おい、バトルしろよ   作:ししゃも丸

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どれも短いのでまとめたものです。一応本編とリンクしてます。

あと感想で誰ひとり心配してなくて草



短編集その1

 

 

 

 

 その1「マサキえもん」

 

 ジョウトからカントーに戻って早半年が経過した。

 レッドは親友という名の何でも屋であるマサキの家に突撃訪問をしていた。

 

 

「マサキえもーん! ちょっと頼みたいことがあるんだけどぉ~」

「レッド! いい加減もっと静かに入ってこんかい!」

「いいじゃん。どうせ一人なんだし」

「余計なお世話や。で、今回は何の用や?」

「ちょっとぉ、作ってほしいものがあるんだけど」

 

 

 そう言ってレッドは手書きの説明書をマサキに見せる。

 マサキはそれを見てレッドに不満顔をして言う。

 

 

「なんでお前は自分では作れない割には、こういう設計図の図面だけは上手く書けるんや」

「知らなーい。で、これ作れる?」

「んー。これ手甲っていうやつか?」

「どちらかと言うとガントレット」

「ちなみに、どんなモノを希望してるん?」

「えーとな。簡潔に言うと、頑丈でポケモンの攻撃でも耐えられる素材。あと軽量で通気性が備わってるやつ」

「また無理難題な注文を押し付けてくるやつやな……」

 

 

 文句を垂れながらもマサキは図面と向きあい、うーんと唸りながらもしっかりと頭の中ですでに仕事を始めている。

 マサキは善人だ。もっと言えば良い人。なのでこういう頼み事は断れないことは明白で、レッドはそれを知りつつも頼れるのが彼しかいないのだ。もっと言えば、友達は彼しかいない。

 グリーン? 彼はライバルだから……。

 

 

「ところで、この手の甲にある……この所々あるへこみはなんなん?」

「あ、それ? 石嵌めるとこ」

「石?」

「そ。ポケモンに使う進化の石。そうだそうだ忘れた。あとさ、石の加工職人っているの?」

「まあいなくはないで。アクセサリーとしてそういう職人がいるって聞いたことある。けど、進化の石って加工できるんかいな」

「さあ? ちょっとでも原型が残ってればいけるんじゃねぇの?」

「また適当なことを。でもこれ、数がやけに多いな」

「とりあえず現存する石全部嵌める予定だから」

「……なあ、レッド」

 

 

 いきなり冷静になってマサキは言った。

 

 

「これを嵌めても、ポケモンの技は使えへんで」

「ちげぇよ! 俺じゃなくてポケモンのサポートアイテムとして使うの!」

「そうなんか。てっきりこれで指パッチンでもするのかと思ったわ」

「何それ。あとさ、FR号のメンテとついでにブースターの取り付けたのむわ」

 

 

 そう言ってレッドはFR号が入ったボールを机の上に置くと、マサキはため息をついてさらに呆れた顔をした。

 

 

「ついでのレベルとちゃうやろ……」

「あ、金は心配するな。ちゃんとリーグの優勝賞金がたんまりとあるぞ! 足らなくなったら……ナツメにか、借りるから……」

「ヒモやな。完全に」

「だって、ジムリーダーの給料ってすげーいいんだもん。俺チャンピオンだけど、ほぼ無職だし」

「協会から給料もらってるんやないの?」

「嫌われてるからな、俺」

 

 

 レッドは知らないが、ちゃんと協会から給料は出ている。彼がそう思っているだけで、ちゃんと口座もあるし通帳もある。ただ本人がそれを知らないだけなのだ。

 ちなみに管理をしているのはナツメだったりする。

 

 

「……ほんま、バカやなレッド」

「じゃあ頼むわ!」

 

 

 そう言ってレッドはマサキの家を後にした。

 その後もマサキからの定期報告では、ガントレットと石の加工にはかなりの時間を要すると言われた。結局ガントレットの完成の目処が立ったのは、それから1年以上も後のことだった。

 

 

 

 

 

 その2「サミュエル・L・ジャクソン」

 

 カントーに戻ってきたレッドはナツメと共にハナダシティへと訪れていた。

 理由は簡単で、ここに来る目的など一つしかない。ただしナツメはとても反対し、こうやって彼女が付き添うことでようやく許可が下りたのだ。

 街の中心から少し離れた場所にある一軒家。その家の前にある花壇に水をあげている一人の女性を見つけると、レッドはナツメにホールドされていた腕を払って走り出した。

 

 

「あ、レッド⁉」

「お姉さーん!」

「ん? あ、レッドく~ん!」

 

 

 レッドを見るや、お姉さんも駆けだして抱き合う。最初に出会った時はレッドのが少し背が小さかったが、今では彼の方が彼女の背を抜かしたことによって、よりそれらしく見えてしまう。現にお姉さんの豊満な乳房がレッドの胸板によって潰れている。

 二人が抱き合う姿はまるで、離れ離れになっていた男と女が再会をしたようなもので。所謂感動的な再会なのだが、それをよく思わない者もいる。

 

 

「離れなさい、よ!」

「あ」

「あらぁ」

 

 

 ナツメはレッドを引き離すと自分のモノだと言わんばかりに腕をからめる。そんなナツメを見てもお姉さんの笑顔は崩れることなく、むしろその光景を喜んでいるかのように見える。

 

 

「予知で見たから分かってはいたけど、なんでレッドはあの人に抱き着くの!? 抱き着くなら私で間に合ってるでしょうが!」

「い、いや。体が勝手に……」

「言い訳しない!」

「えぇ……」

「相変わらずお二人の仲が良くてお姉さんも嬉しいです」

「くっ。隙がなさすぎる……」

「うふふ。ところで、今日はどんな用事で来たの? レッドくん、旅に出てたって聞いていたけど」

「そうそう。この子をお姉さんにプレゼントしようと思って」

「この子?」

 

 

 レッドは一個のボールを投げると、そこにハッサムが現れる。それを見てナツメもお姉さんも驚く。なにせ、まだ世間にはあまり知られていないポケモンでもあるからだ。

 

 

「こいつはハッサム。ほら、フシギダネを貰ったからお姉さんポケモンいないでしょ? 前に色々と困ってるって言ったから。俺が育てたから、ボディガードとしてお姉さんを守ってくれるよ」

「レッドくん……お姉さん、嬉しいわ。私のことをそんなに気にかけてくれたなんて……」

「お姉さん」

「レッドくん」

「はい抱き着かない」

「あ」

「あらぁ」

 

 

 また抱き着こうとする二人をナツメが間に入ることで今度は止めることに成功する。それからはレッドの前に立ち、二人の間に入って会話を続ける。

 するとお姉さんが思い出したように二人に待つよう告げると自宅に走っていく。待つこと数分。玄関が開かれると、そこには先程のワンピースではなくチャイナドレスなんだかよくわからない衣装を着て現れた。

 上だけを見れば至って普通なのであるが下半身がマズい。腰から下、特に足の露出がとてつもないのだ。ニーハイソックスを履いているのが余計に妖艶な彼女の存在を引き立てる。そもそも下着を身に着けているのかさえ怪しい。

 ナツメは我に返ると後ろにいるレッドを見た。

 チャンピオンだというのに、この男は手で鼻を抑えていた。というより、鼻血を止められていなかった。

 

 

「お、お姉さん。それは一体……」

「これはね、私の戦闘服なの」

「せ、戦闘服⁉」

「いや、それはおかしい」

 

 

 冷静なナツメがツッコミ入れた。

 

 

「レッドくんと別れたあと、私は二度とあんな目に遭わないように護身術の一環として棒術を習うことにしたの。そしたら才能があってね? 先生にもすごく褒められちゃったの! ほらぁ」

 

 

 巧みにその棒を操るお姉さんに見惚れるレッドに対し、ナツメは無駄に師範代クラスの腕前であること見抜いて呆れていた。たまにポールダンスみたいな動きをして見せれば、レッドはさらに鼻血を吹いて倒れた。そんな彼氏を、光が消えた目で見下すナツメ。

 しかもよく見れば、それはただの棒ではなく三節棍だった。どういう仕組みなのか上下に引けば間に鎖があって、ヌンチャクのようにも扱えるそれを彼女はカンフー映画に出てくるような動きをしてみせる。

 

 

「ねぇ。それ棒じゃなくて三節棍よね? 本当は」

「はい? 棒ですよ、これは」

「いや、絶対に三節棍」

「?」

「もういい」

 

 

 どんなに言おうと納得してはくれないとわかると、ナツメはそれ以上の説得はしなかった。倒れていたレッドが気づけば立ち上がっており、それでも未だに鼻を抑えながら言った。

 

 

「ちょ、ちょっと俺、マサキのところ行ってくる!」

「あ、レッド!」

 

 

 ──レッドは逃げ出した! 

 

 

 

 

 残された自分とお姉さん。

 正直に言えば、私は彼女が苦手である。歳は彼女とそう大差ないはずで、普通にため口で話せるはず。しかしどういう訳か。先程の光景が物語っているように、流れをすべて彼女に持っていかれてしまうのだ。

 しかもレッドは彼女に逆らえない、というより抗えないというべきか。ポケモンで言うなら常にメロメロ状態というやつ。人のことは言えないように、自分も彼女には抗えない気がしている。

 常に優しい笑みを浮かべているように見えるが、それを向けているのはレッドだけのような気がする。

 レッド曰く、一夜限りの関係だったというが本当だろうか。それにしては幼馴染いや、おしどり夫婦のような関係に見える。

 すると、お姉さんがこちらに近寄って言ってきた。

 

 

「ナツメさん」

「な、なんだ……」

「たぶん、勘違いされていると思うのでお伝えしておこうかと」

「か、勘違い?」

「はい。私はナツメさんからレッドくんを盗ろうなんて、これっぽっちも思っていませんよ」

「……へ? う、うそだ。私は騙されないぞ⁉」

「確かに私はあの子と一夜を共にし、肌と肌を重ねました。あの子を好きではない、愛していないと言ったら……うそになるかもしれません。ですが私は、ただレッドくんのお姉さんでいられるだけで……それだけでいいんです」

『お姉さんは私なんですけどぉ⁉』

「何か聞こえたような」

「気のせいですよ」

 

 

 突然謎の電波が飛んできたが、二人してなかったことにする。

 

 

「それに私は嬉しいんです。レッドくんがナツメさんを紹介しに来てくれて」

「まあ、相手のご家族に挨拶しにいく感じだった……うん」

「つまりですね、私はレッドくんが幸せならそれでいいんです。それに──」

「?」

 

 

 するとお姉さんは目前まで歩み寄ると、そっと耳元で囁いた。

 

 

「あの子の心の中に私という存在がいる。それだけでいいんですよ」

「うわぁああああん! レッドぉーーーー!!」

 

 

 私は逃げ出した。

 だって、すでにレッドの中にはお姉さんがいるから。だから私は、この人に絶対に勝てないんだ。そう悟って逃げ出した。

 

 

 

 

「あらあらあらぁ。ナツメさんったらかわいいですね」

 

 

 今度はお姉さんが残され、彼女はレッドから渡されたハッサムに目を向けた。先程のやり取り見ていたはずなのだが、意味がわかってないような表情をしていた。

 

 

「ハッサム……と呼ぶにはちょっとかわいそうですね。何かニックネームをつけてあげないと」

「──!」

「そうですねぇ。ハッサム……ハッサム……サム……あ、そうだ! サミュエル・L・ジャクソンにしましょう!」

「!?」

「よろしくね。サミュエル」

「……ハッサム!」

 

 

 中々表情を掴み取れないハッサムであるが、意外と気に入ったようだとお姉さんは思った。

 

 

 

 

 

 その3「友達0人」

 

 ある日のこと。

 マサラタウンにあるレッドの家は、意外にもまだ使用されていた。ナツメと付き合うことでここはもう用済みとなった。そう思っている人間も多いだろう。しかし意外にも、彼はこの家にちょくちょく帰っている。

 所持金を除けばこの家を含めた土地が彼の財産ということになる。名義もすべて自分の名前になっているので、彼はこれらがレッド個人がいたという証として持っておくことにしたのだ。

 と、言うのは建前。ここはレッドにとっての城であり宝物庫。

 つまり彼女がいながらも、こうしてお宝をここに保管しておける最後の聖域なのだ。

 今も自分の私室にて、旅立つ前に保管しておいたお宝を探して床に出しているのだが……。

 

 

「お、おかしい。いつの間にか、俺のお宝本がお姉さん本と幼馴染本にすり替わっている……」

「あ、それね。わたしとお姉ちゃんがすり替えておいたの」

「きゃぁああ!」

 

 

 振り向けば何故かリーフがいた。レッドは慌ててお宝を隠すが、すでに手遅れである。

 

 

「男の部屋に勝手に入るなよぉ⁉」

「レッドだって、わたしの部屋に入るじゃん」

「それはお前が来いっていうから……」

「まあそれはどうでもいいんだけど」

「よくない! で、なんだよ。急に現れて」

 

 

 何故か互いに正座で話し合うことになった二人。リーフを見れば、とても真面目な顔をしているのが見て取れた。

 

 

「お願いがあるの」

「お願い?」

「私を……鍛えてほしいの!」

「え~。まぁとりあえず、理由だけ聞く」

「私はレッドに勝って、レッドを手に入れたいの。はい、これが理由」

「それを聞いて、はいわかったってうなずける訳ないじゃん!」

 

 

 どうやらまだポケモンリーグで負けた際に言ったことを諦めていないらしい。

 レッドは思った。これはあれだと。バトルに勝った際に手に入るおこづかいの代わりに、自分を手に入れようとしているのだと。

 

 

「えーだめぇ?」

「だめ」

「じゃあレッド関係なく、わたしを鍛えて」

「結果は変わらないのでは?」

「違うよ。わたしを鍛えることで、レッドの土俵に立てる人間が増えると思えばいいんだよ」

「ハハハワロス。イシツブテも投げられないようなリーフには無理ですって」

「投げられるよ、わたし」

「なん……だと……?」

 

 

 そんなバカなことがあるわけないとレッドは否定する。旅立つ前によくリーフと遊んでいたから知っている。こいつはそんな重たいものなんて持てたことはないはずだと。

 しかし衝撃の事実をリーフの口から知る。

 

 

「だってレッドって友達いないよね? でもわたしはいるの。だからよくイシツブテ合戦してたし。あ、これでも負けたことないから」

「ちょっと待って。ライフ(心)で受けるにはちょっと辛い……」

「レッドってさ、何故かこの町でいじめらっれ子だったよね。何故か」

「ふん。だから喧嘩で負けたことはないぜ」

「だから友達いないんだよ。で、話を戻すけど。わたしを鍛えてくれる?」

「例えだけどさ、お前……殴れるの?」

「痛いからヤダ」

「……それでも鍛えてほしいと?」

「イエス!」

 

 

 殴るのが無理。じゃあ蹴るのだって無理。となると思い当たる攻撃方法は一つ。

 レッドは実際にやりながら言った。

 

 

「じゃあ……はたくとか?」

「こう?」

 

 

 ──リーフのはたく! レッドに小ダメージだ! 

 ぱちーん。と、容赦なくリーフはレッドの頬をはたくと、彼は床に倒れた。

 

 

「ぶったな⁉ お姉さんにもぶたれたことないのに!」

「あの人がレッドをぶつことなんてありえるのかなぁ……。でも、これいいね! シュッシュッ!」

「それを毎日欠かさずにやれば、まぁ強くなれるんじゃない? 知らんけど」

「うんわかった! ありがとーレッド! 大好き!」

「へいへい。さてと……うーん、やっぱ幼馴染本でも貧乳ばっかじゃん」

 

 

 邪魔者がいなくなったことで、再びお宝の鑑賞会を開くレッド。

 しかしレッドは忘れていることがあった。

 リーフもまた自分と同じマサラの血を引いていることを。

 

 

 

 

 

 

 おまけデータ

 ハッサム/サミュエル・L・ジャクソン

 レベル/70

 備考 

 レッドがグリーンのストライクに嫉妬してカントーのとある場所で捕まえた子。

 旅に出る前にハナダの洞窟でブートキャンプをして強くなった。特訓内容はひたすら岩を斬れ(技を使わずに)。そのため何度も何度も岩を斬っていたら、いつのまに斬られたことすら気づかないレベルの斬撃を会得した。レッド曰く、まぁまぁ。

 なお、ボディガードにしてはレベルが高すぎる模様。

 

 ハナダのお姉さん

 レベル/3(上限??)

 能力 お姉ちゃんパワー

 

 リーフ

 レベル/5(上限?0)

 技 はたく

 

 ナツメ

 レベル/27(上限30)現在 シルフ決戦時レベル/25

 能力 エスパー

 

 

 

 

 

 




気づいている人もいるかもしれないけど、ハナダのお姉さんがあまりにも他のキャラを食う勢いなので、たぶんエリカとナナミはこのままフェードアウトすると思う。
本当はもう一個短編をやろうかと思ったけど、挫折しました……許して許して……

それと第三章は引き続き更新します。
ただ第四章以降は書き溜めをして毎日更新をするか分かりません。
暑すぎてモチベがね?
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