ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 リターンズ 作:ヴァルナル
デュリオ達との試合が始まり二時間近くが経った。
試合ももうすぐ終了時刻が近づいてきている。
俺は息を整えながら得点を確認する。
『155―154』。
一度は引き離されたが、逆転している。
今はほんの僅かな点差でリードしているといったところだ。
ここまで巻き返せたのは槍の力を解放したアリス、百鬼とボーヴァの新人コンビの奮闘によるところだ。
加えて、転生天使達を一時的に無力化できたことも大きい。
あの技が決まれば、神器でも回復しきれない。
数名の動きを完全に封じることに成功したため、一気に攻勢に回ることができた。
それでもこの長丁場。
広いフィールドを駆け回りながらの戦闘。
正直、せっかく回復させた体力もまた尽きかけている。
おまけに行動不能になっていた天使達も試合に復帰してきている。
次にあの技をやろうとしても、今度は決まらないだろうな。
あんなのは初見殺し。
デュリオ達のような実力者にそう何度も通じるものではない。
「イッセー様、次は再びf6ですわ」
レイヴェルが新たに出現したゴールの場所を報告してくれる。
俺達は限界に近い体を引きずってそこを目指す。
現状では俺達の点数が上だ。
しかし、たったの一点。
次のゴールを決める者によっては、容易に逆転される点差だ。
止まれない。
ここで止まるわけにはいかない。
俺は、俺達は―――――
「絶対勝つぞッッッッッ!」
『おおおおおおおおっ!』
俺の気合いに続くように仲間も大声で呼応してくれた。
ボールはデュリオ側にある。
彼らはボールを持ったまま、次のゴールを目掛けて飛び出していく。
俺達も全力で追いかけ、ゴールの阻止、ボールの奪還に出る。
残り時間は僅か。
お互いゴールを決められる機会も数回だろう。
だが、試合終了のその時まで少しでも多くの点を取って、この試合絶対に勝つ!
ボールは相手の『女王』であるディートヘルムさんが持つ。
サラが奪いにかかるが、相手の『兵士』達に妨害を受け、ボールまで辿り着けないでいる。
サラの援護に百鬼とボーヴァのコンビが加わるが、相手の猛攻も凄まじく、中々突破できない。
アリスはネロを相手に優位に立ち回っているようで、突貫してくるネロを、そのスピードで制していた。
しかし、何度も突撃してくるネロを捌きながらボールを奪還するのは難しそうだ。
リーシャとレイヴェルは遠距離からの狙撃、業火の魔力で相手のパスを妨害していく。
しかし、そんな二人の前にグリゼルダさんを含めた数名の女性転生天使が立ちはだかる。
彼女達は堕天使の幹部クラスの光力を放ち、二人の遠距離攻撃を相殺しにかかっていた。
美羽はイリナ(いつの間にか戦闘服を修復していた)と魔法と光力の応酬を繰り広げていて、
「ねぇ、美羽さん! 前々から聞きたかったんだけど!」
「なに!」
「私ってダーリンのお嫁さんなんだし、そうなると美羽さんは私の義妹ってことになるのかな!?」
「それってここで聞くこと!?」
なんてやり取りをしていた!
イリナ、それは今聞くことなのか!?
美羽は魔法を撃ちながら「うーん」と悩み始める。
「確かにそうなると、ボクはイリナさんの………? でも、そうなるとリアスさん達もボクの義姉ちゃん? いやいや、ボクもお兄ちゃんのお嫁さんだし………あれ? こういう場合どうなるんだろう………って、あーもう! こんな時に聞かれるから頭こんがらがってきたぁぁぁぁ!」
頭を抱える美羽!
いいんだよ、ここで答えを出さなくても!
つーか、そこは今まで通りで良くない!?
そんなこんなで義妹と幼馴染みの激しいバトルは続く。
この激戦の中、俺はボールを奪い取ろうと、ディートヘルムさんに襲いかかる。
ディートヘルムさんは俺と対峙すると、即座に光の矢を放ち、こちらとの距離を取ろうとする。
放たれた光の矢はどれもこれも濃密な光力が籠められており、気を纏った腕で撃ち落とすが、光のダメージが体を蝕んでいく。
しっかりガードしているはずなのに、貫通してくるなんてな!
俺の体力が限界に近いってことか………!
「だったら………!」
腕に気を纏うのを止め、その分を足へ集中させる。
そこから更に脳へ錬環勁氣功を使い――――『
その瞬間、俺の視界から色が消え、目の前の光景がスロー再生されたようになって、
「なにっ!?」
爆発的に加速した俺はディートヘルムさんとの距離を瞬時に詰め、眼前に立つ。
ディートヘルムさんが咄嗟に後ろへと退こうとした時、俺は彼の手元を蹴り上げ、ボールを弾き飛ばした!
宙に舞うボール!
「もらったぁッ!」
ボール目掛けて跳躍しようとした、その時だった。
「ボールは渡さないよ!」
と、横から走ってきたデュリオがボールを拐っていく!
デュリオがボールを片手に俺と対峙することになる。
「ちっ、もうちょいだったのに」
悔しげに舌打ちする俺に、デュリオは頬を流れる汗を拭いながら言う。
「言ったでしょ、俺達が勝つって」
そこへ、
「詰めが甘ぇな、イッセー?」
「良いタイミングだったな、デュリオ」
俺とデュリオの隣にモーリスのおっさんとストラーダの爺さんが並び立ち、『王』と『戦車』、互いの師弟が向かい合う格好となった。
モーリスのおっさんとストラーダの爺さんが身に付けていたものは俺達以上にボロボロになっており、頬や腕に幾つもの斬り傷ができていた。
体からは汗と共に蒸気が出ていて、その熱気が伝わってくる。
俺は額に流れる汗を拭いながら、おっさんに言う。
「随分盛り上がってるみたいだな?」
おっさんは獰猛な笑みを浮かべる。
「ここまで本気でやり合えるのもそうないんでな」
ふと見るとフィールドのいたるところに無数の裂け目があり、そこから次元の狭間を覗かせている。
二人の得物って、木刀だよね?
温泉街のお土産だよね?
この強固なフィールドを木刀で切り刻むって怪物過ぎるだろ、この二人。
いや、知ってたけども。
デュリオも苦笑しながら言う。
「猊下もハッスルしてるねぇ」
ストラーダの爺さんもまた、おっさんと同様に好戦的な笑みを見せていて、
「私も思う存分、愉しませてもらっているぞ。ここまで血沸き肉踊る戦いは長い人生、そう味わえるものではない」
爺さんも同じ感想らしい。
これ、二人にデュランダルとか持たせたら、フィールド消し飛ぶんじゃないだろうか?
などと思っていると、突然、おっさんが俺の背中をバンッと叩いてきた。
「バテてる暇はねーぞ? 勝つんだろう? だったら、おまえの持てる全部出せ。燃えカス一つ残さないようにな」
ストラーダの爺さんもデュリオに言う。
「デュリオ、心のままに行くと良い。師として、後押しくらいは出来よう」
師達による後押しだった。
全力も全力、最後まで全てを出し尽くす。
悔いのないように、今この時を全力で楽しめと。
俺とデュリオは視線を交わすと、互いに気合いを入れ直す。
弱まっていたオーラが再び、俺達の体を覆い――――一気に膨れ上がるッ!
「「ハァァァァァァァァァァァァァァッッッッ!」」
∇
[木場 side]
モニターに映る光景に僕は思わず手を強く握っていた。
フィールドの中央にそびえ立つ赤いオーラと金色のオーラによる二つの柱。
イッセー君とデュリオさんから溢れ出す力の奔流がモニター越しでも眩しい程に輝きを放っていた。
両者が放つ輝きにアナウンサーが興奮気味に吼える。
《両チームの「王」から凄まじいオーラが解放されたぁぁぁぁぁぁぁぁ! 試合終了となるこの土壇場、どこにそんな力が眠っていたのでしょうか!?》
眠っていたわけじゃない。
隠していたわけでも、温存していたわけでもない。
絞り出しているんだ。
残された全ての力を、ここでぶつけるつもりなんだ………ッ!
先に動いたのはイッセー君だった。
両の目で真っ直ぐにデュリオさんを見据えて、地面を蹴って飛び出す。
対してデュリオさんは手をかざし、特大の炎の塊を放つ。
放たれた炎弾がイッセー君にぶつかり、大爆発を起こす!
「イッセー!」
思わずリアス姉さんが立ち上がってしまう。
しかし、立ち上る爆煙を切り裂いてイッセー君はデュリオさんへと殴りかかった!
『避けることすらしないなんて、イッセーどんは無茶苦茶だねっ!』
『へっ! 時間もねぇんだ! 避ける時間すらもったいねぇってな!』
イッセー君の拳がデュリオさんの頬にめり込む!
後ろに吹っ飛ばされるデュリオさん。
しかし、足で踏ん張り、体勢を戻すとイッセー君へと向かっていく。
デュリオさんの翼が黄金に輝くと十二枚となり、頭上に浮かぶ光輪も四重となる。
体を覆う光のオーラも一層濃密になり、彼の周囲には特大サイズの光の槍が複数出現する!
ゼノヴィアが冷や汗を流しながら呟く。
「なんて大きさだ。あんなものまともにくらえば悪魔の私達はひとたまりもないな」
天界の切り札が放つ全力の光力なんだ。
光が弱点の悪魔には致命的な一撃には違いない。
体力を失っているイッセー君も例外ではないだろう。
対し、イッセー君はというと、両腕に籠手を展開して真っ向から迎え撃とうとしていた。
恐らく禁手を両腕のみ展開しただろう。
あれなら全身鎧を纏うより消耗が少ないだろうからね。
しかし、僕のこの予想は少し外れていたようで、
『Accel Booster!!!』
『BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBoost!!!!』
籠手からけたたましく鳴り響く倍加の音声!
加速された倍加―――――
本当に後先考えずに戦うつもりなのか!
イッセー君は高めた力で、デュリオさんから放たれた特大の光の槍を殴り、砕いた!
『だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!』
間髪いれずにデュリオさんへと飛びかかろうとするイッセー君。
しかし、この結果を予測していたのか、デュリオさんもまた真正面からイッセー君へと飛び出していった!
『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!』
ドラゴンのオーラが籠った拳と、光力の籠った拳が交差して互いの顔に深く撃ち込まれていく!
二人共、鼻血を噴き出すが、互いに引かず、更に殴り合う!
デュリオさんの拳がイッセー君の頬にめり込み、吹き飛ばしたと思うと、今度はイッセー君のアッパーがデュリオさんの顎を打ち上げる!
肉弾戦の応酬!
イッセー君はともかく、あのデュリオさんがこ
れに応じるなんて!
これには僕やリアス姉さんだけでなく、朱乃さんやロスヴァイセさん、他の皆までが拳を握り頬に汗を伝わせていた。
「………」
そんな僕達とは違い、リュディガー氏はただじっと二人の殴り合いを見ていた。
奇抜な戦術も、相手の精神的弱点を突くような策もない、ただの殴り合い。
己の全てをかけた、真っ向勝負を彼はどう見るのだろうか――――。
《ゴォォォォォルッッ! 転生天使チームがここに来て決めたぁぁぁぁぁぁぁ! 逆転! ゲーム終盤、終了一分前での逆転だぁぁぁぁぁぁ!》
アナウンサーの実況が轟く。
二人の戦いに魅せられてしまったが、まだゲームは続いているんだ。
試合終了までにより多くの点を決めたチームが勝利する。
決めたのは―――――イリナだった。
『よくやってくれた、天使イリナ!』
『ハァ………ハァ………やっ………た!』
チームメンバーに声をかけられ、親指を立てて返すイリナ。
そんな彼女は地面に膝をつき、体力を限界まで使いきったという様子だった。
それもそうだろう。
あの美羽さんを相手にしながら、ボールを奪い、点を決めたのだ。
恐らくイリナにとって最後の特攻だったのだろう。
イリナがゴールを決めたことにより、『155―157』と転生天使チームが逆転したことになる。
点差は2点。
試合もあと僅かで終わろうかというところで2点はあまりに大きい。
残り僅かな時間、デュリオさん達も逆転されないようより気を引き締めてくるだろう。
『そんな………』
美羽さんやレイヴェルさん、百鬼君、ボーヴァの表情に暗い影がさした。
彼女達も分かっているんだ。
残り時間はもう一分もない。
そんな中、彼らの守りを突破するのは困難きわまりない。
イリナを止められなかった美羽さんが膝を着きそうになった―――――その時。
『まだ終わってねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!』
フィールドを赤い閃光が駆ける。
閃光は通った場所を焦がしながら、一直線にボールへと迫っていった。
ボールを掴んだイッセー君が叫ぶ。
『止まるな、美羽! まだ勝負はついてねぇ!』
全身に赤いスパークを纏うイッセー君は彼を阻止しようとする転生天使達を弾きながら、ただ真っ直ぐにゴールへと突き進む。
『イッセーどんも諦めが悪い! いや、それでこそってとこかな!』
『そういうこと! 分かってるじゃないか!』
黄金に輝く翼を広げたデュリオさんがイッセー君を追いかける。
二人は並び、これまで以上に激しい撃ち合いが始まる!
放たれた赤いオーラと黄金のオーラがフィールドを破壊しながらデッドヒートしていく!
そして、イリナのゴールにより止まりかけていた各々のチームメンバーも動き始める。
『私達も止まっていられません! デュリオの援護を!』
『『『『はいッッッ!』』』』
シスター・グリゼルダの指揮に応じる転生天使達。
その中には今にも倒れそうだったイリナもいた。
一方、赤龍帝チームの方はアリスさんがチームメンバーに向けて言葉を発していた。
『私達の『王』の命令よ! あいつが止まるなって言うなら、私達もそれに続くまで! 後悔も反省も後よ! 気合い入れなさい!』
『『『『おうッッッ!』』』』
両チーム共に各々の王に続くように戦闘を再開する。
彼らの戦いもまたこの長い試合の中で最も燃え上がっていて、
《なんということでしょう! 試合終了二十秒を切っております! それなのにフィールドではこれまで以上の戦いが繰り広げられています! 観覧席の皆さんも立ち上がって、両チームを応援しております! ここに来て試合は最高潮に盛り上がって参りましたぁぁぁぁぁぁぁぁ!》
アナウンサーが言うように観覧席では皆が立ち上がり、声援を送っており、このスタジアム全体に彼らの声が響き渡っていた。
おっぱいドラゴンを応援する者から、デュリオやキャプテン・エンジェルを応援する者の声。
大人から懸命に声を上げる子供の声までハッキリと聞こえてくる。
『『勝つのは俺だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!』』
彼らの声に応えるようにイッセー君とデュリオさんが雄叫びを上げる!
互いにボールを奪い、殴り合い、オーラの砲撃を撃ち合いながらゴール目掛けて駆けていく!
ここでどちらかの『王』が決めれば、そこで勝負は決する!
《試合終了のカウントを始めます!》
会場では試合終了のカウントが始まる!
残り五秒!
イッセー君とデュリオさんはゴール目前!
二人は同時に飛び上がり――――――
メッチャバトルしてた……!
勝利するのはどっちだ!