元雄英生がヴィランになった 凍結中   作:どろどろ

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朝木勇「『僕のヒーローアカデミア』で何故か『はじめの一歩』をしてる人。ヒグマと素手で格闘して撃退出来る。宿敵と書いてブライアンホークと読みます」
 
相澤消太「弟子が志々雄真実だった比古清十郎。割となんとかなる気がする」
 
オールマイト「You say runを流したいマン。きっと流してくれる。信じろ」


地獄の明朝 上

 ――オールマイトを仕留めるっつう根拠……策って何だ?

 

 ワープされた先で対峙したヴィランの残党を圧倒し、焦凍は連合の思惑を知り得た。

 脳無という超人がオールマイトを抑え、その隙に黒霧――あのワープの個性持ちが中途半端にオールマイトを霧へと引きずり込んで、閉じる。

 

 つまり、黒霧の個性の応用で平和の象徴の肉体を真っ二つに断絶しようという魂胆。

 

(大胆だが……筋の通った計略だな。確かに、オールマイト並の屈強な筋肉でも、空間ごとの亀裂には耐えられねぇだろうし――)

 

 最強のヒーローへの信頼は厚かった。だが、なまじ現実味のある作戦だった為に、焦凍は一抹の不安を覚えてしまう。

 

 ――微力だが、俺も助力すべきか……。

 

 自分の力にある程度の自負がある焦凍の行動は早かった。相手の策略を教師たちに伝えるだけでも大きな貢献になるし、他のヴィランをもう少し削ることが出来るかもしれない。

 

 まんまと黒霧に散らされた自分の迂闊が悔やまれる――が、それを噛みつぶしながら、できる限りの全速力で、焦凍は分断されなかった生徒と教師が集結している中央の広場を目指していた。

 土砂ゾーンの入り口を抜けて、あとは直線。あと二分もあれば広場に辿り付く。

 ――そんな頃合いに。

 

 

「オイ、そこの半分野郎」

「ッッ!?」

 

 

 思わず肩がすくみ上がる程の威圧感。のし掛かってくる重圧の正体――それは、背後に佇む巨大な人影だった。

 

 巨大、と言っても実際は人間の域を出ない範疇の巨躯だ。筋骨隆々の大男。左目に義眼を装着していて、深淵の瞳が静かに、だが激しい温度を伴ってこちらをを見ている。

 

「大将のリストに載ってた――特に警戒しろっつぅ、強個性の子供だな!? 良いねぇ、運が! いきなり大当たりだ!!」

「……何だ、てめェ。(ヴィラン)か」

「そうだよなぁ! そうさ! 俺が教師な訳ないもんな! 生徒とも違うもんな! っつー訳で理由は出来た――命がけで遊ぼう!!」

 

 

「――ッ!」

 

 大男――マスキュラーの裏拳を、咄嗟に“氷結”で作り上げた氷の防壁で防ぐが、まるで砂の城が崩れるようにあっさりと砕かれた。

 直撃こそ避けたが、鼻筋のすぐ上を掠めていった拳の勢いに震撼し、焦凍の脈拍が急激に高まる。

 

「氷の個性!? ハッ、面白ェ!!」

「……俺の氷結をこうもあっさり砕くかよ。他の奴の手には余る――どうやら、てめェをこのまま放置する訳にはいかねぇらしい」

 

 轟焦凍とマスキュラー。

 ――瞬きも許さないその直後、激しい轟音と蛮声を合図として、二人の戦端は開かれた。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 “個性”を詰め込んだ(・・・・・)人造人間、あるいは戦闘人形――脳無と呼ばれた超人が乱入してから、相澤は連合に防戦一方、どころか完封されていた。

 彼の個性は『抹消』なのだが、脳無の素の力は異形型のそれとしてカテゴライズされるもの。つまり、彼の抹消の適用範囲外にあった。

 

(素でオールマイト並の筋力か……! こいつは……ヤバいな……!)

 

 拘束を抜け出すことは叶わない。脳無に組み伏せられ、何度も顔面を地面が叩きつけられる。

 顔面に血の感触が広がってきた所で、右腕が軋む音が重たく響き、そして呆気なく折れた。

 

(ッ! 小枝でも折るかのように……!)

「“個性を消せる”。素敵だけど何てことはない。圧倒的な力の前ではつまり無個性だもの」

 

 嘲笑する死柄木を厳しく睨め付けた所で、今度は左腕が握りつぶされる。

 

「ぐぁ……ッ!!」

「こっちが勝ったよ、言った通りだ。イレイザーヘッド、お前はレベルがもう一桁足りなかったね」

 

 まるでゲームのような勝利宣言。

 歯軋りして無念を呑み込み、相澤は反撃の糸口を探す。

 諦めるという選択肢は最初から無かった。無個性同然、だからどうした。それを敗北の言い訳にして良いのは中坊までだ。

 相澤は最悪の事態を想定する冷静さを併せ持ちながらも、立場を一気に好転させる手立てを模索している。

 

 そんな時に――広場を横断していく何かがあった。

 脳無のすぐ後ろを経由して、火災ゾーンの外壁に衝突。飛んできたそれの軌道を後追いする形で“氷”が走り、地鳴りのような音響が広がった。

 外壁が砕けて段幕が立ちこめる。それが晴れてきたところで、飛んできた――飛ばされた生徒の姿が露になった。

 

「轟か……ッ!」

 

 轟焦凍。先日の戦闘訓練でビルの一フロアを数秒で氷漬けにする、という圧倒的な火力を見せつけた生徒だ。そんな彼が吹き飛んできたかと思うと、ぐったりと眠るように膝を落とした。

 

 ――まだ卵といえど、轟は優秀な奴だ……!

 ――アイツを倒しきる力のあるヴィランが、まだ潜んでいる……!?

 

 その想定はすぐに現実のものとなる。

 

 

「まずは一匹ィ!」

 

 

 焦凍が飛んできた方向から現れた義眼の男。左肩に氷柱が突き刺さっているが、凄んだ気迫を垂れ流しながら広場へと降り立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつは……朝木の所の部隊の」

「『マスキュラー』ですよ、死柄木。首尾良くサブミッションが完了したため、彼がこちらの増援として送り込んだようです」

「ますます俺たちに優勢だな。所で黒霧、お前の方も上首尾か?」

「……すみません。13号は倒したのですが、生徒の一人を取り逃がしてしまいました」

「…………は?」

 

 凍った瞳が黒霧へと向かう。

 身震いした死柄木は、呻き声を鳴らしながら自分の爛れた首を掻き毟った。

 

「お前さ、他のヒーローを呼ばれたらゲームオーバーって、分かってるのか……? ワープゲートじゃなかったら塵にしてるよ、お前……!!」

 

 脳無とマスキュラー。二つの巨大な戦力が揃っていて尚、死柄木は勝機無しと賢明な判断を下す。

 オールマイトはいないし、生徒には逃げられる。後は朝木勇の仕事に期待するしか無いのだが……それでは、自分たちが完全にピエロではないか。

 

 逃亡は確定したが、オールマイトを殺せないなら、いっそ――

 

「……メインの穴は他の生徒で埋める。この戦力なら、もうちょっと頑張れるだろ」

 

 ヒーロー側の増援がやってくるまでの時間制限付きだが、総戦力で叩けばあと一人くらい、犠牲者を増やせないこともない。

 死柄木の苦渋の策に賛同し、黒霧は静かに頷いた。

 

「脳無。黒霧。全員でいくぞ――」

「了解です」

 

 

 

 

 

 

「ヤバいヤバいヤバい! 相澤先生やられた! あの轟まで!! 一番強そうなヴィランが四人! こっち来てるよ!!」

「落ち着けって芦戸……! 皆で戦えば、まだ何とか――」

「ならへんやろ、コレ!!」

 

 迫り来る四つの脅威に生徒たちが怯えきった声を上げる。

 恐怖心は伝染し、心を殺すものだ。最低限の攻撃手段すら持たない者は、思考を混濁させて憮然と立ちすくむだけ。

 

「――今殺してやっから、なッ! なァ!?」

 

「ざけんな! 簡単にやられっかよ!」

「ああ。助けが来るまでの時間稼ぎ――何とか持ちこたえるぞ!!」

 

 怯える生徒を尻目にして前進したのは、瀬呂と障子だった。恐慌と決意を共存させた面持ちで、近づくヴィランと相対する。

 そこから自分たちが勝てる想像など付かないのに、それでも立っていられたのは、他教師が救助に来ると信じていたからだった。

 

 

「――ソイツに加勢しろ、脳無」

 

 

 そして対峙するのは果てしない悪意。

 聳え立つ山の如き力強さで子供たちの前に立ちはだかった脳無とマスキュラーの二人は、ひ弱な獲物を見つけた肉食獣だった。

 

「…………こんなの」

 

 ――どうやっても、勝てないじゃんか……!

 

 そう察するのに十分な圧を纏っていた。

 

 

「血ィ! 見せろやァ!!」

 

 脳無とマスキュラーが同時に腕を伸ばす。絶殺の腕であることは想像に難くない。そのまま頭蓋骨を粉砕するであろう拳が生徒たちに触れかけた。

 そう、寸前で触れられなかった。

 割り込んだ二人の闖入者がヴィランの行く手を阻んでいたから。

 

 

「――――勝つぞッ! 爆豪ッッ!!」

「俺に命令――――すンなァ!!」

 

 

 そこには散らされた筈の生徒が二人。もう戻ってきたらしい。

 

 ヴィランの攻撃を真っ向から受け、耐えきった爆豪と切島は感じ取った。絶対的な戦力差。自分たちと根本的に次元の異なる相手の力量を。

 負けたら十中八九の死。そしてほとんど確定的な敗北。

 逃げ出しても誰も咎めない。だが、彼らは率先して敵と拳を交える覚悟を決めた。

 

 

「俺は右だ! 左を頼むッッ!!」

「任せろや――ッ!!」

 

 

 切島はマスキュラーに持ちうる限りの全てをつぎ込んだ刺突を。

 爆豪は自分への反動も顧みない全力の爆破を脳無へと。

 それぞれが振るった渾身。

 そしてヴィランは――不動で涼しい顔を保っていた。

 

 

「「――ッ!?」」

 

「威勢の良いのが来たなァ! 楽しもうぜ!」

 

 

 刺突は容易く受け止められ、爆破は何のダメージにもなっていない。

 それどころか、聳える二人の脇を通り、死柄木と黒霧が爆豪たちの横を素通りする。

 

 

「――――マスキュラー、脳無。二人の相手しとけ」

「らーじゃー」

 

 

 爆豪と切島。彼らの全力を以てしても、壁としての機能すら果たせなかった。

 奮闘虚しく、死柄木の五指が、黒霧のゲートが、怖じ気づいて固まる生徒たちへと急接近していく。

 

 生徒たちの間に死の連想が走った――現実のものとなっても不思議ではない。防ぐ手立てはない。誰かが仲間のために肉壁になるくらいしか、抗する手段が存在していない。

 

「これで、ようやく――」

「――ゲームセットといこうか」

 

 だが、死柄木たちの前に現れたのは肉の壁でなく――“氷の障壁”だった。

 死柄木は指を引っ込めて、倒れ伏していた筈の彼へと視線をやる。

 そこでは、確かに彼が立ち上がっていた。

 

 

 

「――心外だな。コイツら、俺がもう殺られたモンだと思っていやがる……ッ」

 

 

 

 血と混じった痰を吐き捨てると、轟焦凍は揺るぎない眼で標的を定めた。

 そして、死の予感を払拭した生徒――主に女性陣を中心とする――が色めき立つ。

 

「とっ、轟くん!? やっぱめちゃくちゃ強いね……!!」

「流石は轟! さすとど!!」

「……意味分かんねェぞ、ソレ」

 

 

「おいコラ、モブ共! 俺の時は黙りこくってた癖に、なんでそいつの時だけ沸くんだよ!!」

「人徳の差だな、元気出せよ爆豪!!」

「クソが!! めちゃくちゃ元気だわ!!」

「おお! 元気だな!!」

 

 

 ……卵どもが、醜く足掻いて死んでくれない。

 戦力差は圧倒的だと言うのに、すぐに諦めてくれない。自殺志願者の集まりのくせに、コイツらしぶとくもがいて抵抗しやがる。

 

 死柄木は目を細め、指を震わせる。

 

 

「……あんま喋るなよ、ガキ共。

 

  黙って受け入れろよ、負けを。

  

   勝たせろよ――俺を!! なぁ!?」

 

 

 黒霧を。

 脳無を。

 マスキュラーを従えて。

 十分な手駒を持つ死柄木は決めた。

 

 

「――――コロシテヤル」

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 水難ゾーンの高台にて、広場の騒乱を双眼鏡で観察する少女がいた。

 彼女の名前は蟻塚。朝木勇の個性評価にて、マスキュラーと同等(・・・・・・・・・)と言われる14歳の女の子だ。

 

「しっかり学んでる? 蟻塚ちゃん」

「……勇くん」

 

 勇が蟻塚の同伴を許したのは、ヒーローとヴィランの戦いを生で目撃させ、疑似的な戦闘経験を積ませるためだった。このまま蟻塚を戦場に投入したとして、彼女は善戦できるというのが勇の予想ではあるが、そのリスクを経験させるのはもう少し彼女が大人になってから――と決めている。

 

「見て、盗んで、成長してね」

「うん」

 

 勇は蟻塚の隣に腰を下ろす。

 同時に、蟻塚は目を顰めた。

 

「勇くん。何だか血生臭い……?」

「ん、あー? ……そりゃまあ、血を流したからね――俺が(・・)

「そっか」

「そうだよ。つーか、俺のことはどうでも良いからさ。蟻塚ちゃんはどう見る、今の状況? 勝てると思う?」

 

 右肩に穴が空いているのに平然と問い掛ける勇。

 沈黙することなく、蟻塚は即答した。

 

「勝てると思うよ。オールマイトがいないし、確実に連合の総力の方が強いもん」

 

 勇が広場をざっと俯瞰すると、マスキュラーと脳無が一方的に生徒を蹂躙し、死柄木と黒霧が轟焦凍の『半冷半燃』を相手に迂遠な立ち回りをしている所だった。

 明らかに連合が圧倒している。今の段階では勇も蟻塚の意見に同意だった。

 

「……なら、オールマイトが加わったらどうなると思う?」

「それは分かんないよ。だって、まだオールマイトの強さを知らないから」

「まあ、そうだよねぇ。推し量れないかぁ」

 

 そもそも、オールマイトは何処にいるのだろうか?

 

 中学時代にホワイトハッカーをしていた経歴のある勇は、その時に磨いた技を使って、雄英一年A組のカリキュラムと、それに準じた雄英の対応を事細やかに知り得ていた。

 それによると、この授業にオールマイトが同伴するのはほぼ確定だったのだが――何故か姿が見えない。それならそれで、外との連絡網を完全に遮断した現状は好機だ。死力を尽くして生徒を皆殺しにできるだろう。

 

「どっちにしろ好都合だ。もう連合の勝ちは決まったも同然だし、死柄木に満足するまで暴れてもらってから、退散するとしますか」

「帰るの?」

「うんー、帰るよ。あっちはあっちで完結しそうだし、俺が手を貸す必要もなさそうだ。蟻塚ちゃんも早めに帰る準備しときなよ」

「ん。分かった」

 

 想定内の予定外だった。この分なら呆気なく帰還できそうだ。

 

 

(――相澤先生、死ぬのかなぁ)

 

 

 巨大な亀裂の中央で伏すかつての恩師。

 勇はそれを冷めた瞳で捉えていた。

 

 

「……ねぇ勇くん」

 

 

 そして、ようやく蟻塚は気付く。

 

「ん、どうした」

アレ(・・)――何?」

 

 蟻塚が指差しで指摘したのは、勇の背後の物陰に転がっている『峰田実』だった。

 死んでいるのか、眠っているのか、遠目からは判断できない。目立った外傷も無い。一つ確かなのは、彼が静止しているということだ。

 

「ソレ、ね――『仕込み』だよ」

「??」

 

 事前に聞かされていなかった単語に、蟻塚は首を傾げる。

 言葉足らずの説明に補足しようと勇が口を開いた――その時、USJのゲートが吹き飛び、“本命”が現れた。

 迫力満点、平和の象徴が壇上に上がった。そして勇の頬に一筋の冷や汗が伝う。

 

 

「これは……拙いな」

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 ――もう大丈夫。

 

 

 

「 私が来た 」

 

 

 

 太陽のような笑顔――ではなく、厳格な形相を携えて、オールマイトが登場する。

 ある者は目に涙を溜めて。

 ある者は野蛮な笑みを浮かべ。

 ある者は細目で舌打ちし。

 

 また、ある者は値踏みする。

 

「……コンティニューだ」

 

 死柄木が攻撃目標をオールマイトへと変更する。

 それに続いて、連合の面々は彼への警戒度を爆発的に上げた。

 相手は時代を代表する正義の味方。一切の油断を禁じ、確実な全力を引き出して、平和の象徴の命に手を伸ばす。

 

「待ったよヒーロー。社会のゴミめ」

「オールマイトォォ!! 殺すぜ、お前をォ!!」

「それではやりますか――メインミッション」

 

 ――目で追えなかった。

 文字通りの一瞬。

 オールマイトは生徒を安全域まで移動させ、瀕死の相澤を抱え込み、そのついで(・・・)にヴィランを一発ずつ殴った。

 

 

「……!!」

「は、速ェ……」

 

 

「相澤くん……意識がない。

 クソッ、君ら初犯でコレは――覚悟しろよ!!」 

 

 

 威嚇するような眼力。

 連合は彼の初手にこそ尻窄みしたが、元よりオールマイトありきでの想定をして戦力を投入しているのだ。

 作戦が正道に戻っただけ。何の誤算でもない。予定通りにオールマイト殺害を決行する。

 

「――脳無。あとマスキュラー。近接でずば抜けてるお前たち二人で、あのゴミと肉薄しろ。黒霧は隙を見てその援護だ。本当に“弱ってる”なら、三人で十分勝てる。

 

 俺は子供をあしらうとしよう」

 

 死柄木が指示を飛ばすと、号令の一つも必要とせずに、連合の主要戦力たちは臨戦態勢の構えを見せた。

 

 

「強がってんじゃねぇぞモブ共が!!」

「オールマイトが来てくれたならこっちのもんだ!」

「四対四……これなら負けねェ」

 

「いいやダメだ、少年たち。君らは逃げろ」

 

 爆豪、切島、轟に制止の声をかけると、オールマイトはネクタイを引きちぎり、シャツのボタンを緩める。

 

 

「――プロの本気を見ていなさい」

 

 

 ここで初めて出した笑顔。ただし、それは燃えさかる憤怒で裏打ちされたものであったが。

 

 

 

 

 

 

(……緑谷少年が、いない――)

 

 訓練場に辿り着き、生徒一人一人の安否を確認したオールマイトは、まず真っ先に自身の後継者である緑谷出久の姿が何処にも見えないと気が付いた。

 

(いいや、それだけじゃない……! 他にも生徒たちが……!)

 

 思い当たるだけでも四、五人。この場にいる筈の者が居なかった。

 

 侵入したヴィランの仕業であることは直ぐに予想がついたが、ここで憤慨して詰問しても、ロクな返答は期待できない。

 全員を倒して吐かせれば、全てが明らかになる。

 

 

「もう謝っても許す訳にはいかんぞ、ヴィラン共!!」

 

「謝るかよ、ばーか」

 

 四対一。多勢に無勢の戦いが第二幕に突入した。

 




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