おい、バトルしろよ   作:ししゃも丸

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ルカリオのごり押しで第18章までクリアしたぜ


ならば極めた筋肉はまさに究極の美だということだ!

 ルビーとサファイアの80日間冒険競争15日目。

 

 119番道路と118番道路の間を流れる川の上流にて、釣り糸を垂らしているレッドがのんびりと釣りをしていた。

 彼一人かと思いきや。頭にはソーナノを乗せて隣にはサーナイトが器用に座っている。ラプラスに至っては川に入ってその背にイーブイを乗せて遊んでいた。一番の古株であるスピアーは木陰で休みながら周囲一帯に気を配っている。

 サーナイトはまだこのメンバーの新人。話ではとても重要な事をしようと活動していると聞いているのに、何故釣りなどをしているのか気になって思わずたずねた。

 

 

『あの……マスター? どうして釣りをしているのですか?』

「ヒンバスを釣ろうかなって。ほら、下流に海パンのあんちゃんもそれ目当てで釣りしてたし」

『どうしてそのヒンバスを釣るのですか? 戦力補充ならわたしで間に合っていると思いますっ』

「ははは。サーナイトは怖いもの知らずだな」

「ソーナノ!」

「ラプラス。あれはなんや」

「独占欲ぅ……ですかね」

 

 

 サーナイトが何か面白い反応をするたびにイーブイとラプラスがそれを遠くから楽しんでいるのが、ここ最近の日常の一コマである。

 

 

「いやさ。お姉さんがコンテストやってるって聞いたから、ホウエン土産でミロカロスプレゼントしようかなって」

『ミロカロス?』

「えーとな。こんな感じ」

 

 

 レッドはサーナイトとシンクロして、彼女の頭にミロカロスのイメージ像を送る。それを見たサーナイトがむすっとした顔をするが、隣にいる彼は気づかない。

 

 

『マスター。以前マスターのお仲間や他の人間達を見せていただきましたが……その、お姉さんというのは誰なんですか?』

「ん? お姉さんはお姉さんだぞ?」

『で、ですから! そのお姉さんについて聞いているんです!』

「サーナイトも不思議なことを言うな。お姉さんはお姉さんなんだぞ」

『わ、わかりました。もうそれでいいです……』

 

 

 そりゃあ知らない子があの人を見たらそうもなるよなと、スピアーをはじめとした三人はあの人を思い浮かべながら思った。スピアーは最初からお姉さんとの出会いを知っているため特に深くは言わないのだが、これでも以前に比べれば主人はマシになったと思ってる。

 昔の優先順位はどういう訳かお姉さんで、その次がナツメだったのだ。今は逆転しているので、よくナツメは頑張ったと事情を知るポケモン達は彼女を称賛していた。

 

 

「あ、でもなあ。お姉さんだけじゃナツメが嫉妬するか。サーナイトをプレゼントすれば喜ぶかな? エスパーだし相性はいいだろうし」

『ま、マスター! わたしは常にマスターのお傍に仕えます! それにナツメさんよりも強いですよ、わたし!!』

「えーないない。ナツメは俺よりも強いもん」

『ウソです! マスターは世界一お強いマスターです! なので負けません!』

「ありがとうなサーナイト。お礼に撫でてやろう。よしよし」

『……はぅ』

「ラプラス。あれはなんや』

「嫉妬ぉ……ですかね」

「……! ソーナノソーナノ!」

 

 

 一日に何度も見る光景の中、ソーナノがレッドの頭の上で跳ねる。どうやら釣り竿が引いているのを教えているようだ。

 

 

「どうせコイキングやろ……あ」

「ぎょ」

 

 

 引いている感じ的に軽いので、またコイキングだと思ってあげてみたらなんと、お目当てのヒンバスが釣れた。しかもメスなのでお姉さんにピッタリだった。

 

 

 

 

 

 

 ルビーとサファイアの80日間冒険競争26日目

 

 ヒンバスを吊り上げたレッド一行はそのまま118番道路から111番道路へと移動した。

 その道中にある砂漠エリアに立ち寄ったレッド。そこにある砂漠遺跡に眠るレジロックをのことを思い出し、彼と接触しようとしたのだ。

 だが「おふれのせきしつ」のギミックを解いていないのか、レッドのパンチでもびくともせず、サーナイトでテレポートしようにも何かの力に阻まれてしまって接触ができずに終わった。もしもの時に備えて彼らの力を借りようと考えていたレッドであったが、まさかの展開に肩を落としそのまま砂漠遺跡を去った。

 そこからえんとつ山方面に進み、フエンタウンと111番道路にある森でレッドはヒンバスをミロカロスにしようとしていた。そのヒンバスはラプラスが作った小さな池にいる。ヒンバスはラプラスと違って水がない所では身動きが取れないためだ。

 

 

「ヒンバスよ。俺がお前を立派なミロカロスにしたててやるから覚悟しろよ~」

「ぎょ?」

 

 

 自分の進化した姿など知らないヒンバスは、一体何を言っているんだという表情を浮かべる。さらに言えば、隣にいるサーナイトがやけに睨んでくるのが怖いとすら思っていた。

 

 

「だがここで一つ問題がある」

『問題、ですか?』

「ぎょ?」

「ミロカロスに進化させるためには、ポロックを使って美しさを上げなければならないのだ」

 

 

 ルビー・サファイアにおいて、ヒンバスはポロックを使い美しさのコンディションを上げなければ進化せず、さらに付け足せばそのヒンバスの生息地域と出現率がかなり低い。なのでミロカロスを手に入れたくても、まずはヒンバスを捕まえなければ話にならないのだがゲットするのにかなりの時間を要する。

 ただ第五世代以降ではきれいなウロコを持たせて通信交換すれば進化できるようにはなったが、初期コンディションの値は0であり、数字だけを見ればそこまで美しくないミロカロスとも言えた。

 レッドは前者についてはもちろん覚えているが後者は知らないので、進化をさせるためにポロックを使用することになる。

 だが──

 

 

「でもポロックの作り方とかもう覚えてないし、きのみを集めるのもめんどい」

『ではどうするのですか?』

「ふっ、簡単だ。ヒンバス! これを見ろ!」

「ぎょ⁉」

『……ぽっ』

 

 

 突然シャツを脱ぐと、その鍛え抜かれた体……いや、筋肉を見せた。この若さで鍛え抜かれた肉体はまさに芸術と言っても過言ではないだろう。日の光を浴びて光る大胸筋、男の憧れであるシックスパックはもちろんできており、さらに一度はその腕にぶら下がってみたい上腕二頭筋。

 しかしそれだけがレッドの肉体を引き立てているのではない。たった14歳の少年だというのに、その肉体にはあちこち傷痕が残っている。これぞ男の勲章、まさにこの美しい肉体をさらに引き立てる影の立役者と言えよう。

 まずは正面からフロント・リラックスから左を向いてサイド・リラックス。そのまま後ろを向いてリア・リラックスからの右向きのサイド・リラックス。再び正面を向いてフロント・ダブル・バイセップス。

 見よ、あれを。まるでイシツブテのように固く、ゴーリキーより逞しい筋肉を。

 そのあとも規定ポーズは続き、レッドは最後に一度はやってみたいあのポーズ、モスト・マスキュラーを披露した。

 その光景にヒンバスは丸い目をさらに丸くし、サーナイトは赤くなった顔を手で隠すが、指の隙間からちらちらとレッドの肉体を見ている。

 

 

「つまり何が言いたいのかというと。美しさとは人によって多種多様だ。ならば極めた筋肉はまさに究極の美だということだ! わかるなヒンバス!」

「ぎょ……ぎょ!」

 

 

 レッドの言葉を理解したのか、それともその場のノリで合わせたのかは定かではないが、ヒンバスの目は何故かやる気に満ちている。

 一方、それを見ているイーブイ一行。

 

 

「でもさ。マスター的に究極の美ってお姉さんだよね?」

「わたしもそうだと思うなぁ」

「──」

「ソーナノ……ソ、ソーナノ……!」

 

 

 レッドに触発されてか、スピアーもフロント・ダブル・バイセップスをやってみる。それを見たソーナノが真似をしてみるが、ぴくぴくと両手を震わせていた。

 筋肉自慢も済んだところで、いざヒンバスの特訓を開始しようとその時。

 近くの木の上からこちらに向かいながら叫ぶ少女が現れた。

 

 

「こら──!! その子に何ばしよーっとね!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやーごめんなしゃい。てっきり、その子をイジメてるかと思うて!」

「まあ、上半身裸の男がポケモンに迫ってれば、そう思うよなぁ……」

 

 

 突如現れた謎の少女サファイアに事情を説明すると、彼女は驚く素直なのかそれをあっさりと信じてくれた。

 レッド自身もまさかこの場所でもう一人の主人公というべきサファイアと出会うとは思ってなかった。なによりも驚いたのは、その博多弁に似た喋り方と女の子とは思えない身のこなしだった。

 ジョウトで出会った時は可愛らしいドレスを着ていた彼女が、ここまでアグレッシブというか野生児になっているとは思ってなかった。

 この間出会ったルビーとまるで正反対であるとどこかで思うレッドであるが、彼はそのまま気にせずサファイアと話すことにした。

 

 

「へー。サファイアはジム制覇を目指してるんだ」

「そうとよ! バッジ3つも手に入れたんよ」

「やりますねぇ! ところで気になったんだけど。ルビーとお知り合いだったりする?」

「アイツとはライバルったい! どちらが先に約束の日までに達成するかを競っとるとよ!」→多分こう。微妙に自信無いです。

「お、おう」

 

 

 ぐいっと迫りながら目を燃やしていうサファイアの勢いに一歩下がるレッド。

 するとサファイアがレッドの頭に乗ったソーナノを見て、そのまま背後にいるポケモン達を見ると彼に近づいて匂いを嗅ぎはじめた。

 

 

「すんすん……お兄さんってポケモンに好かれる匂いをしとーとね。ほんと不思議な人」

「不思議なのは君の方だよー」

「それにしても、お兄さんはもしかして……カントーの人と?」

「え? そうだけど……」

「!! じゃ、じゃあ、こん人知っとぉーんと⁉」

「oh。最近これと似たようなことがあったぞ……」

 

 

 案の定その予想は的中した。サファイアはバッグから一冊の雑誌を顔に押し付けてきた。顔から離してその表紙を見ると、あの「月刊ゲーフリ」というポケモン雑誌であった。今回はカントー特集らしく、驚くべきはその表紙に写る一人の少女であった。

 

 

「り、リーフ⁉」

「リーフさんを知ってるんですか⁉」

「あの、標準語に戻ってるよ……?」

「実はリーフさんはあたいの憧れの人ったい! 少ししか年が違わないのに、そんな人がチャンピオンなんてほんと同じ女として尊敬するんよ! あとシンオウチャンピオンのシロナさんも!」

「へ、へー……」

「もう! お兄さんカントーの人なのに知らんと? リーフさんは『鉄壁のリーフ』と呼ばれているすごい守りの戦いがうまい人ったい!」

「鉄壁……胸か……そうか。成長、してないんだな……」

 

 

 まさかこんな所で幼馴染の悲しい結末を知るとは思わず、レッドは心の中で涙を流した。そんな彼など気にせずサファイアは話を続ける。

 

 

「鉄壁の異名にはちゃんと意味があって、リーフさんのハピナスとラッキーが『桃色の双璧』と呼ばれてて。多くの挑戦者がリーフさんに挑むけど、最初のハピナスで大体の人が止まるったい!」

「……本当にハピで止まるをやってやがる。いや、いまはハピラキか……こわっ!」

「さらにそのハピナスを倒しても、次のラッキーで止まるばい! だから『桃色の双璧』と呼ばれ、その戦いで『鉄壁のリーフ』って呼ばれるんよ!」

 

 

 すみません。そのラッキー、ボクが育てたんです。とは言えず、ただ相槌をうつレッド。

 もしかしたらこうなるかも、とは予想していたがまさか本当になるとは思いもよらなかった。

 

 

「あとリーフさんはあのオーキド博士のお孫さん! うちの父ちゃんもポケモンについて研究してて、その縁で少し前にリーフさんが来てくれたんよ!! その時に勇気を出して、これにサインを貰っちゃった!!! これはあたしの一生の宝物なんですよ!!!!」

 

 

 所々方言だったり標準語を交えて喋る辺り、本当にリーフに憧れているということが伝わってくる。にしても改めてその雑誌を見るが、リーフの書いたというサインはまさに有名人が書くサインそのもので。よく見れば何ページに渡って写真やら対談が載ったものまである。

 ここでレッドはある違和感に気づいた。こんなことチャンピオンの仕事だったかと。

 それもそのはずで、レッドはポケモン協会からの連絡を拒否していたのだから当然だった。そんな彼にもちゃんとリーフのような仕事の依頼はもちろん来ていた。

 だがそれは、ナツメによってすべて無かったことにされていたのだ。

「雑誌なんて載ったら、レッドに変な女が付きまとうでしょ!!」と一蹴し、すべての仕事をキャンセルしていたのである。

 そんな裏の事情を知らないレッドは、ただただリーフが写る写真を恨めしながらまじまじと雑誌を見ていると、サファイアはアッと何か思い出したように声を上げた。

 

 

「そういえばお兄さんの名前聞いとらんかった」

「俺は通りすがりのレッド、ただの旅人さ」

「れっどぉ……? はて、どこかで聞いたことんある名前……」

「レッドなんてあり触れた名前だって! 毎年一人は名前の最後にレッドって名前の奴が出てくるんだからさ!」

「それもそうたいね!」→上よりは自信あります

「ところでサファイアはこれからどこに向かうんだ?」

「あたしはこれからフエンタウンに行くところばい! レッドさんもジム戦を?」

「いや、俺は特にこれっといって。ただフエンタウンにある温泉にでも行こうかなって」

「あーあ。温泉は気持ちよかもんね。あたしはジム戦が終わったらいこうと思っとるったい。よかったらレッドさんも一緒に行かん?」→同上

「あ、ありがと。でも、ここでまだやることあるから。サファイアは先にいくといいよ」

 

 

 まさか初対面の女の子にこんなにもよくしてもらえるなんて思わず、レッドは心の中でまた涙を流した。同年代の地元民からはイジメられ、ポケモンすら持っていなかった。でも自分には大親友のマサキがいると今なら胸を張って言える。

 0じゃない。1人もいるんだと。

 

 

「それは残念か。じゃあフエンタウンで会ったら、またカントーの話聞かせてほしか!」

「うん、うん! いっぱい話あげる」

「約束ばい! じゃあまた!」

 

 

 別れを告げると、サファイアは再び木の枝に跳んでそのままフエンタウンへ向かっていった。残されたレッドは、放置していたヒンバスの特訓を再開しようとする。

 そこでサーナイトが何かを感じ取った。

 

 

『マスター。何かがこちらへ来ています』

「の、ようだな」

 

 

 サーナイトと同時にビリビリセンサーが何かを告げている。数は一、しかし敵意は感じなかった。反応からしてポケモンなのは間違いない。人が出せる速さでないのは明らかだからだ。

 森を駆け抜けているそれは、目の前まで来ると速度を緩めて茂みの中からゆっくりと姿を現した。それはアブソルであった。

 

 

「アブソルか。あれ? アブソルって確かわざわいポケモンって言われてるんだっけ?」

『どうやら何かを伝えに来たようですね」

『……近い内にこの大陸全土を脅かす災いが起こるのだ』

 

 

 サーナイトがご丁寧に彼の言葉を伝えてきた。別にそんなことをしなくても聞こえるのだが、そこは主人想いのいい子ということなのだろう。

 

 

「それをどうして俺に?」

 

 

 アブソルとは今この場で会うのが初めてだ。だというのに、彼の雰囲気はまるで初めから自分に会いに来たような感じに思えた。

 

 

『あなたがその災いの中心となるかもしれないからだ』

「ちょっと待って。俺、まだ何もしてないぞ! いや、これからするつもりなんだけどさ……」

『そうですそうです! マスターはこの大陸を救おうとしているんですよ⁉』

「サーナイトはちょっと落ち着こうね。で、なんで俺がその中心にいるんだ?」

『分からない。私達はそれが分かるというだけで、何故なのか、どうやって起こるのかは説明できないんだ』

「まあ災害を予知できるだけでもすごいもんな。俺も何かが起こるというのは知っているけど、いつなのかは分からない。さらにアブソルが言うには、俺がどうしようともそれが起きると言うことなんだな?」

 

 

 アブソルは頭を縦に振って肯定した。

 

 

『間違いなくこの大陸に大きな災いが起こる。そして、近くこの場所でも』

 

 

 そう言うとアブソルはえんとつ山へと視線を移した。

 そこでレッドは思い出す。確かあの山の火口でイベントがあったのだ。記憶は曖昧だがマグマ団は火山を活性化し、アクア団は火山活動の停止が目的だったような気がする。

 両者がそこで戦うのか、あるいはその片方が行うのかは分からないがアレがきかっけでホウエンに眠るあの二体の目覚めが始まるはず。

 

 

「なら急いだ方がいいな」

『ワタシは災いを事前に察知できても、我らの言葉を人間達は理解できない。だからこそ、あなたに頼むしかないのだ』

「それでも、人間の前に現れるのは止めないんだろ?」

『無理だと分かっていても、それが私の使命だとも思っている。では、さらばだ』

 

 

 アブソルはその場から走り出しいく。恐らくフエンタウン、あるいは他の場所で人間達にこのホウエンで起きる災害を教えに行くのだろう。

 

 

「となると、いよいよマサキに作らせたこいつの出番だな……!」

『マスターそれは?』

 

 

 レッドがバックからあるモノを出してニヤついた顔を浮かべる。サーナイトがその手にあるモノを覗き込むと、それは赤い色をした仮面……というよりマスクであった。

 目の部分には緑のバイザー、額に輝く太陽を模したシンボル。

 

 

「分からないか? ヒーローの誕生だよ」

 

 

 その後。数日間かけてヒンバスはミロカロスへと進化しフエンタウンへとレッドは向かった。

 

 

 

 




サファイアは原作でも博多弁使うのですが、そちらに詳しい方がいたら誤字修正をお願いします。


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