ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 リターンズ   作:ヴァルナル

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メッッッチャシリアス


22話 番狂わせの魔術師

[木場 side]

 

 

イッセー君達の試合が進む中、僕達は先程までいた関係者用の観覧席から離れ、とある場所を目指していた。

そこは僕達に用意されたものとは別の場所に設けられた観戦ルームだ。

 

リアス姉さんが探していた人物を視界に映す。

相手もこちらに気付き、笑みを浮かべていた。

 

「これは思わぬお客様のようですな」

 

そう言うのは男性――――リュディガー・ローゼンクロイツ。

そう、デュリオさん率いる『天界の切り札』チームの監督を務める人物だ。

 

「ごきげんよう、リュディガー・ローゼンクロイツ様。席をご一緒してもよろしいでしょうか?」

 

リュディガー氏は手で隣の席に招く。

リアス姉さんが彼の隣に座り、僕を含めた他のメンバーも二人の近くに座った。

 

試合は中盤に差し掛かっており、両チームが熾烈な戦いを繰り広げていて―――――

 

 

『いくぜ! 貝の呼吸、一の型―――――|牡蠣の酒蒸し!』

 

『ならば、こちらも! お茶の呼吸、参の型――――午後のティータイム!』

 

 

なんかとんでもないパクり技を繰り広げてる!?

貝の呼吸ってなに!?

お茶の呼吸ってなに!?

あなた方は何柱になろうとしているのですか!?

 

イッセー君がチートおじさん二人に叫ぶ!

 

『あんたら、何柱になろうとしてんだぁぁぁぁぁぁ!』

 

どうやら、イッセー君も僕と同じツッコミのようだ!

 

試合を見ながらリアス姉さんが問う。

 

「リュディガー様、お訊きしてもよろしいかしら?」

 

「話せる限りならば」

 

「………あの木刀はお母様から?」

 

「ええ」

 

短く返された返答に顔を覆うリアス姉さん。

うん、なんでリアス姉さんのお土産の木刀は強者に気に入られてるんだろう。

なんでそんなに分散しているだろう。

 

リュディガー氏が楽しげに言う。

 

「猊下を招いた時点で、モーリス・ノアとの戦いは想定していたが………いやはや、ここまでとは。悪魔どころか神々も青い顔をしているのが目に浮かぶ」

 

それはそうだろう。

一人は人間の極限とまで称された戦士。

魔王ですら怖れた生ける伝説。

かたやアセムの配下であるヴァルスを降し、あの猛者揃いの勇者パーティーの師だ。

お二人の力は実際に師事を受けた僕達の知るところでもある。

 

だけど、僕達には一つ疑問があった。

 

「猊下をどのように口説いたのかしら?」

 

猊下はトライヘキサ、アセムとの戦いの後、地方で隠棲していたと聞く。

あの戦いを最後に、余生を過ごそうとしていたらしい。

国際大会の開催が宣言されてからは、そんな猊下のもとを訪ねる人は絶えず、猊下も全ての誘いを断り続けていた。

しかし、今はこうしてデュリオさん率いる転生天使チームの一員となっている。

 

その問いにリュディガー氏が答えた。

 

「なにも特別なことをしたわけではありません。私は猊下の心残りを明確にしたまで」

 

「心残り?」

 

リアス姉さんが聞き返すと、氏は頷いた。

 

「姫に仕える聖魔剣の騎士に、デュランダルを継ぐ騎士。白い龍と共にいる聖王剣の使い手。そして、異世界の剣士がこの大会でその剣を振るっている」

 

 

――――世界中のありとあらゆる強者が出場する中、あなたはここで終わるつもりなのか。彼らと戦ってみたいと思わないのか、と。

 

 

氏のその言葉は、燻っていた猊下の火を大きくするには十分だった。

猊下は思い出していたはずだ。

アーサー・ペンドラゴンと剣を交えた時のことを。

神すらも斬り伏せるモーリス・ノアの剣技を。

 

「彼は教会の信徒。しかし、彼もまた一介の剣士だったということです」

 

これまで猊下を訪れた者達は自身のチームを強化を目的にただ勧誘していただけだったのだろう。

しかし、この人はあえて猊下を煽ったんだ。

まだ見ぬ強者と戦ってみたいという猊下の心残りを見抜いて。

 

リアス姉さんがフッと笑んだ。

 

「恐ろしい方ですわ」

 

「仮に姫が私よりも先に猊下に面会していたら、取られていたでしょうな。姫も私と同じことを言うでしょうから」

 

試合では未だ二人の剣士が激しい戦いを繰り広げている。

ボールは既に他の選手に渡っているのに止まる気配が感じられない。

彼らは試合を他所に二人だけの世界に入り込んでしまっているのだろう。

そして、両チームのメンバーもそれを良しとしているようだ。

先達の熱気が両チームの熱を上げていく――――

 

『規格外の二人に呼応するように両チーム激しく衝突しております! ボールの奪い合いが止まりませんッ!』

 

フィールドでは聖なる波動や赤い龍のオーラがぶつかり、フィールドの各地を破壊していく。

更には魔法の打ち合いや剣と槍の応酬が繰り広げられ、ゴールの奪い合いは更に苛烈さを増していた。

 

ゼノヴィアが呟く。

 

「彼らを侮っているわけではないが、まさかイッセー達とここまでやり合えるなんてね。まったくの互角じゃないか」

 

――――互角。

そう、転生天使チームのメンバーはあの赤龍帝チームを相手に一歩も引いていない。

デュリオさんやストラーダ猊下といった指折りの実力者が集っているとはいえ、赤龍帝チームが優勢だろうという予想は多かった。

しかし、試合は一進一退の状況。

この状況を作り出している一つの理由として挙げられるのは転生天使の持つ札の特性だ。

彼らは特定の役を揃えることで、力を底上げすることができる。

 

《ゴォォォォォォォルッ! デュリオ選手、兵藤一誠選手からボールを奪い、シュートを決めたぁぁぁぁぁぁ!》

 

アナウンサーが吼える。

場面はちょうど、デュリオさんがゴールを決めたところだった。

 

アナウンサーが言う。

 

《転生天使の連携攻撃は他の種族に見られない爆発力がありますね》

 

解説のベルゼブブ様がそれに答えた。

 

《効果の大きい組み合わせを揃えるのは難しいが、成った時の力は凄まじいな。それにしても、彼らは使い方が上手い》

 

彼らはこれまでボールを奪う際や、相手の攻撃を潜り抜ける際、一瞬だけ札の特性を発動させていた。

急激な力の上昇は相手の反応を遅らせるのに十分な効果がある。

しかも任意で発動できるようなので、いつ、どのタイミングで発動させられるかが分からない。

そんな彼らを相手にする以上、精神力もかなり削られるはずだ。

そして、それは赤龍帝チームも例外ではない。

 

《おおぉぉぉぉと! 兵藤一誠選手が膝をついてしまいました! かなり辛そうな表情をしています!》

 

イッセー君は膝をつき、肩を激しく上下に揺らしていた。

まさかこれは―――――

 

リアス姉さんが言う。

 

「札の特性を何度も使っていると思っていたけれど、なるほど。イッセーに禁手を使わせるためね?」

 

その問いにリュディガー氏が返す。

 

「彼の力は強力ではあるが、制限時間が付いてしまっている。ならば、使わせない手はないでしょう?」

 

イッセー君の禁手に制限時間があることは誰もが知っていることだ。

だからこそ、イッセー君と戦う者は禁手が使われるタイミングを最大限に警戒していた。

しかし、リュディガー氏はあえて使わせることでイッセー君の力を削ぎにかかったんだ。

 

リアス姉さんが言う。

 

「イッセーはチームの柱。『王』としても、それ以外の意味でも。ここから崩れるわね」

 

禁手を使いすぎたせいか、動きが鈍くなっているイッセー君。

そんなイッセー君を美羽さんとサラさんがサポートに回る。

 

「兄妹愛の強い彼女達なら、真っ先に彼のサポートに回るでしょう。だが、守りながら戦うというのは隙が生じやすい。特に兵藤サラはね」

 

サラさんはイッセー君の方に意識を取られたせいか、ボールを持った選手の突破を許してしまった。

 

「兵藤サラにとって、兄と姉、家族はようやく得た安寧の場所。何よりも守ろうとするだろう。故に彼らに迫る脅威には過敏に反応してしまう節がある」

 

アセムの配下であるヴィーカとベルとの戦いでも、美羽さんを守るため、彼女は命をかけて戦っていた。

彼女にとってイッセー君や美羽さんは絶対に失いたくないものなんだ。

だからこそ、二人に危機が迫った時には守ろうとする。

たとえ、レーティングゲームの中だったとしても。

 

次に映るのはイッセー君の臣下であるボーヴァさんだ。

なんとかしてボールを奪おうと動きまくり、炎を出すが、相手選手達は彼を徹底的にスルーし、相手にしていない。

この行為がボーヴァさんを苛立たせているのが映像越しにでも分かった。

 

これを見てリュディガー氏は言う。

 

「ボーヴァ・タンニーンは兵藤一誠に心酔し、優秀な上の兄弟や父親に今の自分自身を見せたいために功を急ぐ傾向にある。兵藤一誠から指示を受けて行動し、それかま叶わなかった場合、苛立ちを隠せず、より一層焦るようになる」

 

レイヴェルさんやアリスさんに宥められるボーヴァさんだが、やはり天使達にスルーされ、怒りが増し、炎を吐き散らす。

その炎が仲間の邪魔になってしまい、相手に点数をとられてしまった。

 

「自身の行為が仲間の邪魔になった。そうすると感じるのは自身の無力感だ。誇り高いドラゴンにとって、その感情は耐え難いものだろう」

 

試合が進むなかで、天使達の体が淡い光に包まれる。

同時にボールの奪い合いで傷ついていたダメージが癒されていく。

ラファエル様のAことディートヘルム・ヴァルトゼーミュラー氏の神器の能力―――――『救護聖人に夜再起』による回復だ。

相手に前もって能力をかけておくと、一定時間、あるいはダメージを受けた時に自動で回復が発動するという。

禁手『十四救護聖人による救済』では効果範囲と治せる症状が格段に広がり、対象が信徒であれば病ですら癒せるらしい。

 

イッセー君のチームには回復の神器を持ったメンバーはいないが、美羽さんが応急処置レベルではあるものの、回復魔法で傷を治している。

また、リーシャさんやワルキュリアさんといった仲間の支援を得意としたメンバーが全体のアシストに入っているため、相手チームに大きなリードは許していない。

 

『イッセー、あんたは休んでなさい! レイヴェルさん!』

 

アリスさんがイッセー君を下がらせ、レイヴェルさんに指示を仰ぐ。

白雷を纏ったアリスさんはボールを抱えて、前に出ていく。

 

「アリス・オーディリア。赤龍帝眷属の『女王』。彼女は自身が『王』の代理であるという認識を強く持っている。兵藤一誠が動けない時は自分が彼の代わりに、彼の分まで動かなければならないのだと」

 

リュディガー氏の言うように、アリスさんにはそういう傾向がある。

『女王』としての役割を意識しているのだろうか、イッセー君と自分、二人分の行動を取ろうとする。

 

「熱くなるのは『王』である兵藤一誠に影響されているのか、生来のものか。どちらにせよ、彼女は自ら負担を背負おうとする」

 

アリスさんは相手の包囲を突破してゴールを決める。

だが、やはり二人分の負担は大きく、肩で息をしている状態だ。

あのペースでは試合終了まで駆け回ることは叶わないだろう。

 

モニターにレイヴェルさんの姿が映る。

肩で息をしており、背中の炎の翼も小さくなってきていた。

 

「レイヴェル・フェニックス。彼女は非常に優秀です。盤面をよく捉え、フィールドの両チームの動きを頭の中に描いて指示を出しているのでしょう。チームメンバーの技量もよく把握し、適切な動かし方ができている。だが――――」

 

リュディガー氏は続ける。

 

「彼女は麒麟児、天武の才がある。しかし、まだ十代の子供。自分よりも力も、経験も上の彼らを指揮するにはまだまだ未熟すぎます」

 

「今のレイヴェルではイッセー達の軍師は務まらないと?」

 

リアス姉さんの問いにリュディガー氏は首を横に振る。

 

「今の彼女でも十分に務まっていると言えるでしょう。しかし、チームとして、それ以上の力を発揮させるにはまだ時が足りていないということです。彼女もそこを理解しているからこそ、今もああして精神的に追い込まれているのですよ」

 

イッセー君達、異世界組は歴戦の戦士だ。

レーティングゲームの経験は無くとも、単純な力、実戦での経験も僕達よりもずっと上だ。

側で見ていたからこそ分かる自分との実力差。

そんな彼らの指揮をするのだから、レイヴェルさんの感じている不安やプレッシャーは大きいだろう。

 

リアス姉さんはなんとも言えない表情になっていた。

 

「耳が痛い話ね」

 

「あたな方は間違いなく強い。ですが、木の股から生えたわけじゃない。人並みの喜びや悩みを抱えている。私はそこを突くだけ。自分を完璧だとも、優れた戦術家だとも、思ったことは一度もありませんよ」

 

リュディガー氏は懐から、『僧侶』の駒を取り出し、掌で遊ばせながら言う。

 

「私がゲームで勝ち進めたのは、上級悪魔が合理主義と貴族社会にどっぷり漬かっていたからに過ぎない。彼らは駒を駒として見ていなかった。ゲームフィールドもチェスボードと同じとしか考えていなかった。リアス姫ならばお分かりでしょう。眷属とはチェスの駒ではない。思考があり、心を持つ生き物だ。そんな当然のことを、悪魔の貴族達は理解していなかった。いや、理解しようとしなかったと言うべきか。彼らはレーティングゲームを自身の眷属――――駒を使うリアルなチェス程度としか見ていなかった」

 

リュディガー氏は駒を肘掛けに置き、こう断言した。

 

「異形の最たる存在と自負している悪魔の傲慢な面、その全てがレーティングゲームに映し出されていた」

 

「そして、それを塗り替えたのがリュディガー様だと」

 

リアス姉さんの言葉にリュディガー氏は悲哀に満ちた表情となる。

 

「それは世辞にもなりませんよ。私は普通に競技をしたかっただけです。ディハウザーをはじめ、トップランカーはその辺りを理解した上でゲームをしていました。まぁ、上からの余計な介入も多々ありましたが……純粋な試合に臨める時は楽しかった」

 

そう言う彼の表情は切なそうで、どこか誇らしげだった。

 

と、ここで試合に変化が訪れる。

フィールドのあちこちに無数のシャボン玉が出現したからだ。

それを見て、リュディガー氏はニヤリと意味深な笑みを浮かべる。

 

「どうやら、あれをやるらしい」

 

あれ………?

何か策を授けていたということだろうか。

 

《な、なんと! フィールドに無数のシャボン玉が出現しました! これはデュリオ選手の能力でしょうか! どうやら、シャボン玉の一つが猛攻を仕掛けていたアリス選手の頭を包み込んでいるようです!》

 

モニターがアリスさんを映す。

アナウンサーの言うように、シャボン玉の一つがアリスさんの頭をすっぽり包み込んでいる。

しかし、そこに攻撃の気配を感じないのか、アリスさんは戸惑っているようだった。

 

『これって………えっ? あれ………? え…ええええええええええええッ!?』

 

突如、驚愕の声をあげるアリスさん。

信じられないようなものを見たのか、大きく目を見開いていた。

 

フィールドにいる選手達の視線がアリスさんに集まる中、彼女は涙を浮かべながら、嬉しそうにイッセー君に叫んだ。

 

『イッセー! 見て見て見て見て見て! 私の胸が大きくなってるぅぅぅぅぅぅぅぅ!』

 

 

 

 

「「「「………ほぇ?」」」」

 

リアス姉さん達が変な声を出した。

 




~あとがき~

イグニス「私が考えたおっぱい技コ~ナ~♪ ドンドンパフパフ~♪」

イッセー「なにこれ!? 新コーナー始まった!?」

リアス「私達が被害を受ける気しかしないのだけど………」

アリス「まぁ、止められないしね。というか、おっぱい技って前にもどこかで言ってなかった?」

イグニス「ウフフ、皆分かってるじゃない☆ それじゃあ、いきましょう! 今回はこの技――――」



   おっぱいに座せ――――乳輪丸ッ!



イッセー「いきなりアウトなやつ来たァァァァァ!」

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