ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 リターンズ   作:ヴァルナル

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2話 伝説の配管工

[三人称 side]

 

その日、ヴァルスはラズル達と別れ、一人で別行動を取っていた。

それはある情報を仕入れたからだ。

ヴァルスは急ぎ足で道を進みながら、自身の装備を確認する。

 

「全て揃っていますね。後は状況次第といったところでしょうか」

 

準備は念入りに行ったのだ。

たとえ、そこに何が待ち受けていようとも失敗は許されない。

歩みを進める中、ふいにアセムの言葉が脳裏に過る。

 

『ヴァルス。僕がいなくなった後は、君が三人を引っ張っていくんだ。長男なんだしね』

 

父アセムと交わした最後の言葉。

アセムは己の全てをかけて、二つの世界の未来を守ろうとした。

強引過ぎるやり方だったのは間違いない。

秘術を使い、あの戦いで命を落とした者達を蘇生させたとはいえ、多くの人々の心に傷を残したのも確かだ。

恨まれても良い、世界から拒絶されても、自らが滅びようともアセムは未来を守るために動いたのだ。

 

そのアセムが、偉大なる父が自分に弟妹を託して逝った。

ならば、自分も覚悟を決めるしかないだろう。

この先、何が起きようとも家族を守る。

父の意思を継ぎ、二つの世界を守ってみせる。

 

ヴァルスは己のやるべきことを見定め、情報にあった場所に辿り着いた。

そして―――――目の前に広がる光景に驚愕した。

 

「よもや既にここまでとは………!」

 

嫌な汗が流れた。

心臓の鼓動が速まり、今が危機であることをヴァルスな告げる。

 

それらは既に群れと化していた。

十数………いや、もっといるだろう。

何かに群がり、狂ったような声をあげている。

あまりの光景に思わず後ずさった程だ。

 

ヴァルスは頭を振って、生じた恐怖を振り払った。

 

「ここで怯んでいるようでは話になりませんね。ここで行かねば、次はないのだから………!」

 

ヴァルスは足に力を籠め、飛び出した。

全ては父の意思を継ぐため。

大切な家族を守るため―――――

 

「ぬぉぉぉぉぉぉ! もやし一袋一円んんんんんんんんんッッ!」

 

カートに群がる主婦達にダイブするヴァルス!

どんな戦闘民族よりも戦闘民族なセール時の主婦達の戦闘力は神をも超える!

 

「くぅぅ! 心が読みきれない!」

 

相手の心の内を読む能力を発動しても、聞こえてくるのは主婦達の燃え尽きることのない闘志のみ。

一瞬先の未来を見たとしても、主婦の肘打ちが自分の頬にめり込む未来しか見えてこない!

それでも、ヴァルスは諦めない!

 

「この戦いに私達の未来(今晩の食事)がかかっている! 絶対に負けられないのです!」

 

本日の標的。

一袋一円のもやし、一パック百円の牛肉、ベルのおやつ、その他。

ルーレットで自分が買い物係りに任命された以上、何がなんでも食材は手に入れなければならないのだ。

 

果敢に立ち向かうヴァルス。

だが、この場において、主婦達の方が戦闘力は高かった。

分厚い肉の壁がヴァルスを弾き、容赦のない肘打ちがヴァルスの鳩尾を撃ち抜く!

 

「ぐぼお!?」

 

体の芯に響く一撃!

あまりの衝撃にヴァルスは膝を着いた。

 

想いの籠った一撃は相手の魂にまで響くという。

この戦況下、主婦達の拳にはあらゆるものを打ち砕けるほどの想いが籠められていた。

 

「定期的に開かれる大安売り………話には聞いていましたが、これ程のものとは………! だが! この『覗者』ヴァルスを舐めてもらっては困り」

 

「もう! 邪魔よ!」

 

「ぶべらっ!?」

 

突き飛ばされ、床に伏せてしまうヴァルス。

絶対的な戦力差が、自分の非力さがヴァルスを追い詰めた―――――その時。

 

「「………なにしてんの?」」

 

「ほへ?」

 

これが兵藤兄妹とヴァルスの再会だった―――――。

 

 

 

[三人称 side out]

 

 

 

 

「「「「散々引っ張ってどんなオチだぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」」」

 

「ぐぶぉあ!」

 

ヴァルスの話が終わった直後、木場達の飛び蹴りが炸裂した!

木場が叫ぶ。

 

「どこが壮絶な再会!? ただ買い物で出会っただけじゃないですか!」

 

匙が続く。

 

「語りが長いんだよ! 二行で終わる話だったじゃねーか!」

 

その横ではソーナが眼鏡をくいっと上げながら呟いていて、

 

「彼をそこまで追い詰めた主婦の方々のパワーに驚きです」

 

そこか!

君が気になるのはそこか、ソーナ!

確かに、悪神の眷属をものともしないセール時の主婦の戦闘力は驚異的だと思うけども!

 

流れる鼻血を抑えながらヴァルスが言う。

 

「あ、あれほどの戦闘力。もしかしたら、主婦の方々の力を合わせば、いずれ来る脅威も何とかできるかも………」

 

「主婦のパワー半端無さすぎだろうが!」

 

「もしかしたら、今後、世界を動かしていくのは神や異形の者達、人間ではなく―――――主婦かもしれない」

 

「主婦の人達、人間扱いされてないんですが!?」

 

「もういっそのこと、主婦という種族を作ってもいいのかもしれない」

 

「「どんな種族!?」」

 

ヴァルスのボケと匙&木場によるツッコミの応酬。

アザゼル先生が俺に訊いてくる。

 

「おまえはツッコミしなくても良いのかよ?」

 

「大丈夫です。もうしましたから」

 

「このやり取り、まさかの二周目!?」

 

実は木場と匙のツッコミは俺と美羽が一回やっていたりする。

なので、この件に関して、俺はツッコミを入れない。

 

俺は大きく咳払いした。

 

「とにかくだ。この先の調査はこいつらの力は必要なんだ。思うところはあると思うけど、今は呑み込んでほしい」

 

モーリスのおっさんが続く。

 

「こいつらが悪さをしようとしたら、そんときゃ、止めてやるよ。俺と相棒―――――『草津』と『熱海』がな!」

 

「イヤァァァァァ! 私の木刀返してぇぇぇぇぇ!」

 

涙目になるリアス!

ごめん、リアス。

ヴェネラナさんに木刀を返さないよう約束してるから、俺も手を貸すことは出来ないんだ。

もし、何がなんでも取り返したいなら………

 

「力ずくで奪ってみな、将来有望な若手悪魔様よ。俺を倒したなら、返してやらぁ」

 

「グスンッ………イッセェ………」

 

潤んだ瞳で見てくるリアス!

そんな目で俺を見ないで!

こればかりは俺にもどうしようもないんだ!

ヴェネラナさんにも言われてるし!

約束を破った時のことを考えると、後が怖すぎるんです!

 

 

 

 

 

ヴァルス達のことを認めてもらったところで、話を進める。

アザゼル先生がヴァルスに尋ねた。

 

「それで? アセムの世界に行くために、イッセーは何をすれば良いんだ?」

 

アセムの眷属であった四人でも、あの世界について知っているのはヴァルスのみらしい。

そもそも、あの戦いで決着がついた後、アセムの秘術で皆を生き返らせるという計画もヴァルスしか知らなかったようだ。

というのも、他の三人が計画のことを知れば顔に出てしまう………とのことだった。

この四人の結束というか、家族愛が強いのは見ていえ分かる。

ラズルなんてアセムの計画を事前に知っていれば、全力で反対しそうだしな。

 

アセムから全てを聞かされているヴァルスが皆に言う。

 

「父上が作り出した世界。ここは『境域世界』とでも名づけておきましょう。あそこはこの世界とアスト・アーデの中間地点に作られた世界ですから。知っての通り、あの世界への入り口は既に閉じており、それを開くことが出来るのは現状、勇者殿ただ一人です」

 

「現状? まさか、他の者でも世界の門を開くことが出来ると言うのか?」

 

アザゼル先生の問いにヴァルスは頷く。

 

「現に父上は勇者殿に権限を譲渡していますからね。勇者殿が望めば可能でしょう」

 

なるほどな。

俺もアセムがしたように、他者に権限を譲渡することが出来るってことか。

渡すとすればアザゼル先生………いや、あんまり簡単に決めていい話じゃないな。

これだけ大きいことになると、各勢力に話を通しておく必要があるだろう。

そうなると、今は俺が管理しておくのがベストか?

 

納得している俺にヴァルスが言う。

 

「門を開くに当たり必要なのは強く念じることです。まずは自身の内側に意識を向けてみてください。父上の力の波動を感じられるはずです」

 

言われた通りに俺は自身の内側に意識を向ける。

感覚で言えば、神器に潜る時と似たようなものだ。

少し経つと、目の前に真っ白な空間が広がった。

その空間の真ん中には鍵のようなものが浮いている。

 

こいつが、アセムが俺に与えた権限………か?

鍵から感じるのはアセムの波動だし、あいつが俺に施した何かであることは間違いないないとおもうけど。

 

俺はその鍵を手にして―――――

 

「………ッセー………イッセーってば!」

 

「っ! な、なんだよ!?」

 

突然、アリスに肩を叩かれ、俺は意識を戻した。

何事かと思う俺だったが、理由はすぐに分かった。

 

―――――目の前に佇む巨大な門。

鈍い銀色の輝きを放つそれは、この研究室の天井に届いていて………

 

「うぉい!? 天井にめりこんでんだろうが! やめろ! 俺のラボを破壊するつもりか!?」

 

届くどころか完全に突き破っていた。

アザゼル先生が悲鳴をあげる。

 

「ちょ、マジでやめて! あの戦いで重要な研究資料は燃えちまったんだからよ! これ以上、失ったら研究が進められん! 小さく! もっと小さくしろ、イッセー!」

 

そんなこと言われても、出した俺もどうやれば良いのか分からないんですけど。

そもそもどうやって出てきたのかすら理解してないのに。

 

そんなことを思いながら、俺は扉に手をかざし、とりあえず念じてみることにした。

すると、現れた門に変化が起こる。

 

 

メキメキメキメキ…………

 

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ! デカくしてどうすんだぁぁぁぁぁぁ!」

 

「あ、いっけね」

 

「『いっけね』じゃねぇだろ、おい! おまえは俺に恨みでもあるのか!?」

 

「思い当たる節はいくつか」

 

「そうだな! 俺もいくつか心当たりあるわ! ちくしょうめ!」

 

 

ゴゴゴゴゴ………

 

 

「おいおいおいおい! 扉が開こうとしてるぞ! この状態で開くな! 分かった! 俺が悪かった! 全部俺が悪かったから! 頼むから小さくしてから開いてくれぇ!」

 

崩壊していく研究室に慌て、叫ぶアザゼル先生。

 

………なんだろうな。

今までこの人には色々なことをされたからか、少し楽しい。

もっと門を大きくしてから開いてやろうか、そんなことすら思えてしまう。

 

朱乃が呟く。

 

「イッセー君、凄くSな顔をしていますわ」

 

「ああ。あのイッセーを見ていると、体が熱くなってしまう………。どんなことをされてしまうのだろう」

 

ゼノヴィア、おまえはどこに向かってるんだ。

 

今の騒ぎで足元に散らばる資料の数々。

その内の一枚を手にして、レイナがアザゼル先生に訊ねた。

 

「………『超魔力合体マオウガー三号機』ってなんですか?」

 

「………」

 

無言のアザゼル先生。

レイナから顔を反らし、滝のような汗を流している。

 

そんなアザゼル先生にレイナは坦々と言葉を投げ掛ける。

 

「前々から資金の一部が謎の使われ方をしていましたが、なるほど」

 

「………」

 

「三号機ってなんでしょう? 一号と二号はどこにいったんですか?」

 

「………」

 

黙秘を続けるアザゼル先生。

だが、沈黙は是だ。

あの資料がレイナの手に渡った時点で決着は着いていた。

 

レイナはニッコリ微笑んで、俺に言う。

 

「その扉、思いっきり開けちゃって☆」

 

「一号と二号は世界の果てに飛んで行ったんだ! 本当、勘弁してくれ!」

 

とまぁ、マオウガーのことは置いて話を先に進めよう。

なお、アザゼル先生はこの後、シェムハザさんを交えてお説教タイムが来るとのことだ。

 

俺はヴァルスに教えてもらいながら、なんとか現れた門の調整に成功する。

今は天井にギリギリ届かないくらいの高さになっているため、これ以上、アザゼル先生の研究室を破壊することはないだろう。

 

俺は一度、皆と視線を合わせると、扉に手を翳した。

そして、開くように念じる。

俺の念じに応じた扉は再び重たい音を部屋に響かせながら開いていく。

扉の隙間からは白い光が―――――。

 

「これは………」

 

誰かが言葉を漏らした。

 

扉を通じて繋がった世界は確かにあの激闘が繰り広げられた世界なのだろう。

しかし、そこは既にあの血のような世界とは大きく異なっていた。

 

青い空に白い雲。

 

広がる草原。

 

優しく吹く爽やかな風。

 

空に幾つも浮かぶ黄金に輝くコイン。

 

草木の横に生える巨大なキノコ。

 

地面から生えた緑色の土管。

 

そうか、アセム。

この世界って―――――

 

「「「ただのスーパーマ○オだろうがぁぁぁぁぁぁぁ!」」」

 

激戦が繰り広げられた地に、俺達のツッコミが帰ってきた。

 

 

 




テデッデ デデッデ デーン
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