ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 リターンズ 作:ヴァルナル
《さぁ、選手の入場ですっ!》
アナウンサーに促され、グラウンドに出た俺達を迎えたのは観客席からの声援だった。
「おっぱいドラゴン!」
「ずむずむいやーん!」
なんて子供達の声が聞こえてきてさ。
少し恥ずかしさもあるけど、応えなきゃってなるよね。
俺が観客席に向けて手を振ると声援は更に大きくなって返ってくる。
一方、転生天使チームの方も声援に対し、手を振って応えていた。
「天使さまー!」
「負けるなよ、デュリオ!」
おっぱいドラゴンファンに負けないくらいの大きな声だ。
グラウンドの中央に両チームが一列に並ぶ。
当然だが、この場にいるのは選手のみで、相手チームの監督であるリュディガーさんはここにいない。
試合前に作戦と戦術を選手に託し、どこかでゲームを見守っているのだろう。
ゲームが始まる前にアナウンサーが解説者を紹介する。
《本日の解説には魔王アジュカ・ベルゼブブ様、そして大天使ミカエル様をお迎えしております! ベルゼブブ様、今日はよろしくお願い致します》
《ああ、今日は実に楽しみだ》
《ええ、こちらこそよろしくお願いします》
見上げると、大型モニターにアジュカさんとミカエルさんが映し出されていた!
ここはアジュカさんの故郷であるアスタロト領だし、スタジアムも自身の名前を冠しているから呼ばれても不思議ではない。
ミカエルさんは、転生天使チームが出場する試合だからかな?
アナウンサーが更に紹介を進める。
《実は今回、もう一人、ゲストをお呼びしております! 『天界の切り札』チームの選手である紫藤イリナ選手のお父様――――紫藤トウジさんです!》
「「えええええええええええええっ!?」」
思わぬ人物の紹介に目が飛び出すくらい驚く俺とイリナ!
ホントだ!
ミカエルさんの横に座ってるのイリナのお父さんだ!
なんで、そこに!?
トウジさんは朗らかに言う。
《はじめまして、イリナの父です。今日はミカエル様からお誘いいただきまして、解説席から娘達の応援をすることになりました》
《紫藤イリナ選手といえば、兵藤一誠選手と幼馴染みと伺っています。今日は幼馴染み対決となるのでしょうか》
《いえ、幼馴染みであり、恋人対決となります。二人は会う度に仲睦まじい姿を見せてくれていまして、孫も秒読みなのかな? しかし、そんな二人が戦うなんて………。もちろん、応援はするけど、お父さんは複雑だよ! マイエンジェル!》
頭を抱えるトウジさん!
そこは普通に娘の応援をしてやってください!
あくまで試合なんで!
つーか、ミカエルさん!?
なぜにトウジさんを解説席に連れてきたの!?
観客席で良かったじゃん!
《彼ならお二人の解説を色々としてくれると思いまして》
「色々ってなに!? 何を解説させるつもりなんですか!?」
俺がツッコミを入れていると、トウジさんは何かを取り出した。
それは―――――俺とイリナの幼い頃を記録したアルバムだった!
《これは二人が近くの公園で遊んでいる時のもので、イリナちゃんは―――――》
「いやぁぁぁぁぁぁ! そんな昔のことを公衆の面前で晒さないでぇぇぇぇぇ!」
耳をふさいで踞るイリナ!
だよね!
そうなるよね!
小さい頃の失敗とか、周りから見ると微笑ましいものでも、晒されると恥ずかしいよね!
俺だって恥ずかしいよ!
すると、横で美羽がボソリと呟いて、
「あっ、あの写真、ボクの知らないやつだ。後で貰わなきゃ」
「なんで!?」
「お兄ちゃんの小さい頃のありとあらゆる写真は収集してるからね!」
「そんな自信満々に言われても困るんだが!?」
えぇい、どれだけ俺の小さい頃に興味を持ってるんだ、我が妹よ!
《それでは、『異世界帰りの赤龍帝』チームと『天界の切り札』チームの選手が勢揃いした中で、試合の種目を決めるルーレットが回ります!》
スタジアムの巨大モニターに今回の種目を決めるルーレットが回りだす。
様々な種目タイトルが回転していくと、次第に回転のスピードが落ちていく。
そして――――
《決まったぁぁぁぁぁ! 今回の対戦種目は『ランペイジ・ボール』だぁぁぁぁぁぁぁっ!》
アナウンサーが叫び、会場の熱気が強くなる。
この種目がくるとは………。
アナウンサーが『ランペイジ・ボール』の説明を始める。
《ルールは簡単! チェスのボードに見立てた広大なゲームフィールドのどこかに現れるゴール目掛けて、両チームがボールを投げ入れる競技です! 点数はゴールへ投げ入れた選手の駒価値に準じます。たとえば、『騎士』一枠の方がゴールを決めた場合、点数は3となります。『戦車』の方の場合は5点となります。そのため、誰がゴールを決めていくのかもポイントになります!》
一番点数が高いのが『王』の10、次が『女王』の9。
つまり、俺かアリスがゴールを決めると高い点数が取れるのだが、そう上手くはいかないだろう。
相手もそれを分かっている以上、俺達のゴールは阻止してくるだろうし。
アナウンサーが更に説明していく。
《ゴールは点が決まった後、その場で消えてしまいます。次はゴールはフィールドのどこかにランダムで出現します。選手達はボールを奪い合いながら、再びゴールを目指していくという競技です!》
アリスがレイヴェルに訊く。
「ゴールの位置はすぐに分かるのよね?」
「はい、この競技専用のアイテムでどこに出現したのかが伝えられます。選手はボールを奪い合いながら、フィールドを駆け回らなければなりません。問題はスタミナ管理ですわ」
そう、レイヴェルの言う通り、この競技はスタミナが重要視される。
なにせ、点を取ったら、次のゴール目掛けて走り、相手よりも早くたどり着かなければいけない。
時間がくるまで走り続けなければいけないんだ。
アナウンサーがルールの続きを語る。
《この競技では選手が攻撃を受けたダメージによりリタイアしてしまっても、一定時間でフィールドに復帰できます。つまり、負傷によるリタイアはないということです》
この競技は相手を倒したとしても、時間経過により復活する。
しかも、相手を倒しても点数にはならない。
完全体力勝負になる。
モーリスのおっさんがげんなりした顔で言う。
「おいおい、おじさんにはちぃとキツい競技だねぇ。帰っていいか?」
「帰さねーぞ? おっさんにはやってもらわないといけないことがあるしな」
ワルキュリアとリーシャが難しい表情で言う。
「相手をただ倒すより難しいですね。これは参りましたね」
「ええ。私達には少々厳しいルールになるかもしれません」
ワルキュリアは暗器きよる相手の不意を突いた戦いを得意としている。
相手が復活してくる以上、手の内を知られてしまってはワルキュリアの攻撃は通じにくくなるだろう。
リーシャが得意としているのは狙撃。
今回みたいに走り回る競技にはそもそも向いていない。
だが―――――やりようはある。
《では、両チーム、バトルフィールドに転移となります! 『D×D』の悪魔代表と天使代表がぶつかる一戦! どのような試合になるのか、非常に楽しみです!》
そうして、俺達のチームとデュリオのチームは転移の光に包まれていった―――――。
∇
俺達が転移した先は何もない真っ白な空間だった。
ただただ広いその場所は俺達が使用している修行用の地下空間に近い。
メンバーを展開し、俺は皆に言う。
「ルール上、相手を無理に倒す必要はない。少しすると復活してくるからな」
俺の言葉にアリスは頷いて言う。
「ええ。ようするにリタイアさせる必要はないってことで良いのよね?」
「そういうこと」
俺はニッと笑みを浮かべて返す。
今回の審判の声がフィールド中に響き渡る。
《では、試合開始前にそれぞれのチームにフィールドの見取り図を投影できる装置を二つずつ提供致します》
審判がそう言うなり、俺達の近くに腕時計のような装置が二つ送られてきた。
それを俺とレイヴェルが腕に装着した。
弄ってみると、宙にこのフィールド全体こ見取り図が投影される。
フィールドはチェスボードのように8×8のマス目に区分されており、このどこかにゴールがランダムで出現する。
………最悪、端から端まで全力疾走する場面もあるのか。
こいつは中々にハード。
フィールドは何もなく、見通しが良い分、隠れる場所もないので、完全真っ向勝負だ。
審判が言う。
《それでは『異世界帰りの赤龍帝』チームと『天界の切り札』チームの試合を始めます! 制限時間は二時間! ボールは最初のゴールに現れます! それでは―――――試合開始です!》
フィールドに試合開始の合図を告げるブザーが鳴り響く。
俺とレイヴェルが投影装置を確認すると、最初のゴールはe4に表示されている。
e4―――――フィールドのほぼ真ん中か!
俺達がいるのはd1、デュリオ達はe8。
反対の位置にいる俺達のちょうど中間にゴールがある。
よって、最初の点は早い者勝ちになる!
「最初はe4だ! いくぞ!」
『おう!』
一斉に飛び出していく俺達。
先頭を走るのは俺とアリス、サラと機動力に長けた者。
その他のメンバーは先の三名に続く形でゴールを目指した。
空を飛ぶボーヴァの背中にはリーシャが乗っており、遠方の様子を伺っている。
望遠の魔法により瞳を赤く輝かせたリーシャが言う。
「ボールとゴールを確認しました。相手チームも迫っています」
「狙えるか?」
「もちろん」
そう言うとリーシャは魔装銃を構え、引き金を引いた。
銃口が一瞬、光ったと思うと前方で炸裂音が響く。
リーシャが言う。
「狙撃を弾かれました。やはり、距離がある以上、私の攻撃は読まれてますね。ですが、足を遅らせることぐらいは出来そうです………ね!」
刹那、魔装銃の銃口が連続して輝きを放つ。
それとほぼ同時に前方で炸裂音が鳴り響く。
リーシャの狙撃を弾いたとしても、これで相手の進行スピードは落ちてくる。
その隙を狙う!
それから一分もしないうちに、金色に輝く巨大な輪が見えてきた。
あれがゴールだ!
そして―――――
「あそこにあるのがボールだ! 誰でも良い! 掴んだら、直ぐにゴールに放り込め!」
『了解!』
皆が気合いを入れる。
可能なら俺がゴールに入れた方が多く点数を得られる。
だから、まずは俺が―――――。
そう考えた時だった。
上空に、広範囲に渡って雨雲が発生する。
本来、このフィールドに天候の変化は起こらない。
こいつはデュリオの神器の能力!
雨雲は雷雲となり、大雨と雷を降らせ、嵐を巻き起こす!
狙撃のお返しと言わんばかりに、大嵐が俺達の歩みを邪魔してくる!
豪雨にさらされ、雷を避けながらどうにかボールを掴もうとする俺達の前にシャボン玉に包まれた相手チームの面々が現れる。
なるほど、天候操作がデュリオの能力なら、同じデュリオの能力であるシャボン玉で天候の影響を無効化できるってことか!
「やってくれるな!」
「いやいや、いきなり遠距離狙撃してくるイッセーどんも中々だよ?」
舌打ちする俺にデュリオは笑って返す。
アリスが白雷を纏うと、金髪が白へと変わる。
白雷を迸らせたアリスがスピードを上げた。
「私が行くわ!」
現状、俺達の中で最も速いのはアリスだ。
白雷を纏うアリスは降り注ぐ大雨や雷をものともせず、真っ直ぐにボールをへ迫る!
すると、そんなアリスに急接近する天使がいた!
「キャプテェェェェェンッ、エンジェルッッ! 先手は取らせねぇぜ!」
アメコミ風のヒーロー衣装と覆面をしたのはウリエルさんのA、ネロだった!
ネロがボールを掴もうとするアリスに襲いかかる!
だが―――――
「おっと、やらせねーよ? うちの『女王』様の邪魔はさせないってね」
瞬時に鎧を―――――
俺の登場にネロは嬉しそうに言う。
「おっぱいドラゴンッ! いいね、キャプテン・エンジェルとおっぱいドラゴンの夢の共演だッ!」
嬉々として、俺に拳を撃ち込んでくるネロ!
そういや、顔合わせの時にも共演したいとか言ってたっけか。
早速そうなるなんてね!
だが―――――
「盛り上がってるところ悪いが、鎧姿は一旦終了だ」
俺はネロの攻撃を捌きながら禁手を解除した。
おっぱいドラゴン、赤龍帝と戦えると燃えていたネロはショックを受けたように言う。
「ええっ!? 元に戻るのかよ!?」
「知っての通り、あんまり長くは維持できないんだ。今はこれで我慢してくれ………よっと!」
「うおっ!?」
ネロの拳を受け止めた俺は、攻撃の勢いを利用した背負い投げでネロを投げ飛ばす!
更に追撃として宙に浮かぶネロへ、気弾を放った!
ネロは回避できずに直撃を受けてしまう。
しかし、
「流石の攻撃だ! だが、ありがたい!」
ネロは笑みを浮かべ、感謝の言葉を返してきた。
その理由はある。
ネロは―――――
『なるほど、若くしてMを目覚めさてしまったと。将来有望ね!』
違うわ、駄女神!
何でもかんでもそっちに繋げるんじゃない!
なに期待に満ちた声だしてるの!?
そうじゃなくて、ネロは攻撃を受けると――――
『発情する、と。わかるわ!』
「なんにも分かってねぇじゃねぇかぁぁぁぁぁッ!」
もうやめて!
純粋な男子になんてこと言っちゃってるの、駄女神!?
ウリエルさんに怒られるよ、俺が!
レイヴェルが言う。
「ネロさんの神器『
解説ありがとう、レイヴェル!
よくぞ駄女神の流れを変えてくれたよ!
そう、ネロは攻撃を受ける度に頑強さが増すということ!
決して、Mだとかそういうのじゃないぞ!
この能力は単純ではあるが、基礎能力が高い奴が使うと脅威になる!
「それだけじゃないぜ! こいつはストラーダ猊下直伝――――」
ネロが拳に聖なる波動を集めて、俺へと放つ!
「聖拳ッッ!」
「ッ!?」
放たれる聖なる波動!
俺は回避しきれず、命中する直前に弾き飛ばした。
弾いた聖なる波動が地面に着弾し、激しい爆風を巻き起こす!
「ハハハッ! このキャプテン・エンジェルは鋼の肉体と聖なる拳が最大にして最高の武器なんだぜ、おっぱいドラゴンッッ!」
試合開始直後から俺達は激しく衝突する―――――。
~あとがきミニ~
イグニス「ネロ君は攻撃を受ければ受けるほど防御力が上がる。それはつまり――――硬くなるということね!」
イッセー「間違ってないけど、おまえが言うと別の意味に聞こえるんだが!?」
イグニス「ちょっとネロ君で遊んでくる!」
イッセー「やめてあげて! お願いだから、やめてあげて!」