ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 リターンズ   作:ヴァルナル

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またまたひっっっっさしぶりの投稿ォ!


5話 案内役

 

扉の向こうには広い空間があった。

鮮やかな赤色をした床に装飾の施された太い柱。

壁や柱にはいくつもの火が灯っており、空間を明るく照らしている。

空間の先には階段があり、その先には重厚な造りの椅子がある。

ここは王との謁見に使用されるような、そんな空間なのだろう。

 

椅子………王座には白髪の少年が腰を掛けている。

 

「なんで、おまえがここにいるんだよ――――アセムッ!?」

 

そう、俺達を出迎えたのはアセムだった。

 

どこか幼さを感じる白髪の少年。

トレードマークともいえるパーカーをいつものように着こなし、深く被ったフードの下には薄く笑みを浮かべている。

 

アセムは静かに口を開き――――

 

「おお、勇者よ。死んでしまうとは情けない」

 

「うぉい!? 魔王ごっこの次は王様ごっこ!?」

 

「仕方のない奴よ。おまえにもう一度機会を与えよう。戦いでキズついたときは町に戻り、宿屋に泊まってキズを回復させるのだぞ」

 

「町ってこの町のこと!? この町の宿屋、そういうシステム!? つーか、死んでねぇよ!?」

 

「ちなみに次のレベルまであと二夏の青春ポイントが必要じゃ。二十歳を過ぎるまでに頑張るのだぞ」

 

「俺、アウトじゃねぇか!? レベルアップ出来ないの!? 俺だけレベルアップ出来ない件!?」

 

なにこいつ!?

なに俺だけピンポイント狙撃みたいなことしてんの!?

嫌がらせか!?

 

アザゼル先生とモーリスのおっさんが俺の肩にポンと手を乗せる。

 

「歳を取るってのはそういうこった」

 

「ほろ苦い思い出を噛み締めるのは大人の特権だぜ?」

 

「ヤメロよ!? 渋い顔で言わないでくれる!? まだあんたら程、歳いってねーんだよ!?」

 

「二十一歳の高校三年生(笑)だもんな」

 

「ぶっ飛ばして良い!? ぶっ飛ばして良いよね!? 生徒の心のキズ抉って楽しいのか、未婚元総督!」

 

確かに今年で二十一だけども!

戸籍上はまだ十代なの!

こことっても重要だからね!?

 

弄ってくるおっさん共の手をはね除ける俺を見て、爆笑しているアセム。

 

「アハハッ♪ 良い反応を見せてくれるね。うんうん僕の期待通りだよ」

 

「何を期待してんだ!?」

 

この一連の流れ期待してたってか!

舐めてるの!?

バカなの!?

 

腹を抱えるアセムにツッコミが止まらない俺だが、他の皆は驚きのあまり呆然としている。

ヴァルス達ですら目を見開き、言葉を詰まらせていた。

さっきまでヴィーカの背で寝ていたベルも今は完全に目を覚ましてしまっている。

 

当然の反応だろう。

アセムはあの時、間違いなくこの世界から消えたのだから。

俺がこの手で滅ぼしたのだから――――。

 

「まだ決着はついていない。あなたはそう言いたいのね?」

 

俺の前に赤髪のお姉さん、イグニスが姿を見せる。

イグニスの静かな問いにアセムは笑む。

 

「そーいうことさ。勇者君達との戦いは終わった。だけどまだ残ってる。そう原初の女神、君との決着さ」

 

そう告げる奴の体を不気味なオーラが包み込む。 

イグニスは一歩前に出て、アセムと対峙する。

 

「来ると言うなら受けて立つわ。余程自信があるようだけど、勝てると思っているのかしら」

 

「そうだね。今の僕なら良い勝負になるんじゃないかな。上手くいけば勝っちゃうかもね」

 

アセムの言葉にイグニスは目を細める。

 

「良い度胸ね」

 

次の瞬間、重たい空気が俺達を襲った。

 

なんだ、この凄まじいプレッシャーは………!?

この熱量に、いつになく真剣な表情

イグニスのやつ、本気か!?

 

赤い炎を纏うイグニス。

彼女の腕に濃密なオーラが集まっていく。

アセムもまた腕にオーラを集中させ、戦闘体勢に入っていた。

 

こいつら、こんな狭いところでやり合う気か!

 

「待て、おまえら―――――」

 

ここで戦わせたら間違いなく、巻き込まれる!

なんとしてでもこいつらを止めないとヤバい!

 

無理矢理でも抑えつけようと、飛び出そうとする俺をよそに、イグニスとアセムは高らかに叫ぶ!

 

 

 

「「デュエルッッッッ!」」

 

 

………ん?

 

 

「まずは僕のターン! ツッコマナイトをツッコミ表示で召喚!」

 

「強力なカードを出してきたわね! なら、私はネームミスヒーローを召喚してあげるわ!」

 

「ほほう! それなら、今度はロストパイクイーン(貧乳女王)でどうかな!」

 

 

………なんか始まったんですけど。

腕にデッキディスク付けて戦い始めたんですけど。

なんか見覚えのあるメンツが召喚され始めたんですけど!

 

「おまえら、何モンスターズやってんだぁぁぁぁぁぁ!?」

 

轟く俺のツッコミ!

 

「フッ、決闘者(デュエリスト)の戦いにツッコミは無粋だよ、勇者君」

 

「違う! おまえらはただのバカ!」

 

「イッセー、これは神々の神聖なバトルなのよ?」

 

「違う! おまえらのはただのシリアス破壊劇場!」

 

なんなんだよ、もぉぉぉぉぉぉぉぉ!

一瞬、メッチャシリアスな雰囲気だしてたじゃん!

一色触発の空気だったじゃん!

触発したのバカ二人ってどういうこと!?

 

床を叩いて嘆く俺。

そんな俺の肩にアリスは優しく手を置き、

 

「ぶっちゃけ読めてたけどね、この展開」

 

なんてことを言いやがる!

警戒した俺がバカなの!?

 

小猫ちゃんが呟く。

 

「アスト・アーデ関係者にまともな人がいない説」

 

「違うよ!? 全員が全員こんなとは思わないで!?」

 

説得力ないけども!

俺の周りが特殊なだけで、ちゃんとした人いるから!

 

 

 

 

シリアス破壊神により場の空気が粉々にされた後、改めてアセムに目を向ける。

相変わらずのニコニコ顔でこちらの内を探るような目で見てくるのが腹立つ。

姿、仕草に表情。

どこからどう見てもあのアセムだ。

だが――――

 

アセムをじっと見たまま俺は口を開いた。

 

「おまえ………アセムじゃないな? 何者だ?」

 

思わぬ再開で驚きはした。

だが、落ち着いて気配を探ると僅かに違う。

少年の体の内側にあった、あの重たく濃密な気が感じられない。

それにじっくり観察して分かった。

目の前の少年はアセムどころか、人でも、ましてや神でもない。

 

俺の言葉に目の前のアセムは手を叩く。

 

「流石は勇者君。正解だよ。しっかし、良く分かったね? バレないように結構工夫してたんだけど」

 

「あれだけやり合ったら嫌でも覚えるさ」

 

こちとらどれだけ命削ったと思ってんだ。

あれだけ激しい戦いだったんだ、アセムの気配なんて完璧に覚えてる。

少しの変化ですら気づく自信があるぞ。

 

「なるほどねぇ。僕は魔法で作られたプログラム。つまりは偽物。君達を出迎えるためだけに生み出された存在さ」

 

ヴァルスが納得したようで、

 

「どうりで思考を読めないわけです。プログラムであれば私の能力は使えませんからね」

 

「そーいうこと♪」

 

ピンポーンと人差し指を立てて頷くアセム。

 

魔法で作られたプログラムね。

どうりで妙な気配がするわけだ。

こいつはいつぞやのロキみたく、禁術で自分のコピーを作ったというわけではないってことね。

 

アリスが訊ねる。

 

「プログラムなのは良いとして、なんでそんなものをここに残してるのよ?」

 

「そりゃあ、僕が死んだ後に君達がこの世界の調査に来るのは分かりきってたことだからねぇ。案内役がいた方が君達も助かるでしょ?」

 

「あんたにしては気が利いてるじゃない。また何か企んでるってことはないのよね?」

 

アリスの問いにアセムは手を上げて首を横に振った。

 

「ないない♪ 言ったでしょ、僕は魔法で作られた仮初めの存在。なんの力もなければ悪さをすることも出来ない。精々、ボケるだけさ」

 

「やめてくんない? これ以上、俺にツッコミさせようとするの」

 

こいつ、魔法で作られた存在とはいえ、アセムそのものじゃねーか!

そんなところまで再現しなくても良いんだよ!

 

アセムはそれとと付け加える。

 

「この僕はあくまで案内役。役目を果たせば消えるだけさ」

 

俺達の案内が済めば消える………か。

見ると、ヴィーカやベル、ラズルはどこか悲しげな表情を浮かべていた。

そりゃそうだ。

こいつらにとって、アセムは生みの親。

いくら偽物とはいえ、消えるなんていわれたら、寂しいよな。

 

ヴァルスだけは表情を変えずに話を進める。

 

「案内役については父上から事前に聞いていましたが、まさかこういう演出で来るとは思いませんでしたよ。しかし、その体はあまり長くは保たないのでは?」

 

ヴァルスの推察は当たりのようで、アセムはやれやれと息を吐く。

 

「この世界を作るのはもちろん、他にも色々、力と時間を相当かけてしまったからねぇ。こっちにはあんまり手を入れられなかったんだよ。この体は食玩についてるガムくらいに考えてくれたらいいさ」

 

「たとえが独特過ぎて伝わりません」

 

要するにこの案内役を作るのに時間も力も使えなかったってことでいいんだよな?

まぁ、これだけの世界を想像してたらそうなるか。

その後も俺達との戦いだってあったし、流石のアセムもそこまで余裕がなかったのだろう。

 

アセムは話を続ける。

 

「色々と言いたいこと聞きたいことはあるだろうけどね。まぁ、少し歩こうじゃないか」

 

 

 

 

先ほどの部屋を出て、石畳の廊下を進む。

壁はなく、外からの風が通り抜けていく。

 

アセムは風を楽しむように体を伸ばし、俺達に尋ねてきた。

 

「君達は異世界についてどれぐらい把握できているかな?」

 

「俺達がいる世界とは異なる次元にある世界。アストアーデのように異なる生物、神、そして技術・文化を持つ別次元の世界ってところか。世界によって法則も違うみたいだが、おまえさんが言うには五つあるってか?」

 

「僕が観測した時点ではね」

 

アザゼル先生の回答にアセムは頷く。

 

「異なる世界。それは次元の壁によって別たれた世界さ。これらはね、絶えず動いている」

 

「動いている?」

 

「そうそう。地球だって太陽を中心に動いているだろう? それと同じようにこの世界そのものも動いているのさ。どこを起点にしているのかは知らないけどね。ただ、君達の世界――――コードDとアスト・アーデはかなり近い位置にあるようだ」

 

「ほう? イッセーがアスト・アーデに召喚されたのは、次元の渦に呑み込まれたことが原因だったと思うが………世界間の距離が近いからってのも関係しているのか?」

 

「次元の渦というのは異なる世界が近づいた時に起きる現象さ。近づけば近づくほど次元の歪みが強くなり、次元の渦も強くなる。それこそ世界を繋ぐほどにね」

 

次元の渦は次元の狭間で極希に生じる現象。

以前、アザゼル先生から話を聞いた時には発生原因を掴むことはおろか、観測も生じた後でしか出来なかったという。

俺がアスト・アーデに飛ばされたのは二つの世界が最も近づいたタイミングだったのか。

 

今度は俺がアセムに尋ねた。

 

「昔、調べた文献………まぁ、あれもおまえが仕組んだんだろうけど。世界にある『指向性』ってのは結局どういうことだ? 次元の渦ってのは世界が近づいた時に起きるんだろ? 俺達、そんなのガン無視で世界渡ってるんだけど」

 

「あー、そんなこともしたっけね。あの情報がないと君、帰れなかったでしょ?」

 

「まぁな」

 

「『指向性』っていうのは簡単にいうと、元の場所に戻る力のことさ。美羽ちゃんやアリスちゃんは君達の世界コードDにおいては異物だ。それ故に元の世界に戻ろうとする力が作用するのさ。『指向性』は万物にある。大なり小なりね。なんだったら、その辺の石ころにだってある」

 

アザゼル先生が言う。

 

「その特性を持っていると世界間を繋ぐ経路(パス)を作ることができ、次元の渦なしに向こうの世界に渡ることができる。おまえが俺に寄越した資料にもあったな。そして、その経路を利用して次元の渦を安定させるだったか」

 

「そうそう♪ アザゼル君のことだから、既に活用してくれたよね?」

 

そういや、アセムの理論を基にアザゼル先生がアスト・アーデに渡る装置を作ってたっけ。

父さんと母さんもそれで向こうの世界に渡っていたしね。

 

流石にあの装置を使うのは身内だけに限られる。

あれを開示すれば、異世界に興味を持つ者達がひっきりなしに向こうに行くだろう。

顔を知られている俺達はともかく、それは問題になる。

 

美羽が手をあげる。

 

「質問いいかな?」

 

「フッフッフッ、このアセム大先生になんでも聞いてきなよ」

 

「アハハ………じゃあ、えーと、ボク達っていつか勝手にアスト・アーデに戻ったりするのかな?」

 

元の場所に戻ろうとする力というなら、そういうことも考えられるのか。

通学中に世界渡ったり、買い物中に世界渡ったり………。

想像するだけで大惨事だな。

 

しかし、アセムはカラカラと笑って手を振った。

 

「世界を渡るには確かな『意志』が必要になるからね。いつの間にか美羽ちゃんがあちらの世界に飛ばされて、向こうですっぽんぽんになってる、なんてことはないよ」

 

「ホントだな!? ホントなんだな!?」

 

聞き捨てならない情報に俺は目を見開く。

 

俺達がアスト・アーデ行く時は服にも気を通すようにしてたから問題なかったけど、通し忘れてた場合は生まれたままの姿で向こうの世界に飛ばされることになる。

実際、初めて皆を連れてアスト・アーデに行った時には何人か裸になるという事故が起きていた。

 

不意打ちの世界転移で美羽がすっぽんぽんになるなんて………そんなのお兄ちゃんは許しません!

許しませんよ!

 

「大丈夫だよ。多分、きっと、恐らくね」

 

「そこは断言してくれよ!?」

 

 




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