ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 リターンズ   作:ヴァルナル

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13話 鎮魂祭

 

ルシアがツンデレなのは良く分かった。

アリスと違いツンが大半を占めるツンデレだが、子供達の絵を大切にする、そんな絶妙なデレ具合が彼からは感じ取れる。

 

「無礼者め。初対面の者に思うことか」

 

「初対面の者にいきなり無礼かましたの、おまえだからね?」

 

いきなりプレッシャー向けてくるわ、腑抜け顔なんて言ってくれるわ。

散々無礼かましてくれたよね?

 

「誰がツンデレよ」

 

「そうだよ、お兄さん。お姉ちゃんはツンデレデレなんだよ?」

 

「デレ一個多いし!」

 

うちのアリスさんは相変わらずデレが大半を占めるツンデレだ。

可愛いのでよし!

 

モーリスのおっさんが言う。

 

「まぁ、おまえらがツンデレなのは置いといてだ。ここへの用は済んだ。悪いが、上役連中への案内も任せて良いか?」

 

「承知した。それもこちらで対応しよう」

 

「すまんな。何かあれば俺の名を出してもらって良い。そしたら、連中も納得するだろうからな」

 

おっさんはそう告げる。

うーん、改めて《剣聖》たるおっさんの威光を思い知ることになりそうだ。

最近じゃ、チートおじさんとか言われて、レーティングゲームでハッスルしてるところしか見てなかったけど、こういう場面での影響力も俺が理解している以上に大きいらしい。

 

美羽がルシアに尋ねた。

 

「鎮魂祭の開会式があるんだよね? いつからやるの?」

 

「正午に慰霊地区で執り行います。式の後は各々、このゼレンを見て回っていただければと。商業地区に限らず、学園地区、居住区で催しがあると聞いております。姫にも楽しんでいただけるかと」

 

「ルシアは回らないの?」

 

「私は市長としての職務があります。ここにいても街中の様子は視えています(・・・・・・)ので、お気遣いは無用です」

 

「………そっか。市長だもん、忙しいよね。でも、久しぶりに会ったんだし、晩御飯くらいは一緒にどうかな? お兄ちゃん達も良いよね?」

 

美羽に振られ、俺達は頷いた。

 

数年振りに会ったんだ。

話したいこともあるだろうし、良いだろう。

俺も二人の話は気になるしね。

 

ルシアは言う。

 

「承知しました。それではまた合流するとしましょう」

 

「うん!」

 

嬉しそうに笑顔を見せる美羽だった。

 

その後、異世界に関わる話をルシアに改めて伝え、今後の動きについて少しばかり話し合った。

現在のルシアの立場は魔族側と人族側の間に位置する。

よって、この先の異世界関連の協議はこのゼレンで開かれることになるだろう。

ルシアにはその取りまとめをお願いすることになる。

もちろん、俺達も動ける範囲で協力するけどね。

 

話し合いが終わり、退室しようとした時のこと。

 

「待て、勇者」

 

俺だけが呼び止められた。

何事かと振り返ると、ルシアは真っ直ぐに俺を見てきた。

 

「なんだよ?」

 

「貴様には感謝している」

 

「感謝?」

 

恨みなら分かるけど、感謝ってどういうことだ?

俺が怪訝に思っていると、ルシアは言った。

 

「貴様がシリウス様の意思を継いでくれたこと。姫をここまで守り抜いてきてくれたことにだ。あのような姫の笑顔を見たのはいつ以来か」

 

「………」

 

魔王の右腕からこんな言葉が聞けるとは思わなかったな。

出会った時に命を狙われてもおかしくない相手なんだが………。

まさかと思うけど、俺に対しての思うところってそういうこと?

だったら、完璧なツンデレだな。

 

俺はニッと笑む。

 

「最高に可愛いだろ。自慢の妹だ」

 

「ふん。調子に乗るな馬鹿者め」

 

そう言うとルシアはフッと笑みを見せた。

 

 

 

 

[木場 side]

 

 

鎮魂祭――――それは長き争いで命を落とした方々に祈りを捧げる祭典。

人族や魔族といった種族も、貴族や町民などの身分も関係なく、全ての人がただ祈りを捧げるという。

 

庁舎を出た僕達一行はこのゼレンの北地区にあるという慰霊地区に向かった。

北地区に進めば進むほど、道行く人は増えていき、いずれも同じ方向に進んでいる。

 

慰霊地区に入ると街の雰囲気が少し変わる。

建造物が減り、草花が通路の両脇に咲き誇っており、まるでのどかな花畑のようだ。

その通路を進んでいくと、あるものが見える。

高さが数メートルはある巨大な石碑だ。

艶のある黒い石で造られたそれからは、どこか神聖な力を感じとることが出来る。

 

リーシャさんが言う。

 

「ここに眠る方々を祀るための石碑です。精霊石という浄化の力を持った特殊な石を加工して造られているんですよ。皆さんの世界で言うと、『聖なる力を持った石』と言うと分かりやすいでしょうか」

 

聖なる力と聞いてイリナが言う。

 

「確かに聖なる力に似た波動を感じるわ」

 

「はい。あの石碑を見ていると祈りたくなりますね」

 

「だが、あの石碑に近付くと悪魔の私達はダメージを受けそうだ」

 

と、アーシアさんとゼノヴィアが続く。

 

あの石碑から感じる聖なる波動は聖剣や聖槍ほどの脅威は感じないが、近付けば近付くほど悪寒を感じてしまう。

耐えられないという訳ではないけど、あまり寄りたいとは思わない。

 

ワルキュリアさんが言う。

 

「精霊石は魔除けとしても使用され、持つと災厄から身を守ることができると言われております」

 

「俺達はほとんどアウトだな」

 

「悪魔に転生してからは持てなくなりましたしね。ちなみに精霊石はかなり希少なもので、大きくても掌に収まるものがほとんどです。あれほどのものを見たのは私も初めてですね」

 

石碑の前には演説台のようなもの、更にその前にはズラリと席が並べられており、既に大勢の人達が着席していた。

ここも老若男女、種族を問わずだ。

僕達も空いている席を見つけ、そこに座った。

 

モーリスさんが言う。

 

「ここの映像はこのゼレンの街中はもちろん、各国にも放送されているんだよ」

 

「ってことは、アーデルハイドさんも今頃見てるのかな?」

 

「多分な」

 

今日という日は、このアスト・アーデに住まう人々にとって記念すべき日だ。

この場所に来れなかった人達のために、そのような措置が取られたのだろう。

 

それから十分ほど待っただろうか。

がやがやしていた空気がピタリと止まる。

見れば、鷹のような目をした男性――――ルシアさんが壇上に上がっていた。

開会式を始めるようだ。

皆の視線がルシアさんへと向けられる。

 

「皆、今日はよく集まってくれた。今日という日を、皆と迎えられることを心より嬉しく思う」

 

とても静かな口調。

でも、少し離れた位置にいる僕達にもはっきり聞こえるほど澄んだ声だった。

 

「今、我らは数百年にもわたる悲しみの歴史、二種族間の長きにわたる戦争が終わりを告げた、この記念すべき日に立っている。この戦争において、故郷を守るため、愛する者を守るため、あるいは、ただ生きるために散っていった全ての命に、深く哀悼の誠を捧げよう」

 

ルシアさんは目を閉じ、黙祷を捧げた。

それに続いて、この場の皆が目を瞑った。

 

「敵味方の区別なく、彼らは皆、誰かの親であり、子であり、愛する人だった。彼らの流した血と涙、彼らが抱いた恐怖と憎悪、彼らが最期に感じた無念の痛みは、種族が違えど、その重さにおいて何ら変わりはなかっただろう」

 

 

――――なぜ、私は死ななければならなかったのか

 

――――私の愛する家族は、今、どうしているだろうか

 

――――最後に一目だけでも、あの人に………

 

そんな彼らの想いが伝わってくるようだった。

 

「この大地には彼らの想いが、魂が染み込んでいる。彼らが返ることはもうない。我らが彼らに対して出来るのはただ、彼らを鎮め、誓うことしか叶わないのだ」

 

ルシアさんは目を開き、この場に集う人達を見渡す。

一人一人にその想いを伝えるように。

 

「――――過去は変えられん。どれほど後悔しようとも、どれだけ涙を流そうとも時は戻らない。我らの成すべきこと、それはこの先の未来をどう生きるかだ。これからは、互いを隔てていた壁を取り払い、手を取り合わねばならない」

 

ルシアさんは諭すように言葉を続ける。

 

「憎しみを忘れろとは言わない。許せとも私は言わない。ただ、分かってほしい。相手もまた自分と同じ痛みを抱いていることを」

 

近くにいた人族と魔族の人達が互いの顔を見合っていた。

二人とも年配の女性だった。

恐らく、二人とも大切な人を失くしたのだろう。

その眼は涙で溢れていた。

二人は互いを労るように、そっと手を握った。

 

「この終結は単なる『戦いの終わり』で終わらせてはならないのだ―――――」

 

ルシアさんは石碑に向き合い、その想いを遠くにまで届けるように紡いだ。

 

「偉大なる魂達よ、尊き魂達よ! 今日、ここで我らは誓う! 二度とあの悲劇は繰り返さぬと! かつて、我らの祖は互いを想い、安息の世を築いていたと言う。今一度、その世を作る! 我らが作る! そして、我らが子に、孫に、未来を繋ぐ!」

 

言葉がこの広い空間に響いていく。

それはルシアさんの、過去の時代を生きた人達の想いそのもの。

ルシアさんは一呼吸置くと、語りかけるような言う。

 

「もう血は流れぬ。流させぬ。故にその御霊、どうか安らかに―――――」

 

その言葉に続くように、ゴーン、ゴーンと鐘の音が鳴る。

聞いていると胸が暖かくなる音色だ。

これにも何か特殊な術式が組み込まれているのだろう。

 

「………やっと見送れたかな」

 

そう呟いたのはイッセー君だった。

見ると、彼の眼には薄く涙が浮かび上がっていて、込み上げる感情を抑え込んでいるようにも見えた。

 

「昨日話してた奴が、今日は帰って来なかったなんてことがよくあってさ。あの頃はろくに弔うことも出来なかった。けど、ようやくだ。ようやく、ちゃんと弔うことが出来たよ。皆にもう心配すんなって伝えられた」

 

モーリスさんがイッセー君の頭を撫でた。

 

「俺もだ。長かった………本当に長かった。けどな、イッセー。分かってるな?」

 

「もちろん。これから、だろ?」

 

イッセー君は空を見上げて言った。

 

「約束したからな。未来を守るって。この世界も、俺達の世界も全部な。次元ねじ曲げても、世界の法則ぶっ壊してでも必ず」

 

美羽さんがイッセー君の手を取った。

 

「ボク達も一緒に、だよ?」

 

微笑む美羽さんにイッセー君は強く頷いた。

 

「もちろん。俺一人で、なんてカッコつけたことは言わないよ。美羽の、皆の力が必要なんだ」

 

「当たり前でしょ」

 

「ええ。そんなの言われなくても、私達はあなたと行くわ、イッセー」

 

アリスさんに続き、リアス姉さんも答えた。

 

そうさ、イッセー君。

僕達はどこまでも共に戦うさ。

君が僕達と戦ってくれるように、どこまでもね。

 

鳴り続ける鐘の音がアスト・アーデに新たな時代の到来を告げていた―――――。

 

 




珍しくシリアスオンリー回でした
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