ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 リターンズ   作:ヴァルナル

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10話 管理職って大変だよね

 

『門』の装置を設置する作業が終わり、モーリスのおっさんの料理に舌鼓を打っていた時のことだ。

ゾルがおっさんにこんなことを尋ねていた。

 

「モーリス様。この度は『鎮魂祭』に参加されるのですか?」

 

「その予定だが………四日後だったな?」

 

「ええ」

 

「なら問題なさそうだな」

 

二人のやり取りにリアスが言う。

 

「『鎮魂祭』というのは例の?」

 

「そうだ。前に少し話したと思うが、新しく建設された都市――――『霊和都市ゼレン』。そこで開催される『鎮魂祭』に行く」

 

霊和都市ゼレン。

それは人族と魔族、それぞれの領域の境にある都市だ。

ゼレンは和平が成立した後に建設された、出来立てホヤホヤの町になる。

ゼレンはかつての戦争で命を落とした人達を弔うために建設された。

 

おっさんが言う。

 

「おまえ達の知っての通り、人族と魔族の戦は長いものでな。その中で命を落とした奴は多い。家族の元に返すことが出来た奴もいるが、全てを返せた訳じゃない。身元不明の者、行方不明になった者ってのは数えきれねぇ。そういう奴らを弔うために、ゼレンは造られたんだよ。今回はそこで開催される『鎮魂祭』に出席する」

 

鎮魂祭は各国の人々が集まり、亡くなった人達に祈りを捧げる催しだ。

自由参加なので、強制ではないけど、俺達は出席しなきゃならないと思っている。

あの戦いの当事者として。

 

と言っても、実は今回、出席できるかは微妙なところだったんだよね。

境域世界の調査だったり、装置の設置があったり。

更にはレーティングゲームの試合はあるわ、おっぱいドラゴンのイベントもあるわで………どれだけ予定詰まってるの俺!?

 

まぁ、前者二つは予定通り進んだし、後者はうちの優秀なマネージャーが調整してくれたんでなんとかなったけど。

レイヴェルには改めてお礼をしないとだな。

 

リアスが俺に訊いてくる。

 

「美羽の里帰りは祭が終わった後にするのかしら?」

 

「いや、祭自体は十日ほどあるみたいなんで、ある程度見て回ったらゲイルペインに行くってさ」

 

「せっかくなのだから、もう少しゆっくりしてと良いと思うのだけど」

 

「俺もそう思うんだけどね」

 

美羽も貴重な時間を有効に使いたいんだろう。

本人がやる気になってるので、俺もあまりモチベーションが下がるようなことは言えないが、無理だけはしないようにしてほしいよ。

 

『それはイッセーもなんだけどね』

 

イグニス姉さんや、それは言わないでくれる?

全く反論できないから。

 

『美羽ちゃんの場合、シリウスのこれまでを知れるかもって楽しみにしているところもあると思うわよ?』

 

確かにそんな雰囲気はあるか。

うーん、それなら余計に俺が口を挟むのもなぁ………。

 

うん。

美羽は俺なんかより、よっぽどしっかりしてる。

オーバーワークになるようなことはしないだろう。

 

 

 

 

そんなこんなで四日後。

俺達は『門』を潜り、再びアスト・アーデを訪れていた。

おっさんの邸宅に装置を設置したこともあり、今回は直接のオーディリア城下町入りだ。

町は夜が明けたばかりの早朝で、朝日がオーディリアの町を照らし始めている。

 

「へぇ、ここが異世界………。なんか、ほんとにファンタジーって感じだな」

 

「先輩、悪魔の私達がそれ言っちゃうのはどうなんでしょう」

 

「これがおっぱいドラゴンが活躍した町なんスねぇ。ファンのあっしからすれば聖地も同然っスよ」

 

などと町を見渡しながら興味深げに口にするのはシトリー眷属の面々だ。

今回、俺の眷属はもちろんのこと、以前にも訪れたことがあるグレモリー眷属にイリナとレイナ。

加えてシトリー眷属の面々もアスト・アーデに来ることになった。

 

『D×D』はテロ対策チームとして、最前線で戦ってきたが、今後は異世界関連でも率先して動くことになる。

これまでは俺やリアス達が筆頭に動いてきたが、他のメンバー――――シトリー眷属やヴァーリチーム、デュリオ率いる天使達も深く関わることになるだろう。

そのため、今回はシトリー眷属もこの世界を見て回ることになった。

 

………が、実のところ、ちょっとした慰安旅行も兼ねてる。

ここのところ、レーティングゲームや悪魔の仕事でお互いに忙しい日々が続いていたからな。

シトリー眷属にもたまには羽を伸ばしてもらおうと思って声をかけた次第だ。

早速、楽しんでもらっているようだ。

 

他のメンバーにも声はかけたんだけど、今回は見送りとのこと。

こっちに来る機会もあるだろうし、その時にってことで。

 

さて、今から向かうのは人族の領域と魔族の領域の境にある都市ゼレン。

普通に向かうなら馬車で数日かかるのだが、今回は違う。

 

目の前に佇む石で作られた巨大な門を見上げて、アザゼル先生が言う。

 

「転移の門。使うのはロスウォードの一件以来か。確か非常時にしか使用許可が下りないんじゃなかったか?」

 

「本来はな。今回は鎮魂祭で混雑が見込まれるってことで特例だ。他国もゼレンに転移の門を開いてるだろうよ。ま、それが正解だわな」

 

モーリスのおっさんが辺りを見渡して言う。

 

朝早いというのに、転移の門があるこの広場は多くの人で埋め尽くされている。

城の兵士達が列の整理にあたってはいるが、とんでもない行列だ。

この全員が鎮魂祭を目的としている。

馬車じゃとてもじゃないけど足りないな。

 

そういう俺達は広場を見下ろすような形で、広場とは別の場所にいたりする。

リアスがおっさんに問う。

 

「私達は並ばなくて良いの?」

 

「そこはコネってやつだ」

 

ニヤリと笑みを浮かべるおっさん。

なんて悪い顔をしてるんだか、このおっさんは。

 

 

「流石に元王女様と前騎士団長殿をあの列に加えるわけにはいきませんので。というより、あなた方のような有名人が並べば、一般人は祭どころではなくなります」

 

不意に後ろから声をかけられた。

振り替えれば、そこには背の高い女性がいて、長い茶髪を靡かせながらこちらに歩いてきていた。

その佇まいには隙がなく、その歩き方を見れば、相当な実力者であることが分かる。

 

おっさんは女性に手を振った。

 

「よう。今回は助かったぜ、アーデルハイド・シルバス騎士団長殿」

 

アーデルハイドと呼ばれた女性はやれやれと息を吐く。

 

「あなたの頼みを断るわけにはいかないでしょう。しかも、あのような話(・・・・・・)まで聞かされたのですから。ただ、あなたから騎士団長と呼ばれるのは妙な気分です」

 

「へへっ、いいじゃねぇか。立派に騎士団長やれてるよ。昔からおまえは………っと、いけねぇ。まずは紹介が先か。おまえ達、こいつが現オーディリア国騎士団長の――――」

 

おっさんの言葉に続くように、女性は前に出る。

胸に手を当て、リアス達に名乗った。

 

「お初にお目にかかります。私はアーデルハイド・シルバス。我が国の騎士団を任されている者です」

 

「騎士団長というと、モーリスの?」

 

「ええ。後任を任されて………いえ、押し付けられました」

 

「訂正したのだけど? 押し付けられたって言ったんだけど? ちょっと、モーリス?」

 

苦い顔をするアーデルハイドさん。

 

あー………うん。

俺は事情を知ってるけど、完全に押し付けられていましたね。

おっさんは「おまえならやれる」だの「早いうちに経験を詰んだ方がいい」だの言ってたけど、どう見ても自分が早く引退したくて、押し付けたようにしか見えなかった。

 

おっさんはフッと笑んだ。

手摺にもたれかかり、昇る朝日を眺めて、静かに語りだした。

 

「いいか、リアス。騎士団長ってのは謂わば、管理職だ。管理職ってのはな、とんでもなく仕事が多い。責任も増える。国の防衛体制を考えながら、部下の指導だの、稽古だのもやり、更には書類仕事もやらなきゃならねぇ。そのくせ残業はつかないし、上層部のジジイ共からあーでもないこーでもないと言われ続けるんだ」

 

「それはまぁ、そうでしょうけど」

 

「『現場のこと知らんのなら黙ってろや、クソジジイ。ぶっ飛ばすぞ』って何回思って、何回言ったと思う?」

 

「言ったの!? それ言ったの!?」

 

「上からごり押してくるジジイを何発殴り飛ばしたと思う?」

 

「殴ったの!?」

 

「空高く飛んでいくあの野郎の姿を思い出すとマジ笑える」

 

「本当にぶっ飛ばしたんだ!?」

 

アリスが言う。

 

「モーリスと言い合ってた一人が不正行為をしていたのよ。その人を捕縛しようって時に、抵抗したから仕方がないわね」

 

「そういう背景があったの。それならまだ納得も――――」

 

「でも、すっごくイキイキしていたって聞いたけどね」

 

「ガッツリ私情挟んでる!?」

 

リアスのツッコミをスルーして、おっさんは続けた。

その口調はとても爽やかなもので、

 

「とにかくだ。管理職ってのはストレスが多い。そんなだったら、早く後任に譲りたいじゃん? ストレスフリーな職場に移りたいじゃん?」

 

「そんな理由で後を継がされた私の気持ちは!? あなた、もう少し任期あったでしょう!?」

 

「とにかく羽を伸ばしたかったんだよ。さよなら、面倒な役職ライフ。こんにちわ、俺のフリーダムライフ(早いうちから経験を積めば、おまえのためにもなるだろう? それに、手塩にかけて育てた後任の晴れ姿を見たかったのさ、フッ)」

 

「逆ぅ! 心の声と建前逆ぅ!」

 

「これはな、俺のおまえに対する信頼の証なんだぜ?」

 

「このやり取りで、私のあなたへの信頼は地に堕ちそうです」

 

なにこの会話!?

騎士団長ってもっと名誉ある職務だと思ってたよ!

騎士団長の押し付け合いとか初めて見たんですけど!

というか、うちの眷属はストレスフリーな職場なんですね!

確かにやりたい放題やってるもんな!

レーティングゲームとか、誰よりも楽しんでるもんな!

楽しんでるようで何よりだよ、コンチクショウ!?

 

アザゼル先生はまるで自分のことのように深く、何度も頷いていた。

 

「分かるわー。役職持つとホンット大変なんだぞ、おまえら」

 

「「あなたが! それを! 言いますか!」」

 

即刻、レイナとロセからツッコミを食らっていたが。

普段から何かと押し付けられてる側だもんな。

 

モーリスのおっさんが言う。

 

「騎士団の連中も美人騎士団長爆誕でヤル気に満ちてるだろう? おまえに罵られれば、あいつらも元気になるって。知らんけど」

 

「そんな理由で頑張れるなら、毎日の稽古を千倍にしてくれるわ」

 

騎士団の連中って、そんなM気質だっけ………。

 

アリスが皆に言う。

 

「アーデルハイドは私より強いわ。純粋な槍術の勝負なら勝ったことないもの」

 

「「「―――――ッ!」」」

 

アリスの情報にリアス達は目を見開いた。

 

アーデルハイド・シルバス。

またの名を『《炎槍》のアーデルハイド』。

その名が示す通り、彼女は槍術と炎の魔力を組み合わせての戦闘を得意とする。

 

特筆すべきはその槍の腕前。

魔力なし、純粋な技の勝負なら他を圧倒できる。

それこそ《白雷姫》と呼ばれたアリスですら適わないほどに。

モーリスのおっさんを除けば、騎士団最強だな。

 

しかし、アーデルハイドさんは首を横に振った。

 

「何を仰いますか。魔力込みなら、互角だったでしょうに。………いえ、少し見ない内に更に腕を上げたご様子。今となっては敵わないかもしれません」

 

「とか言いつつ、負ける気もないくせに」

 

「もちろんですとも」

 

不敵な笑みを見せる二人。

そういや、以前も模擬戦でやりあってたっけ。

同じ槍使いだからか、普段よりも熱くなってたのを覚えてるよ。

 

「こちらも是非手合わせをお願いしたいね」

 

「機会があれば、頼んでみようかな?」

 

グレモリー眷属の『騎士』二人もこの様子だ。

二人の反応にアーデルハイドさんも「よろこんで」と微笑みを返していた。

 

アーデルハイドさんが俺達に言う。

 

「転移の門が繋がった後、皆様には議員の後に続く形で潜っていただきます。ただ………」

 

アーデルハイドさんは俺達を見渡す。

視線を皆の足元から上へと移し、顎に手を当てて何やら考え込んでいる。

 

そんな彼女にアリスは首を傾げる。

 

「どうしたの?」

 

「大したことではないのですが………。身に付けているのはイッセー殿の世界の衣装かと思いますが、ゼレンでは少々目立つかと」

 

「あー………やっぱり?」

 

苦笑するアリス。

 

皆が着ているのは各々の私服なのだが、やっぱりこの世界だと少し浮いて見えるらしい。

以前、皆と来た時はロスウォードのこともあり、ほとんどが調査だったり、戦闘だったりで人目につく機会も少なかったから気にすることもなかったんだけどね。

 

今回はメンバーも多いし、大勢の人が訪れる場所に行く。

流石に目立つか。

 

「皆様に合う衣装を用意させましょう」

 

 

 

 

それから少しして、俺達はアーデルハイドさんが用意してくれた衣装にチェンジした。

こちらの服装は中世ヨーロッパの雰囲気に近い。

男性陣+ゼノヴィアは動きやすさを重視したチュニックとズボン、ゼノヴィア以外の女性陣は装飾の少ないシンプルなワンピースだ。

ザ・庶民的な衣装だが、ここは魔法が一般にまで広まっている世界。

俺達の世界にある衣装にも魔法的な効果が付与されており、生地はこちらの方がしっかりしている。

着心地も良い。

 

というか………良いな、これ。

普通の町娘スタイルなんだが、これもまた皆に良く似合っている。

 

アーシアがくるりと回って俺に見せてくる。

 

「似合うでしょうか?」

 

「バッチリだぞ、アーシア!」

 

麦わら帽子まで被ってるせいか、これ以上ないくらいに似合っている!

可愛いぞ、アーシア!

 

その隣では、ゼノヴィアが軽く体を動かしていて、

 

「かなり動きやすいね。これならいざ戦闘になっても問題なさそうだ」

 

などと言って、体を伸ばしているが………おっぱいが強調されてだな。

男装の中にもちょっと、エロを感じさせてくれるじゃないか!

そんな流れじゃなかったのに!

 

つーか、戦闘とかしないからね?

おまえが言うと、なんかフラグになりそうで怖いんだけど。

 

「多少激しい動きをしても問題ありませんよ。見た目は一般的ですが、付与されてる魔法のレベルは高いものを選びましたので」

 

と、アーデルハイドさんが解説をくれる。

 

美羽がワンピースの生地に触れながら言う。

 

「これにかけられてる魔法って、護衛対象に着せるようなレベルですよね?」

 

「皆様は重要な客人なのですから当然でしょう。――――異世界からの使者様方。今後のことを考えると、あなた方は各国の上層部よりも重要な立ち位置になってくるはずですから」

 

そう言って、アーデルハイドさんはモーリスのおっさんへと視線を向ける。

先程の「あのような話」ってのは異世界間の同盟のことか。

多分、装置の設置作業をしている間に話を通しておいたんだろう。

 

引退したとは言え、元騎士団長だ。

後任のアーデルハイドさんがその話を信用しないはずもないし、国の守りを任されている身からすれば、こういう対応にもなるか。

 

転移の門が虹色の輝きを放ち始めた。

どうやら、目的地と繋がったらしい。

 

アーデルハイドさんは言う。

 

「色々と話すこともあるでしょう。ですが、まずは此度の鎮魂祭を楽しんでください」

 

そうして、俺達はアーデルハイドさんに見送られる形で転移の門を潜った――――。

 

 

 

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