UMP45's DYING LIGHT   作:天海望月

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大変お待たせしました。投稿しない間に新大陸の赤い竜を絶滅させたりポケモンマスターになったり特異点攻略したりドクターになったりしてました。ゆるして
あと今回までほのぼの回です。エグいの期待してる方は次回とんでもないことになると思うのでお待ちください。


商品に非ず、機械に非ず:中編

「それで、命からがら逃げてきた、ってわけ?」

 

「うぅ……、仕方なかったの、ドリーマー。あいつらUMP45がいるってのに、見事に私の部隊に当ててくるから……。きっと凄腕のスナイパーがいたんだと思う」

 

「そんなことはどうだっていいのよ。私は言い訳を聞きたくてここにいるんじゃないわ」

 

 ドリーマーと呼ばれた女性は、顔に手を当ててため息をついた。

 

「あの時の自信はどこにいったのかしら、デストロイヤー?UMP45を連れてくるだの言っていたくせに、結局連れてくるどころか人形を数機失ってるじゃない」

 

「ご、ごめん……」

 

 デストロイヤーと呼ばれた無彩色の少女は、肩を小さくして答えた。

 

「まあ期待なんてしていなかったからいいのだけれど。――それにしても、一体次は何が目的なのかしら……」

 

 彼女は持っていた巨大な砲塔を地面に立てると、それに体重を預ける。

 

 ため息をもってそれを終わらせると、ドリーマーはデストロイヤーを指差して言った。

 

「このチャンスは逃さない。デストロイヤー、次こそは確かに捕まえてきなさい」

 

「――ええ、ええ!……でも、あいつの居場所なんて今更分かるの?」

 

「分かるわよ。これを見なさい」

 

 そう言うと、彼女は鉄血の自動制御AIに何やら命令をする。

 

 まもなくして背後のモニターに何かが写し出された。

 

「地図?」

 

「そう。地図。それもUMP45の大まかな移動ログ付きの」

 

 デストロイヤーの口がポカンと開け放たれる。

 

「えぇぇぇぇっ!?何で!?」

 

「ウイルスを仕込んだに決まってるじゃない。私これでもずっと戦闘をモニターしてたのよ?」

 

 デストロイヤーの目が丸くなる。

 

「でも信じてないって……」

 

「私はそんなこと一言も言ってないわよ。罵詈雑言は言ったけれど」

 

「え。え?」

 

 うろたえる少女を横目に、ドリーマーはモニターの表示を消した。

 

「このデータをメモリーに送信しておいたわ。分かったらさっさと行きなさい」

 

「あ……ええ!次は絶対に捕まえてくるから!」

 

 返事を聞く前に、デストロイヤーは振り向き走り出す。

 

「……絶対、ねぇ」

 

 その小さな背中を、ただドリーマーは見送るだけだった。

 

 ◆ ◆ ◆

 

 バッテリー残量――71%。

 

「なるほど、じゃあお前さんは記憶がないが、ずっと妹さんだけを探してさまよってるってのか」

 

「……ええ」

 

 老年の男性は机に肘をつき、45の話を熱心に聞いていた。

 

 時刻は既に深夜。45は自分を連れてきたベクターと共に、老人と机越しに対話していた。丁度、自分がここに至るまでの経緯を簡単に説明したところだった。

 

 ちなみにもう一人、スコーピオンは、

 

「あたし飲み足りないから他の部屋行ってるね〜」

 

 と言い残したまま会っていない。

 

「それで妹さんみたいな人形の残骸を見て途方に暮れてたところを、うちのベクターに拉致られたってわけだな」

 

「拉致じゃない。あたしはじいさんに言われて連れてきただけ」

 

 45の隣に座っていたベクターは、老人に抗議の視線を向けた。

 

「はっはっは。まあ、ただ連れてこいとだけしか言わなかった俺も悪い。乱暴にさせてすまんなUMP45」

 

45(フォーティーファイブ)でいいわ」

 

「そうか。じゃあそれで」

 

 彼は少し微笑むと、咳払いをして話を戻す。

 

「それで、その妹さんの話なんだが……。ベクター、間違いないんだよな」

 

 ベクターが軽く頷く。

 

「じゃあ結論から言うか。喜べ45、あの残骸は、十中八九妹さんじゃあない。ありゃお前さんそのものだよ」

 

「私……そのもの?」

 

「おうさ。どうやらそのことまで忘れっちまってるようだが、お前さんたち第二世代の人形はな、ダミーリンクっちゅう機能がついてる」

 

 聞き覚えのない単語に、45は少し眉をひそめた。

 

「お前さんは自分自身が人形だって自覚はあるのか?」

 

「左腕を見たら否が応でも自覚するわよ」

 

「ははっ、そりゃそうだよな。ってことは、あんたらは機械で、言うまでもなくいくらでも作りたい放題な存在なわけだ。それは分かるよな?」

 

「……確かに、そうね」

 

 自分には、確かに意思があった。自分が生きているという、意思が。

 

 機械であると言う自覚は十分にあった。だが、それをかき消してしまうほど、今まで自らを一種の生物であるかのように勘違いをしていたのだ。

 

 何故か?それはもちろん、意思が、自我があるからだ。

 

 所詮は人形。作ろうと思えばいくらでも替えはきく存在。なのにも関わらず、この世の中に自分は一人しかいないなどと思い上がっていたのだ。

 

 そんな当たり前のことを、彼に言われて初めて“自覚”した。

 

「おい大丈夫か?」

 

 そんなことを考えているうちに、きっとそれが表情に出ていたのだろう、老人が45の顔を覗き込む。

 

「――あっ、いえ、大丈夫よ。少し考え事をしていただけ」

 

「そうか。なら話を続けるぞ」

 

 安心した様子で、彼はまた話し始める。

 

「でな、その作りたい放題したお前さんたちのコピーを、本物が操れるようにしたのがダミーリンクってやつだ」

 

「……?」

 

「ほらじいさん、適当に話したからわかってなさそうな顔してる」

 

「嘘だろ、結構分かりやすく説明したつもりだったんだがなぁ」

 

 あまりピンと来ずに固まっていると、見かねたベクターが代わりに説明を始めた。

 

「つまり、主機と子機の関係」

 

「主機と子機?」

 

 ベクターが頷く。

 

「あたしたちは主機で、自分と全く同じ能力で自我のない子機を自由自在に操ることが出来る。それがダミーリンクだよ」

 

「あぁ……。ああ!」

 

 突然45が席を立った。

 

「つまり私の前で倒れてたのは、妹でもなんでもなくて、記憶が無くなる前に私が操っていた自分のコピーだったってこと?」

 

「そう。というかそんなの顔を見れば一発でわかるものじゃないの?妹の顔は覚えてなくても自分の顔くらいは覚えてるでしょ」

 

「それが覚えてないの」

 

「えぇ……」

 

 肩をすくめてベクターはため息をついた。

 

「なるほどなぁ、そりゃあ倒れた自分の前で泣き崩れる訳だ。じゃあ後で鏡でも見ておくんだな。うちの“家族”が案内してくれるだろ」

 

「家族……」

 

 なにやら耳馴染みのある単語だったが、それが何故なのかを思い出せないので考えるのをやめた。

 

「バチバチして目障りなお前さんの左腕も直してやりたいし、そうだな……」

 

 よし、と言いながら老人は立ち上がると、無邪気に笑ってこう言う。

 

「とりあえず飯にするか!こんな時間だし、お前さん腹減っただろ」

 

「……飯?バッテリーの充電じゃなくて?」

 

「何言ってんだお前さんは。温かい飯を食うに決まってるだろ」

 

 そう言うと老人はそそくさと部屋を出ていく。頭が追いつかないでいると、ベクターが45の腕をまた強引に掴んで引っ張って行った。

 

「えっ、ちょっと」

 

 機械に、食事?45は耳を疑った。

 

 彼女は今まで、なけなしのバッテリー、つまり電気を直接取り込んでどうにか生き残ってきた。ウェルロッドも45にバッテリーをくれた事から、それが人形にとっての当たり前なのだろう。

 

 確かにそれは合理的であり、機械である以上不可欠なことだ。バッテリーの残量が少なくなってきたなら、何かしらで充電する。そうすれば、今まで通り身体は動作する。

 

 だが、今度は食事と来た。ここまで来るともはや意味不明だった。

 

 人間でない以上腹も空かない。食べる必要性を感じない。なぜなら電気を取り込んでさえいればいいのだから。

 

 ここに連れてこられるまでのたった少しの時間に数多くの疑問に直面したが、今回のはその中でもトップクラスに理解できなかった。

 

「ほれ、お前ら降りてこい!そろそろ飯にするぞ!」

 

 老人がそう建物の二階に呼びかけると、それに呼応するように騒がしく足音が聞こえてきた。

 

「わーいご飯だ!あ、ほらヴィーフリ、例の新入りくん!」

 

 飛び降りるようにスコーピオンが階段を駆け降りてくる。それを追うように、後から一人がゆっくりと降りてきた。

 

「ほら転んだら危ないでしょ……って」

 

 おそらくヴィーフリと呼ばれたであろう彼女は、45と目が合うと完全に動きを止めた。

 

 全体的に青を基調とした衣服を、大胆にも胸部と腹部をはだけさせて着た彼女。丁寧に編み込んだ長い金のツインテールをぴくりとも揺らさずに、桃色とも紫色とも言い難い目を見開いて45を見つめていた。

 

「えっ、ええっと……?どうも……?」

 

 その熱烈な視線に、なにやら嫌な予感を感じた45は、とりあえず彼女とコンタクトを取ろうと試みた。

 

「――か……」

 

「……か?」

 

 その瞬間、ヴィーフリは大きく息を吸い、

 

「かわいいーっ!!」

 

「えっ待ってぎゃはっ」

 

 目にも止まらぬ速度で45に突撃して押し倒し、熱い抱擁を贈った。

 

「あーあ、始まっちまったか」

 

「……」

 

「ふぅー!お熱いねーっ!」

 

「ちょっ、ちょっと、どういうこと!?」

 

 スコーピオンを除いて諦めたような反応を見せる周囲。説明を求めるが、その前にヴィーフリが自ら自白する。

 

「突然ごめん、私ひっさしぶりにこんな可愛い子見ちゃって、抑えられなくなっちゃって……!」

 

「可愛いものに目がない?」

 

「そういうこと!――ああ、報われた……!生きててよかった……」

 

「そんなに……なの?」

 

 45を離すまいとしっかり抱きしめられた手と彼女の様子。突然降り掛かってきた愛情に45な引き気味である。

 

 顔を胸のあたりにうずめ、まるで45を堪能するかのように嗅ぎ回る。ふと彼女の顔を見ると、恍惚とした表情が目に入った。

 

「不思議な感じ……。なぜか、二人分の香りを味わってるような――」

 

「ほれ終わりだハグ魔。お前さん真面目なのにそういうところだけはどうしようもないよな」

 

「あっ」

 

 興奮する彼女を老人が引きはがす。あれだけ強く力の入った抱擁だったのが、老人が介入すると我を取り戻したかのようにすんなりと離れた。

 

「えへへ……、ごめんなさいおじいさん。でもこの衝動だけはどうしても抑えられそうにないの」

 

 ばつが悪そうにヴィーフリは目を逸らした。どうやら自分がしたことを悪いとは思っているようだ。

 

「初めてあたしとスコーピオンを見た時もこうだった。ヴィーフリには自制心が足りない」

 

「そ、そう……」

 

 まるで軽蔑するかのような目線をヴィーフリに送りながら、ベクターが言った。

 

 スコーピオンは酒瓶片手にヴィーフリをたしなめている。が、彼女の状態故に説得力は皆無であった。

 

「あー……えっと、私はSR-3MP。長いからヴィーフリでいいわ。よろしく」

 

 苦笑いしながら、ヴィーフリが手を出す。

 

「まあ、悪いやつじゃあないんだ。ちゃんと話せば分かるから、仲良くしてやってくれ」

 

「……善処するわ」

 

 それに45も苦笑いで返しながら、その手を握った。

 

 この場に他に誰もいないのを見るに、彼らがここの一員すべてなのだろう。

 

 それにしてもどいつもこいつもインパクトが強すぎる。ここにいては身体もメンタルも持ちそうにない。

 

 適当に親交を深め、いくつか物資をもらってからここを立ち去るとしよう。

 

 ――そう、思っていたのに。

 

「ん……」

 

「おはよー、45。今日は遅いんだね」

 

 同じ部屋で過ごすスコーピオンの声で目を覚ます。時計は短針が8、長身が7を指し示していた。

 

 あれから一週間ほど。老人たちに上手く言いくるめられてしまったのか、気がつけばこの家に馴染んでしまうほどに滞在してしまっていた。

 

 本当は一晩過ごした後に出発する予定だった。だが、彼ら四人の手厚いサービスに身を任せているうちに、これだけの時間が経ってしまった。

 

 人形が食事をとると、そのほとんどがエネルギーとなりバッテリーに充填される。そう説明されつつ半信半疑で食べた、初めての食事。それはもう、涙を出すほどに美味なるものだった。

 

 食事ほどに他人の優しさがにじみ出るものは無い。老人が振舞ってくれた料理は、どれもこれも素晴らしいものだった。

 

 決して完璧なものではない。味付けにもムラがあるし、調理の仕方も乱暴と言われても仕方の無いものだった。それでも美味しいし、幸福感に満たされる。ただの充電では絶対に味わえない感覚だ。

 

 食事中に見たベクター達の幸せそうな表情。それに、何度も目を奪われた。

 

 その時45は気がついた。自分が見とれてしまっていることに。彼らのしている、平和で、人間的な生活に。

 

 それから彼らと一夜を越してしていくうちに、自分を拉致したこの集団に、段々と45は心を許していったのだ。

 

 破損していた左腕も、肩から先をまるごと新品に変えてもらった。汎用パーツのために多少の違和感こそあるが、動かなかった頃に比べればずっとマシである。さすがにフレームの露出した脇腹は直しようがないので、白い包帯を巻くことで隠すことにした。

 

「そろそろ朝ごはんできるって。行こう、45」

 

「そうね」

 

 自分に割りあてられた寝具から起き、ハンガーに掛かったジャケットを羽織りながら部屋の出口へと向かう。先に起きていたスコーピオンは扉を開けたまま食堂へ行ってしまったようだ。

 

 ふと、香ばしい香りが45の鼻腔をくすぐる。きっと朝食の香りに違いない。

 

 胸を躍らせながら、彼女は食堂へ歩き始めた。

 

「おお、今日は遅いな45。そろそろ朝食ができるぞ、座っていな」

 

 廊下を抜けると、45に気がついた老人が

 

「ありがとう、おじいさん。……あら、今日はスコーピオン、呑んでないのね」

 

「呑みたいけど!残り少ないからって呑ませてくれないの!」

 

 ベクターがため息をつく。

 

「元々あれはスコーピオンのために貯蔵してるわけじゃないから。火炎瓶の着火用」

 

「分かってるけどさぁ、この森の中じゃどうせ使わないよ、火事になるし。それに誰も襲いになんて来ないでしょ」

 

「もしもっていうことがあるのよ、スコーピオン?」

 

 ヴィーフリが人差し指を立ててそう言った。

 

「こんな世の中だし、盗賊なんかが乗り込んできたりするかもしれないじゃない」

 

「なわけ〜。こんな森の奥まで、わざわざ襲いに来るやつなんている?旅人とかを襲った方がまだ楽だよ」

 

「でもないとは言いきれないでしょう?例えば――」

 

 そう言ってヴィーフリは窓の外を指さす。

 

「突然あそこの装甲車を爆破しに来たりとか――」

 

 ばこん。

 

「うわぁ!?」「ひゃあっ!?」

 

 唐突な大音量に四人が一斉に音のした方向に振り向く。

 

「……ん?なんだ?」

 

 キッチンで視線を感じた老人が見つめ返す。そして彼の手元には、大きなトースターが据わっていた。

 

「今の音って、そのトースターの音?」

 

「おう」

 

 ヴィーフリが聞くと、老人は頷く。

 

 同時に、スコーピオンが安心したように息を吐いた。

 

「本当に車が爆発したのかと思った……」

 

「でもっ、これで少しは危機感を覚えたでしょ?」

 

 スコーピオンが首肯する。

 

「ちょっと我慢しようかな、お酒は……」

 

 そんな会話が繰り広げられているうちに、朝食が完成したようだ。老人が皿を持って歩いてきた。

 

 それを見たベクターとヴィーフリが、配膳を手伝いはじめる。

 

「ほれ、ベーコンエッグとトーストだ。たまにはこんな朝もいいだろ?」

 

 45の目の前に食事を乗せた二つの白い皿が置かれる。

 

 鮮やかな橙色の黄身を、くすみの無い白身が囲い引き立てている。添えられたベーコンが上手に焼き上げられていて、確かに食欲をそそる。

 

 トーストは表面に焦げ目が乗り、見た目からもカリカリとした食感がイメージできる。

 

「あれ、おじいさんのベーコンエッグ、黄身が出てるじゃない。私のと交換しましょうか?」

 

 45は配膳が終わったところで、老人の一つだけ黄身が少し溢れていることに気がついた。

 

 老人は恥ずかしそうに笑った。

 

「へへ、ちっと失敗しちまってな。フライパンから上手く剥がせなくて。だが」

 

 老人は皿の縁を指先で叩いた。

 

「これは俺が食う。お前さんにはちゃんと成功したやつを食って欲しいからな」

 

「おじいさん……」

 

「じゃ、食うか。……いただきます」

 

「いただきます」

 

 彼の掛け声に合わせて、四人で同じ言葉を復唱した。

 

 なんでも、食事前にはちゃんと感謝の気持ちを込めてから頂く、というのがマナーらしい。なんとも素敵な決まりだ。

 

 さっそく、食事をとるとしよう。

 

 五人は出来たての料理に手をつけようとして、

 

 装甲車の爆発に反応するのが一瞬遅れた。

 

「なっ――」

 

「じいさん!」

 

 衝撃波で家の窓という窓が割れる。地面が大きく揺れ、気がつけば本能的に床に伏せていた。

 

 予期しない轟音に耳鳴りがし、巻き起こる砂ぼこりのせいで目も開けられない。

 

 ようやく感覚を取り戻した頃には、綺麗だった家の内装は無惨な光景に変わっていた。

 

「本当に爆発するなんて……」

 

「――っ!ベクター、おじいさん!?」

 

 ヴィーフリが叫んだ方向。そこには、老人を庇い、背中にガラスの破片をいくつも受けたベクターがいた。

 

 ベクターのおかげで老人に大した傷はないが、代わりに彼女はズタズタだった。

 

「……じいさん、生きてる?」

 

「そ、それはこっちのセリフだ馬鹿野郎……!お前、どうして俺なんかを……」

 

「分からない。でも、気付いたら身体が勝手に動いてた」

 

 老人がベクターのガラスを抜きながら、一緒に身体を起こすと、同時に外から声が聞こえてくる。

 

「UMP45っ!ここにいるのは分かってる。さっさと出てきなさい!」

 

「何だ?知り合いか、45?」

 

 45に視線が集まった。

 

「……一度だけ顔を合わせたことがある。あいつは、あんな小柄な体躯からは想像もできない、恐ろしい力を持ってるわ」

 

「一体そいつは何?教えて」

 

 ベクターのつんざくような起伏のない声。その言葉に応えて、45は記憶を辿る。

 

 あのとき、ウェルロッドに言われた言葉。

 

「小柄で、爆発物を使う鉄血人形と言ったら、それは一人しかいません」

 

 今でも覚えている。彼女が、躊躇するように口を開いたことを。

 

「彼女の名は――」

 

 

 

「彼女の名は、デストロイヤー」

 

 記憶の中のウェルロッドと重ねるように、45はそう言った。




決戦が始まります。
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