ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 リターンズ   作:ヴァルナル

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シリア……スorル


23話 幻か現実か

[木場 side]

 

『イッセー! 見て見て見て見て見て! 私の胸が大きくなってるぅぅぅぅぅぅぅぅ!』

 

涙を浮かべ、本当に嬉しそうに言うアリスさん。

試合の最中、彼女があんなことを言いだしたのは、デュリオさんの能力によって生み出されたシャボン玉に頭を覆われてからだ。

 

突然のことにイッセー君ですら、反応できていなくて、

 

『え? は? ア、アリス? どした? 何を言って………?』

 

『何じゃなくて! 見てよ、これ! ほら! ついに私も皆みたいに揺れる胸を手に入れたわ!』

 

そう言って、その場で軽くジャンプするアリスさん。

しかし――――アリスさんの体には何も変化はなかった。

そう、アリスさんの胸は揺れてもいなければ、大きくなってもいなかったのだ。

 

リュディガー氏が言う。

 

「近頃、人間界ではVRというものが流行っているようだが、デュリオの神器でも似たようなことができる」

 

その言葉にリアス姉さんが何かに気づいた。

 

「まさか………アリスさんの目には自分の胸が大きくなっているように見えている、ということ?」

 

リアス姉さんの問いに頷くリュディガー氏。

 

なるほど、あのシャボン玉の内側ではアリスさんだけが見える映像が映し出されているのか。

そして、その映像とは自身の胸が大きくなっている映像………。

本人はそのことに気付いていないのか、試合などそっちのけでおおはしゃぎをしている。

 

リアス姉さんが戸惑いながらも、リュディガー氏に問う。

 

「し、しかし、映像だけというなら、触れば分かるのではないかしら?」

 

「フフフ、当然、そのあたりもぬかりはありませんよ、リアス姫。彼女が触れても分からないよう、二つのシャボン玉を胸に当てている」

 

言われて見てみると、確かにアリスさんの胸にはシャボン玉が二つくっついており、アリスさんはそれを揉んだり、腕で持ち上げたりしていた。

 

『えへへ………これで私も………』

 

過去に見たことがないくらい喜んでいるアリスさん。

うん、なんというかこれは………、

 

「残酷です」

 

「うっ、ううっ………アリスさん」

 

涙ぐむ小猫ちゃんとアーシアさん。

リアス姉さんや朱乃さんでさえ、悲しい表情を浮かべていた。

 

僕にも分かる。

これがどれだけ残酷なことなのか。

彼女が自身の胸についてコンプレックスを抱いているのは周知のことだ。

アリスさんが胸のことについてからかわれた時に、荒れ狂うのはこれまで何度も見てきたし、その光景に何度もツッコミを入れてきた。

だからこそ分かるんだ。

 

『見て見て、イッセー! すっごく弾むわ! これが私の本当の姿なのね!』

 

彼女の胸は揺れもしなければ、弾みもしない。

揺れているのも弾んでいるのもシャボン玉だ。

それをアリスさんは自身の胸だと思い込んでいる。

 

………残酷だ。

見ているこちらが泣けてくるほどに。

 

『うぅぅぅっ! ゴメン………! ゴメンな、アリスゥゥッ!』

 

イッセー君は地面を叩き、自分を責めるように嘆く!

 

『アリス………そこまで拗らせていたなんて! こんなことになるなら、たくさん牛乳を飲ませるべきでした!』

 

リーシャさんでさえ、どこか悔しそうに唇を噛んでいた!

牛乳は関係あるんですか!?

 

リュディガー氏は言う。

 

「彼女の闘志はコンプレックスである胸の大きさから来ている。まぁ、もちろんそれだけではないだろうが。だが、そこを無くせば、彼女の闘志はいくらか失われることになるだろう。これで――――赤龍帝の『女王』を取った」

 

―――――ッ!

これが、これがレーティングゲーム七位の戦略!

なんということだ!

VRであの白雷姫を落としてしまうなんて!

 

レイヴェルさんが叫ぶ。

 

『イッセー様! アリス様の頭を覆うシャボン玉を割れば、残酷な幻から解放されます!』

 

『そうか! いや………待ってくれレイヴェル』

 

『イッセー様?』

 

『あのシャボン玉は本当に割るべきなんだろうか?』

 

『何を言っているのですか、イッセー様! このままでは―――――』

 

レイヴェルさんの言葉を遮るようにイッセー君は叫ぶ。

 

『分かっている! 分かってはいるんだ! それでも! 見てくれ、アリスのあの嬉しそうな顔を! 長年の悩みが解消されたんだ! たとえ幻だとしても! 俺は………あいつの主として、夫として、アリスをあの幻を見せ続けた方が良いんじゃないのか………?』

 

頭を抱えるイッセー君。

この試合、勝つためにはアリスさんの力は必須だ。

しかし、それでもイッセー君はアリスさんのために、アリスさんのコンプレックスを解決してあげるために………。

 

イッセー君の想いにレイヴェルさんも慈愛の目をアリスさんに向ける。

 

『イッセー様、アリス様………』

 

レイヴェルさんも悩んでいるのだろう。

もしかしたら、アリスさんはこのまま残酷な幻の中にいる方が幸せなのではないかと。

 

――――その時だった。

 

パァンッと音を立ててシャボン玉が破裂した。

ワルキュリアさんが問答無用でクナイを刺したからだ。

 

『『『ああああああああああああああッ!?』』』

 

重なるイッセー君、レイヴェルさん、そしてアリスさんの悲鳴!

イッセー君が叫ぶ!

 

『割るか!? 今の流れで割るか!?』

 

ワルキュリアさんは半目でイッセー君に言う。

 

『バカなんですか』

 

『なにおぅ!?』

 

『あのまま無駄な悲劇を続けても話が進まないではないですか』

 

『いや、進むよ!? 少なくともアリスの今後は!』

 

『進みませんよ。それにアリス様の貧相な胸は成長してもリアス様のようにはなりません』

 

『断言してやるなよ! アリスも頑張ってるの! 可能性はゼロじゃない!』

 

『ゼロです』

 

『ゼロじゃない!』

 

『ゼロです』

 

『ゼロじゃないッッ!』

 

なんか、イッセー君が必死だ!

言い合うイッセー君とワルキュリアさんの横ではアリスさんが膝をついていて、

 

『うぇ………うぇぇぇぇぇぇぇ! ひぐ、グスッ………私の胸がぁぁぁぁぁぁ! びぇぇぇぇぇぇぇ!』

 

ああっ!

アリスさんが大泣きしてしまっている!

滝のような涙を流して、彼女の周囲に水溜まりができてしまっている!

 

ワルキュリアさんは淡々と言う。

 

『イッセー様。本当にアリス様を想うのなら、現実を受け入れさせ、支えるべきなのではないですか?』

 

『ッ!? それは………』

 

『アリス様に自身の貧乳を認めさせ、共に成長を目指す。アリス様の夫を名乗るのなら当然のことです。その程度の覚悟もなしにあなたはアリス様の夫を名乗るおつもりですか?』

 

ワルキュリアさんの言葉にイッセー君は反論する。

 

『違う! 俺は、おっぱいの成長に急ぎすぎもしなければ、貧乳に絶望もしちゃいない! アリスと一緒におっぱいを育てていく覚悟はある! 絶対に大きくしてみせる!』

 

声に熱が籠るイッセー君。

イッセー君、僕は………僕達は!

僕達は何を見せられているのだろうか!

試合は!?

胸の話が始まってから全く進展がないんですけど!

アリスさん、ボールも槍も放り投げてるんですが!

 

リュディガー氏は言う。

 

「ふむ、赤龍帝なら割らないと思っていたが。彼は面白い眷属を持っているようだ。それはともかく、これでアリス・オーディリアは巨乳の自分を失った喪失感で暫く動けなくなるだろう。結果オーライというところか」

 

結果オーライなんだ!?

それで良いんだ!?

 

アリスさんがダウンしたことで、イッセー君は体に鞭を打って立ち上がる。

 

『よくもうちのアリスさんに残酷な夢を見せてくれたな! さっきから涙が止まらないんだけど! 流石に俺もお怒りだぞ、デュリオ!』

 

怒るイッセー君にデュリオさんは言う。

 

『いや~監督の指示だったんだけどね。思っていた以上に効いていたというか、見てて悲しくなったというか………ごめんね、イッセーどん』

 

謝ったよ!

やっぱり、デュリオさんも申し訳なかったんだ!

 

試合はアリスさんを置いて動き出す。

戦力を削られたとは言え、流石は歴戦の戦士が揃う赤龍帝チーム。

リーシャさんの援護やレイヴェルさんの的確な指示のもと、ゴールを決め、点数を稼いでいる。

彼女達の奮闘もあってか、転生天使チームとの点差はあまり開いてはいない。

だが、言い換えれば、逆転できないでいるということ。

 

イッセー君がボールを持ち、転生天使達の間を潜り抜けようとする。

禁手は使っておらず、今は通常の籠手と錬環勁氣功で戦っている。

体力の消耗が激しい中、彼らと渡り合えているのは経験によるところが大きいのだろう。

転生転生達の包囲を抜け、ゴールまで駆けるイッセー君。

そんなイッセー君の前に立ちはだかるのは――――イリナだ。

 

イリナが言う。

 

『凄いね、ダーリン。まだこんなに戦えるなんて』

 

『そりゃな。ここまで来たら最後までやってやるさ。というか、絶対に勝つって宣言した以上、へばってられねーよ』

 

腰を落とし、構える二人。

イリナはオートクレールを片手に、天使の羽を大きく広げ、イッセー君を迎え撃とうとする。

二人はジリジリと距離を詰め―――――駆け出した。

 

『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!』

 

『やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』

 

雄叫びをあげて迫るイッセー君とイリナ!

二人の拳と、剣がぶつかる―――――と、思ってました。

ええ、ここまでそう思ってたんです。

 

思い出してほしい。

これまでのイッセー君の試合を。

堕天使チームとの試合で起きた出来事を。

この場面、この展開。

見覚えはないだろうか?

 

二人が衝突する直前、イッセー君が転びました。

 

『ひぅっ!?』

 

転んだ拍子に、イッセー君はイリナを押し倒してしまった。

顔をイリナの胸に押しつける形で。

 

イッセー君が叫ぶ。

 

『ここで!? ここでこうなる!?』

 

それはこっちの台詞だよ!

なんで毎度毎度このタイミングなんだ!

 

「ま、まぁ、イグニスさんの加護………かな?」

 

経験者のレイナさんが語る!

それは加護と言っていいのだろうか!

 

すると、ここで転生天使達に動きがあった。

彼らは転んだ二人を囲むと手元に光力の輪を出し、それを投げつけた!

光の輪は二人の体の各部に当たり、腕と腕、足と足、そして腰と腰を結びつけてしまった!

これは一体………?

 

リュディガー氏は言う。

 

「兵藤一誠のラッキースケベは女性に対して脅威だ。しかも、本人の意思に関わらず発動するので予測もしずらい。しかし、発動した直後は必ず動きが止まる。そこを狙えばこの通り。彼の動きを完全に封じることに成功する」

 

「「「―――――ッ!!!!!」」」

 

彼の言葉に僕達は戦慄した。

リュディガー氏はイッセー君のラッキースケベすら戦略に組み込んだと言うのかッ!

この作戦ではイリナも動きを封じられるが、これで『女王』に続き『王』も封じたことになる!

 

「冥界屈指のプレイヤーが用意したイッセー封じ………! なんと恐ろしい戦術なの!」

 

リアス姉さんもこの反応だ!

僕はなんとコメントしたら良いのか!

 

イリナが言う。

 

『ごめんね、ダーリン。残りの時間は私とこうしていてもらうわ』

 

『ッ! 舐めるなよ、イリナ! こんな拘束、力を出せば――――』

 

『やっ………あっ………ダーリン、そこダメ………』

 

『ああっ、ゴメン! 痛かったか?』

 

『い、痛くはないけど、その………ダーリンの体が熱くて………んっ』

 

『ちょ、イリナ!? もぞもぞされるとおっぱいが! おっぱいが顔を挟んで………!』

 

『あんっ! ダーリン、そんなにされると! あぁん!』

 

静まり返る室内。

リアス姉さん達、ボールのことなど忘れて、二人の絡みに夢中になってる!

 

《おぉぉぉとぉ! 兵藤一誠選手と紫藤イリナ選手、試合の最中、イチャイチャし始めたぁぁぁぁ!》

 

吼えるアナウンサーにイッセー君が講義する。

 

『イ、イチャイチャなんてしてないんですけど!?』

 

解説者席にいるイリナのお父さんがテンション高めに言う。

 

《おおっ! イリナ! イッセー君! たくさん愛を育んでおくれ!》

 

『どこで育ませようとしてるんですか!?』

 

更に解説者のベルゼブブ様とミカエル様が言う。

 

《戦うべき相手だったとしても、愛は生まれる。これが青春か》

 

《愛には種族も、立場も関係ないということです。二人には是非とも天界と冥界の架け橋になっていただきたいですね》

 

『ちょぉぉぉぉぉ! ここで期待するのやめてもらえませんっ!? どう反応すればいいの!? どうツッコめば良いの!?』

 

すると、解説席から、

 

《もうとことんまでラブラブしちゃいましょう! 子作りしちゃいましょう! レッツいちゃラブ!》

 

『なんで、おまえがそこにいるんだ、駄女神ぃぃぃぃぃぃぃぃ!』

 

なぜか解説席にイグニスさんが出現している!

あなたはどこまで進出してるんですか!

 

イグニスさんが言う。

 

《カメラさん、もう少し二人の顔をアップにできない?》

 

『なに指示してんの!?』

 

《あ、そうそう! 斜め上からの! そう、そこ! 二人の表情がもっと分かるように! そうそう、いいわよ~!》

 

『いや、本当になにしてんだ!? なにカメラワークにまで口出してんの!? つーか、カメラさんも言うこと聞かなくて良いよ!』

 

イグニスさんの指示により、映像は二人の顔をアップで映す。

角度も指示通り斜め上からだ。

 

見ると、イリナは顔を赤くしていて、どこか艶があるようだった。

あれ………作戦、だよね?

なんか楽しんでると言うか、喜んでいると言うか………。

 

「うん、流石はエロ天使だな」

 

ゼノヴィアのコメントに女性陣は深く頷いた。

 




~あとがき~

イグニス「我が敬愛する赤龍帝チームメンバー達よ、今や相手チームの半数がおっぱい・レイによってリタイアの光に消えた。この輝きこそおっぱいの正義の証である。決定的打撃を受けた相手チームにいかほどの戦力が残っていようと、それは既に形骸である。敢えて言おうカスであると!」

イッセー「おっぱい・レイってなんだ!? つーか、その演説言いたいだけだろ!?」
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