――アークナイツが楽しすぎるのが悪い!!!!!!!
すいません、あと今日は4月/04日、そう、404の日ですよ(たまたま)
「彼女の名は、デストロイヤー」
その言葉を聞いた瞬間、周りの四人の顔付きが深刻になった。
ほのかに残っていた早朝の眠気も、あの爆発ですっかりと覚めた。辺りには未だ砂ぼこりが舞っていて、雲一つない空から差し込む暖かな朝日を遮らんとしていた。
「まさか、冗談だろ?」
「いいえ、本当よ。確か鉄血とやらは、人間に対して牙をむく存在だったわね。そして私はその一員である彼女と一度出会い、声も聞いた。間違いなく、この声はデストロイヤーのものよ」
「信じられねぇ……。なんだって鉄血のエリートなんかがここに」
一気に老人の表情が曇る。
「まだなの、UMP45!?早く出てこないと、その建物ごと吹っ飛ばすわよ!」
またもや外から声が響いてくる。今度は立派な脅迫付きだ。
「――行ってくる」
「おいっ待て!」
彼女の脅迫に焦り、今すぐにでも外に出ようとする45の腕を老人が掴んだ。
何とか振り解こうとするが、彼はしっかり握って離さない。
「おじいさん!」
「……ここでお前を行かせたら、十中八九殺されるに決まってるだろ!?あいつがお前の名前を覚えるってことは、何かやらかしたってことだ、お前が!」
彼の表情は真剣そのものだった。
「でもここで行かなかったら、おじいさんごと皆で粉々になるだけよ!いいから離して!」
「――クソッ、だけど俺は……!」
「じいさん」
突然のベクターの声に驚き、二人で振り返ると、彼女は銃を携えていた。45を連れ帰った時に持っていた、あの銃だ。
「嘘、戦う気!?今ならまだ逃げられるわ、皆で逃げましょう?」
信じられないといった様子のヴィーフリの言葉を、ベクターは顔を横に振って否定した。
「あいつは森の中にある、あたし達の拠点を見つけてきた。ここで逃げても、きっとすぐに発見されるよ。だから、もう戦うしかない」
「そんな無茶な――」
「なら、あたしも一緒に戦わせて」
今までひっそりと伏せていたスコーピオンが声を上げ、ゆっくりと立ち上がった。
「スコーピオンまで……」
「大丈夫だよ、ヴィーフリ。だってまだ今日、お酒飲んでないもん」
「そういう問題じゃ――」
「ヴィーフリ」
老人が口を開いた。その目は、しっかりとヴィーフリを見据えている。
一言で静かになった空間を見渡してから、彼は言う。
「結局、最後まで逃げ腰なのは俺たちだけだったな。ここは多数派の意見に従おうじゃあないか」
「でも、おじいさん……。きっとこのままじゃ、誰か殺されるかもしれないわ」
「そうならないように戦おうとしてるんじゃないか。頼むヴィーフリ、力を貸してくれ」
ヴィーフリは黙り込む。彼女は老人の言葉を肯定しなかったが、否定もしなかった。
視線が泳ぐ。きっと決断しきれずにいるのだろう。
「10!9!8――」
ゆっくりと、急かすようにカウントダウンが始まった。
きっとこれがゼロになった時、この家は粉々に吹き飛ばされるのだろう。
「っ!……もう、やるしかなさそうね」
「ぃよぉし!」
だがその恐怖こそが彼女への後押しとなった。
言葉に迷いはありながらも、確かに決意に満ちた瞳を見た老人は、嬉しそうに頷いた。
「抗ってやろうじゃないか!鉄血とかいう、理不尽野郎にな!」
◆ ◆ ◆
「4!3……っと、やっと来たわね」
「久しぶりね、デストロイヤー」
少し強めの風に森の木々がざわめく。そのざわめきに負けないくらいの大声を出す彼女の目の前に、両手を上げながら45は姿を晒す。戦う意思のないアピールだ。
といっても物陰にはベクター、さらに家の中には大急ぎで武器や弾薬をかき集める老人たちが控えている。45の目的は、彼らの準備が整うまでの時間稼ぎだった。
もしかすると今にも殺されてしまうのではないか?そういった恐怖が込み上げ、足が震える。
45は以前、この少女がいとも容易く人間を吹き飛ばすのを見ていた。塵のように、さぞ当たり前のように人を爆殺するのを。彼女の怖さ故に顔が引き攣りそうになるのを必死に堪えながら、45は今デストロイヤーと対峙しているのだ。
本当は今すぐ逃げたい。なぜ彼女の前に出たのだろう。数え切れないほどの後悔が頭の中をよぎる。自分が人間であったらあまりのストレスに嘔吐していたかもしれない。
だが自分の後ろには、信じられる“家族”が戦う準備をしているのだ。ここで逃げれば、彼らに立てる面子がない。
だからこそ45は、今を生き延びるために死の恐怖と戦っているのだった。
「いい隠れ家を見つけたようだけど、私の前には無駄だったみたいね!」
「ええ、とても残念よ」
勝ち誇ったように彼女は笑う。
今までの様子から察するに、彼女には今すぐ45を粉微塵にしようという考えはなさそうだ。
「単刀直入に聞くけど、一体何の用なの?」
「そりゃもちろん、あんたを連れていくに決まってるじゃん。それ以外になんの用があればこんな森の中に来るわけ?」
「それはそうよね……」
「じゃあさっそく、あんたを連れていきたいところだけど――」
そこまで言うとデストロイヤーは、辺りをゆっくりと見渡す。
「その前に、仲間はどこ?」
「っ――」
まさか。45は戦慄する。
この少女は、45らの企みに気がついているとでも言うのだろうか。45がここまで来るまでに彼女以外の足音やその他痕跡は露呈させていないはずだし、そう言った身振りも見せたつもりもない。
それとも、何か自分では気が付かないほどのミスを犯してしまったのだろうか。――いや、そもそもこの規模の生活空間で、45一人しか住んでいないと考える方が不自然か。
どちらにせよまずいかもしれない。奇襲が決まらなければ勝ち目は――。45は冷や汗をかく。
「仲間?そんなのいないわよ」
カマをかけただけかもしれない。彼女は落ち着いて答える。
「嘘よ!いるに決まってる!例えば、ほら――」
そう言うとデストロイヤーは、ベクターが潜む物陰の方へと視線を向けた。
唾を飲み込む。彼女が少しでも攻撃するような素振りを見せたのなら、45は最後の一振りのナイフを抜きデストロイヤーの懐に飛び込むつもりでいた。
「あのとき、遠くから狙撃してきたやつとか!」
「……」
どうだ、と言わんばかりの顔で、デストロイヤーは胸を張った。
ああ――間違いない。こいつは何も分かってはいない。安堵のため息が零れそうになるのを45は堪えた。
「さあ、どうかしらね。いるかもしれないわよ、例えばあなたの後ろとか」
「えっ、嘘!どこ!?」
冗談のつもりでそう告げると、デストロイヤーはかなり焦った様子で振り向いた。
さすがにこれには苦笑いするしか無かった。45は昔彼女のことを少しでも優秀と思ったことを後悔する。こいつはただの馬鹿だ。
だがこれで大きな隙が出来たことに違いはない。時間稼ぎも十分できた。あとは合図を出して一気に奇襲をかけるだけ。
そう思って慢心していると、突如後ろから小さいながらも足音がした。
想定外の事態に驚きながら振り向くとそこには、
「とった……ッ!」
殺意に満ちた表情のベクターが一目散に走り込んできていた。
「なっ、ベクターっ!」
「えっ?」
走り込んでくる気配にデストロイヤーが気がついた頃には、ベクターは既に彼女の目の前に位置していた。
ベクターは倒すべき敵の足元に滑り込み、照準を確かに合わせて引き金に指をかける。
「ベクター、言ってたことと違――」
45が手を伸ばし、デストロイヤーが目を見開く。それを見てベクターは、僅かに口角を上げながらこう言い捨てる。
「くたばれ、鉄血のクズ」
その瞬間、まるでひとつの音のように繋がった発砲音が辺りに響き渡った。
たった一瞬の事だった。一秒も掛からなかっただろう、気がついた頃にはベクターは弾倉を空にし、全弾をデストロイヤーにお見舞いしていた。
二十数個の空薬莢が散乱し、互いにぶつかり合いながら音を立てる。まともに弾丸をくらった彼女はそのまま倒れ、物言わぬ骸になる。
力無く倒れ込もうとするその姿を見た誰もが勝利を確信し、笑みを浮かべる。
――そうなるはずであった。
「やるじゃん、45。まだ他に伏兵がいたなんて」
倒れる身体を地面を蹴って支え、そのまま何事も無かったかのように立ち上がったのだ。
そのまま反応の遅れたベクターの首をつかみ上げる。
「がはッ……!」
「でも、ざんねーん」
その小さな身体からは想像も出来ないような膂力だった。自分よりも背の高い人形を片手で簡単そうに持ち上げ保持し、もがき苦しむベクターを、デストロイヤーが楽しそうに眺める。
「忘れたの、UMP45?私はこの前の狙撃で傷を負わなかったこと。流石に衝撃はくるけど、こんなサブマシンガンくらいじゃ痒いだけよ」
「あ……がッ――ぁ、は……!」
「――」
彼女はベクターの首をじりじりと絞める。ベクターの足は、ちょうど地面に着くか着かないかの所で空を蹴ってもがく。苦悶の表情が顔を満たし、手は必死に首元を引っ掻くが状況は変わらなかった。
こうなってしまっては仕方がない。彼女を救うべく45は仕込みナイフに手を掛ける。
「ベクターッ!」
「ダメっ、おじいさん!」
しかしそこへ、ヴィーフリの静止を振り切りながら老人が駆け込み、持っていた拳銃をデストロイヤーに突きつけた。
「てめぇ、ベクターを離しやがれッ!」
老人はヒステリーを起こしながらにじり寄る。手持ちの拳銃の弾では、この少女には敵わないというのをベクターが身を持って実証したが、そんなものは彼にとって関係はなさそうだった。
「はいはーい」
「なっ」
完全に予想外の行動だった。老人に向けて、ベクターが勢いよく投げつけられる。老人は当然受け止めることが出来ずに倒れ込む。
それを見たデストロイヤーが、笑いながら自身の砲門を向けた。
「仲良く吹っ飛――冷たっ!?」
背中に感じた謎の違和感にデストロイヤーが振り向くと、どうやら45が両手の瓶の液体を振りかけたようだった。
それを見てデストロイヤーはにたりと笑う。
「ふんっ、まさか水遊びのお誘いのつもり?そんなんで気を引いたつもりなら大間違い――」
「ぁぁぁぁあああああっ!」
「うわっ」
隙を見たスコーピオンが近づきながら射撃する。甲高い発砲音が続くが、命中弾はあまり多くなさそうだ。
デストロイヤーの顔が歪む。それは間違いなく痛みではなく、嫌悪から来る表情だろう。
彼女の砲門がゆっくりとスコーピオンを向く。それを見たのか、彼女は意を決した様子で叫びながら足に飛び付いた。顔は恐怖の形相に埋もれている。
「早く、ヴィーフリ!早く撃って!」
「言われなくたって!」
続けて低音が辺りに響き渡り、デストロイヤーの上半身の至る所から火花が飛び散る。
「いだっ、このっ!」
ヴィーフリの扱う弾薬はアサルトライフルで使われるもの。ベクターやスコーピオンの使うものとは比べ物にならないほど貫通力に優れている。
「があっ!?――ああぁっ!」
だがその渾身の攻撃をものともせず、彼女はスコーピオンを踏みつける。それでもスコーピオンは手を離そうとしない。
「このっ、このっ!離せ、邪魔!」
「嫌だ、離すもんか……!」
「ああもうめんどくさい!」
デストロイヤーの手がスコーピオンに伸びる。それは死ぬ気でしがみついていた彼女をいとも容易く剥ぎ取ると、そのまま立ち上がろうとしていた老人に向けて乱暴に放り投げた。
そして代わりに、先端の燃え盛る瓶が返された。
「え――」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁ!」
足を、腰を、そして背中を。あっという間にデストロイヤーの身体が炎上していく。瞬く間に彼女の小さな全身を包んだ火は、その体を容赦なく焼き焦がした。
さらに瓶が投げつけられる。ガラスの割れる音がする度に、目の前を転がる炎はますます勢いを増していく。
「時間稼ぎ、ありがとう、スコーピオン」
ベクターはそう言うと、気絶した彼女の手を優しく握った。
「――まさか、あんな状況で水なんか掛けるわけないじゃない。私が掛けたのはガソリンよ、デストロイヤー」
静かになった少女の目の前で、45は呟いた。
あの時、45が振りまいたのは、スコーピオンから拝借したガソリン入りの瓶、つまり火炎瓶の中身だった。
もちろん、窮地に陥った老人を助けるため、つまり気を引くために行った行動でもあるのだが、真の目的は燃料追加にあった。
「あいつを焼き殺そう」
そう言ったのはベクターだった。そして、彼女の言う通り、火はデストロイヤーに絶大な損害を与えたに違いない。
未だ燃え続ける少女を哀れみつつ、同時に全員の無事に、45は心から安堵しているようだった。
「――ろ、――げろ!」
「……え?」
「逃げろ、45!」
ぽん。
そんな腑抜けた音とともに、老人が何を言っているのかわからなかった45は吹き飛んだ。
否、訂正しよう。45は吹き飛んだのではなく、押し倒されたのだ。
意味もわからず倒れゆく45の目に映ったのは、
デストロイヤーが巨砲をしっかりとこちらに向けていたことと、
ベクターが、自分に覆い被さる姿だった。
後編で終わりだと思ってましたか?(自問自答)思ってました(予定外)
あともう一話だけ続くんじゃ