はっ、と目を覚ます。
確か、自分はUMP45と戦って、よく分からないやつから攻撃を受けて、負けて……。
ふと、通信が入っていることに気がついた。ドリーマーだ。
「……あの……」
『デストロイヤー?』
「ひっ」
通信から聞こえる声。それは、あまりにも冷徹なものだった。
『失望したわ。まさか捕らえようとするどころか、殺そうとするなんて。私なんて言ったかしら?』
「捕まえてこいって……」
『そう。その上なんにも成し遂げられやしない。私は覚えてるわよ。出発する時に、何やら絶対だとか何だとか言ったことも』
その言葉を聞いた瞬間、デストロイヤーの血の気が引いた。この後の展開を悟ったのだ。
「ね、ねぇ、頑張った、でしょ?だから──」
『頑張った?笑いでも取りに来てるのかしら。命令をこなせない人形なんて、ただの欠陥品よ』
「ひっ、嫌……違う、そんな欠陥品なんかじゃ……」
『残念だけれど。デストロイヤー、一生帰ってこなくていいわ。そこで補給も受けられないまま、野垂れ死になさい』
「やっ、やだ、ドリーマー!ごめんなさい、次は頑張るから!」
返事はない。
「もう一回だけ……もう一回だけ、チャンスをちょうだい!まだ、死にたくない!」
返事はない。
「どうして──!頑張った、これでも頑張ったのに……!ドリーマー、どりぃまぁ!」
何度呼びかけても、何度叫んでも。二度と、ドリーマーからの返答が帰ってくることは無かった。
「大丈夫ですよ」
「っ!……?」
突然、泣きじゃくる彼女の後ろから、腕が伸ばされた。それはあまりにも優しくデストロイヤーを包み込む。
「大丈夫。あなたは、私が死なせません」
「何……?あんたは、誰……?」
優しい声。蕩けるような慈愛。デストロイヤーは伸ばされた腕をゆっくりと両手で握った。
「あなたの傷を治療したもの。死にゆくあなたに、手を差し伸べただけのもの」
そう言われて見れば、自分が負った様々な傷口が、いろいろな方法で塞がれている。特に腹部に空いた穴は、上手い具合に、支障のない範囲で修理されていた。
デストロイヤーはバッテリーを受け取ると、耐えられず口を開く。
「お願い……。名前を教えて」
「名乗るほどのものではありませんが……請われるのならば」
そういうと、優しい声は小さく囁く。
「ウェルロッドMk-2。あなたの命を救うために私はここにいます。もう、あなたを傷付けはさせません」
それは、デストロイヤーを戦場から引き戻した、命の恩人との出会いだった。