「があぁッ!?」
嬲られ続けた。
「ぐっ、ううッ……!」
ただひたすら、苦痛と恐怖を味わい続けた。
何も無い虚空の空間で、ただ一人。
全身をバラバラにされるような感覚。まるで滅茶苦茶なスクラップに加工されているかのよう。
痛い。痛い。痛い。いたい。いたい。いたい。
襲いくる痛みを受け止める度に、彼女の心は崩れていく。
一体この痛みの正体は何なのか。真っ暗な世界の中で考える。
――ああ、おかしいな。何も分からない。
思い出せないんじゃない。分からないんだ。
些細な記憶さえ、自分が誰かさえ。私には何も。
「あ゛ がッぁ あ゛ ぁ !」
ただ嬲られ続ける。
ただ無意味に。
ただ痛いだけ。
頭の中を焼かれるような感覚が続いているのに、意識は一向に遠のく気配がない。
もう身体はこんなにも悲鳴を上げているのに。心はもう、何度も折れているというのに。
そしてやっと一つ気が付く。
「そっか。私、もう死んじゃってるんだ」
永遠にも一瞬にも思える苦しみの中で一つ、自分の体が無いたいう矛盾に気がついたのだ。
どれだけ見下ろしても、痛みを感じるための身体が無い。
「ふふふっ」
この矛盾に焼ききれた頭が処理落ちし始め、自然と笑みがこぼれる。
「ははっ」
何が一体、どうなっているのか。困惑を超えて、もはや何も感じない。
「――」
それでも、痛いのに変わりはない。
撃たれているような刺されているような焼かれているような斬られているようなかじられているような潰されているような窒息しているような引き裂かれているような内側から食い破られているような。
この世の狂気恐怖苦しみ全てを煮詰めたような感覚。それだけが延々と続く。
感覚は飽和すると何も感じなくなるものだ。それは痛みも例外ではなかった。
「45姉っ、――がやられた!」
突然視界に、鮮明な映像が映り込んできた。
「仕方ない、放棄して進みましょう」
どうやら自分は地面に伏せているようで、身体は指先すら動かすこともできない。
目の前に映るのは、二人の少女。
そしてそのうちの一人は、
――まさに、自分自身だった。
「ひっ」
自分を冷酷に見下ろす自分に、吐き出しそうな程の嫌悪感を感じる。
「いや」
自分が二人いるという非現実。自分を放棄するという狂気。
「ああ」
彼女は目の前の自分を必死に否定する。あれは私ではない。偽物だ。私を模倣する、ロボットか何かだ。
「ああぁ」
それでも拭えない違和感。何よりも恐ろしいのが、彼女が自分をゴミとしか思っていないということ。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッ!」
その違和感に耐えられず、いつの間にか右手に握っていた銃で自分を撃っていた。
空気の抜けるような腑抜けた音が響くと共に、目の前の自分が鉛玉を受けて倒れていく。
「消えろッ、消えろッ!」
先程まで動かなかったのが嘘かのように身体を起こし、彼女は彼女を撃ち、踏み潰し、刺し殺し、引き裂き、嬲り続ける。
自分を見下ろしていたあの冷酷な瞳を払拭するため、全身をスクラップにさせる。
そうして狂ったようにそれを続けていると、不意に後ろから声を掛けられた。
「ふふっ。無様ね。偽物が偽物を壊すなんて」
「ッ!?」
振り向いたその先には、確かに今殺したはずの自分が立っていた。
不敵な笑みを浮かべ、そして表情には確かにあの冷酷な眼差しがあった。
「破損したダミーごときが自分の意思なんか持っちゃうなんて。全くどういうバグなのかしら」
「何……?何なの、さっきから私のことを知ったように話して!お前は誰なの!?」
「そんなこと、そっちが一番分かってる事じゃない?」
そう言うと目の前の自分は銃を構える。
「私はUMP45。これでいいかしら、UMP45-2?」
「は――」
銃の先端が光ったかと思うと、それから映像はピタリと止んだ。
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