ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 リターンズ   作:ヴァルナル

52 / 67
27話 決着

 

けたたましいブザーの音が鳴り響く。

それは試合終了を告げる合図。

 

《タイムオーバーッ! 試合終了です! 勝者――――》

 

審判が名を告げた。

 

《――――『異世界帰りの赤龍帝』チーム!》

 

そのアナウンスに会場が沸いた。

点数は『165―157』。

 

最後の最後、デュリオとの一騎討ちを経て、ギリギリでゴールを決めることができた。

イリナによって、逆転の点を入れられたラスト二十秒。

なにがなんでも取り返すということしか頭になかった。

あの状況、デュリオが追加の点を入れて、そのまま引き離されるということもあっただろう。

でも、そんなことは一切考えてなくて、ただ我武者羅だったんだ。

 

改めて点数を見る。

それは先程と変わらない点数だ。

 

………そうか、勝ったのか。

 

結果を再度確認した途端、体から力が抜けて、俺はフィールド上に大の字で倒れ込んだ。

 

「ハッ………ハッ………ハッ………」

 

粗い呼吸と激しく打つ鼓動の音しか感じられない。

限界だ。

もう立てそうにない。

腕どころか指先一つ動かせる気がしない。

 

そんな俺のところへ一つの影がやってくる。

 

「へへっ、まいったよ」

 

俺を覗き込むようにして、そう言ってきたのはデュリオだった。

 

「勝ったと思ったんだけどね。最後の最後で持っていかれちゃったかな」

 

「まぁ、勝った方がこの様じゃカッコもつかないんだけどなぁ。とりあえず起こしてくれる?」

 

デュリオは俺が伸ばした手を取ると引っ張って、上体を起こしてくれた。

ぐったりと座り込む俺の横に、デュリオはどかっと座る。

デュリオは一息吐くとポツリと言う。

 

「最強を超えるにはまだまだ足りなかったか」

 

「そうか? どう見ても紙一重だっただろ」

 

「そういうところも含めてさ。勝ちたかったなぁ………」

 

どうやら本気で落ち込んでいるらしい。

そこまで言われると、どこかむず痒いような気がするけど………まぁ、悪い気はしない。

 

俺達『王』がそんなやり取りをしている一方では、アリスとネロが話していて、

 

「やっぱり強かったな。流石はスイッチ姫だ」

 

「スイッチ姫言うな! ま、あなたもかなりのものだったわ、ネロ………いいえ、キャプテン・エンジェル君?」

 

そうして笑顔で握手を交わす二人。

また一方ではモーリスのおっさんとストラーダの爺さんも握手を交わしていた。

 

「いやー、今日は愉しかったな」

 

「ここまで盛り上がったのはいつ以来だろうか。感謝する、モーリス殿」

 

「そりゃこっちの台詞だ。どうだい、この後は? 一杯やらないかい?」

 

「剣を交えた後は酒を酌み交わす。これも粋というものですな。是非に」

 

「んーとりあえず連絡先を交換したいんだが………ん? ん? これどうすりゃいいんだ? なんちゃらコード?」

 

「それはここを押して、画面が切り替わったら私のスマホの画面を読み取って――――」

 

「おぉう!? 爺さん、あんた詳しいのかよ!?」

 

「フッフッフッ、この手のものは扱えないと不便ですからな」

 

「ッ! なんか負けた気がするぞ………」

 

ガックリと肩を落とすモーリスのおっさん。

どうやらスマホの扱いにおいてはストラーダの爺さんに軍配が上がったらしい。

とにかく、二人はこの後も交流が続くようだ。

 

更には美羽とイリナも互いに手を取り合っていて、

 

「ボクの完敗だよ」

 

「うぅん、私もギリギリだったし、後先考えずに突貫しただけだったから」

 

「でも、あの大事な局面で力を発揮できたのは凄いことだよ? 流石はイリナさん。………ちなみにあの質問なんだけど」

 

「え?」

 

「いや、ほら、ボクの立ち位置的にイリナさんの義妹になるのかどうかって………あれ、ややこしくなるから今まで通りでも良い?」

 

なんて会話をしていた。

うん、俺もそれで良いと思います。

 

他のメンバー達も互いの健闘を称え合っていて、この試合を通して得るものは多かったようだ。

 

メンバー達の交流を眺めていると、デュリオが訊いてくる。

 

「そういえば、イッセーどんがゴールを決めた時なんだけどさ」

 

「ん?」

 

俺が聞き返すと、デュリオは自分の頬を指して尋ねてきた。

 

「ここに何か出てたんだけど、あれはなんだい?」

 

「ここに………? あー、なるほどね」

 

デュリオに言われて俺はポンっと手を叩いた。

それに心当たりがあったからだ。

 

「あれはまだ修行中でな。今はちゃんと使えないんだ。今回は感情の昂りで無意識に少しだけ出てたようだけど」

 

恐らくデュリオが見たものというのは、今、修行中のものだろう。

だけど、あれは未完成も良いところで、まだまともに使えるような段階じゃない。

 

「多分、無理に使ってたら、今回の結果にはなってなかっただろうな。だから、これが今の俺の全力だよ」

 

「そっか。じゃあ、次はそれを完成させたイッセーどんと戦いたいね」

 

その言葉に俺達は視線を交えて、少し黙り込む。

少しの沈黙を経て、フッと笑むと、俺達は互いの手を取った。

 

「次も負けない」

 

「次は負けない」

 

言ってくれるじゃないか。

だけど、それでこそ天界の切り札、『D×D』のリーダーだ。

次やる時は俺ももっと力をつけて――――。

 

こうして、『異世界帰りの赤龍帝』チームと『天界の切り札』チームの一戦は、俺達『異世界帰りの赤龍帝』チームの勝利で幕を閉じた。

 

 

 

 

試合を終えて俺達はチームの控え室に戻ってきていたのだが、その空気は勝利に浮かれた陽気なものではなく、暗く重いものだった。

暗いオーラを発しているのは美羽、レイヴェル、百鬼、ボーヴァの四名。

なぜ、この四人がこんなにも暗い表情をしているかというと………。

 

「勝てたとは言え、最後の最後で無様な姿を晒してしまいました。これではイッセー様の眷属失格です………」

 

自身を攻めるように言うのはレイヴェル。

 

イリナによって逆転されたその後。

残り二十秒もない僅かな時間だったとは言え、止まりかけてしまった。

四人はそんな自分達を攻めているようだ。

 

ボーヴァは広大な控え室の壁に何度も頭をぶつけていて、

 

「某は………! 俺は! 我が主の! 赤龍帝の牙になるのではなかったのか………! それがあんな………!」

 

同じく百鬼もベンチに座り、深く息を吐いていて、

 

「先輩のようになりたいと思っていたのですが……体、なにより精神面がまだまだ足りなかったようです」

 

更に美羽はというと、部屋の隅っこに足を抱えて座り込んでいて、

 

「………チーズ蒸しパンになりたい」

 

なんてことを呟いていた!

どういう願望!?

大丈夫なのか、それ!?

ちょっと病んでないかい!?

あまりに衝撃的な内容にサラちゃんもオロオロしてるんですけど!

 

なんて重たい空気だ………!

部屋からズーンという効果音が聞こえてくる!

俺達勝ったんだよね!?

 

アリスに視線を向けると苦笑しながら、やれやれと首を横に振っていた。

俺はコホンと咳払いすると、四人に向けて言う。

 

「反省すべきところはあるだろうけど、程程にな? まずは勝利の喜びを噛み締めようぜ」

 

そう言って俺は四人へ言葉を続ける。

 

「レイヴェルの指揮がなかったら、あそこまで上手くやれなかったし、百鬼の隠し球、ボーヴァの奮戦、美羽のサポート。どれか一つでも欠けていれば、今回の結果には繋がらなかったはずだ」

 

デュリオにも言ったが、今回の試合は本当にギリギリの勝負だった。

正直、運というところもあっただろう。

しかしだ、その運を引き寄せるにも相応の力がいる。

運も実力の内とは言うが、ここにいるメンバーだからこそ掴めたと言っても良い。

 

「反省はある。後悔もある。けど、これが最後じゃない。次がある。だからさ、今日の反省を次に活かせば良い。その時には俺達はもっと強くなってるさ」

 

俺も今回の試合で見えたこともあるしな。

まぁ、まずはアレ(・・)を完成させたいところではあるんだが………。

 

アリスがスポーツドリンクを片手に言う。

 

「大体、この手のルールで残り数十秒って絶望的過ぎでしょ。そこから逆転狙うなんて、この馬鹿くらいじゃない?」

 

馬鹿とはなんだ、失礼な。

ここは頑張った俺に称賛をくれよ。

 

すると、先程からスマホを弄っていたモーリスのおっさんが言った。

 

「イリナに決められた直後、おまえも突撃しようとしてたけどな」

 

「あんた見てたの!?」

 

「ホント似た者夫婦だな。血気盛んなところと脳筋なところは特に」

 

横で聞いていたリーシャとワルキュリアがうんうんと頷いていて、

 

「諦めの悪さはイッセーと良い勝負です」

 

「お二人とも心底負けず嫌いですからね」

 

「う、うううううっさいわね!?」

 

顔を赤くするアリスさんだが………。

こいつも突っ込もうとしてたのね。

似た者同士ってのは否定できない。

 

アリス達のやり取りに場が和んだためか、四人の表情も少し明るいものとなった。

 

百鬼はタオルで顔をゴシゴシと拭った後、正面から俺に言う。

 

「俺、もっと強くなります。もう二度と諦めません。最後まで全力でやり抜いてみせます。そして、勝ってみせます。たとえ、相手が神だろうと」

 

ボーヴァも熱の入った声で続いた。

 

「某も最後まで主様と共に! 赤龍帝の牙として、敵を蹴散らしてみせましょう!」

 

「ああ、頼んだぜ!」

 

俺は二人に親指を立てて笑顔で返す。

レイヴェルと美羽も立ち上がり、その場で宣言する。

 

「あのような姿はもう晒しません。イッセー様の眷属として相応しい戦いをしてみせますわ」

 

「ボクももっと強くならなきゃね」

 

二人の言葉に俺は頷く。

 

「一緒に強くなろう。俺達はまだまだ伸びるさ」

 

そう、俺達は強くなる。

今の自分を乗り越えたその先へ―――――。

 

「『イッセー、チーム励ましナウ』っと」

 

「そんなもんメールで送らなくてもよくね!?」

 

ストラーダの爺さんとのメールに勤しむおっさんにツッコミを入れた。

 

 

 

[木場 side]

 

 

試合を観戦し終えた僕達は、イッセー君の勝利に安堵しながらも、それを認識すると同時にとてつもない疲労感に襲われた。

今の今まで席から立ち上がり、手を強く握りしめながら試合を見ていたリアス姉さんも、脱力するように席に腰を下ろし、大きく息を吐いた。

 

これにはリュディガー氏も目を細め、微笑みを見せた。

 

「応援疲れですかな?」

 

「ええ。見ている側が疲労で倒れそうになるなんて、試合を頑張っていた彼らには聞かせられないわ」

 

「それだけ彼らの試合に魅せられたということでしょう。どうやら、私の小賢しい策など、兵藤一誠には届かなかったようだ」

 

皮肉げに言うリュディガー氏。

その言葉に、リアス姉さんは首を横に振る。

 

「いいえ、あなたの戦術は確かにイッセー達に届いていた。実際に用意されていた数多くの策によって、これまで圧倒的だった彼らは追い込まれていたもの」

 

しかしと、リアス姉さんは続ける。

 

「最後の最後。あれは戦術など入る余地のない意地と意地のぶつかり合いだった」

 

「ええ、その通りです。赤龍帝チームは強力だ。故に様々な警戒をしていた。敵も味方も熱くさせてしまう『王』の影響力は特にね。しかし、あれだけはどうやっても崩せなかった」

 

イッセー君の影響力。

これまで彼と相対してきた者、例えばヴァーリや曹操が良い例だろう。

敵としてではなく、乗り越えたい目標、心の底から勝ちたいと強く思う男。

デュリオさんもそう思っていたはずだ。

それ故に最後はあのようになったのだろう。

 

帰る準備が整ったリュディガー氏は小さく笑う。

 

「リアス姫、彼は良いご伴侶です。将来のグレモリー家の強い礎になるでしょう」

 

彼は一度、フィールドにいるイッセー君に視線を向けると、そのまま扉の方に歩いて行く。

退室する寸前、振り返りながらこう述べた。

 

「グレモリーの皆さん、もし試合で当たりましたら、その時はよろしくお願いします。それと彼には伝言を。―――――次は勝つとね」

 

それだけ言い残すと彼は観戦室から去っていった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。