだと俺は感じているよ。

まぁ、今よりもっとずっと幸せにするんだけどね!

 

俺の言葉にデュリオは笑う。

 

「イッセーどんらしい答えだね。うん、それで良いと思うよ。これからもアーシアちゃんの側にいてあげれば良い。きっとそれが一番なんだって俺も思うからさ」

 

そう言うとデュリオは観客席に視線を向ける。

 

「神器の不備があったからこそ、落とした命もあれば、不備があったからこその今の生き方がある。アーシアちゃんも、祐斗やトスカちゃん、ギャー君にヴァレリーさん、シトリー眷属の子達。不備による不幸、不幸から一転した今の生き方が………。でもね、新しい生き方を得られないまま、遠い空の向こうに行った子達の方が圧倒的に多い」

 

なるほどな。

デュリオや転生天使のチームが優勝賞品に何を望むのかが見えてきた。

それはデュリオがずっと気にかけてきたことだ。

 

デュリオは拳を突き出してくる。

 

「勝つよ、イッセーどん。俺達は君を倒す」

 

俺の目を真っ直ぐに見つめてくるデュリオ。

あくまでそれは自分達の目標であり、気を遣わず、本気でやり合おうってか。

不敵なその笑みがこれから始まるゲームを楽しみにしていることの証だ。

 

俺も笑みを浮かべ、拳を合わせた。

 

「いーや、勝つのは俺達だ。全力で来い。こっちも全力全開でいかせてもらうからよ」

 

「そいつは楽しみだ」

 

俺達のゲームが今、始まる――――。




~次回予告~

ゼノヴィア「ついに始まる赤龍帝チームとジョーカー率いる転生天使チーム。どちらが勝ってもおかしくない激しい戦いがついに始まる。だが、試合が進む中、イリナの翼が点滅しだして………。次回おっぱいボールZ、『エロ天使堕つ! 紫藤イリナ最後の白翼』! 見逃すんじゃないぞ!」

イリナ「なにその次回予告!? 私の身にいったいなにが!?」

ゼノヴィア「私はイグニスから渡された台本を読んだだけなんだが……。まぁ、イリナならあり得る展開だな。エロ天使だし」

イリナ「エロ天使じゃないもん! 私、堕ちないもん!」

イッセー「つーか、おっぱいボールZってなに!?」
 
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