知られざる英雄たちの過去。これはそのホンの一端。

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6年ぶりにちょい修正しました。


もしも生前に彼らにも理解者がいたら。

──────人理継続保障機関フィニス・カルデアにて

 

 

 

 

む、どうしたマスター。こんな時間に。もしや小腹でも空いたか?いかんぞ、夜食はあまり体に良くない。特に君は女の子なのだから、そういう生活リズムを崩すような真似はよしたまえ。

 

違う?そうか、それは失礼。それで、用件は何だね?

 

ふむ。英霊のことをもっとよく理解したい。そのための面談がしたい、というわけか。

何も私のところに来なくても、他にも候補はいるのではないかね?

 

あのランサーなど、喜んで自分の武勇を語ってくれるだろうよ。何?そうか。もう聞いたか。だいたい私は無銘、それに正規の英霊ではないと以前にも言っただろう?君が期待するような話など、ありはせんよ。もしそんなに口を割りたいのなら、令呪を切って···ってまてまて待て!本当に令呪を切ろうとするものがあるか!たわけ!

 

やはり前々から思ってはいたが、やはり君は頑固者だな。まるで昔の···いや。なんでもない。

 

 

 

·············はぁ、わかった。わかったよマスター、私の負け、降参だ。待っていろ、今温かい飲み物を持ってこよう。

 

さて、では話すとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある一人の少年の話をしよう。彼は昔、幼い頃に命を落としかけた。だが幸運にも彼は一人の男に助けられ、身寄りがなくなった少年は、その男に引き取られた。そして少年はその男に憧れ、その男のように成りたいと思うようになった。

 

月明かりのもと、男とその少年は互いに約束をかわす。いや、互いに、というのは語弊があるな。ある意味呪いといってもいい。少年は男に誓った。その男が目指していたもの、『正義の味方』になる、という夢を代わりに引き継ぐことを。

 

そして少年は成長して青年となり、夢を叶えるべく世界に飛び出していった。

 

彼を想う家族や友人の、いっさいがっさいを捨て置いて。

 

そして。世界中を放浪していたある日、彼はある一人の男に出会った。

 

 

 

 

 

その男と出会ったのは、ある意味運命だったのかも知れない。

第五次聖杯戦争の夜ほどの鮮烈さは皆無だったが、確かに私にとっては意味があった。

 

まだ私が俺であった頃。借り物の理想を追いかけ、ただひたすらにそれだけを求めて走り続けていた時。

 

出会ったきっかけは、はて、何だったかな。

セイバーの時が強烈過ぎて、あまり印象に残っていないな。

そんなことを言ったら、アイツはさぞかし嘆くんだろうな。

 

─────おいおいおいおい士郎さん!?いくらなんでも酷くない?アレか、やっぱり男だからダメなのか!?ちっきしょー!美少女でなくてすいませんでしたねぇ!

 

なんて。いかにもアイツが言いそうなことだ。いや、絶対に言うな。間違いない。

 

何だ?マスター。その微笑ましいようなものを見るような顔は。何?私が笑っていたから?冗談はよしたまえ。

 

んんっ!話が逸れたな。

 

ああそうだ、思い出したよ。あれは以前中東の方に滞在していた時だった。

 

とある魔術師のミスにより爆発的に発生した食屍鬼(グール)が原因で、街一つが滅んだ時だ。

 

当時の私は当然己の正義に従って、その街に侵入した。

 

とある母親から、娘の救助を懇願されたためだ。

それに応えることは正義の味方として当然だと、正しいことだと思っていた。

 

何?それは正しくなかったのか、だと?

いや、確かに今でもそれが間違っていたとは思ってはおらんよ。

 

ただ、そうだな。正しいだけで、普通の人間としては間違っていた、らしい。

ああ、言われたのだよ。その時に出会ったアイツに、な。

 

彼は私が来る前からその街にいた。どうやらそこに住んでいたようだ。

私が街に入ってすぐに彼に会えたのは幸運だった。

なにせ、その街に住んでいたのだから当然地の利がある。

つまり、彼が案内役を買って出てくれたわけだ。

その時の私は彼にすら早く逃げるように言っていたのだから笑える。

彼にまるで知らない街でどうやってたった一人の子供を見つけるつもりだ、と指摘されるまでしらみ潰しに探そうとしていたわけだからな。

 

そのあとどうなったか、だと?

特に語るべき事もないな。慣れない二人組で行動したせいか、何度か死にかけることはあったものの、なんとか無事にその娘を保護し、母親のもとに送り届けたよ。

 

そう、ここまでなら別にいつもと変わらなかった。

泣いている誰かを助ける。それは過去の俺にとっての日常だったから。

 

問題はこのあとだ。その助けた娘の母親から差し出されたお礼を私が受け取らなかった時。

街で出会ったもう一人の男がまるでありえないものを見るような目をしていた。

 

怒ったか、だと?いいや。もうその頃には、そんな視線にも慣れてしまっていてな。

 

最初─────────故郷を飛び出した直後────はなかなかにしんどかったがな。

 

誰にも理解を得られず、最初は友好的に接していた相手も次第に何か得たいの知れないものを見るような目で私を見て、最後には離れていった。

 

偽善者、と罵られたこともある。何が目的なんだ、と怯えたような顔をした男もいたな。

 

当時の私はその意味がわからなかった。

なぜ正しい事をして、あのような感情を向けられるのか全く理解できなかった。

まったく、つくづく昔の自分が憎くなってくるな。あの頃は本当に未熟者だった。

 

さらに悪かったのは、それに慣れて考えるのをやめてしまったことだろう。

 

思えば、傲っていたのかも知れないな。

あの過酷な聖杯戦争を勝ち抜き、魔術師としても成長を遂げた私は、無意識に自分の事を特別視していたのだろう。

 

自分はこの人達一般人とは違う。だから理解されなくても仕方がない。もとより、感謝や理解なんか要らない。ただただ、正義の味方になりたい。

 

そんなわけで、その男の視線にも私は特に何の感慨も抱くことはなかった。

 

いや、強いて言うなら少しだけ意外だな、とは思っていたな。

 

少なくとも出会ってすぐにそんな顔をされたのは珍しかったしな。

 

ただ、私が見誤っていたのは、彼もまた普通の人間ではなかったことだ。

いや、正しくは今まで私が出会ってきたなかでこれまで見なかったタイプの人間といった方がいいか。

 

それでその後に一悶着あってね。思えばそれが、私にとっての第三のターニングポイントだったのかもしれんな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、今日はここまでだな。もう夜も遅い。

明日は確か修練場の周回があったはずだろう?早く寝ないと体が持たんぞ。

 

えぇーけちぃとぶうたれるマスターをマイルームに押し込み、ふと思う。

そういえばマスターにというか、誰かに私自身の過去の話などしたことはなかったな。だからだろうか。

自分の過去を他人に話したことで、少し客観的な見方が生まれたらしい。しかし、己の過去を客観的に見るのは、なかなかにクるものがあるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

なるほど、今でもしみじみと彼のありがたみが分かる。

かの英雄王も大切にするわけだ。己の理解者というのはそれほどに貴重なのだ。

 

特に英雄といった人種ほど、理解者などというものに縁がない者もいないだろう。基本的に彼らは一般人とは物の見方や、価値観が違いすぎるし、もはや別の人種と言っても過言ではないだろう。英雄というのは、えてしてそういうものだ。

といっても、結局私は抑止力と契約し、死後守護者となってしまったが。その唯一の理解者の再三に渡る警告を無視して。

 

その事に後悔はない。いや、一時はしそうになったりもしたが。やはり、そうならなかったのはアイツの存在があったから、だろうが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その、悪い。散々忠告してくれたのに、結局は破っちまって。やっぱり俺は、正義の味方になりたいんだ。そのためには力がいる。だから」

 

──────はぁ···。ま、お前のそれは筋金入りだしな。予想はしてた。言葉もないっつーかなんつーか···俺ごときでは止められるはずもないと思ってはいたしな。

但し、その代わり以前言ったように、後悔だけはするんじゃねぇぞ。それは、お前が自分で選んだ道だ。他の誰でもない、お前自身が。そこに他者が介在する余地なんてない。わかっているとは思うがな。

 

「あぁ、例えどんなことがあっても、後悔だけはしない。お前と俺との約束もあるしな」

 

──────ッ、そうか。·········あぁ、安心した。どうやら俺の存在は、少なくとも無駄ではなかったらしい。

 

その、たった一言だけの誓い。たったそれだけを聞いた時に、憑き物が落ちたような、心底安堵したような顔に面食らう。

 

切嗣の顔が、ふっと彼と重なった。

 

「·······お前は、どうするんだ?これから」

 

──────いや、これからって、何お別れみたいな雰囲気出してんだよ?大体世界と契約したっつったって、まだお前さんの人生は終わってねえんだ。そもそもお前まだ二十代だろうが。盛りも盛りだろ?これからもお前さんの人生は続いていく。なら俺も、もうしばらく付き合おう。ほっとくとお前、どっかで勝手にのたれ死んでそうだからな。そうなったら寝覚めが悪い。

 

 

「でも、どうして俺なんかに着いてきてくれるんだ?俺は、お前に対してなにも出来ないのに。俺はお前に、いつも世話になってばっかりだ」

 

──────ばぁか。そんなの、おれがしたいからしてるだけに決まってんだろ?あとはほら、お前といると飽きねぇしな。なんかこう、生きてるって感じがするよ。少なくとも平凡な、無味乾燥な人生はゴメンだね。あれはもう飽きた。あとは、お前さんが美少女だったら言うことなかったんだが、そこのところは妥協してやんよ。

 

「ははっ。いかにもお前らしいな。だったら余計に俺なんかに付きまとってないで、誰かいい人を探したらどうだ?お前なら見つけられるだろ。聖堂教会と一緒に仕事したときとか、カレンと結構いい雰囲気になってたじゃないか。お前も、まんざらでもなさそうだったじゃないか」

 

──────う、ううるさいな!良いんだよ俺のことは!ふん、やっぱりエロゲ主人公様は言うことが違いますってな!余裕発言か、この野郎!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、懐かしいな。なあ、◼️◼️。俺今さ、世界を救う旅をしてんだぜ?これ以上なく正義の味方をしてると思わないか?それに、お前の好きな美女美少女もたくさんいる。どうだ、羨ましいだろう?

 

────チックショウ!こんのエロゲ主人公め!そこ今すぐ変われ!

 

なんていう叫びが、何となく、どこからか聞こえたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 


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