彼は仮面ライダーディケイドとしてその瞳は何を見る?
とある商店街の裏路地にある空き家。そこの一室に一人の青年が雑魚寝で寝ていた。マゼンタのカッターシャツに黒のスーツ姿のその青年は不意に何かに気が付いたように目を覚まし、身体を起こす。
「ヴィラン、か・・・」
青年は立ち上がり懐からマゼンタカラーのバックルを取り出し腰に当てる。するとバックルからベルトが出てきてバックルを腰に固定した。
青年がバックルの左右のサイドハンドルを引く事でバックルが90度回転しカードの挿入口らしきものが露出する。それを確認すると左腰に下げられた箱状のカードケースらしきものを開きカードを一枚抜き出し掲げ一言
「変身」
それと同時にカードをバックルに装填して
『カメンライド』
サイドハンドルを戻した。
『ディケイド』
すると彼の周りに19の残像が出現しカードのシャッフルを思わせる音と共に彼の立つ位置に収束、その直後、バックルからカード状のエネルギーが前方に射出されそれが顔に突き刺さる。
そこに立っていたのはマゼンタのボディに、バーコード状の縞々フェイス、緑の複眼を持った鬼のように歪んだ顔を持った仮面の戦士だった。
『さて、行くか』
『アタックライド』
『インビジブル』
仮面の戦士、『ディケイド』は透明となって空き家を後にした。
商店街の表にある店の屋根に飛び乗ったディケイドが見たのはヘドロの
『はあ、相変わらず今のヒーローはダメだな。一部例外を除いて心構えってヤツが成っていない。あんたもそう思うだろ?オールマイト』
ディケイドは野次馬の後ろの方から現場を見ている事しか出来ないガリガリな男を見ながらそう呟く。
「馬鹿ヤローーー!!止まれ!!止まれ!!!」
『何だ?』
ディケイドが現場に目を向けるとモジャモジャした緑の髪の少年がヴィランに向かって走り出していた。少年はヴィランに目掛けて鞄を投げ目眩ましにすると爆発の個性の少年を助け出そうとヘドロを掻き分け始める。
「かっちゃん!!」
「何で!!てめェが!!」
『知り合いか?』
二人の少年のやり取りを聞きながら予測を立てるディケイド。しかしその思考も次の言葉で止まることとなった。
「足が勝手に!!」
「何でって・・・わかんないけど!!!
君が 救けを求める顔してた
『!!』
ディケイドはその言葉を聞いて思考を止めた。そして次の瞬間にその胸の内から湧き出てきた感情は歓喜だった。
「もう少しなんだから」
『アタックライド』
「邪魔するなあ!!!」
『ブラスト』
その感情に従いディケイドは箱状のカードケースらしきもの『ライドブッカー』をガンモードにして引き金を引いた。ライドブッカーの銃口から発射された複数のエネルギー弾は少年たちに当たることなくヴィランを撃ち抜く。
「「「「「!?」」」」」
いきなりの銃撃にディケイドを除く全ての人間が驚愕し固まる。その一瞬の隙にディケイドは爆発少年をヴィランから引き剥がし緑髪の少年も抱えヴィランから距離を置く。
『現場にいる全ての人々よ。この場でヒーローと呼べる存在が一人だけいる。さて誰か?手をこまねいていた職業:ヒーローの者達か?ヴィランに取り込まれながらも抵抗を続けた爆発の個性の少年か?断じて否!!見たところ戦うすべもないのに救いを求める顔を見て反射的に飛び出し助け出そうとしたこの少年こそこの場で唯一ヒーローだった』
そこで言葉を切りディケイドは緑髪の少年を見た。
『少年、名は?』
「み、緑谷出久です!」
『そうか、いい名だ。緑谷出久、
君はヒーローになれる
その言葉に少年、緑谷出久は涙した。相手は名も知らぬ仮面の戦士、しかし彼は嘘偽りなく断言したのだ。ヒーローになれると、誰一人として言ってくれなかったその言葉を。
「クッソがーーーー!!」
しかし空気を読まないヴィランがダメージから立ち直ったのか叫び声を上げる。
「てめえよくも邪魔してくれたな!!一体何もんだ!?」
『俺か?俺は通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ!!』
『アタックライド』
『フリーズベント』
「な、身体が凍って・・・」
『これで終わりだ』
『ファイナルアタックライド』
『ディ、ディ、ディ、ディケイド』
ディケイドはヴィランをフリーズベントで凍らせ動きを封じるとカードを一枚、バックルに装填してサイドハンドルを閉じた。するとヴィランとの間にカード型エネルギーがずらりと並んだ。それを確認したディケイドは真上に飛び、飛び蹴りの体勢に入り追従したカード型エネルギーを通り抜けヴィランに強烈な飛び蹴りを放った。ヴィランは凍ったまま粉々になり沈黙。周りが状況を認識し出した頃にはディケイドは姿を消していた。